敏腕中古トレーダー・ライリー

敏腕っぷりが光ったデッドライン

みんなが狙ったアンドレ・イグダラ

それを射止めたのは、まさかのマイアミ・ヒートでした。イグダラが人気だった理由は「優勝経験」「オールラウンドプレーヤー」「優れたディフェンス」でしたが、そこに「契約が今シーズンまで」も付け加えられます。サラリーは高いものの失敗しても今シーズンでさようならってのはリスク回避にもなります。

ところが「契約が今シーズンまで」の条件は、グリズリーズが求めた「ドラフト指名権」との相性がすこぶる悪く、ここのミスマッチがイグダラがデッドラインまで動かなかった理由でもあります。オフの補強のためにキャップスペースを空けられる選手を獲得するのに、補強に使える指名権手放してどうするんだよ。

ヒートはトレードと同時にイグダラの契約延長を決めました。これがパット・ライリーの決断力にして、ヒートのチーム状況が許した事情だった気もします。しかも、その契約延長は21-22シーズンがチームオプションなので、来シーズンの成績次第でコントロール可能です。敏腕。

これを書いている時点ではトレードの詳細が確定していないので、本日の主題についてサブストーリーに触れましょう。

◉中古車を磨く

敏腕プロデューサーのパット・ライリーですが「優秀なトレーダー」と表現するには他のGMに比べた【わらしべ長者】的な実績には劣ります。またネッツ砲を食らってタイラー・ジョンソンと高額契約してしまったし、チームの柱に指名したはずのホワイトサイドはサラリーキャップのお荷物と化しました。そういう部分は上手ではない。

ヒートといえば、やはりウェイドがブルズに去ったシーズンが思い出されます。主役不在でダメダメなチームに落ちたと思ったシーズン前半が10勝24敗と予想通りの展開になるも、後半は31勝17敗で勝率5割に戻してきました。こうしてスターじゃなくてもロールプレイヤーで勝てるチームを作ってきました。

その秘密は「肉体改造」と「長所を伸ばす」ことにあり、厳しいコンディショニング管理はウェイターズみたいな案件を生みつつも、キャブスで散々だったウェイドがヒートに戻ってくるとキラメくレジェンドとして神通力を発揮していくようになりました。

特徴ある中古車を仕入れて、新品同様に磨き上げる

ヒートの手法はこれな気がします。「企業価値と株価のバランスを観て投資するような手法」ってのも考えたけど、発見よりも「磨き上げる」ことが特徴だよね。

その意味では年齢が気になるイグダラに対しても「コンディション管理」への自信から契約延長に踏み切ったとも考えられます。体を休めたイグダラ本人もまた企業イメージにひかれたのかもしれません。

今シーズンはダンカン・ロビンソンとケンドリック・ナンを自分たちが使いやすい選手として磨き上げており、レナードは鈍さを抑えつつハッスルしているし、何よりもアデバヨを見事なプレーメイカー系ビッグまで育て上げました。バトラーはそもそもヒートカラーに合っていただけのスターだ。

アデバヨはともかく他の3人は他のチームで同じ活躍が出来たかといえばNO!と言いたくなるし、でも今の活躍は称賛に値します。レナードのサラリーは活躍に合っていないけどさ。こうやって磨き上げるのがヒートの良い所。磨ける選手を探してくるのがパット・ライリー。

◉ポジションバランス

そんなヒートですが、ビッグマンながらプレーメイカーになっているアデバヨが、実質的にPF、PG、Cと複数のポジションをこなしていますが、あとはデリック・ジョーンズくらいがマルチな役割(マルチだけど複数の役割ってわけでもない)になっていて、バトラーやナンがポジション違っても守れるフィジカルを持っているくらいのチームバランスです。

なかなかバランスよく揃ったポジションになっていますが、専門ポジションっぽい選手が多いことがネックになっていました。特にウイング職が薄く、プレーオフでは相手に応じてスモールラインナップ化する必要もあれば、ビッグラインナップ化する必要もあるなど、

どうやってポジションバランスを崩すか

これがヒートの課題でした。「ここまで上手くやってきたじゃないか」と言われるかもしれませんが、上手くできた理由は

チームが健康だったから

これに尽きます。特にスターター陣が健康だったので、大きくバランス変更する必要がなくやってきました。その意味ではマルチな選手を入れることで、ユニットの組み換えを楽にするし、ケガ人対策にもなります。

ということでイグダラの獲得は理にかなっている気がするのでした。そして、トレードの続報はもう少し驚き。

【IN】イグダラ、クラウダー、ソロモン・ヒル
【OUT】ジャスティス・ウィンスロー、ジェームス・ジョンソン、ウェイターズ

クラウダーまで手に入れてしまいました。正直、これってグリズリーズにとって何のうまみがあるのだろうか?ウィンスローは理解できるけど、クラウダーを重宝していた気がするので、そこを放出してまでジェームス・ジョンソンを欲しかったのか?

