そこだけにフォーカス・フォーカス
「ギリシャなんてアンテトクンポじゃん」という意味合いではなく、試合がどうのこうの、と書いていってもそこまで注目されない一面もあるので、キーになる部分にフォーカスしてみるということです。
両チームの戦力差があったとしても、ギリシャはチームで構築するわけですし、その中に圧倒的なヤニスが混ざっています。それはアメリカの誰よりも圧倒的であり、今大会ではヨキッチとヤニスの2人が最高の選手という過去にないであろう状態
◉圧倒するヤニス
vsハリソン・バーンズ
日本戦で八村を完封したバーンズに対して、解説が「アメリカでもっともディフェンスの良いバーンズ」という意味不明なことをゴールデンタイムの地上波で世の中にお届けしたわけですが、案の定、試合開始からヤニスにボッコボコにされます。
八村はフィジカルな戦いからミドルに逃げてしまいましたが、ヤニスはそんなわけがなく、体をぶつけてからのヘジテーションムーブとスピンムーブ、さらにはプルアップ3Pまで決めるのでした。vsUSAで気合が入っている様子。いつもか。
3回のマッチアップ勝負全てでヤニスにやられたため、4分経たずに交代させられたバーンズ。次に登場した時にはヤニスがベンチで休んでいました。
vsジェイレン・ブラウン&マイルズ・ターナー
次にマッチアップしたのがブラウン。ところがブラウンとまともに勝負したのは1回のみで、それもアウトサイドで崩れた状態でボールを貰ったヤニスのフェイクから、ブラウンがファールで止めた程度の話。
それだけボールを持つ前の段階で仕事をさせなかったことと、ピック利用からのターナー勝負にしていきましたが、これをターナーがシャットアウトしました。まだ1Qの話ね。
vsミドルトン
しかし、トランジションからの流れではブラウンがマッチアップできないときがあります。というか、ブラウンがオフェンス面でPFみたいにインサイド担当をしているから、戻るのがどうしても遅くなりがち。
そんな時に決まってポジション取りの時点で完敗していたのがミドルトン。もはや勝負すらしていないくらいのヤニスの点の取り方になりましたが、やっていることはポジション取りです。ブラウンとの差が響きすぎた形に。
とはいえ、ポストアップに対してはヘルプもあったけど体を張ったミドルトン。そこからパスアウトで3Pにしていたギリシャでした。
◉1Q 19-17
最後にヤニスを休ませたギリシャでしたが、アメリカが油断してのカウンターを許したこともあって良い勝負になって終わり、2Qも引き続き休ませるスタートです。
大切なのはヤニスが休んでいる時間に、バーンズ、ブラウン、ミドルトンの3人がコートにいた事。はいスモールラインナップです。ヤニスがいなければスモールで良いって事ですが、その一方でマーク担当を疲弊させてどうするのでしょうか。残り8分30秒で戻ってきたヤニスでした。
vsマーカス・スマート
アメリカでもっともディフェンスの良い選手(本物)のスマートがポストで止めきります。どうやら狙ってスマートにしているようで、ケガしてたんじゃないのかよっていう。
さらにスマートはポストアップするヤニスに対して、パスすら入れさせないディフェンスをします。NBAなら裏パスですが、国際ルールなのでフォローが待ち構えています。
別格過ぎるスマート相手にどうやってもヤニスはボールをもらえません。異常です。異常なディフェンスをしているスマート。ヤニスの2倍くらい足を動かしています。でもフィジカル負けしないんです。異常です。
ただし、正確に言えば「ボールを貰えないヤニス」なのか、「ボールをヤニスに渡せないギリシャ」なのか。
ギリシャは強いチームながら、どうにもヤニス次第になっていますが、おそらくその理由が別格なヤニスということと、インサイドのマッチアップでスピードで勝ってしまうから、マッチアップ変更とか必要ないこと。
本当はスマートから解放してあげればよいのに、解放させるプレーが仕組みとして存在しません。そりゃあ日本だってファジーカスvsスマートならマッチアップ変更をさせないだろうしね。ガードなのにセンターを個人で守り切る異常なスマート。
vsブラウン&ターナー
あまりにも異常なスマートの後は再びブラウンです。またもボールすら持たせません。スマートとの違いはブラウン自身はそこまでボールをもたせないような守り方をしているのではなく、ただそのポジショニングがギリシャの周囲からするとパスを出せない見えないプレッシャー
スマートと違うのは、またもスイッチ的な形になったこと。理由はブラウンじゃなくてセンターのターナーがいることかな。どうしてもターナーならスイッチを狙いたくなるっていうか、チーム全体がファイトオーバーしきれない。
そのターナーはアンクルブレークか足が滑ったかでミドルを許し、試合開始直後以来の得点を奪われますが、2本目もミドルを打たせて守り切ります。フィジカルに抜かせないターナーというのは「バーンズに困った八村」みたいな状況です。
ペイサーズはターナーでは苦しいのでサディアス・ヤングを1試合ずっとヤニスとデートさせましたが、来シーズンはターナーが守り切るのか。
その後もターナーはヤニスにボールを持たれるものの、ドライブは全てシャットアウトし、「逃げるヤニス」にしてしまいました。
なお、1Q同様にトランジションからミドルトンとのマッチアップになるとファールで止めるしかなくなり、バーンズとのマッチアップになると周囲がヘルプに寄りまくってコーナーがドフリーになってパスアウトしたヤニスでした。
◉前半 38-25
2Q8点しか奪えなかったギリシャ。理由はヤニスにボールすら持たせず、シャットアウトする驚異のスマート&ブラウン。そして唯一のミドルこそ許したもののドライブは止めきったターナーでした。
なお、アメリカはブルック・ロペスじゃなくて、ちょこちょこプラムリーが出てきました。ちょこちょこです。ロペスがヘルプでヤニスを止められるかってのは注目点でしたが、ヘルプの必要すらない前半でした。
なんで試合開始直後はバーンズだったんだ?
