イングラムとロンゾは完成するのか

すごいオフシーズンだったペリカンズ編

ラプターズの優勝で幕を閉じ、ラプターズとウォリアーズの記事を連発しようとしていた頃に優勝チームを台無しにするトレードを成立させたペリカンズ

『レブロン以来の逸材』とすら言われるザイオンを指名した時点で100点のオフだったといえるのに、イングラム・ロンゾ・ハートまで手に入れたのならば120点をあげたくなります。本当に完璧すぎたペリカンズのオフ。

でも、それだけじゃ終わらなかったのが脅威

◎ニュー・ヤング・コア

2K20でペリカンズを倒せ、ってのがありましたが初心者の管理人は大苦戦しました。イングラムはシュート落とさないし、ハートはコーナーから的確に決めてくるし、ホリデーのスピードは追いつけないし、ザイオンは気が付いたらフリーだし。ロンゾはまぁ。

PGロンゾ(2位)
  NAW(17位)
SGハート(30位)
SFイングラム(2位)
PFザイオン(1位)
C ヘイズ (8位)

16年ドラフトからの1巡目が充実しているロスターは一気にリーグ最高クラスのヤングコアになりました。個人的にはSGAのいとこNAWことニケル・アレキサンダー・ウォーカーに期待していますが、ザイオンも含めてルーキーたちを事前に評価するのは好きじゃないですし、チーム事情やケガによって大きく揺らぐので、「各ポジションに揃えたね」くらいにしておきましょう。

ただし、NAWが魅力的に映る理由は少しわかっています。ルーキーという指標から年齢という指標にずらしてみましょう。

ザイオン 19
ヘイズ 19
ロンゾ 21
NAW 21
イングラム 22
ハート 24

ワン&ダンが増えたことでトップクラスの有望なドラフト指名選手は若く未完成で、その次のクラスは大学に複数年通ってのNBA入りになりました。もっとも有名なのは2巡目指名ながら新人王になったブログトンですが、この傾向は非常に強く、1年しか大学に行かずにスーパースターになる選手と、NBAにきたのは良いけど未熟すぎてプレータイムがもらえずに埋もれていく選手がいます。ちなみにペリカンズには2015年3位のオカフォーもいますが、ハートよりも若い23歳です。心もスキルも未熟だった。

個人的には2年くらいは大学に通った方がスムーズにNBAに馴染めると思っています。一部のスーパースターに騙されるけど、多くの普通のスターはプレータイムがないと自分を形成することは出来ないわけで。その意味でNAWが魅力的に映る理由がわかってきます。ホリデーもいる中でプレータイムがどれだけあるかわからないけど、短い時間でもより完成されているならアピールする機会はあるはずです。

しかし、ここで言いたいのはむしろロンゾとイングラムの話

この2人はドラフト2位でNBAにきて、何とも言えない時間を過ごしてきました。典型的なワン&ダンの悩みを抱いていた2人は、チームの中心としては非常に物足りなく、だけどそれなりに活躍しているので将来を期待したくなる2人でした。だからといっていつまで期待すればよいのかもわからない。

だたこの2人がオカフォーと違うのは、多くのプレータイムを得ていた事。ちゃんと経験を積んだうえで今に至っています。「デュラント並みの才能」なんて分不相応な期待値があったから苦しかったイングラムと、「ショータイムレイカーズの新たな象徴」なんて期待値があったから未熟な面が目立ったロンゾ。そんな期待値フィルターを外してあげられるニューオリンズに来たことはポジティブでしょう。

正直、レイカーズにいたことで過大評価されていると思いますが、その過大評価が落ちてきたところと、それぞれがレベルアップしていったところが、そろそろ合致するシーズンになるのではないかと思っています。

〇イングラム
1年目  9.4点 FG40.2%
2年目 16.1点 FG47.0%
3年目 18.3点 FG49.7%

イングラムの改善ポイントはFG%。しっかりと得点を伸ばしたうえでFG%を向上させているので堅実な選択肢を選べるし増やせるようになっています。デュラント同様に止められない打点のショートレンジは大きな武器として定着してきました。

