ロケッツのスーパースモール①

vsニックス

トレードによりノーセンターのスーパースモールラインナップとなったロケッツ。その効果を観察する回です。①ってことは②もやりたいと思っています。③まで行くかはわかりません。なお、本日はセンターのウエストブルックがお休みなので、ポジション的にもノーセンターです。

◉若返るロケッツ

初めに抱いた印象は、なんというか難しいのですが、ダントーニ好きの管理人からすると「初期のダントーニ・ロケッツが帰ってきた」です。だからそれを若返りと表現しましょう。

ノーセンターでスーパースモール

という言葉を聞くと

全員が3Pを打てて大きなスペースを使ったオフェンス

が思い起こされます。それは間違いなく実行されているわけですが、もしもそれだけならば強豪揃いの上、様々なタイプのチームがいるウエストで勝ち進むのは難しいわけです。本日の相手はイーストのニックスですが。

ロケッツとウォリアーズが流行させたストレッチ戦術は今では常識と化しましたが、この両チームが元祖として大きな違いをもたらすのが「スペースを有効利用するのが圧倒的に上手い」ことです。

ウォリアーズで言えばスプラッシュブラザーズの3P能力は偉大ですが、そのシュート力を囮にしてインサイドでイージーシュートを打ちまくることを忘れてはいけません。ロケッツではドライブだけでなく、カペラの超高確率の押し込みは極めて重要な武器でした。

2年前のハーデン&クリス・ポールによるリーグ史上に残る最強レベルのチームではその要素が明確に発揮され、昨シーズンは3Pを打ちまくるけどインサイドの効率に欠けてチーム力を落としてしまいました。

アリーザの移籍

これが大きなキーポイントとされましたが、それはディフェンスだけでなくオフェンスでも響いていて、

オフボールムーブでスペースを使う

そんな意識が減ってしまい、ハンドラーのアイソレーションとドライブからの合わせばかりば目立ち、「オフボールで動けやヒゲ」とクリス・ポールが苦言を呈したとかいないとか。

前置きが長くなりましたが、試合が始まって目立つのはロケッツのオフボールムーブです。棒立ちが多かったオフェンスに明確な変化が起こりました。けっして動き回るようなぷれーではありませんが、管理人が好きだった

ダントーニらしい細かな仕掛けが施されたオフボール

が戻ってきているのです。「カペラがいなくなった」だけでは説明がつかないロケッツの変化は、その一方でこのメンバーだからこそという一面も感じさせてくれます。ジョーダン・ベルがいたらムリだったでしょう。

◉優秀なカペラ

カペラはとても優秀な選手でした。献身的にスクリナーになるし、エンドライン際の合わせもしっかりと行う。「スクリナー+エンドラインの合わせ」は言葉としては簡単ですが、トップへピックに行って、すぐにエンドラインに戻るので運動量も多かったりします。戦術の中ではありますが、しっかりと自分の役割をこなしました。

ディフェンス面だけでなく、スクリナーとして、そしてインサイドフィニッシャーとして替えの効かない選手をトレードしたのは衝撃でした。

しかし、この試合の前半で感じたのは「替えが効かない」ことが問題と捉えてトレードされたということ。カペラの役割はある意味でチームの中で特殊だったわけで、

「流動性を阻害していた」カペラ

と考えたのかもしれません。自分の役割をこなしていたカペラだけど、特殊になるほどに不便でもあったのか。まぁそんな表現よりはダントーニオフェンスが求めたものが

誰もが同じプレーが出来るから、ディフェンスのリアクションに合わせたプレーをチョイスする

ようなオフボールでの動きでした。ということで3つほどプレーを切り取ってみましょう。まずは本来はカペラが行っていたスクリナーの役割を複数の選手がやるようになりました。この動画ではハウスがやっています。

途中まではカペラそのままの動きですが、途中でハウスは3Pラインの外に戻りました。ディフェンスが3枚いたので方向転換です。このプレーはカペラでは出来ませんでした。

でもカペラがいても他の選手がやればOKじゃないか

となりそうですが、他の3人のシューターポジションにカペラがいても全く意味がありません。こういう「意味がない」ことを嫌うのが理論家タイプのHCですね。

ところで、1つ気になるのが「タッカーがスクリナーではない」という事実。殆どピックにいかなかったタッカーでした。そしてこのハウスの動きをタッカーが出来るかというとNOであり、ここからドライブ出来るかというとNOです。つまりタッカーでもダメなプレーなのです。