あれか「八村止めきったからイケる」とでも思ったのか。ポポビッチが日本の解説に騙されたのか?
vsバーンズ
またもバーンズがマッチアップです。もしもテイタムがいたらどうしていたのでしょうか。でもテイタムって止める気満々だから意外とやれるのかな。止める気は満々だけど、逆は取られまくる。ヤニスは逆取らなくても抜ける。
1回目のマッチアップはスクリナーとなったヤニスから、ハンドラーがドフリーになったのでミドルを決めました。バーンズがヤニスばかり見過ぎた。
2回目のマッチアップはバーンズが不安なのかケンバが近くに寄りすぎてイージーにパスアウト。さらにボールを預けておいての裏パスアリウープ。個人でボコられているわけじゃないけど、「ヤニスにパスが出せる」し「ヤニスに集中させて他がフリー」になっているギリシャ。それはギリシャが計画していたであろう形。
3回目はヤニスのアタックに4人寄って止めきったアメリカ。つまり、バーンズの時間は個人ではなくチーム全体でヤニスを止める本来のNBAらしい止め方
4回目はヤニスが個人で強引に突破し、強引に決めきった。その直前にドライブしてきたドノバン・ミッチェルがヤニスにぶつかりながらも決めきるスーパープレーだったのを、ヤニスが取り返した感じ。
ということで、ヤニスを止めることが出来ないバーンズ。さぁどうするキングス。ルーク・ウォルトンか・・・。
vsブラウン&ターナー
そこからブラウンとのマッチアップが出てきます。バックコートからスピードに乗って抜ききろうとしたヤニスを止め、手を叩いて煽るブラウン。なお、その後で4回目のバーンズだったので、ミッチェルとブラウンによって被害を受けたようなバーンズ
不思議なことにこのマッチアップになると、頻繁にブラウンじゃなくてターナーがマークすることが出てきます。なんなら「お前がそっちのセンターにつけ」みたいに指示してターナーがヤニスを守りに行く事も。
ちなみにターナーはコーチングしてくれるビッグマンなので、その指示に従うブラウン。「オレがヤニスを止める、お前はあっち行け」ディフェンスではパイナップルメンタルではないターナー。オフェンスではゴール下でヤニスにブロックされた。
vsスマート
ブラウンとターナーの時間が挟まった後で残り4分ほどで驚異のスマートが戻ってきます。悪夢にうなされそうなスマート。しかもブラウンとターナーが残っているので、マッチアップ変更なんて技も使えません。
スマートを押し込んで苦しいながらもゴール下になったと思ったら、ブラウンとターナーに囲まれてしまいました。岩みたいなスマートとフィジカルに戦っているのにブロック王に覆いかぶさられたら、さすがのヤニスでも無理。パスアウトしてもパスを引っかけてくるブラウン。
そんな中でミッチェルのパスをカットしたヤニスが速攻でホワイトを吹っ飛ばしてダンク。凄いプレーを見せるだけに、悪夢みたいなスマートのディフェンス力が際立ちます。
するとコーナーに立ち始めたヤニス。アメリカのディフェンスがゾーンみたい固めてきたのと、スマートがボールを持たせてくれないので形を変えた感じに。
結局3Qにヤニスに許した得点は、バーンズが裏パスアリウープされたのと速攻でホワイト吹っ飛ばしてダンクだったアメリカ。
いいか、世界最高の1on1能力を持つ選手でさえ、個人技では得点を取れないんだ。八村に任せるプレーってのは間違いなんだ。
◉3Q 54-37
ヤニスさんお休みの4Q開始。またもスモールラインナップ採用です。ヤニスさんいる時間もスモール使っていたけどね。なんでPF呼ばなかったんだポポビッチ。意味わかんねーぞ。
さて、この間にアメリカのオフェンスについて触れましょう。
クソみたいなオフェンスだったアメリカですが、この試合ではかなり改善します。理由は2つ。
1つはディフェンスが機能した事。というのも、得点が多いわけでもなければシュートが決まっているわけでもなく、ただトルコ戦なんかに比べると点を取られないので、オフェンス成功率がそこまで高くなくても十分に対抗できるのです。
そうなると慌てることもないし、そもそもテイタムいないし、強引な仕掛けが減った上にシュートが外れたところで「失敗した」ような印象がありません。
「ボールを動かす意識」はもともとあったけど、効果的に動かせなかったのが、ちょっと余裕があるので効果的じゃなくても気にならないのでした。
