走れ!止まれ!ウォリアーズ

トランジションとスローダウン

ラプターズがファイナルで何をすべきか。真っ先に思いつくのがスローダウン。ガソルとイバカがいるラインナップに加えウイング不足。そんなマイナスの側面だけでなく、カワイ・レナードがいるラプターズとデュラントがいないウォリアーズなのだから、スローダウンしてエース勝負の方がメリットが大きいはず。

ダニー・グリーンとシアカムの3P問題とか、まぁいろいろありますが、パッと思いつく内容にして、論理的に思える話ですが、そういえばそもそもウォリアーズは「デュラントがいないからボールが回って、よく走る」状態になっているのだろうか。

今回はその内容を並べてみるのが目的です。プレーオフなのでサンプルが少なく、しかも相手が違うし、ブレイザーズは疲労困憊だったし。ってことで、どこまで信頼できる数字かはわからないよ。

◉トランジション

○速攻の得点
ファーストラウンド 18.0
セカンドラウンド 15.2
カンファレンスファイナル 16.0

イキナリわかりにくい数字になりました。ブレイザーズ相手では必ずしも走れたわけではなさそうな。そしてこの数字はむしろディフェンス面の問題の方が大きそうです。

○速攻の失点
ファーストラウンド 16.8
セカンドラウンド 11.8
カンファレンスファイナル 9.5

クリッパーズが走り合って勝負していたのに比べるとスローダウンして失敗しているようなブレイザーズ。だから彼らは疲れていたと定義されるわけですが、「一方的に走った」のは事実でも、「デュラントが・・・」とは言い難い数字になりました。

○速攻の得点
デュラント 4.9
カリー 4.0
トンプソン 2.7
ドレイモンド 1.9

理由のひとつに単純にデュラントが速攻で得点しているので、極論言えば「デュラントがいるとトランジションの回数は減るけど効率は高い」わけです。デュラントのいない直近5試合に絞ると

○速攻の得点
カリー 4.8
トンプソン 3.8
ドレイモンド 2.0

カリー&トンプソンで1.9点も増やしています。気合いのはいったカリーっぽさがあります。そして残りのチームメイトで2.9点→6.4点です。増えまくり。ちなみにイグダラもいないことは忘れずに。

結論的にはデュラント不在で多くの選手がトランジションに参加して走るようになったっぽいけど、トータルで速攻で得点が増えたとは言い難い。となってしまうのでした。

○オフェンス平均移動速度 4.43 → 4.66
 カリー 4.64 → 4.96
 トンプソン 4.65 → 4.75
 ドレイモンド 4.28 → 4.39

この数字を並べると「デュラントがいない方が」なわけですが、トンプソンとドレイモンドが0.1くらいの上昇に対して、カリーは上がりすぎです。チーム関係なくないかってくらいです。

まぁデュラントがケガしてから、明らかに目つきが変わったカリーなので、手を抜きすぎていたという表現の方が適切な気がしてきます。「手抜き」っていうとサボりみたいなイメージですが、実際には「自分では意識できない範囲で」になるでしょう。そりゃあ得点王がいなくなったら、気合いの入れ方も違うってもんだ。

次にトータルの数字で比較です。

○オフェンス平均移動速度
 デュラント 4.17
 マッキーニー 4.98
 クック 4.87
 ルーニー 4.52

デュラントと代役達です。ルーニーが代役なのかは知らないけれど、ここのサポートメンバーの走りっぷりはデュラントの存在関係なく頑張り所でした。こうみると「戦術が」ということ以上にGMボブ・マイヤーズは「サポートメンバーは運動量」で集めてきているんだろうね。

話を戻しましょう。主題はあくまでもファイナルの話です。

ウォリアーズはやはり「よく走るチーム」です。その傾向が強まるメンバー構成で臨んでくるゲーム1になります。しかし、だからといって得点効率が高いわけではありません。それこそレナード&シアカムならば十分に対抗出来るでしょう。

とはいえ、全員がよく走るウォリアーズに対して、ガソルが走れないこと以上にローテーションメンバーがすくないラプターズなので、トータルで押し切られる可能性が高くなります。トランジションにおいては

ラプターズの質vsウォリアーズの量

という図式になりそうです。ただし、もちろんウォリアーズの脅威は量の中に混じるスプラッシュブラザーズの質です。トランジションで3P連発とか反則技みたいだ。

ダニー・グリーンとラウリーの3Pが決まらないならば、ちょっと大きな差になってしまうよ。

◉スローダウン

ではレッツスローダウンってことで、残りショットクロック別のEFGを観てみましょう。

○ショットクロック別EFG
18-15 58.4%
15-7  58.2%
7-4   40.9%
4-0   44.6%

うーん、どれも高いね。忘れてたけど、ウォリアーズって「シュート確率が高くてターンオーバーが多いチーム」だった。15-7秒で58%とか反則クラス。ちなみにラプターズは・・・55.2%。うん、ファイナルだ。

ここにデュラントの貢献度をはめてみましょう。

○デュラント
18-15 65.4%
15-7  60.1%
7-4   28.9%
4-0   50.0%

7-4秒だけ異様に低いですが、スモールサンプルですしね。それにしても、これがウイングプレイヤーなのだからデュラント反則。60%オーバーを並べられると非常に苦しいモノがあります。

○デュラント以外
18-15 57.0%
15-7  57.6%
7-4   43.4%
4-0   43.2%

思ったよりも差は出ません。とはいえ「スローダウン」とまでは言えませんが、概ねトランジションを避ければデュラント不在は少しずつ苦しくなりそうです。別の問題として「オフェンスリバウンドが増える」ってのがあるのですが、

ラプターズはディフェンスリバウンドを死守

って、別に当たり前のことだしね。むしろこれは「ウォリアーズはオフェンスリバウンドの積極性が必要」の方が正しいと思います。デュラントがいなくなってハーフコートの効率が落ちそうなので、ミスショットを拾いましょう。それはロケッツとのゲーム6で明確になっていましたし。

スローダウンにおけるデュラント不在は、ささいな違いに過ぎない様子ですが、それでも「僅かな違いが勝負を分ける」ところまで持って行くためには、トランジションよりもスローダウンであることは間違いなさそうです。要するに

デュラント不在が決定的な要因ではないが、そのメリットを活かしたければスローダウンを狙え!

