セルティックスの氷と炎とトレード

氷と炎ってなんだよ

ケンバ先輩の加入がもたらしたものは、全員がバランスよく得点していく形でした。最近はトレードの話もありますが、セルティックスの事情ってちょっと特殊だと思うんだよね。

オフにカイリー、ホーフォード、モリスと出ていったように1年前のセルティックスは「結果が残らなければチームは解体される」可能性がありました。ホーフォードが出ていったのは驚きましたが、少なくともカイリーについては結果が出なければいなくなるだろうし、カイリーというスターがいて結果を残す必要がありました。

で、空中分解したから出ていきました。

ホーフォードが出ていったことでケンバを獲得できた一面もあるので、今となっては良きストーリーでしたが、少なくとも1年前から考えると今シーズンは「崩壊して立て直しのシーズン」となるはずでした。その「立て直し」とはテイタム中心になるというのが一般的な見方でした。

いずれにしてもポイントになるのは「契約年数」です。短期的に結果が必要か、もう少し長く構築するべきか。1年前は結果が出ないと崩壊だったけど、実は今シーズンは立て直しだから結果が出なくても継続可能になっています。

●契約年数
ケンバ ~23年(最後はプレイヤーオプション)
ヘイワード ~21年(来年はプレイヤーオプション)
スマート ~22年
テイタム ~22年(ルーキー契約)
ブラウン ~21年(ルーキー契約)

ヘイワードはオフにいなくなる可能性がありますが、オプション行使すると34Mももらえます。今のヘイワードにこんなサラリーを提示するチームはないので、残留の可能性が高いです。万が一、残留してくれなければ他の選手にお金を使えます。

ルーキー契約からの延長を控えるテイタムとブラウンにマックス近くのオファーをすることも可能なので、スマートとの契約が切れる22年まではヘイワード以外の4人を残すことが出来ます。結果が出ようが出まいが、セルティックスには未来が残されています。

1年前なら「カイリー中心のエリートチーム」を作るためには結果が必要でしたが、今はこの3年間で優勝するチームを作れば良いわけで、実は慌てる必要もありません。もちろん、センターをアップグレード出来るに越したことはありませんが、短期的なアプローチで長期的なメリットを消しても仕方がないよね。

でもね。これも実は結果論。今シーズンが上手くいっているからこそ言える「未来を見据えようぜ」発言なのです。何故なら、セルティックスは有望な若手を抱えつつも、彼らを十分に伸ばすことも出来ていなかったからね。勝利のためには成長を犠牲にしなければいけないんだ。

ケンバを加えておきながら、今シーズンはテイタムとブラウンの両方が20点オーバーと非常に上手く機能してきています。このウイングコンビを両方残した方が良いのか、片方にした方が良いのかは1年前なら大きな議題でしたが、今ではどちらも残したいだろうね。

◉並び立った氷と炎

ということで今回のテーマに行きましょう。テイタムとブラウンのスタッツ比較です。この3シーズンの変化ですね。

〇得点
テイタム 13.9→15.7→21.2
ブラウン 14.5→13.9→20.0

こうみるとテイタムが騒がれていた理由がさっぱりわかんないよね。今シーズンになってやっと20点を超えてきました。一方で昨シーズンはそのテイタムに邪魔された感じで得点が伸びなかったブラウンまで20点オーバーになるのは予想外も予想外。

〇FGアテンプト
テイタム 10.4→13.1→18.1
ブラウン 11.5→10.7→14.7

単純に両者のアテンプト数が伸びたのが今シーズンの特徴です。ケンバが約17本で22点を奪っているのですが、カイリーよりも少ないアテンプトになっていることと、モリスがいなくなったことが2人のアテンプト増に大きく関係しています。

今から思えば1年前からモリスを出して、テイタムとブラウンのアテンプトを増やしておけばよかったのにとしか言いようがないのですが、それが結果を求めていたシーズンのつらい所です。成長が遅れたね。

いずれにしてもチーム1位の34.1分プレーしているテイタムと2位の33.4分プレーしているブラウンのコンビは、あと5年はセルティックスの中心として活躍してくれることを期待できます。だからこそ20点オーバーのコンビを中心にしたチーム構築を考えないといけません。

