エクストリーム・クレイ

ゲーム2を振り返ろう

ウォリアーズが見事に切り返したゲーム2。ゲーム1からの修正点はトランジションディフェンスなわけですが、そこに全く意味をなしていなかったジョーダン・ベルをスターターから外して、カズンズを復帰させました。

修正点がトランジションであることを考えると、苦しそうなカズンズですが実際にはゲームスタートの時点でトランジション、、、というか、イレギュラーな状態を繰り返すトランジションには起こりにくいです。元気だから。

そしてメインはルーニーだから関係ないじゃないかと。まぁここは別の問題が発生したわけですが、それはそれとして、「カズンズの良さ」ではなく、「スターターの中にカズンズ」という一面があったことは重要です。

というのも、ゲーム1で3Pを打たれまくったウォリアーズディフェンスはより多くの3Pを打たれながらもゲームトータルで29%まで抑え込みました。

「ラプターズが決めろよ」ってのも一因ではありますが、9本打ったレナードがプルアップじゃないのか、なんていういろいろな検討事項もあるので一概にはいえません。

〇ラプターズの3P
ゲーム1 13/33
ゲーム2 11/38

ラプターズ的には、この数字が全てだった気もします。だって、ファイナルなんだから小さな差が全てを分けるわけです。さすがに29%で簡単に勝てるような試合ではないし、タフでも決めないと勝てないのがファイナル。

〇ワイドオープン
ゲーム1 8/18
ゲーム2 8/24

ワイドオープンで6本多く打ったけど、決まる本数を1本も増やせませんでした。まぁ勝てないわな。勝てないさ。

1Qの序盤ですが、フロアバランスがとれているラプターズですが、ウォリアーズディフェンスのポジショニングの良さも目立ちます。ゲーム1でシアカムを追いかけた時は、このバランスを上手く崩していたわけですが、実はレナードスタートのオフェンスだと、崩れにくい現象もありました。

カズンズで不安視されるディフェンスですが、実際にはビッグマンのカズンズがインサイドを中心に守り、他の4人が適切な距離感を保つ、マンツーだけどゾーン的な考え方もあります。

ゲーム1ではジョーダン・ベルを信じられなかったのか、ドレイモンドがオーバーヘルプ気味でしたが、そこの改善があったようなゲーム2でもありました。

〇それぞれのパスからの3P
シアカム 6/9
ヴァンフリート 0/7
ガソル 1/4
ラウリー 2/5 
レナード 1/6

この記事を書くのが遅くなったので、「シアカムとガソルが決められなかった」なんてことを言いだしても遅いので、むしろパス側の状況を見てみると、ヴァンフリートとレナードからのパターンで苦労しています。

「バランスの良いオフェンス」は大切ですが、「バランスの良いディフェンス」をされてしまうと意味がありません。レナードで足が止まるというよりも、誰かがディフェンスのバランスを崩さないといけないでしょう。

〇マルク・ガソル
2P 2/5
3P 0/2
オフェンスリバウンド 0
アシスト 2

そしてカズンズが相手になって全く機能しなかった、というか意味をなさなかったのがガソル。この数字の中で一番の問題は3Pアテンプトが2本のみってことです。

『カズンズがインサイドにいて守りやすい』

という状況を許してしまったことがラプターズにとって大きく響きました。単に3Pが決まらなかったこと以上に、ここが積極的にならないと苦しいってのは、イーストの戦いで理解したんじゃなかったのか。

ウォリアーズファンからすると「カズンズでは不安」なわけですが、そのカズンズに「長いプレータイムを与えた」のはスティーブ・カーなのか、それともガソルなのか。ルーニーかもしれないってのは置いておこう。

◉エクストリーム・クレイ

そんな欠点がありつつも、試合はラプターズが優勢で展開されました。それを3Qで逆転する「かつての」パターンではありましたが、それよりも「1Qで勝負が決まっていてもおかしくなかった」という印象が強い試合でした。

確かにバランスよく守られていたラプターズでしたが、そんなウォリアーズディフェンス以上にラプターズのディフェンスは非常に優れていました。

それを破壊したのがクレイ・トンプソンのシューティング。あれは反則です。ワイドオープンすら決まらなかったラプターズにとっては特に。

2本目の3Pの場面ですが、ウォリアーズのオフェンスはフロアバランスが整っているわけではありません。ボールと逆サイドでカリーとカズンズがストレッチこそ出来ていますが、空いたインサイドを使える気配はゼロです。

