2019プレーオフ ナゲッツvsブレイザーズ ゲーム5

初めて得点差がついたゲーム5。延々と続くと思われた接戦が崩れた理由はなんだったのか。本日も雑感スタイルです。

4OTから5OTになったようなゲーム4は見事にカムバックしたナゲッツのメンタル的な強さが素晴らしかったですが、やられたブレイザーズが大きく崩れたゲーム5になってしまいました。

高いレベルの試合でも得点差がつくことは決して珍しいことではなく、シュートが良く決まるとか、あるいは絶不調の選手がいるとか。そうなると試合展開はあまり重要ではないのですが、この試合は明確にポイントになる項目がありました。

その1つがフリースロー。点差が離れていった2Q序盤から、リラードが戻ってくると流石のゲームメイクとシューティングで残り6分25秒の時点で3P&ワンを決めたリラード。ただフリースローをミスして 36-43と7点差になりました。この時点までのフリースローが

ナゲッツ 8/9
ブレイザーズ 6/11

ブレイザーズが11本全て決めていれば、43-41とまだまだ大接戦でした。その状況が続くなら試合展開も違ったはずです。

「全部決めるなんて理想論」なわけですが、ミスした5本の内訳がカンター3本とリラード2本でした。この2人はフリースローの上手い選手で、意外かもしれませんがカンターは80%を超えてきますし、リラードに至っては90%超えです。

ちょっとした綻びではあるけれど、延々と接戦なわけだから、その小さな綻びっていうのが勝負を分けそうなシリーズだよね。

◉セカンドユニットの個人戦

とはいえ、この時ブレイザーズはビハインドから追い上げている時間でした。ビハインドになった理由は遂にセカンドユニットが押し負けたからです。ナゲッツのセカンドユニットが強いこともあって、むしろここまでのシリーズで善戦していたともいえます。

その理由はロドニー・フッドの大活躍でしたが、そもそも何で活躍し始めたかといえばマッチアップがマレーだったから。ゲーム2あたりから既にマイク・マローンはセカンドユニットにマレーを混ぜるのを嫌がり始めています。

それでもカリーの3P連発になったゲーム3なんかもあって、明確に不利になった雰囲気がなかったこのシリーズです。ゲーム4だけが少しアレだったけど、それは逆にリラードを休ませた事情もあったしね。

その点で攻め所が少し足りなくなっていたゲーム5になりました。でもそれはゲーム3くらいから兆候として登場していたので今更驚くことでもありません。むしろ「これまでが上手く行き過ぎた」くらいの捉え方でよいかと。

上手くいっていた理由はザック・コリンズの頑張りであり、意外にもプラムリー相手に一歩も引けを取らないどころか、運動量とスキルで上回る時間もかなりありました。ゲーム5でもプラムリーをブロックしており、コリンズ的には相性の良い相手みたいです。

ナゲッツのセカンドユニットでプラムリーの果たしている役割は非常に重要で、インサイドの要としてヨキッチ張りにポストで起点になりつつも、ゴール下で奮闘しています。これがコリンズに負けるとかナゲッツ的にも予想外。

この試合でこのマッチアップが改善したわけじゃないのに、ナゲッツが上回れた理由は、プラムリーにボールが渡るシーンを大きく減らして、オフェンスの殆どをミルサップに預けたことです。

つまり、ブレイザーズがやっていた「マレー狙い」の逆パターンです。それは「エバン・ターナー狙い」。そう、ミルサップのマークがターナーってのは、ポストアップでイージーに決めることが出来そうなのです。

そこでちょっと邪魔なのがプラムリーってことです。ミルサップに勝負させたいからスペース空けといてくれ。ってのがナゲッツのこの試合の明確な狙いでした。そして期待に応えてミルサップが連続得点しました。

ビッグマンをコリンズ1人にする限界点がそこにはあったのでした。これまでアミヌを混ぜておくことが多かったけど、ハークレスがケガなのか何なのか前半は5分半しかプレーしていないので、ローテーション変更の失敗も混ざっています。

◉アミヌの使い方

そのアミヌ絡みでは変更点といって良いのか微妙ですが、違う事情もありました。試合開始からヨキッチのマークをアミヌにして、ミルサップにカンターとなったのです。

重要な局面ではマレー&ヨキッチに対して、ハークレス&アミヌにしてエース勝負を止める選択をしていましたが、基本はヨキッチにカンターです。調べたら4OTの時ってマッチアップ回数が90回だってさ。聞いたことない回数だな。

それを試合開始からアミヌにした狙いが何だったのか。正直、よくわかりませんでした。ただし、アミヌは自身の役割を果たしヨキッチを抑えました。いや、抑えたってほど抑えていないですが、まぁ接戦が続く中でヨキッチを困らせる流れは果たしました。

普通に考えればパワーで押し負けないカンターから、万能なアミヌにした理由はヨキッチのゲームメイクを阻害することです。それはカンターには出来ない仕事。

ファールアウトしたとはいえ、ヨキッチのアシストは6つ。25点を奪いましたがアミヌのマッチアップ時は12点です。3Pは決まっておらず、ヨキッチvsアミヌというマッチアップ単体でみればテリー・ストッツの作戦は成功しています。