〇FG
テイタム 42.9%
ブラウン 49.2%

〇3P
テイタム 35.8%
ブラウン 39.5%

〇FTアテンプト
テイタム 3.9本

ブラウン 4.5本

効率よく得点しているのは圧倒的にブラウン。この状況はこれまでと何も変わりません。ファールドローしてフリースローになるのもブラウンの方が多く、ディフェンス面も含めてテイタムよりもブラウンの方が優秀な選手なのです。しかし、今シーズンは少し変化が訪れました。

〇得失点差
テイタム 7.3
ブラウン 2.8
ケンバ  4.3

それはテイタムが出ている時間に大きなリードを奪うようになったこと。ブラウンだけだと周囲との関係もありますが、ケンバと比較しても大きくリードしているテイタム。レーティング的にはオフェンスよりもディフェンスで大きな差がついており、「テイタムがいると守れる」という意外な状況になってきました。

その理由はいまいちわからないのですが、ブラウンのディフェンス力低下は感じています。試合中にかつてのように目立たなくなってきました。しかもその理由が「イーストにマークすべきエースクラスが減った」ってことだったりするので、これまた何とも言えません。

いずれにしてもテイタムがディフェンス面で機能してきたって事なのでポジティブに捉えましょう。実際にテイタムは優れたDIFFを残すようになっており、ディフェンス面で体を張るシーンが増えてきました。インサイド側を守ることに慣れてきています。

その結果、コンビとしての課題に「両者がウイングだとディフェンス面に不安が残る」ってのありましたが、今シーズンは良くなってきています。

〇リバウンド
テイタム 6.9
ブラウン 6.9

それは両者が揃って7本近くのリバウンドをとっていることも大きく影響しています。2人より多いのは8.2本のカンターしかおらず、そのカンターもオフェンスリバウンドで稼いでいるだけなので、ディフェンスリバウンドではテイタムとブラウンがチームを引っ張っています。

〇セルティックスのリバウンド率
49.5%(23位)→50.9(9位)

カンターがオフェンスリバウンドを拾ってくれることも含めて、セルティックスは弱みだったリバウンドが改善しました。6.7本だったホーフォード、6.1本だったモリスっていったい何だったんだ?

もちろんリバウンドのとれるセンターは必要ですが、テイタム&ブラウンをウイングコンビとして成長させたいならば、負荷をかけても良いんだぜ。得点もリバウンドもとれるウイングコンビに育てていこう。

ちなみにテイタム以上にグラント・ウィリアムスのディフェンスレーティングが良くて、要するにPF不足なんだよね。そこをブラウンがもっと塞げるのかどうか。チームUSAでは何故かセンターみたいだったし。

◉アシストを磨け

〇オフェンスレーティング
ブラウン+テイタム 111.7
2人  +ケンバ  115.8
2人  +スマート 105.0

コンビとしてのレーティングは112近くあり悪くないのですが、ケンバがいると大きく上がり、スマートだと下がります。ケンバとスマートの得点力の違いも大きいですが、ブラウンとテイタムがコンビとしての機能性を発揮できているとは言い難いことも示しています。

〇テイタム→ブラウン
パス 3.1本
アシスト 0.7本

〇ブラウン→テイタム
パス数 3.1本
アシスト数 0.2本

ということで合わせて1本にもならないアシスト数。それ以前にパス交換の少ないこと少ないこと。1試合に3本しかパスがなくてチーム1位と2位のプレータイムなわけですから、どれだけ連携がないんだよ。

ただし、ここにはセルティックスのオフェンス事情もあります。ハンドラーが長くボールを持つタイプであり、ハンドラーから展開していくので基本的にウイング同士が絡むのは少ないんだよね。

そのためキーになるのはPGなわけです。あるいはポイントセンターがいてくれたら更にありがたいかも。ケンバ先輩になって両者が良くなったのはハンドラー次第で両者が並び立てるかどうかが決まってくる事情もありそうです。今回ってブラウン&テイタムに触れつつ、ケンバを讃える回ですよ。

〇アシスト数
チーム 23.0
ケンバ  4.9
スマート 4.6
ヘイワード 4.0
テイタム 2.8
ブラウン 2.3

しかし、セルティックスはチームとしてはそこそこのアシスト数ですが、一番多いケンバですら5本を下回ります。もともとアシストが少ないケンバね。スマートも伸びていないし、ヘイワードは多めだね。

