まさかこんなことを書くオフになるとはね。
知らない読者の方もいるかと思いますので、毎度のことなのですがあらすじを書きます。
NBAにそこまで興味のなかった管理人はヒマだった2017年の開幕前に一大決心をしてリーグパスに加入しました。「気合いで観まくってやるぜ」という思いから全30チームを観ることに。
そんな中で予期せぬチームに心を奪われたのでした。それが「ディアンジェロ・ラッセルとブルックリン・ネッツ」でした。当時のネッツは弱かったわけですが、あっという間に虜になり、大興奮し、このブログは世にも珍しいネッツブログになったのでした。
それくらい衝撃だったネッツを絶賛しまくっていた当初は「何言ってんだろうか」くらいの風潮だったのですが、今では誰もそんなことは言いません。ネッツを賞賛しまくる管理人ではなく、このチームの未来を疑う人が「何言ってんだろうか」と疑われる時代が早々にやってきたのでした。
では、ネッツの何が凄かったのか。
複雑なオフェンスはしつこいくらいのスクリーンと大胆なオフボールムーブ。コーナーまで完璧に利用する優れたフロアバランス。誰もが仕事をこなしてしまうチームワークとベンチの盛り上がり。まぁ数え上げたらキリがないわけですが、大事なのはこれらのオフェンスが
再現性あるプレーの連続
だということ。難しいことをやっているわけですが、そのプレーが何度も繰り返されるわけです。
管理人はYouTubeに載っている多くの解説動画があまり好きではないのですが「1つのプレーを解説する」のはわかりやすいようでいて、そのプレーに「再現性がなければ意味がない」のです。だって単なる偶然かもしれないじゃん。
ネッツのプレーはあっと驚くプレーであっても、5試合も観ていれば同じプレーが必ず出てきます。つまり全てのプレーを「狙ってやっている」ということなわけです。
しかし、考えてみよう。情報化社会において分析すべき映像が簡単に手に入り、それも管理人みたいなNBA観戦1年目でも感じることが出来る「プレーの再現性」を他のチームが簡単に許してくれるのか。
答えはもちろんNO!多くのチームで再現性を簡単には感じられない理由は、プロの世界の厳しさを感じさせてくれるものであり、だからこそ読まれていても止められない個人技が重要になるプレーオフなわけです。
ところが再現されていくネッツのプレー。その理由がディアンジェロ・ラッセル。やっと主役の登場です。
◉オープンなオフェンス
ショータイム・レイカーズ
その主役だったマジック・ジョンソンの就任により、戦犯にでもされるようにレイカーズを追い出されたラッセル。新たに選ばれたロンゾ・ボールは間違いなく超優秀なファストブレイク・クリエイターでした。リーグの中でも極めて優秀な速攻パサーだよね。
しかし、そのロンゾはハーフコートになると借りてきた猫状態のムダ打ちシューターに変貌します。つまりハーフコートが組み立てられないわけだ。それはロンゾの問題でもあるけど、それ以上にトランジション志向が強すぎてチームとしてもハーフコートが組み立てられないレイカーズというチームの問題でした。
そしてディアンジェロは、この速攻が下手。何が下手かというと
➀フィニッシュ力がないから怖くない
運動能力の足りないラッセルはスピードで振り切ることもなければ、豪快なダンクでフィニッシュすることもないから、止めやすいんだ。しかも、そのパスは速攻と言うことでコースが1つか2つしかないので、止められないけど読みやすいよね。
②リバウンド力がないからパサーでもない
でもフィニッシュしなくてもロンゾみたいに起点になれば良いわけですが、自分でリバウンドを抑えるわけじゃないから、そもそもワンテンポ遅くなってしまい速攻クリエイターにはなれません。だって、ボール持ったときには既に速攻が難しいんだもん。
てなわけで、速攻中心ではその能力の一部しか発揮出来ていなかったディアンジェロ。まぁ大体は運動能力不足だと思えば良い。問題は、そんな部分は全く改善されなくてもネッツでは才能が開花した理由ってことです。
◉選択肢が多いネッツ
スピードのないデイアンジェロがネッツで成功した最大の理由がこれ。ペースの早いネッツオフェンスですが、その根底にあるのはトランジションではなくハーフコートオフェンスが定義されており、打てるシチュエーションが出来たら積極的に打っていくこと。そのためにフリーを生み出す仕掛けが多いこと。
複数のスクリーンが絡み、オフボールでのポジション変更をしていくネッツでは「一瞬のフリー」があちこちで生まれるわけですが、大切なのは「あちこちで」の部分かもしれません。
全員の共通意識があって、しっかりと動いている中で生まれるフリーはディアンジェロのプレーに多くの選択肢をもたらしてくれました。同時に独特のタイミングとタメによって生み出されるパスは、ディフェンスからすると非常に読みにくいもの。
卓越したフロアビジョン
