ラスとサンダーとハードワーク

WHY he is NOT in okc

OKCへの帰還となったラッセル・ウエストブルック。「後悔は何もない」というメッセージと共に帰ってきたオクラホマの土地は大歓迎で迎え入れるものの、そこで行われているプレーはラス君の時代を終わらせたものでした。

今回はラス君がロケッツでどのように機能しているのかを触れようか、サンダーがどうなっているのかを触れようか、非常に悩ましいテーマかつ試合内容でもありました。

勝ちまくっているサンダー。それはラス時代と何かが違うのか。

勝ちまくれてはいないロケッツ。ラス君は邪魔なのか。

そんな両面から触れていきましょう。

◉決めすぎのサンダー

サンダーが5割を勝つのは想定内。しかし、想定以上に強さを発揮しているここ最近です。12試合で10勝と勝ちまくり、ビリー・ドノバンはコーチオブザマンスとなりました。サンダーについては以前に触れているのですが、次はクリス・ポールについて書こうと思わせるくらいの素晴らしさです。もしも、オクラホマじゃなくてヒューストンでの試合ならクリス・ポール特集だったね。

しかし、サンダーはドノバンのチームなわけで、そんな強さを発揮する『素晴らしい戦術』なんてなかったよね。それが勝ちまくるってのは、改心したのか、それともポイントゴッドなのか。

非常に気になるこの要素は「ドノバンはやっぱりドノバン」でしかないと感じさせる内容でした。つまりは、素晴らしい連携もないし、特別なチームワークってのもない。あるのはSGAやシュルーダーの頑張り、ベンチ陣のハッスルプレー、アダムスの強さなどなど、ドノバンはドノバンだ。

ならばHCの戦術不足を埋めてくれるほどにポイントゴッドなのかっていうと、別にそんなこともない。ていうか、個人的には「ポイントゴッドってなんだよ」ってくらいの感想さ。

唯一の違いは、ボール持って1人で構築していたラス君がいなくなって、ゴッド、SGA、シュルーダー、ガリナリ、アダムスといろんな選手がボールを持って仕掛けるようになったこと。本当にそれくらいなんだ。

ところがだ。1つ明確に違うのがシュートが決まること。面白いようにアウトサイドが決まっていきます。ていうか、好きなように打っていきます。かつてはこんなに打たなかった。打てなかった。

そして、「そもそもシュート力がないラス君とクリス・ポールの違い」はわかりやすいけど、それ以上に「ポール・ジョージとガリナリの違い」が気になってきます。実はシュートが決まらない印象のあったポール・ジョージ。ガリナリが決めるクイックのキャッチ&シュートなんて全然決まらなかったよね。

1Qだけで6/10の3Pは、
・そもそも決まらないラスがいない
・ボール止めるラスがいない
・自分で仕掛けられる選手が増えた
・その選手たちがクイックで打っていく
・コートが広く使えるからボールが回る

なんていう状況でした。ラスのようでラスじゃない。ゴッドのようでゴッドじゃない。いろんなことが関係して生まれている状況です。

それをHCが導いたかっていうと、そんな気はしない。ただ、『ここに集まった選手たちで自然発生的に生まれる連携を大事にしようぜ!』みたいなOKCクリッパーズ。16点リードの1Qになります。

◉ラスとロケッツ

好調サンダーに対して前半で18点を奪ったラス。古巣に対して今の自分を示すように積極的にアタックしていきました。相変わらずシュート力はアレですが、突破しきっての得点はアダムスがいないことで、ゴール下でノーヘルプな状況もあるので、次々と押し込んでいきました。

さて、以前にサンダーについて書いたら「ロケッツのラスも機能してきたから注目してみて」的なコメントもありましたが、調べていくと全然機能していなかったりしてね。ただし、その意味合いが難しいので、印象を話していきましょう。

まず「ラスが活躍する = ハーデンが活躍していない」という構図が頻繁にあります。この言葉だけ見ると両者には悪い関係性があるようですが、実はちょっと違っていて、

ハーデンが活躍出来ないときにラスがカバーする

という構図が成立しています。まぁいろいろと語ると意味がわからないので、今シーズン流行のハーデンへのダブルチーム作戦を考えると理解しやすいかもしれません。ナゲッツが仕掛けていたのはダブルチームなわけですが、その目的はハーデンを止めることよりもパスを出させることにありそうでした。

