デリック・ローズとシューター

ピストンズの話

3Pシリーズにおいて触れようとしたけど、文脈的に触れなかったのがピストンズの話。「3Pの上手さ=確率の高さ」とは言えなくなってきた今日この頃は、「3Pの上手さ」は「難しいシュートを決めてしまう力」とも変換できます。イージーシュートを生み出せなくても、決めてしまえばよいわけで、決めることでオフェンスの拡張性が広がるよとね。ピストンズはそんなタイプのシューターを3人も抱える珍しいチームです。

ウェイン・エリントン
ラングストン・ギャロウェイ
ルーク・ケナード

エリントンはニックスへ行きましたが、レイカーズから獲得したスヴィ君もいるので、傾向値としては変化ありません。スポットシュータータイプではなく、ムービングからも決めることが出来るシューターが好きなピストンズ。

シューターの時に触れたのは「プルアップ3P」が上手いエースタイプというのもありましたが、そういう選手はいません。ケナードは多少やるけど、基本的にはシューターなシューターばかりです。一見すると価値がありそうなロスター構成で、グリフィンとドラモンドというインサイドがいるのだからチャンスが多そう。

〇3Pアテンプト 34.8本(6位)
〇3P成功率   34.8%(23位)

実際に多くの本数を打ったけど、その効果は微妙。シューターを揃えた割には決まらなかったのです。ただし、エリントンが決めてくれたからプレーオフに進めたのも事実です。

チームコンセプトとして機能していそうなインサイドエース+シューターでしたが、確率が向上しなかった理由はグリフィンがアウトサイド好きだったことと、シューターの確率が上がらなかったからです。40%超えないシューターたち。

〇ワイドオープン3Pアテンプトと確率
ケナード 2.3本 41.4%
ギャロウェイ 2.2本 34.7%
エリントン 2.1本 42.4%

もう少し確率を上げてくれってのもありますが、3人合わせても1試合に6.6本でした。正確には途中加入のエリントンがきてケナードとギャロウェイの出番も減ったので、1試合6本くらいだと思いましょう。

実はレジー・ジャクソンとグリフィンの2人で6.2本のアテンプトがあります。つまりはワイドオープンになるのがシューター以外だったというか、空けられたというか。理に適っていると思われたインサイドアウトの構図は机上の空論っぽくなっています。

〇グリフィンのパスから3P
チーム全体 8.6本 34.6%
エリントン 1.0本 36.1%
ギャロウェイ 1.0本 30.8%
ケナード 0.7本 32.7%

グリフィンのパスから生まれた3Pは確率が低く、特にシューターとされている選手なのに悪かったことがわかります。インサイドアウトの失敗。これは考え方を変えると「インサイドアウトの3Pは確率が高い」という常識の裏に「インサイドアウトのプレー自体の成功率は高くない」なんていうことも考慮しないといけません。だれでもパスが出せると思ったら大間違いだし、日本も八村のポストからよい3Pってそんなに出てこなかったし。

グリフィンは比較的パスの上手いビッグマンですが、ぎりぎりまでパスを出さない系統なので、ディフェンダーからするとローテーションが間に合うので、空ける選手を絞りやすかったかもしれません。いずれにしてもインサイドアウトを狙ったロスター構成は3Pアテンプトの多さに反して、決めきれない構図を生み出していました。

まぁそれでも決めるのがシューターなので、まだまだ実力不足なケナードとギャロウェイではありますが、エリントンですら決まらないしな。それ以上にシューターを揃えた割には、打たせるパターンになっていないような。

◎ケーシーとグリフィン

これらの問題は経験豊富なドゥエイン・ケーシーでも解決できませんでした。元々、前任者スタン・ヴァン・ガンディ時代にシューターを集め、特徴的なハンドオフオフェンスで多くのシューティングチャンスとインサイドのギャップを生み出して行きましたが、特徴的過ぎて相手に対策された時に次の一手不足になり、しかもグリフィンが来て終わりました。つまりは当時のピストンズは

シューターで広げる→インサイドのドラモンド

な流れが強かったし、困ったらトバイアスでした。シューターから始まってエースが最後に行くぜ!
当時のピストンズ。ハイポストのドラモンドを経由して、ほぼトップ~ハイポストしかボールが動かないのに、適切にシュートを選ぶことでフェイクも聞いてドライブも成功させていました。管理人はこのオフェンスを継続してくれるチームを求めています。さぁこいクリス・ポール!