という能力は、あくまでも「複数の選択肢」があるからこそ発揮される能力です。レイカーズは速攻で勝負できる良さがあるけれど、速攻には「複数の選択肢」がありません。だから個人としての能力は発揮されても、ディアンジェロの本質は出てこなかった。
再現性あるオフェンス
それはディアンジェロに瞬間の判断ではなく、定められたプレーパターンを用意してくれているし、その中からディフェンスの状況に応じた判断をすれば良いわけです。
ネッツで「成長した」ディアンジェロですが、それはあくまでも個人としての突破力とフィニッシュ力の部分。だけど、成長した理由も「複数の選択肢」をどれでも選べるから、次第に自分自身が決めに行くことが楽になっていったから。
パスが警戒されるから、自分でシュートに行ける
当たり前なんだけれど、NBAレベルで判断力で勝負するのは簡単ではないし、実際にディアンジェロは「判断力」が優れているかって言うと、実はそこまででもないんだよね。
卓越したフロアビジョン
選択肢の多いオフェンスシステム
判断を楽にしてくれる共通理解
これらが組み合わさって、ディアンジェロはオールスターになりました。ひょっとすると他のチームではここまで結果を残せなかったかもしれません。難易度の高いオフェンスシステムがディアンジェロには合っていたわけです。
あるいはディアンジェロ用に難易度が高いシステムにしていたのか。それはカイリーで簡単なシステムにナルかどうかで判明します。
◉ジョー・ハリスとクルッツ
ジョー・ハリスとクルッツを例にとって観てみましょう。それぞれに特徴的なプレーがあります。ハイライトを観ていくとわかるのですが、複数のハイライトをみないとわからないよ。
しかし、残念ながら良いハイライトを見つけられませんでした。探していたのはアイバーソンカットというか、カリーカットというか、1番良く使っているのがCJマカラムとリラードのパターン。
主に右サイドからスクリーンを使って左サイドへオフボールムーブし、タイミングを合わせたパスがディアンジェロから出てきます。ただし、それはディフェンスも知っているので、パスコースにはいるのですが、するとジョー・ハリスはコースを変えてリングに向かいます。
このページのプレー集がジョー・ハリスの全アリウープです。ダンクはないよ。なお、再生できないプレーもあるので注意。
○ジョー・ハリスのアリウープ 12回
このうちディアンジェロのパスからが11回で、上記のパターンが9回です。数えていないけど、多分それくらい。つまり8試合に1回くらい登場するパターンってことです。ジョー・ハリスのカッティング判断の良さと、秀逸なタイミングでパスを合わせるディアンジェロが光るのでした。ちなみにちゃんとゴール下に人がいなくなるように仕込まれています。
同じくクルッツ君も鮮やかなバックドアを繰り返しますが、同じプレーが多発します。こちらも紹介しようと思ったのですが、ハイライトを観ていたら面白かったので、クルッツ編として次回に持ち越します。つまり、またもネッツネタ。なお、アリウープ集はこちら。ディンウィディーパターンも多いよ。
◉さようなら「ネッツのディアンジェロ」
そんなわけで、管理人が好きだったネッツのディアンジェロ・ラッセルは終わりを迎えたのでした。
【ネッツの事情】
複雑なオフェンスパターン
一瞬だけのフリー
積極的なシューティング
【ディアンジェロの事情】
卓越したフロアビジョン
タイミングの読みにくいパス
こんな事情がお互いのプレーを面白くしてくれていました。そこは持ちつ持たれつなので、どちらが大切ってことはありません。
複数の選択肢とタイミングを逃さない的確な判断
多くの選択肢が生まれるオフェンスシステムはディアンジェロの能力を引き出し、成長を促してくれたし、ディアンジェロの判断はチームの可能性を引き上げ、プレーオフに進めてくれました。
少なくともネッツのシステムは死なないし、熟知したディンウィディーはPGとしてチームに残り、パスを受けるジョー・ハリスとクルッツも残ります。だからネッツの、ケニー・アトキンソンの面白さは続くわけですが、どうしてもディアンジェロ時代ほどの面白さ=「プレーの再現性」が続く気はしてこないのでした。
「読まれていても決める個人能力」をもっているカイリー・アーヴィングではありますが、「同じチームオフェンスなのに読ませないパス能力」のディアンジェロ・ラッセル。勝利に近いのがどちらになるかはわからないけれど、こんなブログをやっているくらいだから、より面白いのは後者なのさ。
スプラッシュブラザーズ×ディアンジェロにも面白さがあるだけに楽しみなのだけど、ネッツシステム×ディアンジェロほどの面白さがあるとは思えない。
変化して成長したネッツとディアンジェロ。共に成長した幸せな2シーズンが終わってしまったのでした。
強いかどうかは別として、ウォリアーズは楽しみなボールムーブメントが期待できるチームに戻りました!