ロケッツのオフェンスはオフボールムーブに乏しく、同時にそれなりに緻密に出来ていて「どうやって動くか」が定義されているから、ダブルチームを仕掛けられて予定外のパスを出してしまった後の対応があまりよくない特徴があります。これは「その場で判断する」クリス・ポールを悩ませていた問題だった気もします。みんながオフボールで動いてくれないってね。

今シーズンはそんな時には自分の出番とばかりに、空いたトップのスペースでボールを受けて、形が決まっていないオフェンスの中でディフェンスを破壊してくれるラスがいます。

要するにそういうことです。「ハーデンが活躍しないとラスが活躍する」のは、ハーデンが止められた時こそ、ラスの本領発揮なわけです。言い換えるとディフェンスが特別な仕掛けをしてこないためにハーデンが得点できている時はラスには出番がありません。ということで

役割分担としては機能しているが、両者の組み合わせによる相乗効果は低い

という印象があります。まぁハーデンが止まったらどうしようもなかった昨シーズンに比べるとポジティブな状況なのですが、これを上手くいっていると捉えて良いのかは評価する人次第です。そして、この試合もまたハーデンがダメダメでした。

〇前半のハーデン
10点 FG2/12 3P1/6

ホークス戦に続いてシュートが決まらないハーデン。代わりに得点していくラス。なのですが、この試合については単に古巣相手にラスを際立たせていっただけなので、ハーデンに渡したら外していただけです。困った困った。

12点差へちょっとだけ詰めて前半が終わります。ハーデンが決めていれば同点くらいになっていたというのも事実ですが、両者が決めていく試合ってのはそんなにないよね。

◉ラスとサンダーのハードワーク

試合は実質3Qで終わります。決めたのはSGAでした。が、点数を見ると6点しかとっていませんでした。もっとガンガン決めていた印象だったのにな。

それは純粋にハウスを相手にして突破が楽に見えたからです。SGAが目立ったように思ったのに、全員が得点していったのは新しいサンダーらしさですね。でも、違う面もあって「新しい」ではなく「かつてからの」サンダーらしさも満開です。

それは純粋にハードワーク。サンダーに戦術面の問題があっても伝統のハードワークは同じでした。なのでサンダーは「速攻を止めるディフェンス力のあるチーム」だそうです。このハードワークを活かして、3Qはロケッツを19点に抑え込むことに成功しました。

この19点がラス12点とハーデン7点だったロケッツ。これがラスが役割分担としては機能しているようで、効果的な結果に繋がっていないもう一つの部分でもあります。

本日はゴードンがお休みなので、ウイングを起用していますが、そもそも何でウイングが必要かっていうと、トランジションにも参加してくれる走力があるから。ハーデンはそこには参加しないし、参加したらバテるしね。

ここもハーデンとラスの関係性になっていて、遅いしサボっているハーデンとロケッツの中でトランジションを仕掛けてくれるラス。そこは良い。ハードワークで助けてくれる部分も含めて役割分担としてラスは機能している。

しかし、ロケッツのウイングはハードワークに欠けています。ラスがトランジションを1人で孤立して突破していくシーンが何回も登場してしまった3Q。サンダーだったら誰かしらが必ずフォローに来ていたよ。

もっと走れやウイングたち。それを求めたくなるメンバーを揃えられていないし、走ってくれそうなクラークをクビにしているし、結構頑張るハーテンステインのプレータイムは短いし。

それでもタッカーとカペラは頑張るタイプだから、それなりに勝率に結びついていますが、明らかに2人への負荷が高まっているのが大問題です。また冒頭のとおり、SGAを守れなかったハウスのディフェンス力は悪くはないのですが、特記するほどでもないわけです。ロバーソンみたいには守れません。サンダーの1人ひとりがファイトする姿勢に比べると、ベンチ陣のサポートキャストの頑張りを感じれないロケッツです。

