若返りしダニー・グリーン

シーズン開幕当初から話題になっていた話

カワイ・レナードと共にトレードになったダニー・グリーン。その当時のスパーズファンが惜しむ声とは裏腹に

「でも、パフォーマンスも落ちているしな」

という現実があり、何だったらレナードに合わせてサラリー削減をスパーズが望んだ疑惑すらありました。優勝当時の活躍と、ディフェンス面の信頼とは違って、キャリア終盤を迎えていたと思われていました。

従妹のジェラルド・グリーンが引退間際からロケッツで見事に返り咲いたこともあって、立場が逆転してしまったとすら感じたわけです。

〇15-16シーズン
得点 7.2
FG 37.6%
3P 33.2%

〇16-17シーズン
得点 7.3
FG 39.2%
3P 37.9%

〇17-18シーズン
得点 8.6
FG 38.7%
3P 36,3%

決して「悪い数字」ではない3Pですが、14年は41.8%でした。スパーズオフェンスがボールムーブからフリーを徹底して打つことを考えると、アテンプトも減り得点が落ちたことは選手としてのピークは過ぎたと思わせるに十分でした。

ところが、迎えた今シーズン。ダニー・グリーンは見事な復活を遂げます。

〇18-19シーズン
得点 10.3
FG 46.5%
3P 45.5%

プレータイムは前年と殆ど変わらない中で、3Pアテンプトが1本近く増え、確率を大きく向上させ、そして二桁得点に乗りました。

レナードが大きく注目され、レナードに頼ったオフェンスを展開した開幕当初から、あまりにも劇的に変化したダニー・グリーンの存在の大きさは衝撃的でもありました。

ラプターズに来て若返ったダニー・グリーン。その数字を探してみましょう。

◉決まる3P

〇シュートアテンプト
2P 3.2本 → 2.4本
3P 4.6本 → 5.4本

まずわかりやすかったのは、FGアテンプト数が同じだけど3Pの割合が増えた事。シューターとして現代NBAのシューターらしくなっています。典型的な3&Dに。

この変化は「役割の変化」ではなく「役割の徹底」になっています。確かに衰えてきたとはいえ3Pの確率自体は『まぁまぁのシューター』レベルをキープしていただけに、その強みを徹底させたラプターズの選択は理解できます。

〇EFG% 49.0% → 62.2%

その結果、大きく向上したEFG%は、50%を切っていて引退が近い選手にしか思えない数字から、トップシューターに復活しました。復活するグリーン一族。

しかも、キャリアを通じて初めての60%オーバーです。要するに「キャリア最高の確率で決めた」シーズンとなったダニー・グリーン。若返りし以上に、キャリア最高なわけだ。

その理由はヒートマップを観れば一目瞭然です。まずはスパーズにいた昨シーズン

どうやら右サイドが好きらしいのですが、45°が目立ちます。これが今シーズンになると全く違います。

右サイドが好きなことは同じですが、圧倒的にコーナーが増えました。コーナー3Pを打つべしっていう明確なる現代オフェンス。効率性が高いシュートにして、自分1人では打てないコーナー3P。

ではコーナーの確率はどれだけ向上したのか。

〇コーナー3P
左コーナー 39.0% → 47.1%
右コーナー 49.1% → 52.6%

50%オーバーってのは優秀過ぎますが、それでも得意の右サイドだけを考えると昨シーズンも49%も決めており、強烈に確率を上げたわけではありません。左コーナーは向上しましたが、そもそもアテンプトが少ないっていう事情もありました。

キャリア最高のEFGとなったダニー・グリーンですが、その内容は「これまで通りの高確率のコーナー3Pを、これまでよりも遥かに多く打った」ということ。

「若返りしダニー・グリーン」とは「コーナー3Pを徹底したダニー・グリーン」なのでした。

◉ファイナルで伸びた事

さて、ファイナル中にシーズンの話ばかり書いても仕方ないわけです。ゲーム3で6本の3Pを決めたことが生み出した記事を、シーズン成績だけで終わらせるわけにはいきません。

〇プレーオフの3P
カンファレンスファイナルまで 31%
ファイナル 50%

そう「やっぱり衰えたのか」と思われていたプレーオフが、ファイナルになった急激に復活しました。まぁ単にスモールサンプルだからなのですが。

これをショットゾーンごとにすると

左コーナー、右45°という得意ゾーンが全く決まらなくなっていました。わかりやすく対策されていたと捉えることもできますし、まぁちょっとパスが出てこない事情もありました。

それがファイナルになると一気に元に戻ります。

そんなわけで「ウォリアーズの対策不足」な気もしてきますし、あるいはよく知っていたが故に「スパーズのダニー・グリーン」のイメージで臨んでしまう事情もあるかもしれません。