というわけです。でも、そういえばラプターズは、そしてレナードはこの数字がどうなっているのか最後に確認しましょう。

○ラプターズ
18-15 52.3%
15-7  55.0%
7-4   47.9%
4-0   37.0%

○レナード
18-15 51.1%
15-7  59.2%
7-4   45.7%
4-0   43.0%

なんとも微妙な数字が並んでしまいました。スローダウンしてもウォリアーズの方が上回りそうであり、レナード勝負で何とか上回れるくらいになります。レナードvsウォリアーズの構図を作り上げないと行けません。結局はトランジションじゃなくてスローダウンな訳ですが。

なお、これはあくまでも「シュート効率」の話です。ウォリアーズのターンオーバーは14.3回、ラプターズは11.8回と2.5回の違いがあり、5%くらいのシュート成功率なんて吹っ飛んでしまいます。ミスの少ないラプターズが、ミスを発生させない戦い方で上回るのが重要になります。

◉ウォリアーズ目線

前回がラプターズ記事なので、今回はウォリアーズ記事なのですが、ちょっとラプターズ目線が入ってしまったので、追加でこの内容をウォリアーズ目線にしましょう。

ウォリアーズからすれば「トランジションを狙え」になります。速攻を狙うのは普通の話ではありますが、それだけでなくスローダウンしてのレナード勝負をされると苦しいからです。でも、そういえばラプターズはシクサーズとのトランジション勝負を制するなど、かなりの自信があります。

○オフェンス平均移動速度
ガソル 3.64
イバカ 4.16
ラウリー 4.21

ラプターズの泣き所はガソルであるのは周知の事実ですが、よくみるとラウリーも低い数字です。あくまでも起点役になるラウリーは、全体的に少し遅いのでここを潰すのは1つの方法論になります。パスの上手いガソルですが、速攻の起点にはならないので、とにかくラウリーさえ止めてしまえば、ラプターズのトランジションの威力は半減します。

自分達が走って、ラウリーだけは抑える。

起点役が多いウォリアーズからすると、止めるべきポイントがハッキリするなら、有利になりそうです。シアカムとレナードにボールが渡るとかなり厄介なので、その前に止めましょう。

オフェンスの方は両コーナーにカリーとトンプソンがひらけば、ど真ん中のコースが空きます。そこにルーニーが走り込んでくればパーフェクト。キーになるのはルーニーとドレイモンドのフリーランニング。ドレイモンドは時々怪しいので、そんな時はルーニーを使うだろうね。マッキーニーも。

○カズンズの平均移動速度 3.81(シーズン)

一方で復帰する噂のカズンズの存在はウォリアーズのゲームプランを崩してしまう可能性があります。ガソルはカズンズが相手なら走る必要がなくなります。ここがスティーブ・カーの決断が別れるところです。

走るのか、止まるのか。

なんだかんだで標準的に走ってはいるデュラントならば迷うことはないのですが、カズンズとなると話は違います。プレーオフ早々に離脱したカズンズは、クリッパーズとの対戦では足を引っ張る可能性がありました。あるいはスモールで対抗してきたロケッツ相手にプレータイムを渡せたかどうか。

スローダウンすることがラプターズに少しの優位性をもたらすように、トランジションを増やすのはウォリアーズに少しの優位性をもたらします。

「少しの優位性」か「カズンズ」か。復帰しない方が気持ちは楽かも知れません。ていうか、ゲーム1は復帰しないだろうね。その結果がゲーム3以降を左右するのかも。

走れ!止まれ!ウォリアーズ” への3件のフィードバック

  1. おっしゃるようにラプターズはやっぱりスローダウンに活路を見出だすしかないと思います。シクサーズには勝てましたがカリー&トンプソンのウォリアーズには得点力で差つけられそうなので。
    最近はドレイモンドがすごく冷静らしいのでいらついてファールトラブルになる可能性も低そうですし、ニックナースはどう出るのか。明日のGame1が楽しみです。

  2. カリーとクレイのコンディションが(結果的に)かなり良さそうなのが怖いところですね。ここ3年で一番かも。
    TORは気持ちをしっかり持って戦って欲しいですね。GSWは絶対どこかでラッシュを生み出すと思うんです。一気に15点くらい離されるかも。それでも、とにかくディフェンス、リバウンド、そんでレナード。

    それでもやっぱりTORはグッドディフェンスからの速攻を見たい。ディフェンスの威圧感を見せて欲しい。

  3. デュラントが居ないことで発生する現象は、適切なタイミングで質の良いパスがカリーにわたる回数が減るってことですからね。でもデュラントがいたらカリーはサボれるし確実な2点は高確率で保証されるわけで。
    デュラントがいた方が強いに決まっていてあとはカリーとのシェアの仕方の問題。
    カズンズはキャリアを通じて走ってこなかったわけで、走ろうとした瞬間自爆したわけで。とてもじゃないけど使えませんね。

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