スパーズのディフェンスは戻らないのか

1年前は「不安定」がテーマ、今は「安定してダメ」がテーマ

1年前のこの時期にスパーズは低迷中。その理由はディフェンスの不安定さでした。その時のデータはこんな感じです。

〇レーティング別試合数
130以上 3試合
120以上 6試合
110以上 6試合
100以上 5試合
100未満 8試合

100未満に抑えている試合が8試合もあるのに、120以上も9試合という事はブレブレなわけだ。守れなくなった最大の理由はフォーブス&デローザンがスターターになったことでもあり、「守れないコービー&フィッシャー」なんて名付けました。デローザンがいなければスターターになれなかったであろうフォーブスはシュート力を買われていますが、本当にそれでよかったのかはシーズン通して48勝という結果が示しています。

様々な問題点がありつつも、ひとつの見解としてはデジョンテ・マレー不在によるエースキラー不足により戦略的に守ることが出来ない事情もありました。ガードにエースキャラが多い中で、そこを止める人材不足は試合における戦略性の低さに繋がっていました。

だから今シーズンはマレーが戻ってきて、ついでにウイングで同じくキラー役になるデマーレイ・キャロルを手に入れたのですから、十分に機能すると予想されていました。

しかし、現実は崩壊中。うーん、それはなかなか難しい問題でもあります。1年前ならケガ人が多い中で「デローザン&フォーブスがさぁ」で済ませた問題は、他に選択肢があるのにフォーブスを起用するポポビッチ問題という空気が強くなってきてしまうのでした。

ということで、今回はスパーズディフェンスに触れるわけですが、これがなかなか多岐にわたって少しずつ悪かったりして、触れ始めるとキリがありません。要するに1つが悪いから連鎖しているということです。

最近は特集的に書くのが嫌いなのですが、その理由は大体の要素はゲームレポートの中に書いてしまっているからです。再編集するだけなんだよね。実際。今回はスパーズのいろいろな要素にも触れるため、試合の中で気になった小さな要素を取り上げていくショート・ショートで行きたいと思います。

◉速攻に弱い

①スパーズの基本 トランジションディフェンス

スパーズは素早いトランジションディフェンスを鍛えられているのが特徴ですが、この要素は今でも続いている印象です。だからこそイージーな失点がないのに守れていないのは大いに気になります。

〇速攻からの失点 13.5(19位)

しかし、現実の数字は残酷です。管理人の印象無視です。このことはクリッパーズ戦を観ていると非常によくわかりました。トランジションディフェンスをするのだけど、それ以前にオフェンスが悪くてスティールされすぎていました。ターンオーバーは18ですが、クリッパーズのスティールは11もあり、速攻は26点を献上しており、オフェンスの悪さが崩壊の一因です。ということでここまでの成績をみてみましょう。

〇ターンオーバー 13.8(6位)
〇被スティール  7.4(11位)

うん、そうでもなかったね。ターンオーバーやスティールがリーグ平均を下回るのに速攻で失点しているって事は、純粋に伝統のトランジションディフェンスが悪いって事です。はい。どうすればよいのでしょうか?

②スパーズの伝統 ミドルシュート

ディフェンスの話なのにミドルシュートが題材って恐縮ですが、スパーズは今シーズンもリーグ最少の3Pアテンプトになっており、それでもオフェンスレーティング110を超えるモンスターオフェンスチームです。そういえばレーティング出していなかったね。

〇レーティング
オフェンス 108.0
ディフェンス 110.7

気が付いたら110を割っていました。最近の試合を見ているとオフェンスが酷かったので落ちてしまいました。だけど108でも驚きです。そういえばクリッパーズ相手には得点はとれていたな。

〇ミドルシュートアテンプト 25.0(1位)

2位のペイサーズが18.6本で、30位のロケッツは5.8本です。スパーズとロケッツは20本の差があるって凄い数字だよね。それくらいミドルを打ちまくっているスパーズ。ミドルを打つことの良い部分は

・最近はフリーになりやすい
・少なくとも3Pより確率が高いからカウンターが減る

ということで今回の趣旨では後者が大切です。ロングリバウンドから速攻ってのは流行系ですが、シュートが決まれば問題なし。でも確率は42.9%です。平均よりも決まってはいるけど何ともね。3Pが少ないけどミドルが多くて、そこそこカウンター食らい機会があるってことです。

3Pは少ないけどカウンター食らう可能性があるシュートは多い

ってのが現状なのかもしれません。まぁ、でも、ね。これで速攻の失点が増えたってなると理解に苦しむんだけどね。

そして実はデローザンの存在もあってか、スパーズのミドルシュートは2年前よりも増えています。オフェンス的には43%のシュート数が増えているってのはバッドデータです。

