新たな時代の、新たなPG達が出てきた気がするんだ
PGについて考えていくシリーズ。大きな流れとしては
PGでもスタータークラスになりたければ得点力が欠かせない
第2PGは堅実性を求められるケースが多く、オールドタイプも多い
この2点を考えていたわけですが、
「試合をコントロールし、ミスの少ないプレーで貢献する」
ようなステレオタイプPGから
「自らの得点力でチームをリードし、ミスはあるがそれ以上のメリットをもたらす」
ようなタイプが普通になってきました。スター選手に限っていくと
前者はクリス・ポールだけが生き残りのような感じで、
後者にはカリー、ウエストブルック、アーヴィング、ウォール、ケンバ、ホリデーと並んでいきます。彼らはアシストが得意だったり、シュート力があったりと特徴的にはバラバラですが、「自分がアクションして」プレーを生み出す点では同じです。クリス・ポールの場合は「周囲にアクションさせる」ようなことも多いという違いがあります。
なお、例外はどこにでもいるものでリラードだけは「自らの得点力でチームをリードしながら、ミスの少ないプレーで試合をコントロール」しています。管理人がリラードをオールNBAファーストチームに推す理由です。現在のNBAでこのレベルで、両方の良さを発揮できているPGはリラードのみです。
要するにルール的にも能力的にも戦術的にも、長くボールを持つPGが得点面でもたらす要素が大きくなってきた中で、リラードみたいなことが出来なくても、しっかりと「自らのアクションで得点を生み出す」ことが出来ればスターなわけです。その中で得点しながら、アシスト力も高いウエストブルックとウォールの方が批判されがちなわけですから、現代的な流れがここにあることを示しています。
◎変わりそうな流れ
PGに得点力があるのは常識
この状況が続く中で、いや「当たり前」になってきた中で育成されてきた若きPG達はさらに違う状況を生み出し始めました。カリーは特殊系PGですが、そうやって分派されるようなタイプが増えてきたとも言えます。
代表格はトレ・ヤング。NCAAでは1年生で得点王+アシスト王に輝きました。かといってウエストブルックと違い、そのアシストは周囲にプレーを促すことで生み出されています。テクニカルなPGはリラードのように「自ら得点しながら、周囲にプレーを促す」事が出来ているわけで、若きPGながら非常に完成度が高いといえます。
ある意味、当たり前になってきた「全てをこなす」ことを高いレベルで実行する若きPGの登場です。実はロンゾ・ボールなんかも同じようなタイプだったりします。パスが中心のイメージは間違いないけど、それを中核にしながら自らが得点するパターンを持っている。ただNBAレベルでは、その得点力が通用していないってだけです。1つの武器を通用させるだけでも大変なトップリーグなのに、複数の合わせ技をさも当然のように使っていくルーキーというのは「そのプレーが普通」になってきたから生まれたのだと考えています。
そんなヤングとディアンジェロ・ラッセルは次の機会に回します。ともにリラードレベルまで到達できるかどうかが問われています。
◎フォックスとマレー
そんな中で今回の主役はこの2人。ディアーロン・フォックスとジャマール・マレー。キングスとナゲッツをリードするPG達です。
〇フォックス
得点 17.3点
3P 37.1%
アシスト 7.3
ターンオーバー 2.8
〇マレー
得点 18.2
3P 36.7%
アシスト 4.8
ターンオーバー 2.1
この2人の特徴は共に得点力にあります。細分化していくとフォックスの魅力は何といってもそのスピード。リーグNo1ともいわれるスピードは圧倒的な武器としてディフェンスを置き去りにしていきます。苦手だったアウトサイドシュートが改善したことで高い得点力を発揮し、チームが困ったときには得点を奪いに行きます。
マレーの方はもう少し積極的にシュートを打っていくタイプ。インサイドへのドライブはあまり強くないけど、それを補えるシューティングスキルと強気なプレーがあります。ただしアシストが少なく、ヨキッチのチームじゃなければどんな選手になっていたかよくわからない一面もあります。
両社に共通するのが「高い得点力があるけど、自分で攻め込むことは少ない」ということ。ちょっとした矛盾もありますが、
ウォール並みのスピードと能力がありながらウォールみたいにドライブはせず、しっかりとコントロールすることが多いフォックス
基本的に自分で打ちたがりなんだけど、パスの連続からのプレーが好きだから球離れに優れているマレー