ただし、イングラムはフリースローが70%を下回り続けていて、シュート力そのものが大きく改善したとは言い難い感じです。3Pをあまり打たない点も含めて、そもそものシュート力がデュラントとは違います。「止められない打点」+「高いシュート力」がデュラントならばイングラムは前者のみって感じ。

リバウンド5本前後、アシスト3~5本くらいで安定してきており、チームシステムが変わることで変化はあるでしょうが、概ねなんとなくプレイヤーとしての骨格がみえてきました。それは限界があるとかではなく、「イングラムはこういう風にプレーさせる」という方法論がみえてきた、言い換えれば

イングラムが最も力を発揮できる起用法がみえてきた

という感じがあります。例えばサイズがあるのでデュラントのように『PFにしてスモールでの有用性を使う』というのは、シュート力自体には悩んでいる現状ではアウトサイドに引き出しにくく、マッチアップの優位性は使いにくいので好ましくありません。それよりも正確なショートレンジを生かすために、オフボールでの連続した動きを混ぜ、ウイングから小さなスクリーンを用意してショートレンジを打たせるべきでしょう。

相手がスモールできたならば合わせることも出来ますし、そこそこ万能ですが、ポジション的な万能性よりも確実性の高いショートレンジを使う方向性を目指すと思われます。パス能力はあるもののパスセンスがあるとも言いづらいので、パサーってのも違います。

こうして3年が経過し、ある程度見えてきた部分があるから起用法を考えやすく、それでいて本人も自分の武器を認識してきた感じです。オフのトレーニングで弱点を埋めるのか、長所を伸ばすのか、いろいろとありますが、いずれにしてもペリカンズとしては

3年の経験を積んだ若手有望株を手に入れた

ってことになります。超有望なワン&ダンは未完成でも高い順位で指名して育てる必要があり、大学で経験を積んだ選手は下位でも指名できるけどワンランク落ちる。そんな現状の中で有望なワン&ダンが3年の経験を積んで成熟しかけたところで手に入れたのだから大きなメリットがあるのでした。

要するにロンゾにしてもイングラムにしてもハートにしても、ちゃんと経験を積ませてくれたレイカーズに感謝しているし、レイカーズの育成問題うんたらだけでなく未熟系が3年目までに花開くってのは簡単ではなかったので、さらにラッキーみたいな。ディアンジェロにしろランドルにしろ似たような感じなんでね。レイカーズが未熟者たちにプレータイムを与え、経験を積んだ後で他のチームが完成させる構図なんだよね。逆に2年以上大学に通ったクズマやハートは早めに結果を出していたわけだし。

ロンゾの方はFG40.2%、3P32.9%と未だに正しいチョイスと実力が届いていないので、もう1年は待ちましょう。ディアンジェロだって4年目でネッツに来て輝きを見せ、5年目でオールスターなわけだし。ロンゾはおやじ問題が片付いたことが大きいともね。レイカーズファンはこれがもっとも羨ましいだろうに。

◎クリス・フィンチのオフェンス

ペリカンズがプレーオフに進めるようになった理由はクリス・フィンチのオフェンスがハマったからでした。トランジション系が多いシステムですが、それ以上にボールムーブとポストを利用してディフェンスに死角を多く作り、ギャップにオフボールカットしていくのが印象的なシステムで、ナゲッツにおけるヨキッチシステムの源流となり、ADを見事に生かしながらムーアみたいな選手を有効利用しました。

当然、このオフェンスはザイオンに注目が集まります。1on1で突破させるのではなく、チームオフェンスを有効に絡ませたうえでインサイドのイージーシュートを作り上げようとするでしょう。

そんなザイオン以上にイングラムとロンゾにとっては非常にありがたいオフェンスシステムになるのではないかと考えています。そしてこの点がペリカンズが2人をとったポイントになっている気もします。

ロンゾの欠点はハーフコートオフェンスで3Pを打つ以外に手段を持たなかったこと。プレーイメージの欠如になるわけですが、パサータイプの選手にとってパスを出す先のイメージがないって致命的です。ペリカンズはパッシングオフェンスを好んでいるためボールの受け手が頻繁に登場し「3Pを打つしかイメージがわかない」というシーンが減ることが期待されます。ただし、フリーなら打ちまくるのもペリカンズだからそこは難しい。

次にロンゾは身体能力があるにもかかわらず3Pを打っていたというのはドライブのためのスキルレベルが低いともいえます。ドライブからのストップジャンパーのイメージもないしね。その一方で身体能力による豪快なフィニッシュはできるので、パッシング&オフボールムーブの後者でも力を発揮できそうです。要するにギブ&ゴーを大幅に増やすのではないでしょうか。

トランジションで無類のパスセンスを披露し、豪快なダンクも見せるロンゾにとって

クリス・フィンチの早いテンポでパッシングとオフボールカットを繰り返すオフェンスシステムはハマる

そんな気がしています。とはいえ劇的には改善しないでしょうからロンゾはあと1年は待ってあげる必要がありますが、ディアンジェロがネッツの再現性あるシステマティックなオフェンスでパスセンスを披露したように、ロンゾもペリカンズでハーフコートでもセンスを披露するかもしれません。少なくとも他のチームよりも可能性を感じさせるロンゾ&ペリカンズです。

この点はイングラムにも当てはまります。もともとサマーリーグではロンゾとのトランジションコンビは機能しそうだったのですが、いろいろとあって機能しませんでした。ロンドやレブロンも含めて、PG達とハマりそうでハマらなかったイングラムは、時に自分がPGにもなりました。

イングラムの課題は弱いフィジカルと1on1を仕掛ける個人パターンの少なさです。懐の深いハンドリングと堅実なボール回しなんかも出来ますが、堅実なんだけどブレークできないという雰囲気です。レイカーズは個人での仕掛けを求める構図が多すぎ、マッチアップ相手によって成功する試合もあれば通用しない試合もあって、安定したプレーになりませんでした。

ペリカンズの早いテンポはフィジカルコンタクトを減らしてくれます。それだけのパッシングも求められますが、イングラムも全体のボールムーブは問題なくこなせるはずです。

そして何よりもあのサイズと止められない打点を持つイングラムがオフボールでカッティングしてくるとイージーにフィニッシュできるはず。ムーアみたいな神がかった消える動きはできなくても、オフボールでの動き出しを学べば一気にフィニッシュすることが楽になるはず。

オフボールカットを学ぶことでフィジカルコンタクトを減らし、確実なショートレンジが活きる

トランジションはもっていたレイカーズでしたが、力づくなケースが多く、消える動きを混ぜ合わせないので常にタフなシュートを選んでいた印象です。それが好きだったランドルみたいな例と、コンタクトされたら弱かったディアンジェロみたいな例と。イングラムは中間くらいでしたが、やっぱりコンタクトしないのが好みのはず。

ロンゾとイングラム両者の特徴を考えると、共にオフボールの動きが効果的に混ざることで相乗効果を生み出してプレーレベルが安定する気がしています。ペリカンズのオフェンスはADにフィニッシュさせる前提で構築されていましたが、その要素を上手く調整すればパサーのロンゾにとっては特にありがたいはず。

◎すべてを担うホリデー

イングラムとロンゾにとって足りない最大の要素は、いや正しくは2位指名の選手として足りない要素は、いわゆる『ゴートゥーガイ』になれるかどうかでした。チームが苦しいとき、接戦の勝負所で任せられるエースになれるかどうか。ドラフト2位ってのはそれを求められるし、だからこそ未熟でもワン&ダンでの有望株が求められるわけです。

ペリカンズが似合っていそうな2人ですが、残念ながらこの問題は解決しそうにありません。ディアンジェロは確かに5年かかったけど見事な 『ゴートゥーガイ』 になれたけど、ロンゾとイングラムからその空気は今のところ感じません。まぁディアンジェロにもなかったけど。

しかし、このチームにはザイオンがいて、何よりもホリデーがいます。

オフェンスシステムが合っていても、結局はどこかで効果的に個人で突破していかないとシステムも死んでしまいます。ADを活かすシステムだったけど、そんな個人の部分は常にホリデー。エースキラーをやりながら 『ゴートゥーガイ』 だった全てを担うエースの存在は頼もしい限りです。