③オフェンスリバウンド

実はミドルシュートが最も多いのはデローザンではなくてオルドリッジです。オルドリッジ自身のミドルってのは昔からの武器なので変化したわけではないし、ダンカンも打っていたよね。

しかし、違いがあるのは「オルドリッジが打った時のリバウンド」です。2年前はガソルと組んでいたインサイドは、シューターのライルズと本来はSFのゲイになりました。2人とも平均1.2オフェンスリバウンドです。そこそこ取っているけどね。

〇オフェンスリバウンド
17-18シーズン 10.4(6位)
18-19シーズン  9.2(27位)
19-20シーズン 10.1(18位)

この3シーズンの変化は顕著でした。本数的には2年前と大きな差がないのですが、ルール変更でペースアップしたこともあって10.1本じゃ少ないです。

かつてはビッグラインナップがお好みだったのに、ビッグマンを並べなくなってきたことで、カウンターの機会が多いシュートに対するフォローも弱くなってしまいました。まぁ数字には出なくてもリバウンドに絡んでいればOKなのですが、試合を観ていても少なくなってきたよね。

オルドリッジも2年前は3.3本だったのが、2.1本まで減ってきました。チームとしてこの部分をどうするのか。「オルドリッジが弱い」と捉えるのか「オルドリッジだけでは不十分」と捉えるのかでいろいろと変わってきます。

ということで速攻での失点が多いスパーズ。その原因はオフェンス面だよねってことでした。でも、それだけじゃないかな。

◉3Pを打たれるディフェンス

トランジションから3Pを打たれるシーンが目立ってきました。戻っていても3Pラインまで捕まえきれていないシーンも多くあったのですが、そもそも3P打たれ過ぎってのは昨シーズンからの流れです。

〇被3P
アテンプト 26.3(4位)
     →32.7(18位)
     →34.0(16位)
成功率 34.8%(4位)
   →35.9%(18位)
   →35.7%(15位)

かつては打たせなかったのが、今では打たれるし決められるチームになりました。個人で言えば、もちろん最も多く打たれているのはハーデンですが、そんなエースガード相手には復帰したマレーの存在でカバーしたかったわけですが、数字的には全く改善していません。ということで個人ごとのデータをみてみましょう。

①個人の3Pディフェンス

ところで1年前も同じことを書いていますが、個人単位の被3Pアテンプトと確率はこんな数字でした。

〇被3P
ミルズ 4.7本 38.0%
ホワイト 4.2本 31.3%
ゲイ 3.9本 34.0%
フォーブス 3.7本 39.6%
カニンガム 3.6本 44.6%
デローザン 3.5本 37.3%
ベリネリ 3.0本 32.9%

これを今シーズンバージョンに変えてみましょう。

ホワイト 4.3本 27.2%
ゲイ   3.9本 42.6%
マレー  3.7本 28.4%
ミルズ  3.5本 34.8%
オルドリッジ 3.4本 37.0
フォーブス 3.3本 41.2%
デローザン 3.3本 48.2%

パッと見て気が付くのは、デローザン、フォーブスの悪さですが、ここは想像できた範囲ですし、ディフェンスを優先的に考えるなら2人を同時起用できません。オフェンス考えたら同時に使いたいけどね。

ホワイトとマレーは打たれたとしても確率を落とせているわけで、「打たれてしまうチームディフェンス」「決められてしまう個人ディフェンス」みたいな構図になっています。

さて、今シーズンの特徴はゲイとオルドリッジです。メインビッグマンが打たれるは、決められるは。ちなみにライルズは30.8%と抑えていますがパートルは48.0%も決められています。

そんなわけで最大の問題はビッグマンがアウトサイドを守り切れていない事。タウンズに打たれまくったのは気になったところでしたが、逆にロケッツが相手だとカペラがインサイド担当だったので守りやすそうにしました。スモールにされると一気に崩壊してもいました。

スパーズのビッグマン相手には3Pで崩しておこうぜ!

②引き出されたビッグマン

〇ペイント内失点 49.4(21位)

速攻からの失点も多いので当然ではありますが、それだけでなく3Pでビッグマンが引き出されてインサイド攻略されるのも目立っています。いや、正確に言えば

「3Pを打たれる」のか「インサイドを攻められる」のか。どっちかにしろ!

