ブランク明けのポルジンギス

2年の月日は選手を変えたのか

管理人はポルジンギスへは懐疑の目を向けていまして「そこまでじゃねーだろ」というのがケガをする前でした。確かにこのサイズでスピードあるドライブが出来、それでいてシュートが上手い選手ってのはレアな才能です。

しかし、プレーをクリエイトする能力は低く、フィニッシャーとしてはパターン不足でした。要するに他の選手と有効に絡むのが難しい選手であり、かといって個人技で決めきるのはジャンプシュートしかないのでした。もちろん、そのジャンプシュートが決まりまくれば話は違いますが、2年前は「そろそろ弱点もわかってきたわ」みたいな守られ方をしていたね。

ただしディフェンスは天下一品だと思っていました。ユニコーンブロックの破壊力は他にないレベルだし、多少のフットワークの悪さなんて関係なく止める能力を持っています。素晴らしいね。

そんなポルジンギスを獲得したところで、2枚看板にはならないと思っていたマブス。でも2枚看板にする必要もないドンチッチの活躍で全てを解決しているね。それってカイリーじゃないけど「2番手として輝く」タイプなのかもしれません。2年前はザ・エースで失敗していた。

◉ホーナセック・ニックス

2年前のニックスは超特殊なチームで、3Pを打たないし、HCよりも社長の方が練習の指示を出すし、トライアングルだって言い張る古いバスケをしていました。なお、古いから即NGってわけじゃないよ。ていうか、このブログ2年以上続いているんだな。古いわ。

この古いタイプのチームでポルジンギスはポスト役としてチームのど真ん中にいました。コートでもど真ん中にいました。ハイポストにいることで効果的なミドルを決めようぜ。みたいな。

実際にはローポストの鬼みたいなカンターがいて良いコンビだったし、ポルジンギスとポジションチェンジしていくマグダーモットがいて、セカンドエースにハーダウェイがいて・・・と何もが悪かったわけじゃないのですが、古い形の中に新しい選手を工夫してハメているようなチームでした。

いやー、懐かしいねホーナセック。たったの2年前だもんな。ニックスの成績はそこまで悪くなかったんだけど1月はMSGがグラミー賞だったかなんかで使うからロードゲームばかりで成績が予想通りの急下降だったような。

一方、その頃ジェイソン・キッドが成績不振でクビになっております。ブーデンフォルツァーになったバックスはヤニスを中心にした3P打ちまくりのNBA最強になって、フィズデイルになったニックスはポルジンギスがいなくなって迷走を続けております。2年だよ。たったの。

当時のマブスは底辺でしたね。いや、いうほど底辺じゃないのだけど「デニス・スミスは最高だ!」「タンクするのは今シーズンで終わりだ!」みたいな発言をしていたっけ。マジで2年でここまで上がってくるとは思いもしなかったね。

さて、そこから2年後のマブスはドンチッチに全権を与えたPG中心にして3Pを積極的に打っていくチームです。要するに2年前のニックスとは考え方が全く違うチームなわけです。これがポルジンギスに大きな変化を与えています。

〇2Pアテンプト
ニックス 13.7本
マブス   8.8本

〇3Pアテンプト
ニックス 4.8本 
マブス  6.4本

今回の話はこれが全てみたいな数字なのですが、2Pが5本近く減りました。しかも今シーズンのポルジンギスのFGは酷いもので40%しか決まっていないし、3Pもかつてのような高確率では決まっていないのです。

〇FG%(3P%)
ニックス 43.9%(39.5%)
マブス  40.0%(34.3%)

この数字だけ見たら、マブスに来て(というか2年のブランクがあって)ポルジンギスはパワーダウンしているわけです。「ポルジンギスは得意のシュートが決まらなくなり、効率の悪い選手になった」と言われてもおかしくありません。ところが、こんなに確率が悪化したのにEFGはあまり変わりません。

〇EFG
ニックス 48.9% 
マブス  47.2%

はい。現代的ですね。3Pいっぱい打とうぜ!な論理的理由です。「2P52%決めるのは簡単ではないけど、3P35%は誰でも出来るだろ」理論だね。2P60%超えてるデローザンになれる選手は殆どいないけど3P35%なら実質は2P50%じゃん。

ポルジンギスのEFG50%割れは悪い数字なのですが、問題なのは今シーズンではなくて2年前が

3P40%近く決めているのにEFG49%しかないビッグマン

これって将来性ありますかね?

