ガードに必要なディフェンスは何か。
前回は守れない選手達を集めて、「でもさ」という話でした。個人的にはアーヴィングやマレーは本当に守れないけど、カリー、ハーデン、マカラムなんかは守れないなりに守れているという考え方です。その要素は
3Pを守れ
抜かれても良いから3Pを守れ
でも抜かれたら次のスペースを埋めに行け
という3段論法です。ある種のギャンブルディフェンスは「抜かれないように守る」よりも大切ってことです。特にチームディフェンスが出来ているなら、インサイドはビッグマンに防いでもらうのが効果的だしね。ただし、
オフェンス力で切り返す能力がある大前提
というのも忘れてはいけません。だってアーヴィングなんて他の選手に比べたら守っている方だけど、セルティックスがオフェンスで切り返せないから問題なんだもん。
得点力が求められるPG時代だからこそ、最低限守れば成立するよ。その最低限ってのはスタミナロスを避ける意味もあるから、ハードに守るよりも賢く・正しく・戦術的に守ることが大切なんだ。
前回は「守れない選手(オフェンスで貢献する選手)」を中心に観てきたわけですが、今回は「守れる選手(ディフェンスでの貢献も重要な選手)」に触れてみるわけです。
というのも3Pディフェンスの数字を追いかけていくと、「リーグトップクラスに守れているのが若手たち」という衝撃の数字が登場したからです。育成年代から3Pの重要性を問われ、オフェンス面でその能力を磨いてきたヤングやディアンジェロ達と、それを防いできた選手がディフェンスで居並ぶということかもしれません。
◉第3位 ベン・シモンズ
〇DFG(平均)
3P 29.0%(35.6%)
2P 55.7%(51.6%)
※平均はシュートを打った選手の平均FG%なので、選手によって異なります。
PFのサイズとフィジカルを持ちながらガード並みに動くベン・シモンズは、言うなれば動き回るレブロン。そのカバー範囲の広さで追い掛け回し、高さの利でシュートを弾き落とすのが得意技。被3Pが30%を下回るという驚異的なチェイス力を持っています。自分は3Pを打たないシモンズ。
トランジションオフェンスで力を発揮するシモンズですが、実はトランジションディフェンスでもPGとして絶対的な能力があります。どんな形でも守れるし、最後はブロックで叩き落すので、速攻でもイージーには得点させません。
そのディフェンスの特徴は実はフィジカル的な優位性にあり、コンタクトが激しいNBAで、スクリーンなどを使われても常に変わらぬ足のスタンスでオフェンスに正対しています。ポーカーフェイスのシモンズは、ディフェンススタンスもポーカーフェイス。
そしてブレないスタンスは、そこからスムーズにブロックやパスカットに動けるため、後だしじゃんけんみたいにスムーズかつムダのない体の動きで止めていきます。さすがにディフェンスが良い選手はハイライトがあるぜ!
基本通りではありますが、これを実行するのは非常に難しく、異常なレベルで基本を実践しているという感じです。そしてハイライトとしてはブロックとパスカットが多く、異常な反応力で達成しています。後だしじゃんけん。
無→動 への動きが普通ではないシモンズの守り方は、オフェンスが「シュートを打てる」と判断したにもかかわらず、そこに予想外に反応されてしまいます。そのため、僅かなブレがミスにつながる3Pを守る能力が高いのでしょう。
しかし、シモンズはそのサイズとフィジカルに反して、2Pディフェンスはリーグ平均より悪い数字になっています。PFみたいなサイズとフィジカルはあるけどPFみたいに守るわけじゃないって事です。マークマンを放置しまくるレブロンと真逆。
実際にシモンズは割と抜かれます。無→動でシュートは止めるけど、横への反応は特別ってわけではありません。足のスタンス的にも上への反応はしやすいけど、横には遅れてしまう気もします。なので、ハイプレッシャーの圧力は凄いものがありますが、オフェンス側が圧力負けしなければ簡単に抜かれるのも事実。意外と苦しい部分もあるのでした。
結論的には冒頭の「最低限のディフェンス」を「異常なレベルで実行している」ことになるシモンズ。カバーリングの範囲が広く、3Pをチェイスブロックするシーンもよく見かけます。あまり動かないエンビードがインサイドで待ち構える中で、アウトサイドはシモンズが追いかけまくるわけでした。
で、ここにジョシュ・リチャードソンが加入するわけでしょ。悪夢。
◉第2位 シャイ・ギルゲウス・アレクサンダー
〇DFG(平均)
3P 28.5%(35.6%)
2P 50.7%(49.9%)
そんなシモンズをも上回るSGA。若干、プレータイムが短い事情もありますが、スターターとして相手のスターPGを守りながらもこの数字はルーキーとは思えないレベルです。
シャイ君のディフェンスハイライトは1試合のしか見つけられなかった。
