「手抜き」のドンチッチとモーラント

グリズリーズvsマブス

将棋の手筋「手抜き」 将棋講座ドットコム

駒が取られたり、攻め込まれたりする状態を受けずに別の手を指すこと。
自玉と相手玉の安全度やお互いの攻めの速さなど、多数の要素を総合的に判断する必要があるため、高度な手筋であると言える。「手抜き」は攻守が入れ替わるきっかけになる。
初心者のうちは、駒がぶつかったら、すぐに取ってしまう場合が多いが、レベルが高い将棋になるほどより「手抜き」の必要性が増し、また正確さが求められる。

◉余裕のドンチッチ

ドンチッチについて触れようかと思った試合序盤。少ない熱量でプレーをしているのが印象的で、他の選手の踏ん張りが目立つようになってきました。それはチームが勝てるようになったことで生まれてくる「余裕」みたいなもので、自分が頑張らなくても大丈夫な空気がドンチッチに生まれ始めています。

将棋では「手抜き」は楽をするという意味ではないのですが、いうなれば「ギリギリまで見極める」ことであり、「勝敗が決まらない細かい勝負に乗っからない」ということかもしれません。

バスケは得点が多く決まるスポーツであり、3P時代になって10点差は大量リードとはいえなくなってきました。

試合終了時に1点でも勝っていれば良いわけで、「現時点の点差」が許容できるのか、出来ないのか。そしてエースが強気に得点を狙わないと苦しいのか、それともチームメイトに託すべきなのか。

その感覚が研がれてきた印象のあるドンチッチ。それは明確な計算ではなくてチームメイトへの信頼とか、これまでの試合経験から導き出される感覚的なものだよね。

ここ7試合で平均27点、FG50%のポルジンギスが好調なマブスにおいて、ドンチッチは自分がプレーの中心にいる必要性が薄れてきました。そしてポルジンギスはトップから45度くらいのゾーンを使いたがる習性があり、ドンチッチとプレーゾーンが被ります。

前半はパスを出してコーナーに行く事が多く、アシストも速攻のワンパスばかり。ドライブしてもパスアウトを繰り返し、自分の存在を消しています。もちろんグリズリーズだってそこを止めたいからマークを強め、強まったマークをすかしているドンチッチ。余裕。

〇前半のポルジンギス
17点 3P3/5

ポルジンギスは相手がサイズ差があるトリバーってこともありましたが、アウトサイドからのシュートが戻ってきました。インサイドプレーは少なく、3Pとミドルで得点を重ねていたよ。

まぁそれでもドンチッチもFG12本も打っていた前半。余裕をもってプレーするようになってはいるけど、基本はハンドラーとして自分がど真ん中にいるので、数字的には稼いでくるよね。

だからドンチッチの「手抜き」は、熱量を持っていない時間と上げる時間帯の違いを感じさせるコントラスト。チームメイトにやらせておこうぜ。

◉観察するモーラント

〇前半のモーラント
9点 FG3/6
2アシスト

一方のモーラントはそもそも自分が中心にいようとしない変なタイプの主役ハンドラー。かといってプレーメイクしてアシストが多いわけでもない。

自らのプレーメイクから得点とアシストを稼ぐドンチッチ
周囲にプレーメイクからやらせているエースのモーラント

だからドンチッチの「手抜き」とは違って、普通にプレーに絡みつつずーっと「手抜き」しているようなのがモーラント。

それでも勝負の時間になると、一気にギアを上げて自分で得点しに行くわけで、手抜きというか「観察」しているような印象もあるよね。ディフェンスがどう動くのか、チームメイトの調子はどうなのか、1つのプレーでも余裕に溢れて引き付けまくるプレーをするモーラントなので、

相手の出方をうかがう「観察」ような「手抜き」のモーラント

ということで、困るのは前半に触れることがないってことさ。ダブルドリブルとられたりして、ぜーんぜん目立たなかった前半でした。しかもチームは49-61と12点ビハインドに。

後半になると自分でアタックするプレーを増やすモーラントが、どのような観察をしていたのか気になる前半でもあるし、JJJがいないグリズリーズは本当にそれで良いのかっていうと苦しい空気もあったのでした。

◉企画潰し

後半はモーラントのドライブ→パスアウトから始まるのですが、気持ちよく3Pを打って行かないブルックスとカイル・アンダーソン。クラウダーなら迷わず打っただろうに。決まるとは言わないけど。

それでもモーラントはスネークドライブからバランチューナスにアシスト。速攻に走るとポルジンギス相手にビビらず飛びます。ファールっぽいけどノーファールで止められたけど。

JJJがいなくなったことでモーラントと合わせる選手が難しくなったのがグリズリーズの問題なのでしょうね。バランチューナスくらいしか連携にならなし、終盤はバランチューナスを使わずにインサイドを空けてドライブさせたいのに、ストレッチ役がいない。だからトリバーを獲得したのかな。

一方で前半同様に熱量をあげてこないドンチッチ。リードしているからね。

ここにもグリズリーズの問題があって、ポルジンギスのシュートが外れていったのにリバウンドがとれず、結局はポルジンギスに押し込まれていきます。その理由はポルジンギスのマークがバランチューナスになるとロングリバウンドに負けるし、スイッチでガードがつくと、今度はランニングリバウンドに負ける。