こんな2人の構図があります。要するに得点力が武器なのだけど、得点力を前面に押し出したプレーは少ない2人です。違う言い方をすると「余力を残してプレーしていそうな2人」だったりします。
◎フォックスの場合
フォックスのスタッツは15点、8.2アシスト、2.6ターンオーバーのクリス・ポールに近く、バランス型のPGになっており、来シーズンのスタッツはすべてにおいてクリス・ポール越えも期待されます。
キングスには複数のシューターがおり、特にヒールドの存在はフォックスのプレーを決定づけている印象があります。大学時代はマリク・モンクと組んでいるので、フォックスとしてもやりやすいのでしょう。
しかし、フォックスの特徴はウォールみたいなスピードであり、ガードの相棒にオールスタークラスのシューティングエースを抱えていると思えば状況も似てきます。他のポジションにも3Pシューターを集めている点も同じ。
ウォールになってよいはずだけど、クリス・ポールみたいなスタッツ
という状況のフォックス。まぁウォールはもっとアシストが多いわけですが。8.7アシストだったウォールのターンオーバーは3.8と多く、その理由は自らの突破で得点もアシストも生み出しているからです。
それに比べるとフォックスは突破ではなく、コントロールする中でフリーを見つけてアシストする機会が多くなります。キックアウトパスから3Pを打たせるよりも、フリーになった選手をしっかりと見つけるタイプのアシストが多いわけです。
〇キングスのコーナー3P 6.4本
ドライブ&キックアウトでは中心的なコーナー3Pが少なめのキングス。ロケッツが11.4本、ウエストブルックのサンダーが8.6本、ウォールがほとんどいなかったウィザーズは7.7本でした。
スピードで切り裂く能力が高いPGを中心にしたチームとしては、かなり少なめのコーナー3Pだったといえますし、そこにヒールド、シャンパート、ビエリッツァがいたわけですから、キックアウト自体を狙っていない風潮がわかります。なお、フォックス自身はシーズンで34本打っています。
〇速攻での得点 4.3(9位)
またフォックスは速攻でリーグ9位の得点数でした。これは単に多いということだけでなく、PGとしてボールプッシュと得点を取りに行く姿勢が強いことも示しています。その割にはハーフコートになると、しっかりとコントロールしているわけです。
フォックスのプレーを言葉で表すと正統派というか、オールドスクールな表現になります。
常にルックアップして周囲の動きを捉えてパスを狙い、その中で空いた瞬間には迷わず自分で得点を奪いに行く
ただし、違うのはあまりにスピードに「空いた瞬間」というのが、普通のオールドスクールタイプに比べると、ほんの僅かな瞬間でよいこと。一瞬でも空いたら切り裂いてしまいます。だから自分で打つ選択肢の時に、タフショットになるケースが極めて少ない。
リーグ最高クラスの突破力を持ちながら、オールドスクールのプレーをするディアーロン・フォックス。
超現代的な正統派PG
な気がしています。1位フルツ、2位ロンゾを上回る活躍ぶりの理由は純粋にPGとしての判断力に優れていること。気の合いそうな相棒を抱えながら、ミスは少なく余裕のあるプレーぶりが光ります。
フォックスはトリプルダブルも達成しましたが、オールラウンドに活躍できる素質があるわけですが、良い意味でイェーガーの役割分担をしっかりとこなしてきました。ドライブしても周囲を見回すことを忘れず、アウトサイドシュートも高めて非常に優秀なPGに育ってきています。
その「優秀さ」は特筆すべき才能よりも「ミスなく、適切な判断をする」というPGの基本に戻ったようなスタイルなのでした。
◎マレーの場合
マレーのプレーは「ミスなく、適切な判断をする」と評するにはタフショットが多く、フォックスのようにギリギリまで引き付けてアシストするようなプレーは少なめです。シュートシーンだけを切り取っていけば、アーヴィングのようなプレースタイル。
4.8アシストは、これでもキャリアハイ。3.4アシストから大きく増やしてきたものの、相変わらずのアシストの少なさです。フォックスのように周囲の動きをしっかりとみてフリーの選手にパスを出すようなプレーではありません。かといって、特筆すべき突破力があるかっていうとそういうわけでもなく、FG成功率も44%を下回っています。
そんなこともあってアシスト/ターンオーバー率は高め。ターンオーバー2.1そのものは少ないのだけどアシストが少ないからね。フォックスがその特徴に合わずオールドスクールなPGなのに対して、見た感じはオールドスクールなマレーは昔の基準では良いPGとは言い難いのでした。
ここで「見た感じ」ってのは重要です。なんでそう見えるかというと、マレーもまた球離れが非常によく、パスを多く回すタイプだから。