次にダントーニお得意のオフボールでの3人が絡んだプレーです。ハーデンの得意なサイドにはスペースを空けますが、そのコーナーにはタッカーが待ち構えています。そして手前サイドで3人が絡むわけですが、4つの役割すべてカペラではNGです。

その次にハーデンがスクリナーになっていますが、パサー役がカペラではパスが通らなかった以外にも、ハーデンですらスクリナーになっており、誰にスクリーンをかけてもOKです。つまりはカペラではダメだった理由が単に3P能力ではなく

誰がどの役割でも果たせるオフェンス

にしたかったことが考えられます。もちろんハンドラーだけは別です。あと「ウエストブルックがシューター」もNGって噂もありますが。

いずれにしても前半のロケッツは若返ったように初期ダントーニロケッツらしいオフボールの仕掛けが散りばめられており、そのどれもが

「カペラがいたら、どこのポジションに当てはめたのか?」

という疑問が沸いてくるプレーでした。特殊能力を持つカペラがいなくなって誰がスクリナーになるのかもわかりにくくなったこともメリットであり、

流動性のあるオフェンス

が可能になったロケッツでした。だから単にスモールで3P打てるチームになったこと以上の感動があった前半のロケッツでした。

しかし、これらのオフボール関連の動きで最も重要だったのは、

ハーデンのコネコネアイソ―レーションステップバックが1回のみ

だったことです。仕掛けるポイントが増えたことでアイソレーションの必要性が低くなったこと、カペラがハーデンにピックに行くプレーによって生じたスピードのミスマッチを使う機会が減ったことで、ハーデンから始まるオフェンスが多彩になってきたのでした。

◉残念な後半

しかし、後半になるとハーデンのコネコネアタックが増えました。同時にオフボールの動きが減りました。理由はわかりません。マジでわかりません。しかもハーデンがベンチに下がってもリバースがコネコネしていました。その時もオフボールは動きがありませんでした。

〇ロケッツの得点
前半 72
後半 51

そのため21点の差が出ました。そりゃそうだろって感じです。集中力が切れたのか、何だったのかわかりませんが、後半のロケッツには全く胸躍らないし、ここ1年間の退屈なロケッツに戻ってきました。戻ったのか?進んだのか?

1つ追記しておくと、流動性アタックの前半でしたが、このオフェンスを実行し続けるには選手層が必要になります。だって同じ選手が出ていたら固定化しちゃうじゃん。

それだけでなく、疲労によってシュートが不安定になった瞬間に崩壊するからです。2年前は崩壊したよねプレーオフ。ハイペースな上に流動性アタックなので頭の中も披露するわけで、ある程度は選手交代をしていく必要があります。

この点ではオフェンス以上にディフェンスの課題です。

ロケッツといえばスイッチディフェンスですが、驚くほどに洗練されてきていました。そこにもカペラがいないことで、逆にわかりやすくスイッチしまくることになった事情があり、ピックアップが遅くなることが殆どなく、ノーマークのシュートが劇的に減りました。

そして「自分のマークマンが決まっているのか?」とすら思えるほどに近い選手を捕まえてはスイッチを繰り返すので、マンツーなんだけどゾーンみたいに守っています。

ただし、センター不在は「高さ」ではなく「フィジカル」に問題が発生することが多く、誰もがインサイドで体を張りまくっていました。これが疲労に繋がります。

スイッチディフェンスによるフィジカルファイトが増えるポジションは層の厚さが欠かせません。それはコビントン、タッカーに続く選手を求めており、キャロルやジェフ・グリーンのお仕事です。

さて、このゾーン気味のスイッチマンツーにおいてもカペラがいない意味がトランジションに生じていました。ウエストブルック加入によりペースがあがったロケッツですが、一方で走らない選手だらけでもありましたが、気が付いたら全体のトランジションが向上していました。何でだろ?

