トレ・ヤングすげー!!
先日、なんだったか忘れましたがシクサーズを観ていた時に実況が「サイブルは史上最高のルーキーだ」みたいなことを言ってまして。それはもちろんホームのルーキーを讃えるために大袈裟に表現したわけですが、だからといって火のない所に煙を立てたわけじゃなくて
こんなに素晴らしいディフェンスをするルーキーはいなかった
という意味であり、史上最高という表現を除けば理解できるよね。ここまで素晴らしいディフェンスを披露しているサイブルは、単に高い能力でルーキーらしく守っているのではなく、身体能力・読み・駆け引きなどなど、ルーキーとは思えないディフェンスの完成度です。
1.6スティールにDIFF△4.4と結果を残しているサイブルはシクサーズのチームカラーに合った選手であり、試合に登場するとチームを活性化してくれます。
なお、1年前のルーキーはシューターのシャメットだったわけですが、ディフェンダーのサイブルを指名したわけですからチームの方針が大きく変化していますね。
史上最高とは言わないけど、今シーズン最高のルーキーとはいえそうなサイブル。もちろんディフェンス限定ね。だけど、そんなサイブル以上にディフェンダーとして働いているのがホークスのデアンドレ・ハンター。
0.6スティール DIFF+1.9と数字の上ではサイブルとは比較にならないハンターですが、PGからセンターまで相手のキーマンを潰す役割を毎試合のように担っています。
共に22歳とルーキーとしてはそんなに若くない2人のプレーが明暗を分けた試合となるのでした。
◉全ては1Qで
39-31とホークス8点リードとなった1Qでしたが、7割がここで決まったような戦略的なやりとりでした。
〇1Qのトレ・ヤング
14点 10アシスト
なんと1Qでダブルダブルのトレ・ヤング。シモンズが1試合で稼ぐようなスタッツをあっという間に達成したオールスターのスターター。アシスト10って何なんだよ。
Jリッチがいないシクサーズなので、ヤングのマークはもちろんサイブル。気合を入れて止めに来るサイブルでしたが、ヤングは簡単にアシストを通していきます。素晴らしいコートビジョンでフリーの選手をみつけるヤングの活躍はサイブルを責めることは出来ません。
しかし、あまりにもイージーに間を通されるのでヤングへのプレッシャーを強める必要が出てきました。そしてそれを逆手に取りに行くヤングは連続ファールドロー。サイブルをベンチに追いやります。
14点の半分がフリースローだったヤング。ファールドロー、ファールドロー、ファールドローでシクサーズのディフェンスプランを崩壊させていきます。
次にシクサーズが選択したのはミルトンやザイアー・スミス、そしてネトとマッチアップを変えながら、彼らはボールを見ないでヤングに張り付く作戦でした。1人でずっとは苦しいけれど、順番に追いかけまくるぜ。
それでもヤングがボールを持ってしまったら、すかさずダブルチームへ。今シーズンは本当にダブルチーム作戦が多いよね。1人が追いかけてもローテできるという自信が出てきた各チーム。
しかし、ヤングはパスが上手すぎた。このディフェンスの変化が10アシストを生み出してしまいました。アシスト、ファールドロー、アシストと組み立てたヤングはトドメに3Pで快調なスタートを切ったのでした。
◉ハンターが担うエースキラー
一方でいつもよりも目立っているシモンズですが、その理由は運動量の少ないエンビードがプレーに絡んでこないことと、それ以上にトバイアスが消されている事。シモンズを担当するのはコリンズで、離して守りヘルプに出まくったので、裏パスを決めていたシモンズって感じでした。
そしてトバイアスを単独で守るハンター。これがまた見事なまでに止めきります。フィジカルではハンターが上回り、PGまで守るフットワークでドライブもさせない。それでいて時にヘルプにも登場します。
ホークスのディフェンスプランはシンプルでした。エンビード対策としてダミアン・ジョーンズがスターターに。そもそもエンビードが殆ど動かないこともあり、ジョーンズは頑張れました。ただし、動かないエンビードはアウトサイドにいることが多いのでインサイドは空いてしまいます。
そこを埋めるのがシモンズを離しまくっているコリンズ。スキも多かったホークスなので、スペースを埋めてはシモンズに逆を取られてもいました。とはいえ、これはこれで成立しています。
ところがジョーンズを長々と起用するわけにもいかないので、エンビード担当がコリンズになる(ジョーンズ→レディッシュ)とインサイドが弱くなります。ここをトバイアスを担当しながら埋めるのがハンター。
ディフェンスが良いチームではないので総合的には苦しむけれど、戦略的にはホークスのプランは成功していた1Qでした。
◉しばらく休みまして
ヤングが12分フルでプレーした1Qなので、しばらくベンチでお休みです。サイブルも出番がありません。ビンスおじさんが活躍したこともあってリードを守れたホークス。
2Q半分が過ぎたところでヤングが戻ってくると、リベンジのためにもサイブルが再び戻ります。が、見事に30秒でファールをコールされて3つ目。あっさりとベンチに下がることに。
1Qの10アシストもあってダブルチームは辞めたシクサーズでしたが、あまりにも簡単にファールをとられたサイブル。ここからシモンズが担当して少し止めるのですが、ヤングはロング3Pで対抗していきます。
シクサーズはトバイアスとエンビードが消えている中で困ったけど、伏兵ミルトンが連続3Pで残り3秒で2点差まで縮めて前半が終わりま・・・