〇パス数 55.5本
リーグ17位のパス数はケンバやトレ・ヤングと同じくらい。ボールを多く持つリラードよりも多い。マレーよりもパス数が多くて、マレーよりもアシスト数が少ないのはガソルとエンビードの2人だけです。要するにセンター並みの数字を残しているマレー。なお、パス数1位はヨキッチでPG並みの数字を残しています。
〇オフェンス平均移動速度 4.97
また、マレーはオフボールで動き回ることも特徴。シューター並みに動いています。要するにカリータイプです。PGなのに得点面に特化しているし、パスを簡単にさばいて自分自身が動き回って得点をとるタイプ。ヨキッチの相棒としては好ましいわけです。カリーとヨキッチのコンビ見てみたいね。
ただし、カリーはそのシュート力で自分で打つことを前提としたプレーが多いので、スクリナーを利用してマークを振りほどいて広いスペースに飛び込んでキャッチ&シュートを狙っていくシューターの動きなのに対して、マレーはもっとシンプルなギブ&ゴーが多く、「みんながカリーを見ている」ようなウォリアーズに対して、マレーの小気味良いパッシングから少しずつディフェンスを動かしてプレーを構築していくナゲッツになっています。だから、PGらしさはマレーが上回っています。
マレーのプレースタイルは、クリス・ポールやフォックスのようにボール保持から「コントロールする」わけでも「チームメイトにプレーを促す」わけでもないですが、「細かいパス交換からオフェンスリズムを作り出す」ようなスタイルです。
なお、その要素がもっと強かった1年前に同じような記事を書いています。見事にナゲッツは勝てるチームになったのでニンマリ。
この記事における最終的なまとめは
古くて新しいタイプのPG
プレースタイルは全く違うけど、PGとしての存在感で言えばトニー・パーカーが一番近いかもしれない。オフェンスの中で確実にボールに絡んでいるけど、絡む割にはアシストは多くなかったり、個人突破は少ないけど連携は頻繁に使うし、そもそも周囲に任せることが出来る。大事なシュートを自ら強気に打つことも躊躇わない。
マレーの場合は得点力が武器だし、アシストは少ないし。だけどパッシングでリズムを生み出し、自分自身が何度も動きなおし、ボールを貰いなおすことでディフェンスにズレを作っていく。1年前と違ったのは最終盤で個人技を任されるようになったこと。やっぱり得点力で勝負しているPGってことでした。
誰にでも合うタイプのPGであり、ハンドラー時代では多くの選手が個人技をうまく使えるスタイルでもあります。得点力がある選手の課題はボール独占ですが、独占しないけど得点力で勝負する珍しいタイプのマレー
このハイライトを見て誰に一番近いかといえばアーヴィングかな。タフショット多くサーカスショットも決めてしまう。しかし、とにかくオフボールで動きチームメイトと連動するので個人技ハイライトな割には試合の中は個人技ではなかったりします。難しめのシュートを決めているだけ。
しかし、アーヴィングと違うのはハイライトには出てこない部分。シンプルなパスを多く回すだけでなく、オフボールで動き回りチーム全体にリズムをもたらす。ナゲッツはチームとして、「これでも打たないのか」くらいにボールを回したりするので、ディフェンスからすると非常にいやらしいチームです。
◎得点力を備えつつコントロールする
PGに得点力のある選手が普通になった時代。コントロール型ではなくて得点力が求められてきた時代は収束を迎えつつあり、
得点力がありながらコントロールするタイプ(フォックス型)
自分の得点力も周囲の得点力も両方を使えるタイプ(マレー型)
という違う方向性でありながら、どちらも興味深い進化を遂げているタイプだと思います。これらは個人というよりも育成段階で現在のトップPGを見ているから生まれた新型だと捉えており、育成段階でもエリートたちが同じチームに揃うことが多くなったことで生み出されたのかもしれません。バグリーとエイトン、ディアンジェロとシモンズとかね。
センターたちが多様化してきたわけですが、センターを「使う」タイプのフォックスと「連動する」タイプのマレーっていう分け方も出来ます。それぞれ同じチームにどういう選手がいたかでプレースタイルも変化してくるのでしょう。
ちなみに2016年7位のマレーと2017年5位のフォックス。どちらも大学はオールスターが揃うケンタッキー。2018年のケンタッキーはこちらも似た要素を持つSGA。ワン&ダンで1年だけプレーさせるフレッシュマンをリクルートするチームだけに、単に得点力があるだけではお眼鏡に適わないのでしょうね。