そしてトンプソンがこの状態からパスキャッチして3Pを打つ気配すらありませんが、実際にはスーパークイックで、肘先だけのシューティングで打ってしまいました。

それもシアカムとレナードのブロックがあってのことでした。これがラプターズのディフェンスをいろいろと狂わせていきました。

「バランスの良いオフェンスではない」ウォリアーズが「バランスのよいディフェンスをさせなかった」ような序盤戦となったのです。

その話の前に前提条件に付いて触れましょう。プレビュー時にラプターズについて書いた中に

ラウリー、レナード、ガソルというヘルプディフェンダー
グリーン、シアカムというチェイスディフェンダー

という表現をしましたが、ゲーム1の開始からはやっていなかった気がしますが、ゲーム2はこの傾向が強くなりました。試合開始からシアカムがクレイを追いかけ続けました。

ちなみに上記の3Pの前にタフミドルを決めているのですが、その時のマッチアップはラウリーでした。

トランジションの流れからマッチアップが変更されているのですが、ラウリーは素晴らしいディフェンスで苦しい状況に追い込んでおり、そしてまたレナードが近くにいます。

どうみても打てるシーンではありませんが、クレイには関係ありませんでした。


関係なかった最大の理由はラウリーのサイズです。肘先だけでも打ってしまえるようなクレイのシューティングなので、足腰で上手くリングを向いてジャンプしてしまえば迷いはありません。

そして、これがクレイの担当をシアカムにしていたラプターズの1つの狙いでもあります。このプレーを許したくなかったし、このプレーがなければデュラントのいないウォリアーズは手詰まりになっていたシーンがそこそこありました。

この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は image-22-1024x436.png です

ここで1枚目の3Pに戻りますが、チェイス担当のダニーとシアカムがそれぞれカリーとクレイを守るわけですが、ドレイモンドにラウリーというマッチアップを気にしなかったラプターズでもありました。

まとめると、

ラウリーとレナードをフリーのヘルプ担当にして強固なインサイドディフェンスを作り上げた

というのがひとつのラプターズです。アンテトクンポを止めたレナードでしたが、だからといって直接マッチアップを続けたわけでもなく。

◉過剰なレナードとチェイス役

あまりにも決め続けた、いや「難しいシュートを決めた」クレイに対して、ラプターズはちょこちょこマッチアップをいじるようになりました。レナードが対峙するシーンも増えていきますが、これが少しずつラプターズのディフェンスをも狂わせています。

この状態から3Pが打ててしまうわけで、まぁとんでもなかったのですが、レナードは自分のヘルプでも決められ続けたことで過剰な反応を示すようにもなっていきました。

そのひとつがこれ。まだハーフライン近辺にいるクレイに対して、レナードは両足をついて止まるような形にすらなってしまっています。視野を確保できていませんが、クレイだけは止めたい形です。

それがこんなディフェンスを生み出してしまいました。カリーは狙ってレナードの邪魔をしようとしましたが、結果的にはダニーの方が邪魔になり、クレイのイージーシュートがうまれています。

後半になって(ケガもあり)3P1本だったクレイでしたが、その影響力はキープしつつ、バックドア系のプレーでイージーシュートになるシーンが出てきました。ウォリアーズの流れです。

〇シアカムとのマッチアップ
2P 0/4
3P 3/4

実はシアカムと対峙したシーンでは3Pこそ決めたものの、2Pでのイージーが出来ませんでした。サイズ差あるしね。これがあまりにも決めたことで、ラプターズの計算を狂わせ、そして対応に失敗したことが、3Qのラッシュにも繋がっています。クレイは決めていなくても。

そしてダニーからすると、「チェイス役なので優先される」ことが多かったコース取りで「優先してくれなかった」レナードとの連携にミスが出ていました。これも痛かったのでした。

◉スティーブ・カーが狙ったこと

カリーのスクリーンはいろいろなところで効くのですが、これもそのシーンであり、ラプターズのミス。

シアカムを抑えているカリーですが、とはいえ、ここではヴァンフリートはしっかりと反応しており、自分がリビングストンをカバーしようと考えてはいます。なお、実はイバカの方が問題。

ところが何故か、こんなルーズな対応をしてしまいました。一回リビングストンを追いかければよいだけなのに、ギャンブルパスカットを選択しています。

これが「カリーをチェイスするため」にパスへの反応が遅かったなら、まだ理解できるものの、ドレイモンドの見事なバウンズ選択にして、どうみてもギャンブルでしかなかったヴァンフリートです。