この状況を考えると、ウイングだからアシストが少ないってのは単なる言い訳なのかもしれません。ちなみにブラウンとテイタムのアシスト数の差はパス能力の差じゃなくて、「テイタムのパスを5割以上決めるブラウン」と「ブラウンのパスを2割しか決めないテイタム」の差かもしれません。

いずれにしても2人が適切なパスを選べるかはコンビとして成長するために大事なポイントです。成長っていうか「優勝するために」かもしれません。

実際にこの2人はパスを貰ってから、次のパスを出す判断の遅さを感じます。ドライブを選ぶ判断は早いのに、パスについてはもらってから周囲を見回しているよね。ハンドラーアタックが多いチームだけに環境的にはパス能力が成長しにくいのですが、何とかしたいですね。

〇20点以上の選手におけるアシスト数下位
ボグダノビッチ(ジャズ) 21.1点 2.1本
ブラウン 20.0点 2.3本
テイタム 21.2点 2.8本

実は20点以上の得点を奪っていて、アシストが3本以下なのはこの3人だけです。3本台もヒールドやCJマカラムのシューター系やエンビードとADのビッグマン系あたりです。そう考えるとウイングとしてはアシスト力が低すぎるし、それがコンビで低いってのは大問題。

ブラウン&テイタムで優勝したければパスを磨け

実はそのためにはシューターを1人加えたい気もします。ケンバこそいるけど「ここにパスアウトしたい」という選手がいないのもパス能力が上がらない要因かもしれません。スマートにパスするよりは自分で打ち切った方が正解な気もするじゃん。

3Pは大好きだけどシューターがあまり好きではないブラッド・スティーブンス流なので、シュートの上手いビッグマンになるのかな。

◉トレードするのか

これまでは、なんとなく並び立たない気がしたテイタムとブラウンでしたが、今シーズンの成績をみて長い目で考えれば残しておくのがベターに思えます。もちろん、どっちかを出してタウンズを連れてこれるならベターですが、マルカネンクラスでは納得しきらない可能性もあるよね。個人的にはテイタム→マルカネン&ヴェンデル・カーターなら面白いと思うけど、これがブラウンとトレードだとポジションバランス難しいんだよね。

人気チームって事でそこそこのネームバリューのある選手に興味がいきそうですが、ヘイワードを放出しない限りサラリー的には難しいと思います。でも逆にヘイワードのサラリーが高すぎてトレードを成立させるには第3チームなんかを連れてくる調整が必要で、エインジはそれが下手なイメージさ。

サンダーからアダムス連れてきたらムネアツですが、スクリーンをそこまで使わない上に、センターに3P打たせたがるセルティックスなのでヘイワード放出するほどの意味は感じないしな。セルティックスっぽいオフェンスをしているのはグリズリーズですが、これといっていない。あってもPFウイングも出来るクラウダーかな。むしろイグダラを連れてくるべきか。

第3PGを連れてきた方が良い、という意見を何度か書きましたが、2人のアシスト状況を考えるとパサータイプは1枚加えたいわけです。ただし、サイズのあるパサーになるから、そんな選手見つけるの難しいわ。ヘイワードでロンゾとフェイバーズは連れてこれないでしょうし。

リバウンドの弱いチームの中でカンターが頑張ってくれており、カンターよりもリバウンドが強いセンターって数少ないし。今シーズンはそもそも3Pの良いセンターが極めて少ないし。べインズとカンターを比較したらね。

うーん、テイタム&ブラウンを残す前提で考えるとトレードは難しく、グラント・ウィリアムスを伸ばすことの方が重要な気がします。伸ばす時間を与えなければいけないことはテイタム&ブラウンのスタッツが示しているわけですし。そういえばロバート・ウィリアムスはどこ行ったんだ?

こんなこと書いていてトレード実現したら恥ずかしいですが、セルティックスは1年前と違ってテイタム&ブラウンのコンビで行ける空気が出てきました。今シーズンに焦って勝利を求めすぎる必要はないだけに、変に大物を連れてこない方が良さそうです。

