サンダーの何が変わったのか

4連勝で5割を超えたサンダー

vsブルズ 26点差からの逆転勝利
vsグリズリーズ 24点差からの逆転勝利
vsサンズ 最大18点差をつけての楽勝
vsクリッパーズ 最大18点差からの逆転勝利

サンズ戦以外は見事な逆転勝利で4連勝したサンダー。下手をすると、、、っていうか、普通の結果なら1勝3敗だったのだから、12勝17敗だったかもしれないけれど、これで一気に5割を超してきました。

チームの象徴ウエストブルックとポール・ジョージを放出しながら、クリス・ポール、SGA、ガリナリを補強したことで十分に戦える戦力を持ち合わせつつ、でもクリス・ポールが「勝てないチームだ」と睨んでいたはシーズン前の話。30試合経過したところで、そろそろ戦い方に慣れてきたかもしれません。

その変化はウエストブルック→クリス・ポールの違い・・・なわけですが、実はそんな簡単じゃなかったりします。

〇クリス・ポール 
31.4分
16.1点
6.3アシスト
4.4リバウンド

〇ウエストブルック
36.0分
22.9点
10.7アシスト
11.1リバウンド

さて、この違いで最も大切なのは実はプレータイムです。ウエストブルックがコートにいない時間は12分でしたが、クリス・ポールがいない時間は17分あります。

〇ウエストブルックのレーティング
オンコート 112.4/107.4
オフコート 101.4/101.7

ウエストブルックがコートにいないとチームは酷いものでした。オフェンスで11も違うっていうか、コートにいればエリートチームでいなければドアマットです。もちろんポール・ジョージも同じです。2人が同時にコートにいるとオフェンスは114.5でした。あまり変わんないね。

〇クリス・ポールのオフェンスレーティング
オンコート 110.3/108.0
オフコート 100.6/101.5

同じように今シーズンもクリス・ポールがいないとダメなんだね。ちなみにオフェンスだけだと同じくらいですが、ウエストブルックの方がディフェンスが良かったわけです。

ということは、PGはクリス・ポールに代わってプレータイムが短くなった分だけ、サンダーは苦しんでいると評価できますし、その時間が長くなり勝率に響いていると捉えられますが、ここ10試合に限ると見え方も変わってきます。

〇最近10試合のCP3レーティング
オンコート 113.4/109.3
オフコート 107.4/100.3

クリス・ポールがコートにいないとディフェンスが良くなってトータルではメリットが出ています。新しいチームになって当初は困っていたものの、20試合経過してからはエースPGがコートにいなくても成立するようになってきました。

1年間経っても解決しなかった問題が20試合で解決したのであれば誉めたくなることであり、PG変更して改善した事項が、「PGがコートにいない時間」に起きた大きな変化であるという奇妙な現象なのでした。

◉逆転勝利の立役者

大逆転した3試合のリーディングスコアラーを並べると

vsブルズ クリス・ポール 30点
vsグリズリーズ シュルーダー 31点
vsクリッパーズ SGA 32点

50点を奪ってくれるスーパーエースはいませんが、試合によって違う選手がリーディングスコアラーとなりました。ブルズ戦ではクリス・ポールが4Qにゴッドっぷりをみせつけ、1人で19点を奪って大逆転に導いてくれました。

しかし、続くグリズリーズ戦でのクリス・ポールの得失点差は△18ということで、この試合はベンチメンバー中心に大逆襲を見せ、シュルーダーは+19点をたたき出しており、「クリス・ポールすらベンチに置く選択をとれるチーム」に生まれ変わったことを示しました。

クリッパーズ戦は、古巣相手にルーみたいなファールドローを使いながらのSGAが柔らかに得点を奪いまくり、最後はクリス・ポール、シュルーダーの両方がクラッチタイムに決めて逆転勝利を収めました。ポール・ジョージとルーに頼る形が多かったクリッパーズと対照的でもありました。

「クリス・ポールが引っ張っている」という構図ではなく、5人のうちの1人に過ぎない構図はポジティブな要素を生み出し始めています。アダムス、ガリナリと合わせたメインの5人がバランスよく活躍するチームになってきています。

実際にここまでこの5人が平均二桁得点。まぁ昨シーズンも5人が二桁なんだけどね。

これに加えて最近はノエル、ネイダーの活躍も出始めるとドラフト23位のベイズリーが素晴らしい運動能力を発揮しています。ちょっと段違いのキレに驚くタイプの選手です。サンダーっぽい。

