「ディアーロン・フォックスの勝てない日々」の記事にコメントを頂きました。要約すると
・昨シーズンのフォックス→ヒールドのアシストで左ウイング3の割合が多い
・ヒールドは左ウイング3がどうやらお好き
・昨シーズンのフォックスの左ウィングスタートはヒールドへのパスの距離を短くするためでは?
・フォックスに向いた注意をヒールドのクイックキャッチ&シュートで利用する形だったのかな
このコメントに対するアンサーとしては、ヒールドは左コーナー好きだし、だからフォックスからのアシストも多いだろう。ただ「パスの距離を短くする」と「フォックスに向いた注意」は違うかなーという印象でした。印象ね。
というのも、ヒールドの場合はレブロン(キャブス)型のキックアウト3Pではなくて、ウォリアーズ(カリー)型のコーナーを空けておいてのムービング3Pが多いので、フォックスが近くにいるのは逆にやりにくいだろうと思うのです。
ってことを考えたところで、思いました。普通に「レブロン型とウォリアーズ型」 という言葉を使っているのですが、レブロンはとっくにレイカーズに移籍しているし、ウォリアーズはケガ人だらけで低迷中だし、この言葉って管理人が勝手に作っているだけなので、理解しにくいかもね。
ってことで復習です。コーナー3Pって何なんだ?
◉コーナー3Pの重要性
現代オフェンスではコーナー3Pはとっても大切なプレーです。理由は大きく2つ
・コーナーは距離が近いので確率が高い
・フロアを広く使える
単に3Pを打つだけならどこから打っても良いのですが、コーナーには特別な要素があるわけです。まずは成功率を観てみると
〇19-20シーズンの成功率
左コーナー 39.7%
右コーナー 37.5%
その他の3P 34.7%
特に左コーナーは5%近く良いことがわかります。右利きが多いので利き腕が内側にくる左コーナーの方が打ちやすそうだと想像はされます。
コーナーの場合は距離が近いだけでなく、フリーになって打てることが多いのも特徴です。1つには自分のマークマンしかいないので、1人かわしておけばヘルプがこないのが一番ですが、加えてそのマークマンがヘルプに行く事になることも多くなります。
NBAで最も多くのコーナー3Pを打っているのはPJタッカーですが、タッカーのマークマンはビッグマンの事が多いのでヘルプ担当でもあります。ハーデンのドライブに対してヘルプに行ってくれればタッカーはドフリーです。
しかし、本質的にはハーデンのドライブにヘルプがいないのが最高です。イージーレイアップね。ということで2番目が「フロアを広く使える」ということに繋がります。コーナー担当を配置しておけば、それだけでディフェンスは広がるよね。
かつてならば、インサイド優先で守っていれば良かったわけですが、今では「フリーなら誰でも3P35%は決まる理論」なので、時には3Pを優先して守らないといけないこともあるのでした。
◉ダニー・グリーン型
「フロアを広く使う」というのは、インサイドに広いスペースをもたらすためにコーナー担当を置くわけですが、それは言い換えると「インサイドの広いスペースをエースが使う」ために、コーナーで広げる役割の選手が欲しいって事です。
エースはハーデンであり、前述のとおりレブロンでした。特にレブロンのためにシューターばかり揃えたキャブスに代表される形だといえるでしょう。なので、旧レブロン型としています。
ただ、最近は強力なエースのためだけでなくコーナー担当を置くのが普通になってきました。セルティックスなんかも必ず両コーナーに選手を置きますが、じゃあ真ん中を突破する選手が主役かっていうと、そういうわけじゃなくてチームオフェンスの中で誰がコーナーに行くかはその時々で違います。ケンバってこともあるよ。
そしてこのコーナー担当で優勝に導いたのがラプターズのダニー・グリーン。なんせシュート力が落ちたと思っていたら、コーナー限定で超スーパーシューターになって復活しました。今ではレイカーズで同じような役割を担っています。ということで、レブロン型からダニー・グリーン型に改名しましょう。
・初めからコーナーにポジションをとる
・マークマンがヘルプに行かなければ立っているだけ
簡単に言えばこれがダニー・グリーン型の特徴です。嫌味なわけではないよ。あくまでも主役は他にいて、わき役としてコーナーに行くって事です。ただ、確率が高いから主役よりも重要なシュートになりがちです。
現在のレイカーズはレブロンとADがいてインサイドを広くしておけば決めてくれます。ただキャブスと違うのはポストアップも多いので、単純なパスアウトから決める昔むかーしと同じようなパターンも結構あるって事です。
いずれにしてもロールプレイヤーとして3&Dが求められる中でコーナー担当は重要であり、安定したシューターであることは価値を高めてくれる時代になってきました。
◉ヒールド型
そんなレブロンキャブス&ラプターズとファイナルで顔を合わせ続けたのが、言わずと知れた最強ウォリアーズですが、3Pの威力を世界中に広めたようなチームですが、実はちょっとした異分子でした。
というのもウォリアーズは基本的にカリー・トンプソン・デュラントの3人(+ベンチに1人)くらいしか3Pシューターがいないロスター構成をしていました。特定のシュートの上手い選手が打つシステム構成です。それがウォリアーズ型の原点。