・・・っと思ったら、フロントコートに運んだヤングが必殺ファールドロー。レフリーに猛クレームでテクニカルのトバイアス。さらに不満が止まらずキレてテクニカルのブレッド・ブラウン。2Qは8本のフリースローを打ったヤング。そのうち5本が残り3秒からでした。
74-67で終わった前半。そこにあったのはヤングのファールドローに対してフランストレーションとファールが溜まってしまったシクサーズの事情でした。
◉修行の3Q
後半になり、この試合初めてトバイアスがハンターとの1on1を制してレイアップを決めるも、ヤングはトバイアスからファール。再び切り返すトバイアス。
サイブルは守り方を少し変えてきて「自分が抜かれてもエンビードがいる」ことを前提にシュートを打てないように近づき、でもファールしないようにあっさりと抜かれました。ダブルチームよりもスマートな判断です。
これはそこそこ成功しているのですが、エンビードがヤングの動きを捕まえきれず、ていうかヤングがレイアップに行くようで行かないし、ヘジテーションしては惑わせるし、そう思ったらジョーンズにアリウープパス。後手を踏んでいく、いや、踏まざるを得ない形に。
そしてヘジテーションされるから後ろから追いかけたサイブルが結局はファールドローされてしまい4つ目でベンチへ。
いろいろとディフェンス戦略を変更してきたものの、どれも上手くいかなかったサイブル。うざすぎるファールドローに消された試合だったのでした。
ただし、3Qのヤングの得点はフリースローの1点のみ。ヤングに取らせない事は成功しました。代わりに4アシスト。1Qを考えると少ないか。
一方で前半に沈黙していたトバイアスが9点を奪って3Qは差がつきませんでした。最後までしっかりとトバイアスについていった上で決められた最初の4点はハンターが相手をしていましたが、中盤になり一旦ベンチに下がったハンター。
その時間はわずか50秒でしたが、ここでトバイアスは+4点でした。鬼の居ぬ間ならぬハンターの居ぬ間にトバイアス。
戻ってくると早速トバイアスのシュートを落とさせたハンターでしたが、何故かそこからはミルトンのマークが増えます。ちょっとよくわかんなかった。そしてミルトンが2本の3Pでチームを救いました。
ハンターはスティールやブロックが多いのではなく、しっかりとべーシックにチェイスするタイプですが、インサイドヘルプの意識も高いのでシューター系をマークするのが得意ではない感じ。ペリメーター系はなんでもOKのサイブルとはちょっと違います。ハンドラー担当がハンター。
ということで、どちらもNo.1ディフェンダーになるには修業が必要という3Qになったのでした。
◉戦略を壊す
4度目のヤング退治に向かったサイブルはプレッシャーをかけすぎず腰高で抜かれても追いかける守り方で、この試合では最も良い感じに守っていきます。そんなレベルになっているヤング。
ところが追いかけたいのに、オフェンスがどうにも上手くいかなかったシクサーズ。マイク・スコットが4Q4本の3Pを全てミスするしで、ヤングにそこまでやられなくても、この試合最大の16点差になります。
どうにもならないのでサイブルはベンチに下げてオフェンス優先とし、ヤングにはシモンズがマークについて、同じように守っていくのですが、追い上げるにはプレッシャーかけたいよね。かけたらやられるよね。
ってことで、追い上げるために頑張ろうとしたシクサーズではありましたが、1Qで失敗したディフェンス戦略が尾を引き、オフェンスで何とかするしかなく、でも今シーズンはシャメットじゃなくてサイブルを欲しがったようにディフェンスのチームでした。困ったよん。
逃げ切れば良い展開となった残り2分。ハンターはベンチに下がってビンスおじさんがフルコートディフェンス対策として登場しました。絶大なる信頼を得ているように思えたハンターですが、こちらもオフェンスを考えると調整したくなるくらいの感じだったのでした。
〇トレ・ヤング
39点 18アシスト
本日の主役はあまりにも見事であり、18点をフリースローで稼ぎました。それだけファールさせたのがシクサーズのディフェンスを狂わせまくった。ヤングの怖さだね。
〇ジョン・コリンズ
17点 20リバウンド
押し込む担当だったコリンズですが、20リバウンドが光りました。4Qにはミスショットを押し込んで大量リードをもたらしたよね。
ただ、このリバウンド数はコリンズをヘルプ担当でインサイド待ちにしたからでもありました。その分、他の選手はマークを強めろよとね。
〇ベン・シモンズ
31点 FG10/15
その結果、シモンズは得点が増えました。自分への警戒が薄すぎるのをちゃんと感じてフィニッシュしていたよ。かわりに5アシストだったのがチームオフェンスを狂わされた感じを表しています。
〇トバイアス・ハリス
21点 FG6/15
こう見ると、それなりに結果を残したトバイアスですが、メインでマッチアップしたハンターからは6点に留まりました。おそらくホークスが狙ったのはチームを分断するディフェンスなので戦略としてはそこそこ成功したと言えるのでしょうね。
ということで、オールスターを追いかけても良かったけど、だからこそオールスターを止めるために動いたルーキーの2人が試合の流れを動かしたと言えます。サイブルのディフェンスは素晴らしいけど、ヤングのファールドローで全てを狂わされ、チームディフェンスに切り替えるとアシストを通されまくったのでした。
モンスターナイトだったヤング。戦略を壊すPGなのでした。