一方のケーシーはエースから始まるオフェンスが好きなタイプであり、シューターはコーナー担当がメイン。ラプターズではデローザンとラウリーがドライブキックアウトしてアヌノビーみたいな。CJマイルズはいたけどシステム的に上手く絡んでいたかっていうと?

グイフィンが44点8アシストだったクリッパーズ戦。トバイアスとの点の取り方が大きく違うことがわかり、44点だけど個人技だらけです。そういうオフェンスを求めてきたってことでもあります。本当はグリフィンがハンドオフに加わわれるならよかったんだけどね。HCまで交代しちゃったからさ。

ピストンズはHCとエース交代でシューターの存在意義が変化してきました。オフェンスシステムの中でディフェンスのバランスを崩す一手目・二手目だったのが、エースのアタックからフィニッシュする最後の一手に変更。だけど、それを決めきることが出来なかったし、決めさせるパス能力もなかったような。

なお、これをやるならシューターじゃなくてスポットシューター系でディフェンスに優れた選手で良いんだけどね。ケナードに価値があるうちにトレードしておくべきだったのかどうか。

◎タイムスリップしてきたローズ

じゃあこのオフェンスが悪いのかっていうと、そもそもケーシー時代のラプターズは成立していたし、ロケッツなんてこればかり続けるし、戦術レブロンなんて言葉はあるしで悪いわけではありません。優勝ってなると考えるけどさ。

そこで重要になっているのがPG陣のドライブキックアウト。現代NBAでは得点能力が高いPGが求められているけど、本当にPG扱いされるのはキックアウト能力があるPGだけで、単に得点力がある場合はSGにコンバートされています。

そう、なんだか思い出しませんか? 本日10月5日が31歳の誕生日となったデリック・ローズ。かつてのMVPは得点能力に優れているけどキックアウトに乏しい純正PGです。そしてウルブズではSG気味に移されたりもしました。

MVP獲得時のブルズの3P本数は17.3本。今ならばフリーじゃなくても打つ本数ですが、当時はキックアウトパスの必要性が低かったわけです。それがケガによってキャリアが終わるかというところから、昨シーズンは50点ゲームを達成するなどMVP当時とはいえないものの、復活してきました。

でもウルブズのライアン・サンダースは知っていました。ブルズ型にしないとローズ中心にするのが苦しいことを。6thマンのローズにはハードワークで支えてくれる選手を揃えてベンチユニットにしました。これはこれでなんとなく成功したのでした。プレーオフに出てなくて成功と言えるのかはアレだけどね。

旧ブルズメンバーに強い旧型タイプの選手たちの中ではローズは対応していった方ですが、6thマンとしては得点力に優れていたこともあって、ローズにはローズなりの戦い方を模索していたウルブズでした。

◎ローズとシューター

効果的な3Pを決めることが出来ていないシューター
パスアウト3Pをシステムに練りこめなかったケーシー
キックアウトパスを使いこなせていないローズ

さぁどうなるのかピストンズ。現在のロスターで実績があるPGはレジー・ジャクソンとティム・フレイジャーの2人だけ。フレイジャーを実績あるといってよいのかどうかわかんないけど。

一方でSGにはブルース・ブラウン、ケナード、ギャロウェイ、スヴィと並べているので、この様子だとローズをPGだと捉えているのかな。ということはシューターたちとの関係性が大いに気になるところです。突破からのキックアウトを狙う可能性が高いケーシーなので、フィニッシュ担当としてのシューターになりそう。

そして、このシューターたちを輝かせることが出来るかどうかがローズが現代化できるかどうかの最大の注目点。デローザンを抱えていたようにミドルの選択も否定しないケーシーなので、ローズが自分で得点を狙いに行く点については、比較的やりやすいHCだと思いますが、だからこそ次のパスの選択をどうやれば染み込ませられるのか。