エースに頼らない構図になってきたのはもちろんですが、若手たちのプレー機会も増えてきました。特定の選手に頼らないことでバランスの良いプレータイムがもたらされ、結果的にバランスアタックするチームに成長していく。これまでのサンダーとは根本から違う設計になっていっているのでした。

◉増えたパス

ボール持ちすぎな人がいなくなったことで、もちろんパスが増えてきました。ここは非常に大きな変化であり、ていうかドノバンってオフェンス戦術どうなってんだと疑問も浮かぶ部分です。

〇パス数 242.4→299.3
〇アシスト数 23.4→21.8

一方でアシスト数は減っています。これはクリス・ポールとウエストブルックの能力差、ではなく現状のサンダーが「ボールは回すけど、パスワークで崩してはいない」ことを示しています。

ウエストブルックの突破で崩す → パスワークで崩す

だったら話は簡単なのですが、実際にはパスでは崩せておらず、個人の突破で崩すスタイルです。戦術は変わっていないのか。昨シーズンはポール・ジョージに任せるシーンも非常に多かっただけに、パスを出す先が固定されていましたが、今シーズンはパスを回して回して、誰が仕掛けるのかわかりにくい構図になっています。

ていうか、クリッパーズそのものだからウケるよね。

〇クリッパーズのパス数 303.2→273.6

ポール・ジョージとカワイ・レナードが揃う機会が少ないクリッパーズですが、それでもエース2人を加えたことでわかりやすく違いが出ています。サンダーの逆を行くクリッパーズ。両チームの対戦がユニフォームを間違えたかのように映った理由もわかります。

選手に好きにやらせる系で有名なリバースですが、ドノバンもまた同じタイプなのかもしれません。だからチームとしてのパスワークで崩すわけじゃないし、だけど多くの選手を信じている。うーん、後者は怪しいか。

〇サンダーのパス数
クリス・ポール 54
シュルーダー  50(36)
アダムス    49(31)
SGA     39
ガリナリ    36

60本をぶん回していたウエストブルックがいなくなって起こった変化はシュルーダーとアダムスのパス数増加です。シュルーダーの件はプレータイムの関係もあるし、クリス・ポールが生み出したリズムというのも少し違います。

明らかに違いがあるのがアダムス。今ではオフェンスの起点役が増えてきました。ハンドオフアダムス。ノエルも16本→32本と倍増しており、センターを絡ませる形が成功しています。

このセンターを絡ませる形は違う効果もあって、インサイド側を空ける意味合いが出てきており、バランスアタックなので誰かがドライブしたときにヘルプが少なくなりました。

〇ゴール下FG
アテンプト34.0本→25.1本
成功率  61.8%→66.2%

その効果は抜群です。突破力抜群のウエストブルックがいなくなったことで、ゴール下が減ったけど、確率は向上しました。まぁトータルマイナスなんですけどね。もう少し突破さえできれば良いのですが、そこはまぁSGAに期待しましょう。

〇ミドル
アテンプト 14.2本→13.4本
成功率   38.0%→46.2%

一方でここまで驚異的な確率を残しているのがミドルレンジ。ちなみに昨シーズンの38%は悪い数字とは言え、リーグの平均とそこまで大きな差はありません。46%は昨シーズンのウォリアーズレベル。

つまりサンダーは突破する能力は減ったけど、確率良くシュートを打てるようになってきました。でも、パスワークでは崩していないんです。ここもミソかもしれません。あくまでも個人アタックじゃん。それもバランスアタックじゃん。ただ確率の良いシュートを選べているわけだから、何度もやり直せる気持ちがあるってことかな。

ゴール下はともかく、ミドルでこの確率を維持できるなら、サンダーは恐ろしいことになると思います。それくらい現実的ではない数字です。

なんだかいろいろとクリッパーズ化しているサンダー。その中身をウエストブルック→クリス・ポールにだけ求めるのは苦しい感じです。ポール・ジョージのミドルってのも苦しかったしね。

◉プレーオフ・サンダー

クリッパーズはクリス・ポールとグリフィンを放出して素晴らしいチームとなり、それがレナードを呼び込むことにも繋がりましたが、実際にはロブシティ時代の方が勝率も良く、安定して勝っていました。あくまでもスターを放出したけど機能しているチームという事が評価されていたわけです。

サンダーもまた勝率は落としているけど良いチームになり始めています。ここにはアンタッチャブルな選手はおらず、誰もがヒーローになり得る構図が成立しています。逆転劇もクリッパーズっぽいアンストラクチャーな状況での追い上げでした。