しかし、実際には前半だけで65点のナゲッツ。このシリーズ初めて60点を超えました。それだけブレイザーズはチームとして守れなかったわけです。起点のヨキッチを捉え、アシストを減らしたのにチームとしては守れなかったわけだ。

試合の印象としてはブレイザーズはカバーが遅くなりました。それって高速ヘルプのアミヌがヨキッチ担当になったことによる代償です。

ゲーム4までアミヌはミルサップとの個人勝負をしながら、ヘルプディフェンスで大きな存在感を発揮していました。なお、攻守が逆になるとミルサップも同じ。

しかし、カンターはそれが出来ません。ヨキッチに集中していればよい状況の方がまだ役に立っていた。劇的に改善してきて驚くカンターのディフェンスでしたが、やっぱりヘルプ担当とかになるとズルズルなのでした。

あと普通にミルサップにやられていた。だってスペースある中での勝負させられるからさ。元ジャズの戦い。

カンターは生真面目な部分もあって、スイッチ気味になるとしっかりとアウトサイドまで追いかけ、そしてインサイドががら空きってのも良く出てきました。クレイグvsリラードがサイズのミスマッチということもあり、ビッグマン2人が引き出されると大いに苦しかったブレイザーズ

〇ナゲッツのゴール下の確率
~ゲーム4 55%
 ゲーム5 75%(30/40)

この試合はこれが全てだったといっても過言ではありません。66点のペイント内得点が非常にイージーにきまりました。速攻もありましたが12点なので、それだけで確率が向上したわけではない。

これまでアミヌ&コリンズのスモールラインナップにした時間でトランジション勝負を増やし、ブレイザーズは一定の成功を収めていました。スピードで上回るのは重要な要素です。

もしもヨキッチにアミヌにするならば、他のヘルプ要員を用意したほうがベターです。それはコリンズになるのでしょうが、果たしてミルサップを止められるのか。

おそらくこの試合最大のポイントになったであろう事項が

ヨキッチの効率を大きく落としたアミヌ
アミヌがいないからボロボロになったゴール下ヘルプ

という差し引きで大きなマイナスになったことです。フリースローミスがなければ、接戦が続いて簡単ではなかった気もしますが、ディフェンスの戦いの中で先に崩れたブレイザーズでした。

◉リラードの真価

ナゲッツ目線で言えば、ヨキッチ以外のアタックが効果的に決まった試合でもありました。終わってみれば3Pはあまり決まらなかったのですが、マレーとハリスのドライブによって切り裂く形は「ヨキッチ中心」のイメージとは違うオフェンスになりました。

そこにあったのがヨキッチを消しに行ったブレイザーズの作戦だったのが皮肉なものですが、一方でこれまでと違ってマレー対策のハークレスがプレータイムを大きく減らした理由はちょっとわかりません。ケガの具合が悪いのかと思ったら、後半になって普通に登場したし。

そしてマレーに対してはそのままフッドを当てたのですが、これがちょっと不思議なのですが、なんでリラードやマカラムに対応させないのでしょうか。

特にこの試合はアミヌをヨキッチ担当にしたのだから、ハークレスやフッドなんかはリバウンド要員としても活用したいところ。ゲームプランの中にそもそも「クレイグを空ける」ようなことも含めてよかったはずです。

それでもリラードをクレイグにしたのであれば、本来求められるのは「リラードの大活躍」でした。

2Qに盛り返す要因にはなったものの、ハーデン、デュラント、レナードのスーパーな活躍ぶりをみると、リラードに求められる水準を満たしているとは言い難い現状です。別にクラッチショットだけが仕事じゃないしね。

理想論は様々ありますが、ゲームプランが少しばかり失敗するってのは良くある話。それをカバーしてしまうスーパースターがいるからこそチームは強いわけです。

そんなわけでゲーム6最大の注目は「リラードの逆襲」になり、迎え撃つクレイグとハリスです。マイク・マローンは早々にビーズリーを失格にしています。厳しいな。

特にハリスには大苦戦のイメージで、クレイグについてはドライブで抜ききれるけどハリスにはそれが簡単には出来ない。ハイスコアマシーンの選手たちは疲労が溜まりそうなオフェンスパターンを減らして、シューティングで活躍することが多いのが最近の傾向です。のっとウエストブルックなわけだ。

リラードもまたシュートの上手さで勝負を楽にしていますが、それを許さないクレイグが削り、試合終盤になってマークを変更させハリスが止めきるのがナゲッツパターン。

リラードの真価というか、他のスーパースターに並べるかどうか、勝負のゲーム6です。

◉ナゲッツには触れていないな

そんなわけで大勝したのに、殆どがブレイザーズの失敗談になってしまいました。実際にナゲッツがゲーム4までと比べて著しくよかったポイントってないんだよね。

強いてあげれば、これまでになく全員アタックが出来ていました。リラードにドライブ決められた瞬間、リラードが倒れているからカウンターで走ったクレイグとか偉い。

でも、そんな全員アタックも「アミヌが・・・」と言いたくなったりします。アミヌが3人いたら勝てるってのは、こういう部分かなーとすら思えてくるのです。なお、アミヌは別に大層な活躍したわけじゃないよ。