あるいは、というか恐らくこれが最大の理由ですが、プレーオフで決まらないシュートだったから、警戒が薄いのだと思います。

いずれにしても、ダニー・グリーンのコーナー3Pがファイナルのキーポイントになっています。

〇ワイドオープン3Pのアテンプト数
シーズン 2.5本 51% 
カンファレンスファイナルまで 2.2本 43% 
ファイナル 4.3本 62%

プレーオフになって確率は落ちているものの、それでも43%決めています。そしてファイナルになって確率が上がったこと以上に、本数がグッと増えているわけです。

これだけマークが緩くなってしまった理由は何なのか。ウォリアーズ側の事情に話を移してみましょう。

〇マッチアップ数と3P
カリー 29.3回 3.3本 50%
レディック 30.3回 1.1本 25%
フォーニエ 23.8回 2.0本 40%
ミロティッチ 22.8回 1.2本 17%

各チームのマッチアップが多い選手達。ミロティッチがメインマッチアップってのはウケます。なお2番目がブログトンで確率は同じ。

レディックが打たせていないことも含めて、カリーがダントツに意識が低いことがわかります。もちろん、1つにはカリーがオフェンスに力を注ぐ必要があり、ディフェンスでパワーが残っていない事情がありました。そこに加えてカリーのサイズが高さで楽に打てています。

しかし、それ以上にヘルプディフェンスを構築するウォリアーズの中で、レナードへのヘルプを徹底しており、ダニーへのマークが緩くなりがちです。チーム事情ってのが大きいし、それでいてチェイスしてきたのがカリーでは全く間に合わないよね。

◉ゲーム4はどうするのか

ヴァンフリートの件も含めて、ウォリアーズはここの対策を考えないといけません。これまで優先していたインサイドヘルプを遅らせるのかどうか。このままダニー・グリーンをフリーにするのは危険です。

「こんなに好調は続かない」ってのも事実ですが、前半に並べた数字から読み取れるのは、好不調の波よりも自身の「スイートスポット」から「フリー」ならば高確率で決める可能性が高くなるわけです。

一方でミロティッチの高さで追いかければ、かなり外してくれたバックス戦。この考え方が勝負をわける一面があるのかどうか。

ラウリーにトンプソンがメインになっている中で、トンプソンのケガから負担軽減のためにマッチアップ変更ということも考えられます。そうなると、高さの違いとマークマンへの意識が強いトンプソンには意外と苦しむのではないでしょうか。

そして、そうなると必要なことは、カリーにマッチアップされるラウリーがしっかりと得点する事と、ヘルプが減るであろうレナードが個人技を決めきること。

ここまでディフェンス面で解決策を見つけたとは言い切れないウォリアーズだけに、その変化は十分に考えられます。

レナードと共にやってきたラプターズで、大復活を遂げたダニー・グリーン。そのグリーンへのマークを強めるならば、決めなければいけないカワイ・レナード。

だから注目すべきは「ダニー・グリーンの3Pは好調さが続くのか」ではなく、「ダニー・グリーンとカワイ・レナードのトータルでどんな結果を残すのか」ということ。

〇ファイナルのレナード
29.0点
FG43%
3P33%

さぁどうなるゲーム4とカワイ・レナード!

若返りしダニー・グリーン” への2件のフィードバック

  1. ほんとTORにとっては千載一遇のチャンスですよね。

    個人的にはTORの外は期待できないと思っています。1戦目と3戦目は結果上手くいった。ただ、2戦目のGSWにrunを仕掛けられたあの時間帯、あの一切誰もシュートが入る気がしない雰囲気はちょっとやばかった。魔法が解けたみたいな。逆かな。
    あの時3Pを選択するなら入れなきゃいけない。というかとにかく得点を止めてはいけなかった。フリースローでも何でも。その判断を誰も出来なかったように見えた。

    ただ、GSWが今後またあのような時間帯を作れるのか微妙なんですけどね。

  2. ジェラルドとダニーって従兄弟なんだ…言われてみたら似てるから誰かに言いたいくなります。

    NBA選手になりたいならDNAも大事なのかなー

    役割の徹底化 で輝く選手っていますよね。スパーズで優勝出来てない時代のダニーは苦手な2点も取りに行かざるおえなかった?からか、『下り坂の選手』のイメージがありました

    ラプターズのGMってもしかして優秀?と思わされる今シーズンのplay-off結果ですね

    そこに気付き、調べて記事を書く管理人さんもまた優秀です 惚れます

    確かにダニーやジェラルドみたいな選手って守る側からして、優先順位的に後の方なので、ついディフェンス力の無い選手や高さの無い選手がつきやすいですよね。ミロティッチはラッキー相性ですかね。ディフェンス力やサイズで順番にあてていったらそーなった的な。

    カズンズがつくわけにもいかないってのもミソかな ガソルとカズンズってFinal感ないんだよなー(イバカはマギー的なキャラなのでアリにしておいて欲しい)

    さすがにディフェンス捨てすぎなウォリアーズがせめてクレイが帰ってくるらしいので、どーにかオフェンスもディフェンスもそれなりにはなりそーだし、両チーム共に、とっても大事な4戦目ですね

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