スターPGには得点力が求められる。だけど「スターの卵」となる若手PG達は得点力に加えてチームをリードする能力も育成されてきた。というのが今回でした。
暑い中お疲れ様です。
大好きな2人なので言いたいコメント考えてましたが、ほとんどが文中で言われてしまって溜息。
特にフォックスには注目してます。速さがあるからこそディフェンスがタイトに付けなくて、よって余裕を持ってルックアップ出来るのかな。外も確率上がって来るだろうし、守る方はたまったもんじゃ無いですよね。
新種の話ならベンシモの名前も出てきて欲しいんですけどね……今年こそは……
シモンズはPG適正だと思いますが、シーズン後半から若干クビになった匂いがしています。
コントロールする能力は足りていないし、それはシュート力よりもハーフコートでのパターン不足なのかと。
マッコネルがいなくなった来シーズンにどんなプレーを見せるのか。
ディフェンス面の方が特徴になるのかもしれません。
リラードへの最高評価ありがとうございます。勝負強いだけの若造PGがやっとここまで来たかという感じです。プラス何より大きいのは怪我をしないこと。常にチームの中心として計算出来て、彼中心の戦略を立てられるのは非常に大きい要素です。
スピードタイプですが、過去から必ず膝特に十字靭帯をやってしまうことが多いのが心配ですね。古くはティム・ハーダゥエイ、最近ではローズやウォールです。フオックスが何年後かにそうならないように祈ります。
リラードは強気なだけだったのが、コントロールを覚えてきた2シーズンな気がしています。
それも確かにケガがないことが一番。そしてフォックスのプレースタイルというか、スピードはあるけどムリはしない形は長い目線でケガも防ぎ、メリットがある気もします。
来シーズンからキングスは5番までストレッチタイプに変わったので、フォックスはよりペイントのスペースを活用出来るかもしれませんね。
あとバグリーのオフェンスが増すと思うので彼からのパスを得点に出来るか。決してシュータータイプでは無いのですが、そこをそつなくこなせばオールスター。
フォックス、ヒールド、バグリーがBIG3として成功すればナゲッツに肉薄出来ると思います。ナゲッツはヨキッチがカメレオン過ぎて安定するので中々追い越せませんが。
フォックスのキーになるのがバグリーなんでしょうね。
あくまでもスコアリングでは2番手、3番手にいたほうが可能性を秘めていそうです。
必要な時は自分で勝負していますし。
ラウリーもオールドタイプですかね
クリスポールよりパスばかりですが
ラウリーはもっとドライブと3Pで得点を取るタイプでしたが、ここ2シーズンでシュートを減らし始めました。
フリースローも大きく減って、オールドタイプになってきた感じですね。
ロケッツでシュートを増やしたクリス・ポールの逆。
基本はチーム方針の変更ですが、ラウリー本人が衰えてきたことで、ちょっとやり方を変えた気がします。
周囲の得点が増えてよいガードっぷりは増しましたが、サラリーに見合っているかは微妙
全員をオフェンスに巻き込めるPGって、PGがパスした選手がエキストラパス出したりするので、あんまりアシスト伸びないですよね。
ドレイモンドがパスするカリー
コンリーや最近のルビオとかそんな感じします。
マレーはセカンドアシスト1位なんですよ。
直接のアシストではなく、プレーのきっかけを作るタイプですね。
コンリーはやや得点側に傾き始めた中でジャズにきたので、スタッツが変化しそうで楽しみです。
チームメイトに誰がいるかって確かに重要ですね。
マレー記事 確かに先物買い成功してますね 高々と自慢していいはず(笑) セカンドアシスト1位って凄い数字だなー(割と多いだろーとは思ってたけど1位とは予想以上でした)
パーカー型ってのはちょー納得です。ヨキッチと組めたのはお互いにラッキーなはず。ナゲッツがそこまで読んでチーム作りしてたなら尊敬しちゃうレベル。
アトキンソン推しの管理人さんはアービングの活用方法予想はどんな感じなのかな?とこの記事読んでいて思った次第であります
フォックスは自身のシュート力が高まって、プレイに安定感が出ましたね。
持ち前のスピードは十分な武器だったけど、シュート力の向上によってよりスペースを活かすことができるようになったと感じます。
どちらのPGにもいえることですが、しっかりチームつくりの核になっている(核の一部として機能している)というのが重要ですね。
ヒールド・バグリー、ヨキッチ・ハリス・ミルサップとどちらもフォックス、マレーと相性が良い。
代表キャンプでもより自信をつけたフォックスはかなり楽しみにしています。できればW杯でも見たかった。。