要するにそういうことです。ホーナセック・ニックスはポルジンギス中心のチームを作っていましたが、そこから先はポルジンギス本人がさらに高確率で決めまくって伸びまくるしかなかったのですが、今は大して活躍していなくても同じくらいの確率で決めているのだから、伸びしろもあるよね。

セカンドエースが向いているポルジンギス
3Pが確率良く決まれば怖い選手

・・・になれるといいね。くらいの感じではありますが。少なくとも今のポルジンギスは1試合で見た時に3Pズバズバ決めたらチームを勝利に導けるよ。

ていうか、それがドンチッチを効果的にしてくれるから、チームオフェンスはグッと楽になるよね。「3P決めて自分が楽になる」としても、そこからの1on1パターンが少ないポルジンギスの場合は加速的に活躍できる気がしないのですが、ディフェンスを広げればドンチッチのお仕事となる「3P決めてエースが楽になる」のがポルジンギスの役割として大事な気がします。

増えた3Pとセカンドエースの立場はポルジンギスのプレーへの感想を大きく変えようとしています。

◉カーライル・マブス

ポルジンギスに3Pを多く打たせるようになったカーライルのマブス。それは現代では常識なわけですが、「3Pは現代的」は40点で、そこから「3Pでストレッチさせてゴール下を効果的に決める」が現代オフェンスの正解ですね。なお、2年経ったから少し変わってきたけど、変わったところを触れていくと長くなるから新しいキャッチコピーも考えたいね。

3Pが増えながらFGアテンプトが減ったポルジンギスなので、当然2P、特にミドルが激減しました。その一方でゴール下がどうなったかというと

〇ゴール下シュート
アテンプト 3.25本→3.18本
成功率   55.8%→68.6%

成功率は抜群に良くなりましたが、アテンプト数を増やすことが出来ていません。これがカーライルとポルジンギスの大きな課題になっています。マブス的にはまだまだ伸びしろがあるぜ。

そして管理人がシュート力はあるのにリングにアタックしきれていないポルジンギスを懐疑的にみていた理由でもありますね。ニックス時代に問題だったのは14本近くの2Pを打ちながら3本少ししかゴール下まで行っていなかったこと。今は8本中3本なので割合としては大きく増えています。

〇距離別シュートアテンプト
9フィート以内  5.79本→4.91本
19フィード以内 7.19本→3.63本

問題だった10~19フィートのアテンプトが大きく減りました。「ミドル」って表現しなかったのはポルジンギスの場合はペイント外だけどエンドライン側ってことが多いからです。ちなみにフリースローラインが13.8フィートだってさ(国際ルール)

2年前のポルジンギスは単にミドルのアテンプト数が多いのと成功率が悪いのではなくて「リングに近づいたシュートを打っていない」ことが問題でした。そしてストレッチする3Pは打ちまくっているけど、今でも「リングに近づく能力」は高くありません。

個人技でリングにアタックする能力は低い

カーライル・マブスでもこの点については解決できていないわけですが、一方で成功率は一気に上げることに成功しているので

フィニッシュ能力は向上している

ことになります。カーライルはパウエルやクリバーでもしっかりと決めさせているので、インサイドの合わせを仕込む能力やフィニッシュに向かうプレーの整理が非常に上手いといえます。ドイツ代表でのクリバーって八村より下だったよね。

