振り切ったヒート

前回の続き

ヒートの変化を捉える後編です。管理人は一時期のヒートを観ていませんでしたが、12月から1月前半にかけての内容を考えると、現在の変化は納得できる部分があるというのが前回のキーポイントでした。物凄くざっくりいうと

・アデバヨのカバーリング能力
・オフェンスの限界
という部分から、大きく振り切る選択が出てきたわけです。じゃあ現在のヒートがどんなチームなのか、ってのが後編の話題になりますが、そんなに試合数観たわけじゃない管理人の事情だけでなく、ヒートそのものが変化に慣れているわけではありません。

というのも、ケガ人が発生したり戻ってきたりと忙しいので、そのたびに調整して今があるだけなので、プレーオフまでには再調整という可能性もあります。

①ウェイターズの復帰
②マグルーダーの離脱
③ウィンスローの離脱
④ドラギッチの復帰

今シーズンのヒートを語るうえで欠かせない2人のスターターが離脱しました。そして長きケガから復帰のウェイターズとオールスターが戻ってきたのです。12月から巻き返して5割復帰したヒートですが、その時のスターターは

ジョシュ・リチャードソン、ウィンスロー、マグルーダー、ジェームス・ジョンソン、ホワイトサイド

それに対して現在のスターターは

ジョシュ・リチャードソン、ウェイターズ、ジョーンズ、オリニク、アデバヨ

ということで、エースのジョシュ・リチャードソン以外は全員交代です。1月に5割のチームでスターター4人が3月になって入れ替わっているって緊急事態だと思いますが、それでも上手くいっているのだから、凄い話です。

◉面白いローテ

ここでヒートが興味深いのはベンチメンバーです。戻ってきたドラギッチをベンチに置いているわけですが、ここのメンバーが1年前のスターターみたいになっています。

ドラギッチ
ウェイド
ジェームス・ジョーンズ
ホワイトサイド

この4人にスターターから1人を持ってきます。主にジョシュ・リチャードソンなので、ヒートを観ていない人からしたら、こっちがスターターにすら思えます。

ヒートの振り切りポイント1つ目は「ビッグネームがベンチメンバー」です。

この形は大きなメリットを生み出していて、いわゆるセカンドユニットの安定をもたらしました。ルー&ハレルがベンチから登場するように今は試合トータルでどう戦うかが重要な時代。そこにほぼスターターみたいなメンバーが並ぶのだから、相手からすると厄介なチームです。

なお、数字は良くない。かなり良くない。だけど、これになって4勝1敗と勝利を積み重ねています。

いろいろな事情があってベンチになった選手達ではありますが、結果的にはリーグの中で最もビッグネームが並ぶベンチユニットになったかもしれません。ただし、彼らには爆発力がないのです。ベーシックなプレーばかりしている。現代的ではないけど、安定したという印象です。

◉ヘンテコなスターター

しかしセカンドユニットに力をいれたらスターターが弱くなるもの。当然の帰結はメンバーを観ると更に疑問が深まります。

ジョシュ・リチャードソン
ウェイターズ
デリック・ジョーンズ
オリニク
アデバヨ

いくらイーストだといっても如何にも弱そうです。ちなみにウィンスロー離脱前はデリック・ジョーンズではなくウィンスローでした。そしてレーティングは+14.7と圧倒的なのに6勝5敗でした。ベンチが問題だったのかな。

それはさておき、このメンバーはかなり不思議なメンバーです。プレーメイク出来るのが、ギリギリでジョシュ・リチャードソンしかいません。自分で行く能力はそこそこあるけど、プレーを組み立てる面では疑問だしさ。
昨シーズンのヒートは全員が動いて、交代でアタックしていくような「質より量」みたいなやり方でしたが、その形はとれないメンバー構成です。

おそらくまともにやったら勝てないメンバー構成です。だからこそ仕掛けを施すようになっています。特に目立つのはディフェンスでゾーンを多用する事。試合開始からゾーンを延々と繰り返したりします。
ネッツ&スパーズでも触れましたがNBAでは3Pがより重要視されているので、そこを無視してゾーンを敷くことは出来ません。というか、むしろ3Pのためにゾーンを使うことが多くあります。

ヒートの場合は前衛を守備範囲が広いジョシュ・リチャードソンと運動能力オバケのデリック・ジョーンズが担当します。このコンビはどこまででも追いかけてしまうようなリチャードソンと、スピードと高さでブロックの脅威があるジョーンズで、3Pへ有効なオプションになっています。
そうなると後衛にガードを回す必要が出てくるわけですが、体がデカいウェイターズなので、大きな問題になっていません。というか、ウェイターズが前衛で追い掛け回せる気がしません。ちなみに試合中にはウェイドが出ているときのゾーンもあるわけですが、同様に後衛を担当しているので「徹底的に追い掛け回せる前衛」というのは、意図的に、というかゾーンでの重要事項になっていると思われます。

次にゾーンをやるならインサイドは高さのあるホワイトサイドの方が良い気がしてくるのにアデバヨです。そもそもアデバヨの方がよかった理由はペリメーターでも守れる機動力ディフェンスでした。デメリットはブロック力とリバウンド力に劣ること。ゾーンならばホワイトサイドの方が適任の気がします。
ただゾーンが3Pを追い掛け回す前提のため、インサイドに大きなギャップが生じます。ここをホワイトサイドでは埋められないと判断してのアデバヨっぽいです。