セルティックスの「氷と炎」が機能し始め、だけど伸ばしたいポイントも多く、シーズン後半にどれだけ成長させるかが一番の補強になると思うのでした。

ところで「氷と炎」ってなんだよ。このコンビに相性つけようぜ。相性をつけたくなるほど連携を増やして、もっと活躍しろよ。

セルティックスの氷と炎とトレード” への12件のフィードバック

  1. ブラウンって開幕前に延長契約決まってませんでしたっけ?
    マックス級だったので結構叩かれてた記憶があります。

    まぁブラウンの立場からすれば半端な金額やら契約先延ばしされようものなら俺よりテイタム選ぶのかってことになりますし、モチベーションダウンやトレード要求なんかもありえた訳ですから仕方ないところですかね。
    けれど大型契約決まると成績下がる選手も多い中今シーズンの活躍は上々ですよね、シーズン序盤はイマイチな試合も多くてハラハラしましたが。

    1. 決まってた気がします。調べたサイトに来シーズンからのサラリーが載っていなかっただけかな。

      ブラウンはマックスに近いレベルの価値があると思います。あれだけディフェンス出来る選手はレアですし、そこにオフェンス力が加わるのだから、同じレベルの選手を連れてくるのは難しい。
      とはいえ、今のバランス型の場合の話で、テイタム絶対主義のオフェンスシステムにするなら、あまり価値はないんですよね。難しい。

  2. 記事とは全く関係ありませんがブレイザーズとキングスのトレードについてどう思いますか?
    私はブレイザーズはプレイオフ進出に向けてもがき続け、キングスは諦めモードに入ってしまったんだと感じましたが。

    1. キングスはむしろ諦めるのが遅いくらいな。
      ボグダノビッチも売った方が良いのに、渋っているのかなぁ。

      アリーザは来シーズンも契約が残っていて、しかもベイズモアよりも安いのでブレイザーズ的にはサラリーカット+来シーズンの戦力確保なので、カーメロも残るか不明ですし、今シーズンだけじゃなくて、いろいろと良い方向なのだと思います。
      キングスはベイズモアが今シーズン限りなので、オフの余裕が作れて一応ボグダノビッチ残留を目指すのかもしれません。なのでお互いに今期だけじゃない動きだと思います。

  3. ケンバは優秀ですよね
    スコアリング以外のゲームメイカーとしての能力もかなり高い
    かなり過小評価されてる選手だと思います、普通に見直しました。
    去年のえーす()がネッツをぶち壊してるの見ると尚更です。
    テイタムは去年もレーティングは良かった記憶がありますが、今年は目に見える形でそれが表れている気がしています。
    去年に比べて一気に未来が明るくなった感があって嬉しいです

    1. とはいえ、ケンバでプレーオフを勝てるかは未知の世界なのです。豪華なスターターなのは間違いなく、この結果は昨シーズンとの比較で良いだけといえばだけなので、もうちょっと頑張らないとね。

  4. ケンバの凄さって何なんだろうっていうのが上手く言語化出来ていない=玄人好みの良い選手的なポジションになってしまっていると思うのですが、具体的に語るとなんなんでしょうか。
    基本的には周りに優れたオフェンシブプレイヤーがいる中で、デコイになりつつ、周りの選手に個別のプレイメイクをさせることが出来ているということでしょうか?
    その辺り上手く言語化していただけたら面白いなと思いました。

    1. 正直、ケンバは「良いヤツ」ってのがキーポイントなんだと。
      どんなに苦しくてもホーネッツで勝つ!と言い続けたリーダーシップとかは見事です。スーパースキルだけど見せびらかすような事もしないし、与えられた条件で必死にやる良いヤツ!
      でもプレー自体はマックス契約かっていうと、ちょっとね。

  5. ポケモンみたいなタイトルですね。でも言い得て妙

    この2人には期待感はあるんですが、なんかこー相乗効果とかブラザーズ感を感じないとゆーか。

    レナード&ポール・ジョージにも言える事なんですが、あちらはトレードやFAとか色々あってだし。

    同チームでドラフトされしかも上位指名の2人が平均20点を超えた事は喜ばしいのに…相乗効果って難しいのかなー。

    予想よりパスを振るケンバなのはこの2人の成長としては良かったですよね。アービングとケンバの差とゆーより、氷と炎中心でいきたいのか、エース(アービング)を支えるグッドロールプレイヤーに氷と炎を沿わしたいのか の違いなのかなー。

    はてさて、控え陣とセンターの補強をどーしていくのか楽しみですね

    1. コンビが機能する必要あるかっていうと、ないんじゃないか理論はあります。別々の方が安定している。
      問題はどっちもパスがね。レナードがアシスト増やしてますし、この2人もそこを伸ばすようなチームオフェンスを取り込む必要はあるかなと。

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