このマブスの合わせの上手さを動画にまとめようかとも思いましたが、ちょっとめんどくさいので「ドンチッチのパス集」みたいな動画を探してみてください。「ドンチッチ天才」みたいなことが書かれているかもしれませんが、4割はマブスがチームとして仕込んでおり、パサーがドンチッチじゃなくてもブロンソンだって見事なパスを通しているよ。

カーライルの合わせの特徴は、ビッグマン側がスピードを止めないでフィニッシュしきること。要は「走るコース」と「タイミング」がトレーニングされているし、パサー側もディフェンスとビッグマンの両方を視野に入れているかというと、そうではなくて「ディフェンスの位置だけでパスの判断をしている」ようなプレーが多く出てきます。

ポルジンギスもこの流れに乗ったことで、フィニッシュがイージーになりました。ゴール下でフィジカルにせめぎあわずにシュートを打っているわけです。

〇ダンク数(アリウープ)
ニックス 60(9)
マブス  51(12)

ニックスが48試合、マブスが33試合なので、そこそこ増えています。今シーズンは51本のダンクのうち2本をミスしましたが、2年前は9本をミスしています。それくらいディフェンスの居ない状況が増えて、イージーになっているマブスオフェンスでのポルジンギスなわけです。

ゴール下のシュート数が少ないというアタック力不足は継続課題ですが、合わせる形からイージーなダンクにもっていけるマブスなので、成功率が大きく向上したって事です。要するに

ゴール下の確率アップは個人能力としての成長ではなくチーム戦術の違い

なので、ポルジンギスの伸びしろは特に変更されていません。伸びしろっていうか課題ね。それでも3Pと合わせを仕込まれたことで「あとは個人能力が上がれば」という状況になっています。

20カ月のブランクがあった選手だと思えば、大きく落ちていないだけでも上出来かもしれません。

◉パウエルとリバウンド

もともと高く評価していたディフェンスについてはリバウンドで大きな数字の変化がありました。

〇リバウンド
ニックス 6.6
マブス  9.2

ケガ明けだしね・・・と書いてきましたが、大幅なアップは選手としての価値を上げてくれます。でも、これも単純に役割変化がもたらしたものにすぎず、リバウンドに強いカンターからパウエルへと相棒交代がもたらしてくれたスタッツアップです。

エネルギッシュに動き回るパウエルはオフェンス時はセンター役を引き受けて、ポルジンギスが3Pを打てる状況を作り、ディフェンス時はPFになって相手のウイング担当になってくれています。

それはフットワークには課題のあるポルジンギスを楽にし、相手センターとのマッチアップにしてゴール下にポルジンギスがいる状況を増やすことに繋がっています。結果的にリバウンドが数字として増えたね。

カンターとポルジンギスのコンビはオフェンス面では面白かったですが、ディフェンス面では現代的には困ってしまいました。特に2年前はスモールラインナップの最盛期だったといえるシーズンなので、試合終盤になるとベンチに下げられてしまうカンターでしたね。

いずれにしても攻守にポルジンギスの良さを引き出してくれるパウエルは、地味ながらポルジンギスにあった選手でした。でした。でした。

ケガでパウエルが離脱したブレイザーズ戦をみた管理人は、オフェンスに関しては逆にインサイド担当がいなくなったことでポルジンギスのアタックが効果的になっていたとも感じています。なお、相手がホワイトサイドならばスピードで振り切れるのは当然でもあります。活躍しやすい試合だったね。

いずれにしても相棒変更でポルジンギスにはチャンスもピンチもあるってことです。ウォリアーズからコーリーステインを獲得しましたが、パウエル役からは遠い選手なので、ポルジンギスにはクリバーを当てて、ベンチにコーリーステインかもしれません。

ドンチッチ中心のチームにおけるセカンドエース
パウエルと攻守でポジションが逆になるコンビ

こうして管理人が疑問をもっていたポルジンギスは、効果的にプレーできる選手としての第一歩を踏み出すシーズンになっています。

ポルジンギスの個人技には大きな成長はみられていませんが、使い方の違いが大きな可能性を生み出してくれています。今のポルジンギスには足りない要素がいっぱいあるけど、それでも十分にスターターとして活躍出来ているのだから未来があるぜ。