加えてキャロルが行ったこのプレーはひとつの変化でもあります。

これまでのロケッツだと、ボールをハンドラーに渡す傾向がありましたが、キャロルはハーデンに渡さず、自らアタックしています。このプレーはカペラだけでなくタッカーにも難しいですね。

キャロルとグリーンはこの手のプレーを躊躇わずにやるタイプなので、トランジション増が期待されるし、速攻へ参加するビッグマンが増えることになります。総じて

オールラウンダーの増加

こそがロケッツがトレードに動いた理由だったのかもしれません。実際に単にノーセンターである以上のメリットが享受できていると感じました。

◉①にすぎない

ウエストブルック不在でも興味深いプレーを見せてくれたスーパースモールラインナップのロケッツ。しかし、実はスーパースモールと見せかけてノースモールラインナップでもあります。小さくても重いゴードンとリバース以外は全体的にサイズのある選手を揃えているし、ハーデンとウエストブルックはどこでも守れるタイプです。(どこも守らないヒゲもいるけど)

ノーセンター、ノースモールなラインナップ

へと変貌してきているロケッツ。ノースモールだったら以前も同じように思えてウイング増によって3ガードの時間が減りました。減ったというかゼロでした。ウエストブルックがいなかったからかもしれませんが。

でも相手がニックスだったことも見逃せません。ロケッツの弱点を使う気持ちがなく、普通にタッカーと1on1するランドルなんてのもいました。ロケッツのやりたいことをやらせてくれたニックスなので、ロケッツの目的はわかりやすかったけど、対応力は不明です。

ってことで強いチームがどうやって攻略し、ダントーニがどうやって迎え撃つのかが気になるところです。後半になってコネコネオフェンスが増えたように、ダメな一面が出てしまうのか、それとも更に上を行く要素があるのかどうか。

若返ったロケッツ。ダントーニらしさを感じさせるロケッツ。そしてダントーニらしさは自分の理想に死ぬことでもあります。弱点を使われた時にどんな戦略を使ってくるのかが②で知りたいことなのでした。

ロケッツのスーパースモール①” への6件のフィードバック

  1. ロケッツ考察記事ありがとうございます。
    管理人さんがずっと指摘されていた「ロケッツのウィング不足」がカペラを犠牲に成り立ったように見受けられたため、私も楽しみにしていました。
    私的にはコビントンの高さによるディフェンスがプレーオフの名だたるビックマンとのマッチアップで通じるかが気になります。結構彼、でかいですよね。(管理人さんの考察とおり、プレータイムシェアが必須でしょうが、、)
    またハイペースなロケッツが見られることを楽しみにするとともに、記事名に①があることに長期シリーズ化の意図を勝手に感じつつ、これからも記事の発信を楽しみにしています。(Basket Countも含め)

    1. ロケッツはどうやってまとめようか考えてます。わかりやすくまとまらないとブログ以外では書きにくいからなー

  2. 『替えが効かない』カペラを育てたけど、限界も自分達で分かってるから(相手にも対策されたし)なら、ダントーニやモーローのコンセプトの根幹である『選手の替えが利く戦術』にした。よーは色々やって『原点回帰』なのかな。

    そのうちハーデンもトレードされるのかな 知らんけど

    レギュラーシーズンなら分からんでもないですが、play-offでもそれで行くって覚悟の現れなのかな(行く以外の選択肢ないしね チャンドラーは一応いるだけだし)

    見てないのでなんともですが、後半は『前半のやつ、疲れたから楽しよう』じゃないですかね?(笑)勝手に予想ですが。

    ゆーつーばーを少し組み込んでの解説は分かりやすくてありがたいっす。

    1. カペラは珍しくロケッツが育てた選手なので、ビックリでもありました。バイアウト市場から2人を連れてこなければ何の意味もないロスターでしたが、こうやって成立させちゃって、面白いチームに戻すのだからすごい!

  3. 現地では”Pocket Rockets”という愛称で呼ばれているらしいです。

    ロケッツは伝統的に名センターが在籍していたチームで、モーゼス・マローン、オラジュワン、姚明、ハワードなどがそのリスト。
    カペラに新時代のセンターとしてその系譜を継いで欲しいなと思っていたら、ポジションごとパージされてしまいました。
    まあGMのモーレイは伝統なんて一顧だにしていないでしょうが。

  4. カペラトレード直後のレイカーズ戦はじっくり観ましたが、あのディフェンスが出来るならカペラ出しても納得って感じでした。
    ポストでタッカー、ハーデンはフィジカルでコビントンはリーチで、セフォローシャはディナイで。それぞれが意図をもって多様なディフェンスで守れてましたね。
    オフェンスは案外ラスがトランジションにあえて持っていかずにコントロールしてるのが目立ちました。
    正直自分も今のロケッツの方が好きですね。

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