ていうか、単純にリバウンドの反応が悪い。高さじゃなくて反応が悪い。モーラントはここを頑張らないといけないかも。他に取れるようになりそうな選手いないし。

そんなわけで気が付いたら30点差。3Q終わって95-65でした。もーナントもならないし、モーラントが何かをしても焼け石に水。

3Qになって決まらなかったポルジンギスですが、点差が離れまくったので段々と決まるようになっていき、ドンチッチはもういてもいなくてもどっちでもいいや。

◉モーラント中心に・・・

ということで、ここまで点差が離れると企画潰しです。ドンチッチの方はもう少し時間が経ってから考えましょう。今は「ドンチッチが・・・」というよりも「ポルジンギスが好調」ということで生み出されている環境です。

ただしポルジンギスはシューティングに頼った得点の取り方なので、読みにくい一面もあり、決まらなくなったらドンチッチが自分で得点しに行くのでしょうね。それくらいの余裕が生まれているドンチッチでした。

それよりも重たいグリズリーズの問題。ブルックスとジョシュ・ジャクソンが強気にプレーして決まれば良いけど、この2人に頼ったような形。

それは「個人技で決めきる」ことを前提にしたようなプレーの構築です。モーラントとJJJを中心に構築していたグリズリーズのプレーは、チーム全体がコートを広く保ち、連動する面と、広いスペースで個人技が決まりやすい環境をつくっていたのですが、今は単に個人技。

その理由はモーラントのドライブに対して、効果的にフィニッシュしてくれる選手が消えた事。特に3P不足が痛い。

何もシューターが欲しいわけじゃなくて、スポットでパスを待って打ってくれれば十分なのですが、モーラント、ブルックス、ジョシュのハンドラー組以外ではトリバーくらいしか3Pを打っていませんでした。苦しすぎ。ワタナビーは打ちまくれよ。

ポジション的にも謎だったクラウダーの放出ですが、3Pが消えた点でも謎です。さらにロングリバウンドへの反応力でも謎です。ゴール下しか取れていないようなグリズリーズだったよ。

モーラントを中心にするにあたって、ロングリバウンドをもっとモーラントにとらせて速攻を増やすのは効果的です。それはマブスがドンチッチでやっていることでもあります。

オフェンス面ではオフボールカットとスポット3Pを増やしたく、ブルックスは6thマンとしてスコアラーやらせたいタイプです。何よりHCはそういうことが好きそうな戦術構成です。

ただフロントはコンリー的なプレーを求めている印象。だからキックアウトから3P打つ選手じゃなくて、自分でハンドルするタイプの方が好ましいし、リバウンドは仕事に含まれていないような。

〇ジャ・モーラント
8アシスト 6ターンオーバー

6つもターンオーバーしたモーラントですが、その理由はパスが読まれまくったこと。インサイド側に合わせてくる選手が多く、マブスディフェンスはインサイドに固まっていました。読まれたパスコース。

「観察」していたはずが、むしろ読まれてしまったわけで、らしさが発揮できなかったモーラントでした。

〇ルカ・ドンチッチ
21点 FG7/20
6アシスト

いつのまにやら20アテンプト。プレータイムも短めだし、明らかに手抜いていたドンチッチですが、熱量上げなくてもシンプルに打ってくるよね。

「余裕」のドンチッチと「観察」のモーラント

余裕でプレーしながらもスコアに関与しているのは大切だよね。もう少しモーラントがシンプルな得点に絡まないとダメな気がした対戦でした。

◉本日のワタナビー

点差が離れたことで出番があったのが唯一の収穫。頑張ってディフェンスしていたし、インサイドにも積極的に絡んでいました。もう少しモーラントと絡ませてあげたいですが、棒立ちで「打ってこないだろ」みたいな守り方され、実際に3P打っていませんでした。

すっかりビッグマンらしくなってしまったこの2年間。でもフィジカル面ではグイっと成長した感じがあるし、インサイドでのプレーが堂々としていました。モンスターばかりのNBAなのでブロックされるのは日常茶飯事なわけで、そこにビビらないというか、しっかりと打ち切るだけのフィジカルプレーが出来ることは大切です。ブロックされなければ決まり、ブロックされたら諦めよう。

あとはここにガードの経験を詰め込めるかどうか。バレア相手には問題なく守れていたので、ドンチッチと対決したかったね。

「手抜き」のドンチッチとモーラント” への2件のフィードバック

  1. お疲れ様です。
    ドンチッチですが左手のけがの影響か、ペイントでフィニッシュできないシーンが目立ってきました。
    管理人さんの仰られるとおり、いい意味で「手抜き」してるのであればいいのですが、少し心配です。
    ドンチッチ含めけが人増えてきたので、まずはできるだけ健康な状態でプレーオフに出てほしいです。

    話変わりますがアトキンソン首になってしまいましたね…
    他チームはよくわかってないですが、それこそディアンジェロのいるミネソタとかありなんでしょうか?

    1. ドンチッチは手抜きだと思います。良い意味の。
      ペイサーズ戦の3Qを観て特にそう思いました。ケガの影響は別の意味ではありそうでしたね。

      アトキンソンとミネソタはぴったりだと思いますが、タウンズの性格次第かも。

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