こちらも似たようなシーンですが、カリーがドレイモンドにバックドアをさせようとレナードに背後からスクリーンを仕掛けます。マークのダニーはそれを観ています。

ところがダニーの位置がおかしい。なぜ、このスクリーンでここになるのかってことです。「カズンズをかわすため」という論理は成立しなくもないのですが、人数が多く揃っていてパスが通りそうもないトップの位置を優先した判断は何だったのか。

総じてカリーが迷いを生み出すプレーをしています。冒頭の「ディフェンスのバランスを崩す」という意識の高さがあるし、それが自分を活かすとも考えています。

とはいえ、ここはファイナル。それだけで通用するほど甘くはないわけですが、チェイス役が明確なラプターズに対して、何故か通用してしまいました。

つまりスティーブ・カーの狙いは

ヘルプ役ディフェンダーがチェイスするシーンを作れ』

『チェイス役がヘルプしなければいけないシーンを作れ』

という2点であり、まぁ同義語でもあります。レナード&ダニー、ヴァンフリートという判断力のある選手たちに混乱を生み出したのは、ウォリアーズ側の戦略でもあり、ラプターズ側の戦略でもあります。その隙をついてきたスティーブ・カーってことかな。

まぁここまで行くと失笑ではあります。

長年みてきたウォリアーズパターンですね。シンプルなスクリーンからディフェンスのオーバーヘルプを引き出してしまいました。

シーズン中なら「さすがウォリアーズ」ですが、ファイナルでこんなにわかりやすいシーンを作られると「ラプターズ何やってんの?」となります。なお、やらかしたのがイバカなので、ラプターズっていうかイバカです。

こんなにわかりやすいのはNGなわけですが、これをやらせないためにラプターズが仕組んできた『チェイス&ヘルプ』の構図を利用しに行ったウォリアーズでした。

◉見事だったよゲーム2

そんなわけで「トランジションディフェンスが」なんて言っておきながら、オフェンス面の改善が目立ち、そこにカズンズで違う形のハーフコートディフェンスをチョイスしたスティーブ・カー。だってさ、ジョーダン・ベルじゃなくてボーガット出してきたじゃん。

ラプターズが前半で勝負を決めてもおかしくない試合でしたが、そこを「オフェンスの改善」であり「ラプターズのスキを狙う」ことで、何とかついていく事に成功しました。

本日の題名は「エクストリーム・クレイ」ですが、「オフェンスの改善」とか言いつつも、そのスタートにあるのはクレイのとんでもないシューティングでした。これがなければ成立しないオフェンスの改善でもありました。

もっとも、その分、カリーが休んでいた前半でもあったけどね。

そしてこれが3Qに3Pではない形で機能したわけです。それはね。「オフェンス」ではなく「ディフェンスで止めた」ことから生み出されたトランジションの流れと、前半の3Pが生み出したバックドアカットでもあります。

しかし、それでもラプターズには勝機が十分にあったし、むしろ「ウォリアーズは良く勝ち切った」試合でもありました。イグダラが倒れ、ルーニーが出れず、そしてクレイまで。

この試合を勝利に持っていけなかったことはラプターズにとっては大きく響くものがあります。確かにケガが気になるウォリアーズってのもありますが、ポジティブな面ではベンチメンバーも含めて自信を手にし、1勝の余裕も手に入れました。

ゲーム3を予想するのはムズカシイネ。

そしてゲーム3もリアルタイム観戦ができません。くそっ!