マレー、ハリス、ヨキッチは3Pがあまり決まらず。(特にハリスはシリーズ通じて14%だぜ)それでも効率よくインサイドを攻めることが出来ました。

マレーは9アシスト0ターンオーバー。ちょっとウソみたいな数字です。アシストが少ないのがマレーなのにね。

あまりにも見事に全員が活躍しているナゲッツですが、大差になってやっとエルナンゴメスとライルズが登場し、そしてアイザイア・トーマスには声がかかりませんでした。

3Q残り4分から諦め半分になったブレイザーズ。レナードを起用してきた。でも、そしたらレナードの連続3Pなんかもあって、11連続得点でナゲッツは主力を戻すことになったのです。

ブレイザーズにとって唯一良かったのがこれで、自分たちは敗戦濃厚だから主力を休ませ、ナゲッツには主力を使わせました。

負けたら終わりのゲーム6ですが、30分以上プレーしたのがリラードしかいないブレイザーズ。4人が33分以上プレーしたナゲッツなので、ホームの利も活かして奮起しないといけません。

ナゲッツからすると3Pをしっかりと決めたいところです。主にゲーリー・ハリス。ディフェンスでの貢献度が高いだけに、致し方ないと言いたいところですが、本当はここで決めてこそのハリス。ネクスト・トンプソンになれるのかどうか。

ゲーム6の見どころは
・ブレイザーズが仕掛けるマッチアップ変更
・リラードの奮起
・ハリスの奮起

といったところで、雑談スタイルを終了します。

2019プレーオフ ナゲッツvsブレイザーズ ゲーム5” への8件のフィードバック

  1. 5戦全部取り上げられてるカードと4戦全部取り上げられてないカードがある…
    …まあクソしょーもない試合してるからいいんですけどね
    このカードは両チーム死力を尽くしてる感じがして面白いです
    カイリーは放出で解体って方向性でよろしくです

    1. あぁそれは全部追いかけてみたいというだけです。試合内容は関係ないかな。バックスのゲーム1はそれはそれで酷かったし。

      ブラッド・スティーブンスぽくないという意見を貰いましたが、確かに試合毎の戦略の違いや修正を感じきれない面はあります。

  2. 参考になる記事をいつもありがとうございます。
    自分もブログを書くのですがwhy notさんには全く追いつけません。悔しいです。
    why notさんはいつも記事を書くとき何を意識してますか。試合の何を見ますか?
    それ以外にも人に読ませる文章を書くために常日頃やっていたことは何ですか?
    ここのコメントとして不適切かもしれませんがご教授ください。

    1. 言葉が強いので削除しましたが、ごもっともな反論コメントがつきました。前回も書きましたがゆーつーばー時代なので、なんでブログ書いてるのかっていうスタンスも大切だったりします。

      おそらくこのブログが他のブログと違うのは「バスケが好きだからNBAのことを書きたい」ではなく、「どうやったらわかりやすく伝えられるか」という視点でスタートしているからだと思います。

      ブログを始めようと思った2年前、他のNBA関連のブログやら何やらを観て回り、「他にはないスタンス」のブログにしました。調べた限り全くありませんでした。一応、そうやって明らかな視点の違いを作っています。それはNBAの話のようでブログの基本スタンスの問題です。

      管理人は元NBAプレイヤーかもしれませんし、ド素人かもしれません。しかし、読む人からすれば「どこの誰だか知らない人」というのは同じです。それでも読んでもらえるためにどうするのかという事です。
      まぁ2年もたつと、ちょっと市民権を得られたので、わかりやすく書かなくても読者の方がついてきてくれるのですが。

  3. さすがにアミヌハークレスカンターと外がなく必ずヘルプでリラードによってますからね
    FTは取れてるからハーデンみたいに決め続けるしかないですね
    それでも何とか出来るスーパースターにはサイズ的にもハンドラーのポジション的にも厳しいかと
    ポストないプルアップには限界があるでしょう
    カワイKDなどやはりウイングの選手じゃないとなあ
    もう少しアウトサイドあってスペースあればねえ
    対ミルサップもありアミヌ次第でしょうかねえオープン3ptだけ入れてくれればなあ
    レナードがもう少し計算できたらねえストレッチできる4番がほしい
    タッカーとか

    1. そういえばハークレスの3Pないですね。アミヌはもう少し決めていたのに、どうも最近は・・・。
      ゲーム1でナゲッツがかなり嫌がっていたので、そのイメージが強いのかもしれません。リラードを輝かせるために、コーナー固定にするプレーを混ぜても良さそうですけどね。

  4. 細かい点は色々と修正が必要でしょうし、全員がもう少し頑張るのは当たり前ですが、リラードの大爆発がないとこの劣勢は跳ね返せそうにもありませんね。意地を見せろよリラード!

    1. 全マッチアップが接戦を繰り返すので、圧勝するマッチアップが欲しくなります。それはもうリラードの仕事!

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