20050414 シクサーズvsヒート

アイバーソン&ウェバー、ウェイド&シャック

さてシクサーズ。これまでセンターを中核にしたインサイドゲームにカリーみたいなアイバーソン。そこからもっとシューター利用にしながら、肝心のシュート力がないチームにしていたシクサーズ。

それがクリス・ウェバーというインサイドのプレーメイカーを加えた2005年は確かに、一味違うチームになっていました。加わったのはカイル・コーバー。なるほど、これは素晴らしいし、まさに03年ごろに足りなかった要素です。さらにルーキーのイグダラはディフェンダーとして、トランジション要員として適した逸材。2年続けて「正しいドラフト指名」をした印象が強いシクサーズです。

しかし、試合開始から問題となっていたのはそのイグダラ。ストレッチしきれていないシーンや、狭いゾーンでドリブルをすることが出ています。概ねルーキーとしては判断力があるものの、現在のイグダラを見慣れていると苦しいシーンです。

これで良い内容のオフェンスをしている割には決められず二桁ビハインドとなったシクサーズ。しかし、取り返したのもあっという間でした。コーバーへスクリーンに行くアイバーソンがまるっきりスプラッシュブラザーズなプレーコールもありつつ、次第にディフェンスが広がってきたことで、アイバーソンのドライブから得点を重ねました。

◉堅実なコンビと爆発力のチーム

シャック&ウェイドのヒート。でもそれだけではなく、エディ・ジョーンズにクリスチャン・レイトナー、ベンチにはアロンゾ・モーニングだっているじゃないか。結構な豪華メンバーのヒートは、非常にフロアバランスがとれたオフェンスを展開しています。

「フロアバランスが良い」というのは、現在のストレッチとは少し意味が違って「1on1が5つある」状態でもあります。それだけウェイドとシャックの能力に自信があるわけです。またデリック・ジョーンズを中心に3Pを決めていくのも目立ち、しっかりとバランスよく広がって、エース達に自由なプレーをさせようとしています。

兎にも角にも「フラッシュ」の速いこと速いこと。ドノバン・ミッチェルが比較もされるウェイドだけど、そんなレベルじゃなく速いじゃないか。小さなアイバーソンの細かな切り返しとは違うタイプの速さで、単純なスピードの恐ろしさ。

そして圧倒的なシャックのゴール下。レイカーズ時代のようにポストアップをして押し込むよりも、オフボールのポジション争いで優位にたってのターンシュートが多い印象です。それはハックもしにくい。ちょっと破壊力は落ちたけど、ボールを持たないときの怖さを発揮しています。

その点ではシャック&コービーよりも効果的にも見えてくるコンビ。でもコンビがいないとちょっと困っているヒート。理由はフロアバランスが良いことだよね。誰かが突破してくれないと苦しい。

総じて、シクサーズの方が内容として優れています。ただし、5人が役割を持って連動する形は1人のポジショニングが違っただけで崩れてしまうことがあるよね。それに比べてヒートは中心となる選手を使うのが基本なので比較的シンプルに合わせることが出来ます。

なので、爆発力があるシクサーズが一気に逆転したけど、ちょっと合わなくなるとヒートが追い上げるような展開。アイバーソンとウェバーが中心だからわかりにくいけど、コーバーの代役がいないことでベンチメンバーの時に少し困る一面もありました。

◉ファールドローとパスワーク

互角の展開が続いた前半でしたが、終わってみればヒートが10点リードになります。その理由は両チームのシュートが決まらなくなってから、ヒートがファールドローを続けた事。ここはルールなので非常に難しい。

ただし、シクサーズのディフェンスはいくらなんでも苦しすぎました。インサイドで3人くらいで囲んでいるのにファールになってしまうのは、チームディフェンスとしての大きな欠点。「どこで止めるのか」が不明確な気がします。

思えばムトンボで成功したのは最後の砦としての機能性でしたが、このチームには砦がないから変に全員で飛び込んでしまっています。現代的には諦めるようなシーンかもしれませんが、この時代のオフェンス力だと諦めたら負けるのでしょう。

一方でシャック自身はそこまで機能していない割にヒートのディフェンスはゴール下の部分で止めるシーンが目立ちます。前半のシクサーズはFG40%を切っており、ディフェンス力で負けたといっても過言ではありません。

優れたインサイドのプレーメイカーを迎え、全体のオフェンススキルが向上したけれど、アイデンティティだった強固なディフェンスを構築できなくなっているようなシクサーズ。