それってレブロンがいたじゃないか。と言われそうですが、レイカーズでもやっぱりその要素は強かったし、レブロンに頼っていた。そう「頼っていた」ってのも問題でした。

戦術レブロンと評されるように、レブロンは起点としてプレーを構築しフィニッシュまでしてしまう特別な存在です。それは周囲に「レブロンから始まるプレーに合わせる」ことが求められました。イングラムとロンゾの低い3Pではちょっと意味がなかった。

ホリデーはあくまでもフィニッシャー。イングラムとロンゾはチームオフェンスを組み立て、その中で必要な時はホリデーにフィニッシュしてもらうことが出来ます。自分たちがよりプレーに関与しているイメージを沸かせられるはず。シュート力よりもチームオフェンスに参加することが大切になりそうです。

だからフィニッシャーを抱える構図の方が似合っていそうなイングラムとロンゾ。ドラフト2位としては物足りないのも事実だけど、そこはホリデーの契約が切れてから考えよう。

これらはただの机上の空論。そこまで上手くいくとは思えません。だけど、最後に何とかしてくれそうなホリデーを残せたのはペリカンズとしては大成功だったと思うわけです。イングラムとロンゾでは結局は最後のプレッシャーに負けてしまうチームで終わりそうだったのが、「若手中心だけど、勝てそうなチーム」にしてくれるホリデーの存在。

120点だったペリカンズのドラフト&トレードは、チームシステムに合いそうな選手を手に入れたことで+10点、ホリデーを残せたことで+20点なのでした。普通はこれだけの若手を手に入れたら失っていたはずのエースなのでした。

◎続く

今回は「ペリカンズのオフは200点」という題名だったのですが、イングラムとロンゾだけで十分な気がしたので変更になりました。ということで次回に続く。残りの50点が何だったのかを書いていくのでした。

なお、あくまでもザイオン(とルーキーズ)で100点です。ザイオンが活躍できなければ一気に得点が落ちるわけですが、0点になっても100点残るんじゃないか予想です。

イングラムとロンゾは完成するのか” への8件のフィードバック

  1. 個人的にザイオンの理想像は攻撃力を少し上げて守備力を少し下げたドレイモンドグリーン…なんて思ってます
    運動量の多いチームになりそうなのでフィジカル面の負担は減りそうにしてもザイオンとイングラムとロンゾはやっぱ怪我が心配ですね…
    それでも彼らがいなくともムーアやレディック、フェイバース、フランクとシステムを維持出来るかはともかく、そのレベルのロスターが残る強みは感じるのでかなり期待してます!
    高速化とロードマネジメントが最近のNBAなので特に!

    1. ザイオンのオフェンス負担を減らして、ディフェンスから整えていくのならばレナード路線で良いかもしれません。
      それもすべてはロンゾとイングラム次第ってことで。

      初年度に負荷をかけると思いきや、ザイオンには余裕のある状況を生み出してあげようとしている気がします。

  2. トランジションオフェンスで化け物!が初年度最大値な気がするザイオン。
    だからバークレー、ケンプな訳で。彼らは徐々にシュートエリアを広げていきましたね。
    時代が違いますが彼らの横にはケビンジョンソン、ゲイリーペイトンがいた時が最高だった。ホリデーがいることはそういう意味で良さそう。
    ロンゾはまずシュート力をなんとかしないと。
    イングラムはもう頭打ちな気が大きくします。
    僕としてはレディックの存在が大きいと思いますね、ザイオンと相性が良さそうなのは外中外、中外中の関係性をもてるホリデーやレディックな気がします。元々ペリカンズはイングラム、ロンゾよりテイタム、ブラウンの方が好きだったし。どの程度この二人に期待してるのか疑問です。こだわりすぎると良くなさそうに思う二人です。

    1. イングラムは最大値が頭打ちだけど、安定感が出てレベルアップする予想です。ロンゾはこれで頭打ちじゃあ困るレベルかな。

      テイタムやブラウンを欲しがったというのは噂なのと、当時はレイカーズが渋っていたので、実際にどっちが良かったかはわからないです。

  3. レイカーズから来た3人、オフェンスはケチ付けられがちですけどディフェンスは良いですよね。
    フェイバーズも来たし個人的に今年のペリカンズにはディフェンス面での躍進を期待してます。今まではチームディフェンスが崩れがちでしたけどビズデリックが来てくれたのもあってかなり期待してます。

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