リアルタイムどころか・・・っていう予期せぬ状況に追い込まれている苛立ちの管理人でした。

◉ダリル・モーロー(ロケッツGM)の呟き

「ウォリアーズを守れるのはスイッチングディフェンスだ」

「チェイスするよりもスタミナロスも少ないし、穴を作らないことに繋がる」

「ペリメーターを守れないガソルは時代遅れだ」

「カズンズ相手のスピードのミスマッチを利用したアイソレーションを選択し続けないのは愚か」

「コーナー3Pの専門家を起用しないなんて現代NBAに相応しくない」

「次のHCはスティーブ・カーが良いな。ドラフト指名権いくつでトレードできるだろうか。」

エクストリーム・クレイ” への5件のフィードバック

  1. 今回の内容とずれますが、ドレイモンドグリーンをみているとベンシモンズはドレイの上位互換みたいになれるのでは?と思いました。
    高身長ガードが売りのベンシモだけど中で下の選手とマッチアップする場面が多いし外を練習しない限りいつかPGとしては限界を迎えそうです。
    そうなった場合、スリーは下手だけどPFとして4番をやらせれば、ドレイモンドよりスピードと中の得点能力のあるスモールラインナップの要になれそう。そういう意味ではベンシモはまだ2年目なのでこの先数年はPGとしては育てていって、ダメでもPFという使い道がある落ち目のないプレーヤーと言えそうです。
    オフシーズンはここ三年間のドラフト組を再評価、みたいな企画も描いていただけると面白いかもしれません。ベンシモ、マレー、ドノバン、テイタム、フォックス、ヒールド、ヤングなどチームの1stオプションレベルの選手が沢山。
    これからのnba展望みたいな。

  2. 管理人さんがGame3に対し50-50でみているのが意外でした。僕は数年来の”GSW以外のチームが優勝してほしい勢”ですが、カズンズの投入でインサイドのアドバンテージが無くなってしまっていたGame2を見て、TORは正直もう厳しいのかなと思っておりました。

  3. 暑い中お疲れ様です^_^

    カズンズのパス結構好きです。
    というかGSWは3Qぼんやりナゲッツしてましたよねw

    NBAを見てると、ディフェンス時に味方が邪魔で抜かれて激おこ、みたいなシーンが時々あります。
    ほとんどが偶然、というか選手のディフェンス意識のレベルの差だと思っていましたが、今後は今回の記事を参考にして見てみようと思います。

  4. むしろ、これだけのクオリティでも5点差にしかならなかったことに懸念を感じます。最後にイグダラのオープン3が外れていたら同点、最悪だとPHIのゲーム7の二の舞だったと思います。もっともカリーに無理させず、きっちりオープンの選手に渡した上でのラストだったので、その点は評価できますが。
    接戦になった要因はたぶんレナードのFTだと思いますけど、G3以降クレイが欠場すると、いよいよディフェンダーの枚数が足りなくなってレナードに蹂躙される予感がします。

  5. ブログ更新は楽しみにしていますが、なにどぞマイペースでどーぞ。遅くなっても読めたら嬉しいです。

    オーバーヘルプを誘発する為のオフェンスの工夫や仕掛けは、ウォリアーズは手が込んでますよね。

    ①スター(スコアラー)選手にシュートを打たせ、ディフェンスをそちらに集中させる

    ②ディフェンス側はスター選手により集中する

    ③その隙にロールプレイヤーが広いスペースを使い得点する

    理屈では簡単ですが、単独では得点力のないロールプレイヤーに得点させ、スター選手はそのおとりに為るために得点をとる

    ここの『スター選手がロールプレイヤーの為に囮役の為に得点する』が僕はウォリアーズらしさかなと思っています。

    ロケッツとはまたちょっと違うとも似てるとも思います。

    ロールプレイヤーに得点させる為にスター選手がいると言ったら大げさですが、そんな感じかなぁと思っています。

    普通は逆ですよね。スター選手を助ける(支える)為のロールプレイヤー達

    まぁー似たよーなもんなんですが、優劣がとゆうか、何かが逆です。

    その文化がウォリアーズにはあり、KDはそれをどー思っているんだろーか。

    ウォリアーズのその文化が最強だとも最高だとも思わないです。たまたまです。S.カーやS.カリーがそーゆーのん好きなだけ。SSコンビ

    『スター選手とロールプレイヤーが対等な価値』と考えていそう。

    そりゃースター選手は高額なサラリー分の負荷は高いですが、ローサラリー選手の為に汗をかける高サラリー選手ってのいない。お金持ち(スター選手)が貧乏人(ロールプレイヤー)の為にあくせく働くなんてどこのおとぎの国のお話か。

    理想的ではあるが、普通のお金持ち(スター選手)はそんな事しない。世の中そーゆー人だらけ。

    でも、中にはそーゆー事するお金持ちもいる。ってだけ。

    あくまで個人的な想像ですがね。

    その文化がとゆーか考え方が薄い人(例えばKDやカズンズ)は中に入ってみて、今後どーなって行くのかが楽しみです。

    追伸

    モーローGMさんへ  色々とお疲れ様です。あなたのチーム作り面白くて好きです。S・カーは取らないで 気分屋で腹黒いけどウォリアーズ以外でヘットコーチするなら、カリーとクレイがいなくなってからでお願いしやす。

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