誰かドレイモンド呼んできて!と言いたくなりますが、おそらく呼んできてもダメだろうね。それがチームディフェンスとしての悪さです。ウェイドが速いならばどこまでを個人で、どこからをカバーで止めるのか。シャックが強いなら、どのポジションを許さず、どこから打たれるのは許容するのか。いろいろと苦しい一面がありました。

ヒートはアイバーソンに抜かれるとインサイドのシャックに引き渡し、周囲は次のカバーに移行しています。もちろんシャックはゴール下しか守れないので、いつまでもアイバーソンは追いかけられないから、再度スイッチする。瞬間的にはゾーンに近いね。ウェイドとアイバーソン、それぞれへの対応に差がある両チームでした。

◉ディフェンスとトランジション

それでも後半になってディフェンスから反撃に出るシクサーズ。そのディフェンスはハードワークみたいなことだね。ルーズボールにスピードのアイバーソンと、反応のイグダラ。

あと単純にシャックがフリースロー外している事。

追い上げられたヒートはシャックからモーニングにスイッチすると、ほぼゾーンの守り方で機動力で守り始めます。モーニングは病気だった気がするけど、全体的に豪華メンバー故にスタミナで上回っている感じ。そしてゴール下はモーニングが連続ブロックで阻止します。

本当はシャックとモーニングの対決する時代になるはずだったNBA。その両者が同じチームにいるなんて、レブロンとデュラントが同じチームにいるようなもんだよね。

オフェンスでもシャック並みに決めていくモーニング。より軽やかにテクニカルに。いや本当に反則だわ。同時にコートに立つってことはないだろうけど、豪華すぎるセンターの競演。

総じてシクサーズに足りないものは、トランジション能力です。走れるメンバーを揃えているけど、その割にはトランジションが弱い。言い換えればシャックのデメリットを活用できていません。

時代的にトランジションで3Pを打つことに許容する心が小さいでしょうから致し方ないのですが、チームシステムとしてのトランジションがないので、どうしてもどこかで強引になるしかない。コーバーだけじゃ足りない。

それでもディフェンスを粘り強く行い、3Qを20点に抑えたシクサーズ。その理由はファールが4つしかなかったこと。フリースロー与えちゃダメ!ってのを地で行くのでした。

◉変化したオフェンス

4Qもアイバーソンのドライブキックアウトからコーバーの3Pで1点差にするシクサーズ。うーん、これを見るとやっぱりシューターがもう1人欲しい。

ところで「ピック&ロールからウェバー(マーク・ジャクソン)のミドル」というシーンが多くあります。これは現代ではミドルじゃなくて3Pになるプレーコールです。ウェバーなら問題なかったと思うし。

シューターが足りないと言っていますが、選手としてのシューターだけでなく役割としてのシューターでもあります。もしも、このビッグマンとのピック&ロールが3Pになるのであれば、アイバーソンが得るスペースはさらに広がります。これまでキックアウト能力は示していなかったアイバーソンですが、経験も積んで上手くなってきています。

アイバーソンのプルアップ3Pで同点になった残り7分半。次第にアイバーソンが自分で行くシーンも増えてきます。それは試合開始当初のシクサーズのチーム全体としての良さは減っていき、アイバーソン中心のプレースタイルって感じです。

それに対してシャックがなかなか出てこないヒートはウェイド中心のプレースタイルに。ミドルが多くなり、互角の展開に持ち込まれていきます。ちょっとした不思議な現象でもあって、特定の選手中心で攻めるなら互角になってしまうっていう。

シャックが戻ってくると、アイバーソン中心のシクサーズがアイバーソンのパスからプレーが構築されるのに対して、シャックにボールを入れるオフェンスエントリーからウェイドはあくまでもフィニッシュ役なヒート。

残り1分半でエディ・ジョーンズがミドルで同点にすると、ウェイドがドライブでリードを奪う。それをウェバーがミドルで同点にし、ウェイドがミドルで残り19秒2点リードに。

それでも強引にシャックとウェイドの間に突っ込んだアイバーソンがファールドローで104-104の同点でオーバータイムになります。

◉16アシスト

4Qにも感じたことですが、オーバータイムになると更にハッキリしてきたのが、シャックの影響力が落ちている事。マーク・ジャクソンが普通にリバウンドに勝利してゴール下を決めるなど、ヒートには優位点が減ってきます。

そしてイグダラによる連続得点と、タイムアウト明けのインバウンドをスティールしたアイバーソンからコーバーの3P、それに不服なのかダミアン・ジョーンズがレフリーにクレームしテクニカルまでコールされて残り3分で8点差になります。

それでもこの試合48点のウェイド中心に反撃するヒート。それをさっくりとかわすようにパスを出していくアイバーソンとシュートを決めるマーク・ジャクソン。結局ヒートは最後までピック&ロールに対するディフェンスに答えを見つけることが出来ず、決めまくったウェイドむなしく、シクサーズが逃げ切るのでした。

アイバーソンは38点に16アシスト。16アシストってアイバーソン的にはどうなの?