ってことで、ラスに必要なハードワークを持っているサンダー。っていうか、「ミスが多いラスがいたからカバーするために誰もがハードワークしていたサンダー」

面白いよね。ハードワークを作り上げた大エースがいなくなり、そのカルチャーが残った中で、大エースがいないけど準エースがいっぱいいることで機能しているサンダー。強くなってきた理由はよくわかる。

管理人の好きだったラス&ハードワーク時代はもう終わり、それでもサンダーにはハードワークが残り、ラスはロケッツで1人ハードワーカーをしている。

ラスとサンダーとハードワーク

敗戦後に珍しく笑顔で挨拶しに行き、アダムスとハグしたり、コートサイドで声援を受けたり。なかなか感慨深い試合でもありました。

◉追伸

この考え方を応用するとね。ロケッツはハーデンがハイスコアをしている限り、もとい「させ続けている限り」チームとしての成長はない気がするよ。

優勝したいなら、優勝するためのシーズンストーリーを考えないと限界を迎えるんじゃないかな。ウォリアーズは崩壊したけど、ストーリーは描こうとしているぜ。

チームの完成形をどこに定めるのかで色んなものが変化してくるよね。ダントーニの限界が訪れる匂いのする今シーズンでもあるのでした。

ラスとサンダーとハードワーク” への8件のフィードバック

  1. クリスポールの今シーズンの4Qpのみのスタッツみたら凄い事になってそう。

  2. ラスとロケッツの記事ありがとうございました。
    この試合は見てませんが、ハウスはラスの前走ってコーナー3やアリウープ等噛み合ってきたように見てました。そこにクラーク、ハーテンスタインをハーデンにはタッカー、カペラ、クラークorセフォのユニットがいいんじゃないかと思っていましたが。
    優勝へのストーリー、逆算は大切だと思います。ロケッツの伸び代はラスとハーデンの連動、ハウス、クラーク、カペラ、ハーテンスタインの成長。目先の勝ちにこだわらずラスのユニットのプレータイム増やしてほしいと思っていましたがクラークいなくなってますます膠着し、同じようなシーズンになりそうです。

  3. ラスのトレードにジェラミグラントを巻き込むべきだったようなHOU

    さてOKCはトレードデッドラインまでにどう動くのでしょうか

  4. オクラホマシティーにわかです。
    変わらずOKCとラスを追いかけています。

    この試合は本当に涙無しに見れない試合でした。感動的でした、ほんとに。OKCの感想は管理人さんとほとんど同じなので書かない事にします。

    とか書いたけど、ロケッツもほとんど同じだったり。すごく思うのですが、ロケッツってシューター役のシュートが全く入りませんよね?これってデータで原因出るんでしょうか。結果ハーデンばっか。でもハーデンのアイソにそれまでの価値はない気がします。…まあチームの構成見ると仕方ない気はしますけど。
    負けるとラスのせい、トレード!!!!みたいに言う人を見ると悔しくてなりません。…そりゃ、ラスのシュートは入らないけどさー。しょぼん。

  5. グラントがラスと一緒に来れば一番だったねロケッツは
    サラリー的にきついんだけどさ

  6. 適切な表現かはわかりませんが、「スターの帰還」ではなく「家族の里帰り」みたいな、そんな感じのラスの帰還でした。
    OKCではラスとアダムスのハイファイブはあまり見た記憶がなかったので、その辺も含めて心温まるって表現がぴったりでしたね。

    ハーデンとラスで役割分担はあってもケミストリーがないというのは腑に落ちる感じがあって、ウイングの問題も含めて一朝一夕には解決しなそうな感じがします。

    怪我が全快してるようならロバーソンがラスの隣を走ってくれないかなぁ…なんて密かな期待をしています。OKCだと恐らく若手優先でプレイングタイムはない感じですし。

  7. タッカーが負傷退場したMIN戦を見てて、PFラスってありじゃね?と思いました。自分より小さいガードにはパワープレイ、大きい相手には外からドライブと、割と効率的にオフェンスしてました。他の試合でもやっていたのかもしれませんが、役割がベンシモンズ的になっていて面白かったです。

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