というのが重要です。打たれるなら打たれてリバウンド抑えとけよ。ここの判断が甘いというか、捨てきれていないというか。非常にあいまいになってきました。バックスを見習おうぜ。

試合の印象としては基本的にビッグマン達、「達」っていうかオルドリッジは3Pへのチェックが甘いです。甘いけど、だからといってインサイドカバーできているわけでもないよね。

〇ブロック数 5.9(7位)

でもね。ブロックは多いんです。こういう数字を残されると「ディフェンスって何なんだ?」と気になってしまいます。ブロックが多くてもペイント内失点が多いんだよね。効いていないのか、速攻でやられ過ぎなのか。

〇ディフェンスリバウンド率 74.7%(5位)

そしてリバウンドも抑えられているんだよ。じゃあなんでペイント内失点が多いんだって?

インサイドを守れているのか、守れていないのか。いまいちよくわかんない

3Pを守れていないスパーズは、インサイドも守れていません。でも、ブロックは多いし、リバウンドも確保できている。

ちなみにバックス、ラプターズ、ヒートは被3Pアテンプトが多いけど守れています。もちろんペイント内失点が少ないわけです。まぁ3チームとも苦しく追い込んだ結果として3Pを打たれている事情もありますが。

いずれにしてもトランジションディフェンスも含めて、もっとガッチガチにインサイドを固めれば良いのにね。どうせ3Pまで守るほどの力は現時点ではないでしょ。そう思うのでした。

◉鮮やかに攻略される

スパーズの試合を見ていると、時に驚くほどに鮮やかに崩されることがあります。サンズがオルドリッジにヘルプにこさせておいてアシストを決めるシーンは非常に印象的でした。「絶対にここにヘルプに来るだろ」と読み切った崩し方。

①アシストされる

〇被アシスト数 25.4(24位)

そのためハッキリとアシストされています。崩されるにしても、難しいシュートに誘導できるなら良いのですが、そういうこともないので。

そりゃあ、まぁ3Pで引き出されて広いスペースが生まれれば攻略もされるってわけですが、かつてはスティール力もあったのですが、奪い取れないってのも厳しいのかもね。

②マークの気持ちが強い

気になるのはここ。オルドリッジがヘルプに行くとセンターが空くってのは当然ですが、自分のマークに集中している選手が多いって事。ヘルプ後のカバーローテーションに課題がありそうです。課題っていうか、そもそもマークを捨ててカバーに行こうとしていないからチームの問題です。

一方でマークの気持ちが強いならば相手エースをマレーやホワイトが止めに行けば失点を減らせそうなのですが、そこはスクリーンに対してチェイスしきれない一面もあり、スイッチ対応も増えてします。チグハグ。

管理人は「キャロルを使え」派なのですが、その理由は単純にキャロルがオールラウンドに守れるからです。マークの意識が強すぎてスキが生まれ、マークしていてもスイッチされたり弱い所を崩されるならば、何でも屋さんを増やさないといけないよね。さすがにデローザンとフォーブスにそれを求めるのは難しい。

③ガード陣のバランス

ということで考えてみよう。マレーとホワイトがエース格相手にチェイスする担当だったとしたら、デローザンやフォーブスはカバーリング担当じゃん。いや、それは無理だろうね。2人合わせて無理だろうね。

ガードが多すぎる割に広い範囲をカバーする役割が足りていません。たまにスモールラインナップをディフェンスのために利用するチームがありますが、それは走れる選手で少しでもスキを減らすためですが、スパーズの場合は多いだけでちょっとね。

ウイングディフェンダーが足りないというよりは、オールラウンドに守れるタイプが欲しい今日この頃。このガード過多問題は離し始めたらキリがないから辞めときましょう。

◉結局は何なのか

結論としては全てが少しずつ足りな過ぎて困ってしまうって事です。もしも明らかに何かが足りないなら簡単ですが、どうしても崩されてしまう現状はどこから手を付けて良いのか悩んでしまう。

スパーズは再建に振り切るべき

という意見があるようですが、そう思われる理由が手の付け所がないからだと思います。ちょっとずつ修正するんじゃなくて根本から作り直した方が早そう。しかし、そこはポポビッチなので作り直したところで手法は同じじゃん。同じって事は、それなりの選手を連れてこないといけないよね。それって誰だよ?

ガード過多は何とかしないといけませんが、将来に向けての再構築の前に、チームの選手構成としてウイングを増やしてオールラウンドにカバーしてくれる選手を連れてくるのが先なんじゃないかな。わかりやすくいえばコビントンあたり。でも今更コビントンいれてもアレだから、若い選手をいれたいね。クルッツ取ろうぜ。

まずはウイングを何とかしろ

ぐらいしか言いようがないよね。ビッグラインナップ化してディフェンス力強化に移行したチームが多い中で、逆の方針を採用したスパーズが守れてないわけですから、非常にわかりやすい。

再建に振り切るってのはデローザンとオルドリッジがこの問題に関与しているからエース格を放出したほうが早いって事もあるのでしょうが、誰をトレードするかがとっても難しい。獲得する選手も難しければ、放出する選手も難しいし。

そしてこの問題はチーム設計の失敗だから、そもそもって話です。キャロルとライルズを獲得したときはウイングの補強だったのですが、2人の働きが悪いのか。それとも、これからフィットさせていくのか。

いずれにしても動かないとジリ貧になりそうなスパーズ。例年この時期ぐらいまではチーム作りってことで仕方ないのですが、解決の糸口がこんなにも見えないってのは初めてかもしれません。完全に攻略されてしまうシーンが多くなったので、スカウティングの見直しも必要なのかも。

あと、ちょっとACが離脱しすぎた気がします。

スパーズのディフェンスは戻らないのか” への5件のフィードバック

  1. キャロル ライルズを取った割にって感じですよねー。イグダラ兄さん程じゃないにしても、広くそして強くも守れてオフェンスでも浮かない3・4番ウイングいるのにうまく使えない。それはエースとカード陣との相性なのかなんなのかって感じですよねー。

    ビックマン過多のスパーズ時代のがまだやれそーなんよなー。新しい事をするにしても、フォーブス・マレー・ホワイト・デローザン…うーん(あっミルズとガリナリもかな…尚更うーん…)

    確かポポさん3年契約ですよね~ 単年契約なら、『来年からどーなるか分かんないし』となれるけど、『これであと3年かー』とゆう憂鬱感ですよね。

    オフェンス力にふってきた頃のスパーズ(ダンカン引退前の数年)でも、守備力はある程度ありました(それまでがオールドスタイルだったから、守る基礎をたたき込まれたメンバーだったのが大きいっす パーカーは守れないのは得点力があるから許されただけ)

    その頃のメンツも0になり(最後の生徒のレナード・ダニーも卒業しました)アシスタントコーチ陣も手薄。このダブルパンチですかねー。今のスパーズの切なさは。

    まぁー変換機だろーと思うので、うまく『次の時代のスパーズ』像を少しでもイメージ出来たら楽しめるんだけど、ポポさん色は良くも悪くも薄まらない現状なのかなぁー。

    ほんと 何も言えねー って感じかなぁー

  2. スパーズ厳しいですね。今日も4ガードの時間帯にボコボコにされました。クリッパーズのディフェンスが良くて崩せず、高さがなくて守り切れずで、かなりストレスでした。セカンドユニットは強いのですが、とにかくスタメンが苦しいです。シーズン最初から3、4ガードが有効な場面は殆どなかったと思いますが、ずっとポポヴィッチは固執してます。ディフェンスで穴になる上に、シュートの調子が悪いフォーブス・ベリネリを重用して、ディフェンスの良いキャロルを干している理由も分かりません。今シーズンのポポヴィッチはどうしたんでしょうか?
    トレードするならキャロル、フォーブス、ベリネリでイグダラを狙うのはどうですか?若手のプレータイムが増えますし、今シーズンでイグダラの契約は終わりになるので、オフにハレルやボグダノヴィッチを狙えます。

  3. デローザン、フォーブスの部分が見ててディフェンス、オフェンス共に厳しい気がします。チームとしてはカバーディフェンスしてほしいんだと思います。セカンドはまだしているし、それがゲイの被3pに繋がっていると思います。オフェンス面でもオルドリッジのポストアップなどに対してもフォーブス、デローザンのオフボールの動きがないので最終的にヒーローボールになっていると思います。あとデローザンの周りにシューターつけたいのはわかるんですけど去年はベルターンスがいたのでサイズ面は大丈夫だったんですけど今年はガードしかいないのでより厳しくなっている感じです。フォーブス、ベリネリを出すよりキャロル、ロニー ウォーカーを出してディフェンスを高めてトランジション狙って欲しいです。正直トレードはよくわかりません。

  4. メトゥ「そろそろ俺も起用して欲しいぜ、チームは俺から何を見出したんだ?
    俺のシュートセレクションの悪さ?気にしない気にしない」

  5. SASはロニーウォーカー、ケルドンジョンソン、メトゥ、Gリーグのサマニッチみたいな身体能力のヤバイ若手が安定して使えるようになってくると、チームとして2段階くらい上がるような気がします。そのためにまずベテランのPTを削っていきたいんですけど、ポポって若手あまり使いたがらないから難しいですね。

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