フレッド君の小話
好調ラプターズの中で、ラウリーと共にチームをリードするPGとして欠かせない存在となったフレッド・ヴァンブリート。その成績はオールスタークラスになってきました。昨シーズンの時点ですでに高い評価を得ていましたが、そこから「目に見えるスタッツ」という結果を出しているのです。
〇昨シーズンからの変化
得点 11.0→17.6
アシスト 4.8→6.6
スティール0.9→1.9
ゲームメイク力など「数字には表れない要素」こそがヴァンブリートの価値だと思われていましたが、しっかりと数字で示してきたので惚れ惚れするような選手になってきました。
平均26.6点のレナードが移籍を選んだことで、得点面の不安が拭えなかったラプターズでしたが、シアカムが期待通りにオールスターへと成長してくれただけでなく、ヴァンブリートが+6.6点はニック・ナースにとっても嬉しい誤算だったかもしれません。
得点の中心になっているのは38.8%の3Pで、ファイナルからの好調さを維持していますが、目立つのは苦手としていたトップの位置からアテンプトを増やし、しっかり決めている事です。弱点の克服に成功しています。
一方でインサイド側は真っ赤っか。ゴール下アテンプトが大幅に増えていますが、確率は悪いのは変わらないし、ペイント内も20%を切っており、サイズの小ささだけでなく、フローター系の課題も残っています。強気なのはよいことだけど、基本的にはアウトサイドの向上が得点力アップを支えています。
◉まさかのリーグリーダー
6-1(185cm)しかないヴァンブリートにとってインサイドで得点するのが簡単ではないのは致し方ないところ。ただ197ポンド(89キロ)あるので、やや重ためのガードでもあります。
例外的に同じ身長ながら100キロ近いドノバン・ミッチェルもいますが、ミッチェルはウイングスパンが210cmもあるなど規格外の体を持っているのに対して、ヴァンブリートはちょっと重めでウイングスパンも身長とほぼ同じ。小さめで身体的特徴にも優れているわけではありません。
同時に身体能力系でもないヴァンブリート。小さい体で切り返しの能力はあるけど、スピードやジャンプ力に優れているわけではありません。これらがインサイドで苦しんでしまう理由であり、大きな改善は考えにくそうな理由でもあります。
ところが、そんなヴァンブリートが予想外のスタッツでリーグリーダーになっています。
〇ディフレクション 4.2(1位)
パスなどに触ってコースを変えた回数を示すデータで1位。「おさわり上手のヴァンブリート」となっていますが、2位以下を並べると
ホリデー(ペリカンズ)
ベン・シモンズ
クリス・ダン
レナード
ドラモンド
バトラー
アイザック
クリス・ポール
同系統はクリス・ポールだけであり、3.4本とヴァンブリートとはちょっと差があります。そして他の選手はウイングスパンや身体能力に優れたタイプばかり。パスに触る能力のため、これらの要素がかなり重要になっているのに、全く違うタイプでリーグリーダーになっているのです。
昨シーズンのヴァンブリートは2.2を記録しており、大きく伸ばしてきました。(ただし、プレータイムも8分伸びた)レナードが抜けた得点の穴を埋めただけでなく、
レナードが抜けたディフェンスの穴を埋めた
ことになり、大いにチームディフェンスを助けてくれています。数字で示すようになった今シーズンのヴァンブリート。このままリーグリーダーを守れるのでしょうか。
中断期間の小話第2話なのでした。
◉ラウリー先生
しかし、スネルじゃないんだから、ここで終われるほど話題に乏しくないのがヴァンブリート。単にボールに触るだけでなく、しっかりと奪い取っています。
〇スティール 1.9(4位)
〇速攻での得点 3.5(14位)
小さい体ながら、相手の先を読んでかすめ取るのが非常に上手い。あるいは小さいからこそ隙間まで追いかけて手を出すのが非常に上手い。上手いことボールにおさわりして奪い取っています。
特に目立つのはドリブルスティールの上手さ。スッとボールに触ってしまいます。この読みの良さと、手を出す上手さがディフレクションの数字に繋がっていると言えます。
またポジショニングの巧みさも強い武器で、チェイスするスピードやウイングスパンがない代わりに足を動かしてポジションをとり、パスコースを読んでいます。
見事なスティール力、読みの良さでチームディフェンスを構築するヴァンブリート。その力はチームリーダーにして、チャージングの神様であるラウリーから学び取っているようです。育成のラプターズ。
〇ラウリー
チャージングドロー 30回(1位)
クリッパーズのハレルと並んで1位のラウリー。52試合で30回もチャージングを奪っているわけです。「スネルがフリースローを打つ試合」よりも多いでしょう。
※同じ日に記事を書いているせいでディスられるスネル
ラウリーのディフレクションは2.2と、ヴァンブリートに比べれば少ないですが、こちらも同じように6-0(180cm)しかないので、本来は2.2でも十分な数字だと言えます。似ているディフェンスと思いきや、面白いことに
〇ヴァンブリート
チャージングドロー 1回
鋭い読みとポジショニングをラウリーから学び取っているようなヴァンブリートですが、コースを読んで待ちかまえるラウリーのテイクチャージについては、まだまだ修行が必要な様子です。
これはなかなか面白い傾向で、小さい選手ながら読みの良さとポジショニングでディフェンス面での貢献度が高いガードコンビを使いながら、それぞれの特徴が少しずつ異なっています。
タイプとしては似ているが結果を残す数字は異なる
そしてこの違いをニック・ナースはマッチアップで使ってくることが多く、ラウリーはヘルプポジションを取りやすいように楽な相手を、ヴァンブリートはチェイスから手を出してくれるようにボールを持つ機会の多い選手を担当させます。でも、試合中にはチェンジさせて変化も付けてくる。
ボールにおさわりするヴァンブリート
コースで待ち構えるラウリー
同じようで違うガードコンビのディフェンスなのでした。
いつも楽しく拝見しております。NBAがこういった状況になり、尚更こちらに来る機会がおおくなりました。楽しい記事、これからもよろしくお願いします。ディスられるスネル。笑いました!さすごですね。
おにぎりくんから、
おさわりくんへ出世。
なんか最近パウエルまでプチブレイクしてたし。
ナースは引力のあるHCになりそうですね。
テイクチャージ、体育館バスケとかでやると(危険だ)ということでかなり怒られました。やってみて分かったんですが、倒れる時がかなり痛いし何より大体フルスピードで来るんで超怖いです。NBAでやってる彼らに頭が下がります。
ラウリー、ヴァンブリードのように日本人のアンダーサイズの選手は必須で身につけるべきだと思いますが、怪我のリスクの面で育成年代には厳しいのかも知れませんね。
ラウリーはどこで誰から学んだんでしょ…