ただ、もちろんサンダーカルチャーも生きていて、ハードワークが基本だし、出てくる若手はスキル系じゃなくて能力系ばかりだし。それがバランスアタックのチームにハマり始めています。だからといって昨シーズンよりも強いわけではありません。ウエスト全体が迷走している中での5割だしね。

管理人はルーキーシーズンからSGAはお気に入りでしたが、まさか2シーズン目にしてこんなに得点が取れる選手になるとは思っておらず、サンダーに移籍したことが個人としては良い方向に向かっているのが嬉しく、個人について書こうとも思っていました。

ところが、そのつもりで試合を見ると違う選手が活躍し始めてしまうのだから、いつ誰が活躍するのかわからないチームになってきたのです。ブルズ戦とか7点だからね。

とはいえサンダーには超えるべき壁が残っています。それはプレーオフへの壁というか、サラリーキャップの壁。ラグジュアリータックスを払いまくっていたので累積が溜まっており、ここらで清算したい気持ちが強いと思います。(サラリーキャップを超えたシーズンが連続していくとタックスも上昇する)

バランスアタックを手に入れ始めているサンダーですが、出来れば誰かを売ってしまいたい。クリス・ポールなんてまだまだ契約残っているからね。そこを何とかしてしまうGMだしさ。くっつける指名権もたんまりあるし。

変わりゆくサンダー。その変化はまだこれからも続くかもしれないのでした。

次回はオマケ編でロケッツのウエストブルックに触れようと思っていましたが、クリッパーズの方が良いのかなぁ?

サンダーの何が変わったのか” への10件のフィードバック

  1. 更新お疲れ様です。

    “クリポとシャイとシュルーダーを同時に出すのか”問題に注目してたんですけど、
    結構同時に出してますよね。
    なかなか面白くて、外に3人立ってパス回すんです。ペネトレイトしようとしたり、シュート打とうとしたりする。でも「しようとする」だけであまり無理しない。またパス回す。
    ディフェンスは、外もドリブルもある3人だから地味に動かされちゃって、微妙なずれが出来てくる。そこをつく。
    特に特別なことをしてる風では無いみたいですけど、多分状況判断がいいんでしょうね。
    なかなか観ていて楽しいチームです。

    1. ウエストブルックの記事読みたいです!最近大分馴染んできていると思いますので。

      ウエストブルック、ハーデンのどちらかがベンチの時、リバース使わずコンビをマクレモアにできたらと思って見てます。リバースはボール止めてタフショット打ちたがるので…

      まあそうするとフロントコートが一枚足りません。
      ゴードンが戻ってきてもウエストブルックorハーデン+マクレモア、ゴードンは安定感無さすぎな気がします。マクレモアかゴードンでいい3&D取れたらなーと妄想してます。

  2. 試合の前半と終盤でクリスポールの役割が明らかに違うように感じますが、そのへんどのように観てますか?(前半はボールをシェア、後半はボールを保持しゲームコントロール)
    ちなみに今シーズン、クラッチタイムに強い選手はクリスポールらしいです。
    ウエストブルックが好きでサンダーのファンになった人達がクリスポールファンに変化してる様が面白いですね。

  3. サンダーは新人2人が攻守で違う良さを持ってるのが良いですよね。ベイズリーはラスばりに動けますし、ルー・ドーツはジャズ戦でミッチェルをフィジカルとスピードでビタ止めするDF力があったのが衝撃でした。
    お互いシュルーダーとロバーソンという似たタイプの先輩がいるのでケミストリーを築きつつ頑張って欲しいです(ロバーソン、イグダラ並みに復帰未定ですよね。勘弁して)

    1. そういえばロバーソンって予定はそろそろでしたが、全くダメなんですかね。ちょっと呪われているような。

  4. ウエスト&イーストの2019通信簿(通知表 成績表のが伝わるのかな)どーですか??

    まだ3分の1もシーズン進んできてないですが、年末年始恒例にどーかなぁーと思いまして。

    管理人先生のシーズン前予想との差で〇△×で方式とかどーでっしゃろ

  5. 管理人さんの印象で、シーズンが始まる前と一番予想が違ったのはどの部分でしょうか? また、それはサンダーにとってポジティブなものでしょうか?

    1. ・CP3が衰えたと思ってたのに元気なこと
      ・シュルーダーが活躍してること
      ・ボールを動かすこと

      割とCP3も持ちすぎるタイプなので、ドノバン バスケでボールを動かすとは予想外。その意味ではアダムスとノエルのパス数が最大のサプライズですかね。

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