※クラウダーとソロモン・ヒルの契約は今シーズンまで

ヒートからするとウィンスローはともかく、戦力外に近いジェームス・ジョンソンと戦力外のウェイターズでマルチウイングを手に入れたのだから、極めて有能な取引になった気がします。

今シーズン限りの契約約21Mの2人を獲得し、イグダラは契約延長。ってことはオフのFAすら視野にいれています。

本当はガリナリを手に入れたらしかったですが、そこはご破算。代わりにウイング増でマルチタスクを任せられることを狙いました。イグダラとクラウダーが並ぶとどうなるのか気になりますが、プレーオフ対策のディフェンダー兼マルチプレイヤーで勝負に出たライリーです。

一応、現在の役割に当てはめていますが、クラウダーは「3P打ちまくるけど、そんなに決まらない」なんてことが多いのでシューターではありません。でも打つし、コーナー担当になれるから一応ダンカン・ロビンソンの代役にしています。他の部分も同じですね。マルチタスクは専門職に劣るのは確実だし、負けない専門職を作るのが「武器を磨く」ってことです。

うん、ガリナリ欲しかったよね。理想バージョンだと話が簡単だったのに、現実バージョンは起用法次第って感じです。そこはスポルストラなら大丈夫ということか。

◉イグダラの契約延長

さて、今回のトレードにおけるキーポイントはイグダラが契約延長したことです。管理人の捉え方だと、イグダラがプレーしていなかった理由は「グリズリーズが商品価値を落としたくなかったから」だったこととイグダラの現状がマッチしたからだったのですが、まるで「勝てないチームは嫌だ」みたいな空気になっていますね。

その真偽は置いといてイグダラが契約延長したって事は「ヒートは勝てるチームであり、優勝のために自分が必要だ」と感じたからと捉えるのは自然な事でしょう。

ここまで好調なヒートだけに、すんなりと言葉が入ってきますが、シーズン前だったらイグダラのトレード先としてあり得ない選択肢だった気がします。つまりは「優勝を狙えるチーム」どころか「勝てるチーム」とすら認識されていなかったヒートって事さ。

もちろんバトラーの加入によりプレーオフは射程圏内でしたが、デッドラインの主役に躍り出るほどではなかったよね。

パット・ライリーがチームに根付かせた選手を磨き上げるカルチャーは、先陣を切れるバトラーの加入もあって大いに加速しました。そしてシーズンの半分が過ぎれば

「優勝を狙いたいベテラン」にとって魅力的なチーム

へとチーム全体が磨き上げられました。イグダラが活躍するかどうかは別にして、活躍したいと思わせるチームに磨き上げ、契約延長させたのは素晴らしい動きだったと思います。

今シーズンの優勝を目指してデッドラインで動いたヒート。プレーオフへの期待が膨らむ見事なディールでした。そして実は

〇ヒートの来シーズンの契約
バトラー 34M
ドラギッチ なし
Jジョンソン 16M→トレード
ウィンスロー 13M→トレード
オリニク   14M
ウェイターズ 13M→トレード
レナード   なし

こうしてオフにキャップスペースとロスタースポットを活用した動きが出来るようになりました。アデバヨとヒーローがいて若手は残しながらも、勝利を求める中堅・ベテランの加入をプッシュできる体制が整ったわけです。今シーズンが19Mのドラギッチの適正価格は不明だしFAで出ていく可能性もありますが、今シーズンの優勝を目指しつつ、来シーズンの戦力アップも視野に入れている気がするのでした。

敏腕中古トレーダー・ライリー” への2件のフィードバック

  1. この時は思いもしなかった、彼らがファイナルに行くことになるとは、、

    1. 本当に恐ろしいことで。
      それもナンのケガもあり、相手によってラインナップ変更ありで、マルチタスクが成功しました。

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