グリーンがスクリーナーに徹しカリーがオフボールに回ったら、この上なく驚異な気が…
これがネッツの面白さを変えてくるか今から楽しみです
更新お疲れ様です。
ネッツが体現していたstrength in numbersの本家なので、そこまで悲観はしていないです(震え声)。
ただ、クレイが戻ってくるまでは(今のところ)正直目も当てられないロスターで戦わなくてはならないので、負けが込んだ時にスケープゴートにされないか不安。ブルックリンとはファンの質も変わるでしょうし。
カリーやグリーンが彼をうまく乗せてくれるといいんですが。
ネッツファンですが、クルッツの記事がはやく読みたくなりました。また同期入団のムサについても気になります。
しかし皮肉なもんですな。ディアンジェロの成長があったお陰でKDとトレード。ディアンジェロの成長がなければもっとごっそり優秀なベンチが持っていかれていた。
結果的にはネッツは戦力を大幅に上げられた訳ですが、ディアンジェロはどうなるやら。
個人的にはGSWではなく若手チームの中でのびのびやって欲しいです。
こんな名前にしてますが当然のようにディアンジェロも好きなので特集ありがたいです。
カリーと並べるとDFは心配ですがここ数シーズンのように絶対優勝みたいなチーム状況でもないでしょうし気楽に応援出来るかもと思ったり。個人的にはディアンジェロとロンゾでチームが逆のほうが両方とも好みのバランスになるのが惜しいなー。
お疲れ様です。
本題からずれるのですが、NBAを見るようになった2017年からと知ってかなり驚きました。
自分は見始めてもうすぐ10年になりますが、未だにNBAのことは雰囲気でしかわかりません(笑)
管理人さんは過去のNBAの出来事に対する今の知見をどのようにして得られたのでしょうか?
気になります!
ネッツとディアンジェロの記事ですが、ウォリアーズの新体制としては、ハーフコートシチュエーションでは、ドレイモンドがスクリーンからリングアタックを効率良く決めれるか でディアンジェロの活躍度合いが変わりそうだと思っています。
ネッツはセルティックスにならないかどーかが肝なよーな。
両チームとも、積み上げてきたものと新しい事をどう構成していくのか楽しみ&不安ですねー。
ディアンジェロはドレイモンドとの関係性が最大の懸念ですね。パス交換ばかりをドレイモンドが求めたらディアンジェロの良さは半減すると思います。
スティーブ・カーが放置する事も多いので、若手には難しい環境なこともあります。
ネッツファンとしては本当に幸せな時間だったと思います
ネッツの面白さは言われた通りに再現性が高いはピッタリな言葉ですね
論理的なオフェンスと僕は呼んでいました
オフボールムーブが多いのは本当に観てて楽しかった
複数の選択肢の中から最適解をその場で見つけて行く能力がラッセルにはあったと思いますがGSWでスターとプレイする事でどうなるのかアトキンソン無しで活躍出来るのか楽しみにしています
クルッツの記事楽しみにしています!
ディアンジェロのいるうちにネッツの試合を観に行けて良かったです。どうせならラッセルはフランチャイズプレーヤーになれる場所に行ってほしかったです、、
ブラッドスティーブンスの次はケニーアトキンソンとカイリーをどう扱うのかそこも楽しみにしてます笑
羨ましい。昨年に行けば良かった!