2つ目がスマートが長い時間登場し、そこにホワイトもいた事。もっと言ってしまえばケンバの時間が減ったこと。4Q序盤はケンバが登場し、ギリシャに追い上げられています。ヤニスがいない時間に追い上げられる前半のデジャブ。
それは5分で7点しか奪えていないオフェンスの問題の方が大きかったりします。ギリシャは12点。
ケンバはPGだと自分で得点をとることで構成するオフェンスですが、ヤニスじゃないけど、それは警戒されて止められがち。ホワイトとスマートの時間は様相が変わります。
2人はパスの判断力があるのでアメリカのオフェンスはボールがしっかりと動いていきます。それも1人が判断する時間が短くなってギリシャのゾーンは振り回されることに。
また、プレーメイクの役割がドノバン・ミッチェルに移ったことでケンバよりもスラッシャーとしてもキックアウトの起点としても大いに機能しました。少しだけ破壊するミッチェルが戻ってきた。オレたちのドノバン・ミッチェルだ!
ということで「PGとエース」の役割がケンバの時間よりもはっきりしたし、エースが穴を作り、PGが早い判断のパスで穴を広げる。クソみたいだったアメリカのオフェンスは流れるようになっていきます。
ただし
ミッチェル自身は3P外すし、キックアウトミスるし。ミスる相手がケンバとバーンズのことが多いから、連携的な問題も大きいです。ホワイトとスマートは受け手としてもポジション移動しているのが上手い。
ということで、アメリカのオフェンスはエース中心にして、周囲を適材適所にしたら、改善傾向になりました。でも、この基準でやるならヨキッチのセルビアに比べて半分くらいの効率性しかないよ。
◉ヤニスが戻ってこない
ヤニス抜きでギリシャが追い上げた事。とはいえ10点以上の差があることでヤニスが戻ってこず、4Qが終わるのでした。生き生きとプレーしたバーンズ。弟アンテトクンポにダンクを後ろから押されたりといろいろあったけどね。
ということで、本日の主題に戻りましょう。
スマート半端ないって!!
7フッターにしてスピード、パワー、高さ全てを持つヤニス・アンテトクンポを守り切ってしまうPGマーカス・スマート。ボールすら持たせず、インサイドのポジション取りでフェイスガードしながら裏パスが出ても先に内側にポジションを移して体を張ってブロックする。
そこまで守るわけじゃないけど、常にスティールを狙える体制で待ち構えることでパサーの判断を鈍らせ、ヤニスのスピードアタックを止めきってしまうジェイレン・ブラウン
そしてまさかのマイルズ・ターナーによるドライブを許さないディフェンスはさすがに苦戦すると思われたマッチアップで何もさせませんでした。
〇ヤニス・アンテトクンポ
26分40秒
15点
2P6/9
3P1/2
FT0/2
11リバウンド
0アシスト
記憶にあるのは、
バーンズ ドライブ2本(ファール1)、3P1本、アリウープ1本
ミドルトン ダンク1本
ターナー ミドル1本
速攻(ホワイト)1本
ということで記憶が正しければ、ヤニスに得点を許したのはほぼバーンズ。個人の戦いで圧倒してしまったチームUSAでした。
でも、だからといってセルティックスがヤニスを止められるわけじゃないっていうね。
絶対に実現することはありませんが、ヤニスのところが、アウトサイドからも決めてくるタイプのKDかハーデンvsUSAを見てみたかったと思った後半でした…
ディフェンス3秒ルールがない上に、全員のヘルプの意識がヤニスに集中するという状況では、ダンクを仕掛けるスペースすら与えてもらえませんでしたね。
レナードとデュラント、そしてハーデンの単独チームはみてみたいですね。
実はヤニスはそこまでキックアウトが上手いわけではないってのが読まれたような感じでした。
スマートはエンビートともやりあってましたよね。屈強過ぎて草。
whynotさんが嬉しそうでなによりですw
分かりやすいボスキャラを寄ってたかってやっつけた事で、ちょっとガス抜き出来たのかもしれませんねw
まーでもこれ以上オフェンスが良くなる気もしないで、この際最後までディフェンス一本で勝ち切ってほしいですw
うれしいっていうか、こうやってフォーカスしたほうが面白く書けますね。
そしてうれしいっていうか、ただただ頑張って八村を完封しただけのバーンズなのに、日本の迷解説のせいで面白くなってしまいました。