ただし、ウォリアーズ自身がクック、マッキーニー、ジェレブコとシュート力ある選手を増やしていったことでウォリアーズ型は消えていきました。誰もが3P打てないといけない時代に、特定の選手だけだったのは面白かったのですが、時代の波にはついていかないとね。
クックやマッキーニーはともかくとして、カリーとトンプソンがコーナー担当ってのはもったいない限りです。だって主役だからね。ってことでロスターとしてのウォリアーズ型は消えましたが、スプラッシュブラザーズに打たせるためのカリー型は残っています。それを新たにヒールド型と定義するわけです。
・エースシューターをコーナーに待たせておくのは非効率
・コーナーを空けておいてエースが自由に使う
ダニー・グリーン型との違いは、簡単に言えばオフェンスの開始時にコーナーにいるかどうかです。ヒールド型の場合は誰もいない状態で始まります。3Pを打つスペースを空けておくわけです。
コーナーで3Pを打つことについて、「距離が近い」と「フリーになりやすい」という要素がありましたが、後者においてはヒールド型だと違う事情も混じってきます。
オフボールで動き回る中では「人とボール」の両方を視界に入れ続けるのは非常に難しくなります。特にコーナーに移動されると人を追えばボールを見失い、ボールを見ると人を見失います。カリーはスクリナーになってからオフボールムーブするのが好きですが、ボールのない所で動かれるとディフェンスはカバーも難しくなってしまうのです。
・ディフェンスから消える動き
これが出来る選手だとコーナーは超有効です。ただ、そんなに簡単ではないです。加えて、ヒールド型のコーナー3Pはオフボールムーブしてからキャッチ&シュートなので、難しい要素が出てきます。
・ムービング3Pは確率が落ちる
・一瞬のフリーをチームメイトが見逃してはいけない
単なるシューターではなくエースキャラでなければ務まらない理由がここにあります。特に後者は重要でチームのエースじゃなければ上手く振り切っても見逃される可能性が高いよね。
ということで動画にまとめました。うーん、疲れた。
レブロン型とウォリアーズ型という対比は両者の知名度もあって非常にわかりやすかったですが、ダニー・グリーン型とヒールド型は典型的ってわけでもないから、言葉として使い続けることはありませんが、復習しておこうの回としての例示でした。
◉キングスの話
キングスはコーナー担当(ダニー・グリーン型)のアリーザを獲得し、そこにストレッチ5のデッドモンも加えました。しかも試合中には平然と3ガードにしてきます。
その結果、ヒールドに使わせるべきアウトサイドのスペースが狭くなってしまいました。そしてそこにパスを出すべきフォックスにはドライブからのプレーメイクを求めています。冒頭のコメントに戻ると、キングスの場合は
ヒールドがオフボールムーブしてシュートを狙う→ディフェンスが対応して動いたところをフォックスがドライブ
という逆パターンの方が多かったイメージです。オフボールで動き回るヒールドを警戒している間にフォックスのスピードは止められません。しかし、今シーズンはこの前提が大きくずれており、スペースのないヒールドはハンドラーからのプルアップ3Pを打つことになり、先にドライブしてしまったフォックスはヘルプに立ちふさがれるとパスを出す先に困っています。
フォックスのドライブからプレーを構築したいならダニー・グリーンを呼びましょう。ヒールドに打たせたいならスクリナーになれる選手を増やしましょう。
アリーザがいることもデッドモンがいることもチームに多様性をもたらすのだからポジティブですが、使いどころを間違えたら邪魔になるだけなのでした。
まさかキングスについて2回シリーズにするとは思っていませんでしたが、ブログで普通に使うワードも古くなっていくので、こうして復習してブラッシュアップするのも大切ですね。
非常にわかりやすいアンサー記事をありがとうございます。
レブロン型は非常にわかりやすかったのですが、ウォーリアーズ型は掴みどころがない印象がありました。オフボールムーブがすごいとか、ムービング3Pが入るとか、結局「カリーがすごいだけ」じゃないの?と。
でもこの記事を見て、エースシューターを活用をするためにチーム全体が戦略的に動いているのがよく分かりました。オフボールスクリーンの重要性や、チーム全体がヒールドが空く瞬間を意識しているということ。
またコーナーを開けていることについては、「そんなの当たり前じゃん」と思っていましたが、切り取られて見てみるとしっかりと必要なことがわかりました。流れの中で見ていると偶然にも見えてしまうけど、違うんだと。
フォックスとヒールドの順番はドレイモンドのイージーレイアップが思い出されますね。
最近はフロアのストレッチが流行ですが、中でズレを生み出すこともスペーシングの一環と考えると奥が深いなあと思いました。
動画編集お疲れ様です(笑)
プレーオフになるとドレイモンドのドライブレイアップが目立ち始めますが、あれはまさに「対策された時のカウンター」みたいなプレーで、あそこを判断できるのがドレイモンドの良さですね。
キングスはデッドモンがとにかくスペースを空けてくれないので、自分は打っていても結局はチーム全体ではフィットしなかった感じです。