そしてとりあえずの課題もはっきりしています。

ショットマップは真っ赤っか(リーグ平均を10%以上下回るゾーン)です。どこもかしこも決まらないじゃないか。ただし、ゴール下だけは決まっているぜ。それが今回の良くなったポイントであり、本数も多めなわけです。

これが2シーズン前になると

緑のゾーン(リーグ平均を10%以上上回るゾーン)が多く、良いシューティングを持っていましたが、ゴール下の壊滅的な状況が足を引っ張りまくっていました。

ポルジンギスの課題。それは2年前くらいに確率良くシュートを決めること

ただそれだけです。ケガをする前の自分を取り戻せばよいわけです。マブスのチームオフェンスが問題だったゴール下の悪さと3Pの少なさを解決したのだから、あとは自分を取り戻し、伸ばしていきましょう。

苦しく思えていたポルジンギスの未来でしたが、ドンチッチのいるマブスに来て拓けそうな匂いがしてきたのでした。

ブランク明けのポルジンギス” への4件のフィードバック

  1. 今回の記事も面白かったです。今のままだと、ポルはミドルを撃つことを期待されてるビエリツァみたいな感じで、221のアイデンティティみたいなものは感じませんよね。
    バックダウンがなぜかものすごく下手じゃないですか?

    1. プレーに迷いがありますよね。チームの約束事を反射的に出せていない感じです。あまりそういう事をしなくても個人技で勝ててしまった育成年代だったのでしょう。こればかりは大きいだけにありがち。

  2. ビツクマンシューターなんですよねー ポルちゃんは。フィニッシャーじゃないってイメージです(データがそれっぽくてホッとしてます そんなにポルちゃん見れてないので)

    ビツクマンシューターって『その先』が難しいですよねー 真逆のPGスラッシャーなら、外を練習するとか入らない物としてオフェンス組むかですが(ラス君・ローズ等)

    ビツクマンシューターって性格的?デカイくて外がそこそこ入るだけに??『タフなリングアタックフィニッシュするなら、外から打てちゃうから、打っちゃえー』となり、チームのリズムやその他への波及効果がねぇー。

    それをアホほど決め、リングアタック&オフェンスが詰まった時の1on1(クロスオーバー)もこなしてしますKDさんの優秀さですよね。KDさんもアキレス腱からの復帰はどーなるやら。

    ポルちゃんがKDになりそーにもないので、クレイのビックバージョンって考えた方がスムーズなのかもしれませんねー。ただ、ディフェンスでの負担増は足腰にくるだろーから、遅かれ早かれまた怪我しない?いやするよね… なんかフットワーク怪しいもん と思ってしまう僕ちゃんです。

    でもまぁーノビツキー先輩も最初の頃はよく『リングアタック出来ない弱いやつ』と酷評されましたが、それでもチーム作りしてきたマブスだけに(2度ファイナルに行き1度優勝しただけに)、ポルちゃん的にはニックスよりは可能性あるのかなぁー ノビツキー先輩が指導してあげればいいんじゃん。マブスさんと相思相愛なんだし。

    若いジェイソン・キッド的に振る舞うドンチッチがいるので、あながちニューノビツキーとしてポルちゃんがそーなれるかどーかがマブスの行く先を決めちゃうのかな。ちがうか(笑)

  3. ポルジンギスに求められてることって、ノビツキーがやってた役割そのままじゃんというのが素直な印象です。でもポルジンギスの方がディフェンシブで、少しタイプが違うようにも感じるんですよね。逆にドンチッチの場合はディフェンスから試合を作るキッドより、オフェンスから試合を作るナッシュに近いプレイスタイルだったり。カーライルはキッドとノビツキーのユニットと名脇役達で優勝したコーチなので、将来的にドンチッチとポルジンギス、それに他のロールプレイヤーをどう組み合わせていくのか長い目で見て注目してます。

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