キャリアを通して2回しかない16アシスト。もう1回はこの6日前のキャブス戦なので、いかにこの時期のアイバーソンが充実しているかが伺えます。

同時にアイバーソンの使い方が、これまでと大きく違うという事。「カリーみたい」と評したのはSGとしてオフボールで動き回り、「アイバーソンカット」でシュートに持って行くスコアラーとしての姿。しかし、この試合のアイバーソンは間違いなくPGとしてプレーメイクする選手でした。

ある意味、カイリーやケンバなどに近い現代的であり、その2人を上回るプレー効率をみせています。(この試合は)ピック&ロールがここまで出来るのは意外でしたが、基本的に同じパターンなので、ハーデンやディアンジェロみたいな形とはちょっと違います。

PGアイバーソンというのは、あまり知らない状況でしたが、上手く機能させる術を持っていた2005年のシクサーズでした。

そしてアイバーソン&ウェバーのコンビは非常に魅力的であり、アイバーソンにとってベストパートナーになり得た存在だったかもしれません。

◉何故、勝てないのか

問題はこのチームが翌シーズンに失敗している事。不協和音とか起こりそうなので、理由はいろいろでしょうが、予想してみましょう。

〇ディフェンスレーティング 106.5(24位)

最大の理由はこの試合でも感じたディフェンス力のなさ。それもイグダラやウェバーみたいな選手がいながら無様な感じでした。理由はファールが多いからかと思いましたが、被フリースロー数はそこまで多くはないので、ちょっと違うみたいです。

〇速攻での失点 13.4(29位)

一方でこの試合でも決められまくった速攻はリーグ最低クラス。ところが、この数字がまた興味深い

〇ターンオーバーからの失点 15.9(16位)

〇ターンオーバー 14.1(13位)

ターンオーバーの数も、ターンオーバーからの失点もリーグ全体の中でそこまで悪くないのでした。つまり、「速攻を出されると失点する率が高い」のと「リバウンドからの速攻を食らう」ということになります。

これは試合内容から仮説を立てることが出来ます。それはガードがアイバーソンとコーバーというコンビだということ。2人が「速攻を止める能力が低い」というのもありますし、それ以上にアタックするPGとオフボールムーブのSGというコンビは「トランジションディフェンスへの準備が遅くなる」組み合わせでもあります。

つまりアイバーソンがドライブし、それに対してコーバーがシューターポジションで待つのだから、リバウンドを相手が奪った瞬間に誰も戻れていないことがあるわけです。うーん、とってもシンプルな理由にして、アイバーソンらしい理由。

ここで気になることは、じゃあスプラッシュブラザーズはどうなの?ってことです。ウォリアーズも速攻からの失点が24位と散々です。やっぱり守れていませんが、自分たちが速攻に行くからカウンターを食らっている理由もあります。それに比べるとシクサーズは速攻の得点も14位なので、一方的にやられています。

スモールラインナップ気味なのに、自分たちがトランジションで損してどうする。01年シクサーズはここで3点近くリードしており、それがメリットになっていたわけです。総じてトランジションに難があるチームになっていました。

〇ウェバーの速攻 1.4点

走れるビッグマンの代表的存在だったウェバーは全盛期だと3点くらい奪っていますが、やはりケガの影響がみられます。

〇FG 43.4%

また平均20点を奪う反面でFGの低さも気になります。こちらも全盛期だと50%近かったのですが、シクサーズではミドルシュートを打つことが増えており、インサイドへ進入する能力が衰えていることを示しています。

あるいはキングス時代の魅力的なパッシングゲームを考えるとアイバーソンよりもウェバーがボールを持つ時間を増やし、よりフィニッシャーとしてアイバーソンを活用すべきだったのかもしれません。

いずれにしても「トランジション」で相手を圧倒していたウェバーが走り切れず、元々FG%が低いアイバーソンとコンビを組むには、インサイドを攻略する能力に欠けていたともいえます。概ね良い感じのコンビなのですが、残念ながらウェバーは下り坂なのでした。