どうみてもシモンズとは違ってスタンスをキープするフィジカルはありません。スクリーンに対しては抜けていくのがメイン。常に「なんとなくついていく」ような形から、力感なくブロックを決めています。無→動のシモンズに対して、静→動みたいなSGA。どちらもジャンプするための“タメ”を感じさせません。
“タメ”がなくてもブロックできる
2人に共通する要素です。そしてSGAもまたウイングスパンのオバケ。6-11あるウイングスパンでシュートを妨害しています。激しく守るタイプではなく、しっかりとついていきながら手の長さを活かして奪い取ってしまいます。要するに結論的には
「3Pに対しては高さや手の長さ」
というのはサボり魔のハーデンにも共通する要素でした。
ところでクリッパーズといえばべバリーとブラッドリーがいたわけですが、SGAはこの2人を上回る3Pディフェンスを見せていたわけです。プレッシャーディフェンスによって高い評価をされている選手をルーキーにして上回るって事です。
特にブラッドリーは高いディフェンス力とは裏腹に被FG%が低かったりします。3Pも40%以上決められている。ブラッドリーのディフェンスはスティールを生み出すので脅威ですが、3Pを効果的に抑えるという意味では難しいのでした。
SGAは高い身体能力を持ち合わせつつも、無理のない足運びとスムーズにブロックへ移行する動きで効率的に3Pを防ぎました。そしてシモンズと比較すると2Pも抑えています。リーグ平均をやや下回る程度。なお、クリッパーズ自体がディフェンスよりもオフェンス型なので、その中で平均に近いのだから十分な結果です。
ブロック&パスカットならばシモンズに分がありますが、トータルで考えた時には地味ながらSGAが上回るかもしれません。なんとなく追い掛け回しながら、シュートに反応する形は抜かれにくい特徴も持っていたのでした。
面白いことにシモンズとSGAはともにシューターとしての能力は高くない事情があります。チーム事情もあるけど、得点で引っ張らないタイプのPGがこうしてディフェンス面に秀でているってのは、同じポジション同士の戦いを制してこれたからか(シモンズはPGでマッチアップしているとは限らないけど)
しかし、ラストに登場するのは全く違うタイプなのでした。
◉第1位 ゲーリー・ハリス
〇DFG(平均)
3P 26.9%(35.7%)
2P 51.6%(52.1%)
そして驚異の3Pディフェンスをしているのがゲーリー・ハリス。相棒のマレーがダメダメなのに対して、ディフェンスでも大きな力を発揮しているシューター。まるっきりカリー&クレイ・トンプソンじゃないか。ニュー・スプラッシュ・ブラザーズ。違ったサーカス・ショット・ブラザーズ
こんなプレーを決めてしまうゲーリー・ハリスは高い身体能力を持ってはいますが、それはシモンズのようにNBAのトップレベルで優れているわけじゃないし、SGAのようなウイングスパンをもっているわけでもありません。
リーグ最高の3Pディフェンスをしている選手にもかかわらず、全く違う形で守っていることになります。また、2Pディフェンスについても結果を残してますが、特に「そもそも打たれていない」事情もあります。
〇被アテンプト数
3P 3.5本
2P 3.4本
よりプレータイムの短いSGAですが、3Pは3.0本であるものの2P6.8本打たれています。シモンズは3P4.8本で2P6.2本。つまりゲーリー・ハリスは
そもそもシュートを打たれないディフェンス
をしていることになり、打たれても3Pを決めさせていないことになります。明らかに段違いのディフェンスをしていることに。
ということで、個人の特集記事にしたいから次回へ続く。
テーマ化ありがとうございます。新しい観点で試合を見れ、非常にためになりました。
SGAが気になりつつありますのでチェックします。
コンリー,クリスポール,ブラッドリーってデイフェンス名人のイメージだが
結局ウイングスパン足りてないから
トータルではそんなに守れてないような気がする。
長年謎なのがクレイトンプソンで
実はハイライト映えしないファインプレーを毎回してる気がするが
何がすごいかって言われると、具体的にはよくわからない。
ドンチッチと相性良さそうですね。
ブレッドソーのディフェンス面での評価はどうでしょうか?
DEFオールディフェンシブ1stチームになりました。
ここ最近DRtgが良くなってるのはチーム戦略によるものもあるかもしれませんが、
Player points diff見る限り1対1ではかなりの強さだと思います。
PGじゃないですけど、ジョシュ・オコギーもルーキーなのにP&Rのディフェンスが異様に上手くてブロックも量産してますよね。ハンドラーを守ることが多い選手なんで同じカテゴリーなのかなと思いました。