それはシューターたちにとっても死活問題。イシュ・スミスがいなくなったことで、信用できるパサーが減りました。ローズが適切なパスを出してくれないと存在価値が薄まっていきます。ケナードとスヴィは自らのプレーメイクでも打てますが、それをすると今度は個人技ばかりのチームに。

ローズとシューター。それはピストンズが抱えるバランス問題。

突破型PGにパワードスピードのエース、周囲をリバウンド王とシューターで固める構図は論理的なのですが、そのポテンシャルを発揮しきれていないとも言えます。またもパサータイプを選ばなかったピストンズはローズに現代PGへの脱皮を求めているのか。

デリック・ローズとシューター” への8件のフィードバック

  1. 『決めることでオフェンスの拡張性』

    これですこれ この文章を前のコメントの『スラムダンク的昭和世代ガード・センター話』で言いたかった事です。

    スリーだろーがレイアップだろーが拡張性に繋げれるプレーかどーか。だからテイタムは…いや、ここはグリフィンか

    マックス契約を提示しないと契約出来ない感じだけど、怪しいマックス契約ランキングして欲しい。(客寄せパンダとしてのマックス価値をどーとるかなんですけどね プレーだけじゃないから『給料泥棒』と言いづらいから難しい)

    給料泥棒ランキングならだれが上位なんだろー(反対に自分を安売りし過ぎ選手も最近は目立つなー ジェフ・グリーンとか)

    グリフィンとラブって昔から価値を見定めにくいっす

    グリフィンとローズの共通点としての『パス(アシスト)もするけど、貰う側タイミングじゃなくて、出す側タイミングでのパスタイプ』は同じチームでプレーしたくないなぁー どんなに個人技が凄くても。一応、パスは来るから余計に話がややこしいんですよねー

    パスに愛が感じられないっす

    1. マックス契約は難しいですね。チームの功労者的な事も含めて提示したい事情と、エース不足のチームが横から提示してくる事情と。
      グリフィンの場合は争奪戦なく決着している前者ですし、それを知ってて獲得したピストンズにはトバイアスを残すマックスは提示しないであろう事情もありましたし。

      スーパーマックスが出来たおかげで、マックスの価値が下がったし、2番手エースもマックスになりました。その一方で5番手以降がミニマムになったりと問題ありますね。

      NBAの場合はそれを選手会も望んだ事情があるので、さらにカオス

  2. 平時はシューターに重きを置いたセットを多用して隙にグリフィンでアタックがいい。あんまりピストンズの試合見てないですがグリフィンでゴリ押しが多かった気がします。シューターに対するドラモンドとグリフィンのハンドオフとローズのキックアウト、これが増えてくれればなあ。
    ローズってベンチからの方がいいですかね?

    1. 本当はグリフィンってセンターやらせるべきなんですが、ドラモンドだけじゃなくてチームにそんな意思がないんですよね。センターやらせるならローズと同時起用もありですが、グリフィンとドラモンド並べたらローズは不要です。6THマンで!

  3. ドラモンドをフランチャイズの中心にする時点で
    もっと守備職人多めのチーム構成にするべきでしたね。
    解体前MEM並みのスローペースにしないと勝てるビジョンがうかばない………

    単純にドラモンドと4人の3Pシューターじゃだめなのかい?

    1. ドラモンドは割と走りますよ。主役になりたがるけどチームのために献身的なので、スプラッシュやレインブラザーズと組んだらハマると思います。
      でも、レジー・ジャクソンとグリフィンはそういうタイプではないのでね。

      弱いインサイドを1人で担当するのがドラモンドの能力を最大限に使う戦略だと思います。

  4. その日だれか調子良かったら強豪とまあまあ戦える的なチームがピストンズの印象。
    ショボいレブロンキャブス的な。
    勿論神通力はグリフィンよりレブロンだしあんまり噛み合ってなくても勝てるレベルもここが限界。
    ローズはキャブスにいたなぁ~そして全然でしたね。

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