〇セカンドチャンスの失点 14.0(25位)

そんなウェバーの衰えが出たのか、リバウンドを抑えきれていない数字もあります。ただし、ウェバーは9.9本と奮闘しており、ダレンベルトも8.2本とインサイドコンビは仕事をしています。ここでもアイバーソン&コーバーの問題があるのかもしれませんが、それ以上にベンチメンバーが弱かった様子。

この試合で活躍していたマーク・ジャクソンが移籍したことで、苦しくなっていたようで、ミドルシュートとインサイドのフィジカルな部分を担当できるベンチは下り坂のウェバーには必要だった気がします。

PGアイバーソンという意外な形はそれなりに機能しつつ、代償としてディフェンス力に欠けたチームが出来てしまいました。補うにはどうすればよかったのか。初めに思いつくのはPG役をこなすSFの存在です。

そもそもオフボールからシュートに持って行くのがアイバーソンの良さだったのだから、相棒にコーバーがいる中で第3の選手がPG的に振舞うことで解決する部分もあったはず。

しかもこのチームには現代ではその最前線にいるイグダラがいます。そして当時そんな選手だったアーロン・マッキーがいます。でも出来なかったのはHC問題なのか。

この手の問題は結構あります。柔軟性が求められる現代と違って、各ポジションの役割が固定化されていたような気がしますし。また、それだけでなくアイバーソンという稀有な存在に対して、ラリー・ブラウンみたいに振り切ったことを出来るHCの方が珍しいとも言えます。ピストンズでは見事なスモールラインナップにしていたしね。

非常に面白いチームになっていることはわかりましたが、一方で「柔軟性」には欠けていた05年シクサーズ。序盤の面白さから比べると終盤になっても、同じようなプレーになるツマラナサもありました。

その一方でいつまでもピック&ロールを止められないヒートってのも事実でした。それくらいアイバーソンが良かったということにしておきましょう。

この年、ピストンズに敗れたヒートはPGにペイトンとJウィリアムスを加えて翌年に優勝します。それはウェイドにどうやって得点を取らせるか考えた結果だった気もします。エースをどうやって使うのか。アイバーソンを柔軟に扱うHCがいないと難しいのでしょうね。

20050414 シクサーズvsヒート” への4件のフィードバック

  1. 最新記事にしませんか。

    この年もアイバーソンのFG%は低いわけです。翌年上がりますが。コーバー、ウェバー効果で本人のドライブがチーム戦術に昇華してきていると思うし、私の思う確率上昇方法ですが、この年の率が悪いのをどう推量しますか。深く侵入可能になったけど、相手センターの最後の砦効果辺りでしょうか。

    1. 記事はウェイド視点の中に埋め込む形にしました。
      アイバーソンまとめの方が最新に顔をださせてもよいかもしれません。

      この試合の内容ではキックアウトの良さが目立ちました。その一方でインサイドの合わせが弱いシクサーズです。
      ドライブして囲まれるアイバーソンに対して、適切なパスがキックアウトしかないのはちょっと苦しいし、ネッツやロケッツ、ジャズみたいにそこを強化するチームとは違いますね。
      アイバーソンのゴール下については、単純にサイズがないので他の選手より難しいのだと思います。そこはもう致し方ない部分かなと。

  2. アイバーソンのドライブ⇒チームのイージーですよね、これは確かに少なかった。ウェバーはミドル締めが多く、イグダラアリウープは大技ですし。ハーデンtoカペラを見ると、ダレンバートと…。そんなハイライトもありますから、しかし数は少なく徹底は出来なかった。ダレンバートの位置取りもウェバー、ジャクソンのポップを増やしたと思うし、『怪我でもダンクしろ、ウェバー』と思ってましたがダレンバートとアイバーソンのコネクションが急務だったのかもしれません。アイバーソンとウェバーに否定的な僕でしたが管理人さんは肯定的だったので思うところもありましたが、見出だす改善点は結局同じなのかもしれません。

    管理人さんもやはり色々考えてますよね。ただ記事を書く、にしないでギミックにしたり時事的な引退のウェイドと重ねたり。文章エンタメ。今後の予定テーマの時点で想像してましたけど。あのときはかなり後ろの方だから8月かとも思いました。

  3. 管理人さん、私Twitterも開設してなくて連絡や依頼をするのが難しいところではあるんですが、最近ネット接続環境悪かったりしますか。しばらく前にそんなことを書かれていた気がします。

    それともなにかこちらに不手際がありましたか。

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