実際にかなりイージーにハイポスト周辺にパスを通されるのですが、その理由はアデバヨが警戒するのがゴール下だから。そしてパスを通されてから素早くボールマンに寄っていきます。あるいは寄って行かずに打たせるってのもあるけどね。
ボールが動くたびにポジションを変えなければいけないゾーンなので、ギャップを埋める能力が高いアデバヨが適任と判断している様子です。まぁ実際にその通りで、シュートへの警戒が強いヒートなので、パスも通されるし、ドライブもされるのだけど、大体はペイントの外でヘルプがいて止めきります。ブロックよりもコースを切りたい守り方です。

アデバヨ以外の後衛2人は前衛ほどではないとはいえ、大きく動いて守る必要があるウェイターズ側と、アデバヨがハイポストまで出た時にカバーするオリニク側になっています。これもそれぞれの役割がわかりやすいのが特徴です。

振り切ったヒートの2つ目は特殊なゾーン。特に前衛にいるデリック・ジョーンズと広い範囲をカバーするアデバヨってのが特徴的です。この2人を追いかけるだけで、結構面白いものが見れます。

しかもゾーンの時間が長い。チェンジングで混ぜるくらいのチームは多くありますが、ここまで長くゾーンをするチームも珍しい。理由の1つはウェイターズやウェイドの存在だと思いますが、それ以上にこの特殊系ゾーンへの自信があるのでしょう。
対策されたら弱そうな特殊系にして、そう簡単には攻略できない運動量があります。マンツーではなく、ゾーンにすることで全体の運動量を減らしつつ、自慢の運動量でカバーしているような振り切り方でした。

◉スペーシングオフェンス

そしてオフェンスでも振り切っているように思えるヒートなのですが、これがまたレーティングとか殆ど変化していません。要するにディフェンスが良くなったことが勝率アップに繋がっているのですが、前述のスターターでは従来通りのオフェンス力を達成している事すら驚きです。

その内容は3Pを多用します。オフボールで動くオリニクがムービングシューターになっているし、デリック・ジョーンズだって打つんだ。そして、問題はウェイターズ。プルアップ3Pしか打っていないんじゃないかってくらい打ちます。
ただ、それは決まり過ぎな気もしています。本当にこんなに続くのか、ってのがあるのですが、試合を決める要素ってわけでもありません。

また3月の3Pは29.7本と実際には3Pは多くない。これはスターターが多いけど、ベンチメンバーが少ないという要素があるのですが、それだけでなく3Pでスペースを広げながら、カッティングを使っているので大きく広がったイメージが強くなります。

ここで驚きでもあり、上手くいく理由でもあるのが、デリック・ジョーンズだけでなくアデバヨまでコーナーで待つことが多くなったこと。
「ホワイトサイドを活かせない」というのはインサイドでの話ですが、逆にセンターをコーナーに置いてしまうのも1つの方法論でしたが、ヒートとは無縁のお話。それが、もっとシュート力のないアデバヨで実行するんだから。これが3つ目の振り切り

徹底したスペーシングオフェンス

スペーシングオフェンスはドライブが得意なチームに合っています。ヒートもそのタイプだけど、その割にはスペーシングを出来なかったのは選手の質と合わなかったから。でも補強もしていないし、ブルック・ロペスに3Pを打たせたアトキンソンみたいに改造もしていないけど、成立させてしまっている不思議です。

キーのひとつはデリック・ジョーンズ。何故かスターターになったわけですが、そもそもシーズン前半ってセンターみたいな役割だったよね。そんなジョーンズを3Pラインの外に置きながらオリニクと並べたことで意味のある形になりました。ウイングのジョーンズが積極的にインサイドにカッティングし、PFもどきのオリニクがシューター的にアウトサイドに出てくる。上手い釣瓶。

そしてアデバヨもまたカッティングを行います。つまりヒートのスペーシングオフェンスはカッティングプレーが決まることで成立しているといっても過言ではありません。
だから3Pを多用しているようで本数がそこまで多くないのは、鮮やかにインサイドギャップを突いてくる個々の判断力があるから。スペーシングしてカッティングの連続って、簡単ではないのですが熟練したわけでもないユニットで成功しているのは、選手の個性を上手く融合させたからといえます。

個々の能力ではスペーシングオフェンスに合わないであろうメンバーだけど、ユニットとしては見事に機能させている。ちょっと振り切る方向が上手すぎないか。

◉結局は同じ

かなり振り切った戦い方にシフトしているヒート。それはシーズンここまでの内容を考えると自然に辿り着いたのか、無理やりバランスをとろうとしてそうなったのか。どちらにしてもこれで勝利を積み重ねているのだから素晴らしい。

特質系なユニットであるスターターを並べて、有名どころを含んだベンチがベーシックな戦い方をしているヒート。この試合中の変化は相手からするとめんどくさい変化です。

そして、これらを行った結果、36分近くプレーしているジョシュ・リチャードソンを除いて、全員が20分~30分のプレータイムに収まっています。
そう、結局は全員アタックをするために、ベストなユニットの組み方がこれだったとしか言いようがありません。

ヒートを観ていなかった管理人に「文字通りケガの功名でこうなった」と教えていただきましたが、うん、なるほど。逆に今のメンバーでバランスよく戦うためには、これしかなかった気もしてきます。

ヒートは振り切ったのか、それとも必然的にこうなったのか。

どっちにしても、これで勝っているんだから凄いし、不思議でもあります。

だから全てはウェイド様の神通力ってことにしましょう。キャリア最後のシーズンに、ウォーリアーズ戦でメチャクチャなブザービーターを決める個人能力だけでなく、チームにもバランスと勝利をもたらしてしまうからこその神通力。だからこその「様」付けなのでした。
神様、仏様、ウェイド様。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA