ダブルオーバータイムと3人のエース

ジャズvsサンダーの話

先日はホリデーとビールについて書きましたが、プレータイムの長さがそれぞれの主な役割以外の部分で苦しんでいると書きました。
ジャズのエースはドノバン・ミッチェル。サンダーはウエストブルックとポール・ジョージ。全員に共通するのが、攻守にハードだということです。全員っていうかチームとしての特徴ですね。

ダブルオーバータイムに持ち込まれたこの試合では、いくつかの興味深い現象が起きました。それを少しずつ潰していきましょう。
まずドノバン・ミッチェルはウエストブルックを守ることも多く、それでいてオフェンスはアイソレーション気味のスタートというパターンが多くありました。非常に負荷が大きかったといえます。
本来のジャズは役割を分け合って機能するチームでしたが、ちょっと苦しくなってきたからかエースへの依存度が高くなってきました。良いパスを出していくシーンも多いので、チームオフェンスはしっかりできているのですが、エースは大変だ。

試合開始から決めまくるドノバン・ミッチェルは1Qだけで14点。決めに決めて絶好調でチームを引っ張りました。
ところが決めに決めたのが、まさかのウエストブルック。どうしたことか3Pまで決まりまくるので、ハイスコアゲームが続いていきました。
ジャズの守り方は「ウエストブルックにパスをさせるな」です。一番怖いのは広い視野でボールを振られて守れなくなること。それよりはちゃんとゴベアー付近に追い込んで打たせるか、遠目から打たせておけばOKなわけです。
でも、あまりにもアウトサイドから決めてしまうウエストブルック。ルビオ相手なら迷わずパワーで押し込み、ポストアップも使うから超厄介。

マジでウエストブルックがあんなに決めたらサンダー優勝ってくらいに決めました。そこについていけたのだからジャズも素晴らしかった。

この試合はダブルオーバータイムということで、3回ほどラストショットというシーンがあったわけです。珍しいことに、ジャズがラストの時も、サンダーがラストの時も、タイムアウトが残っているのに、コールしないで攻めていきました。
これがサンダーだけなら「また暴走して」みたいなことにもなるのですが、ジャズまでノータイムアウトを選択したのは非常に簡単な理由でした。

残り10秒のオフェンスならエースに託すのみ

ということが徹底されているってことです。ちなみにラストじゃないけど、新加入のモリスはエースに託すパターンがちょっと理解できていないシーンがありました。モリスってサンダーに慣れてハードワーカーになるのかな?
そしてこれらのラストショットをお互いに外してしまい、試合は終わらずダブルオーバータイムまで持ち込まれました。

特にドノバン・ミッチェルしかいないジャズにおいて、その負担は非常に大きく、しかもファーガソンが密着マークをし続けオフェンスでも疲弊させられました。時にボールを失うシーンも出てきましたが、この2年目が他の選手と違うのは、どんなにミスが出ようとも

「オレが行くんだ」

という姿勢を常に失わないこと。これが凄いんだ。
しかし、ダブルオーバータイムになるとさすがに疲弊が目立ちすぎました。そりゃあ仕方ないぜ。あんなに激しくプレーし続けているのに、ダブルオーバータイムまで持ったことが奇跡レベル。
ジャズが負けたこの試合でしたが、敗因は簡単です。疲労を分散させる方法論がなかったこと。いいかえれば4Qに勝負を決められなかったのが響いたってことです。

しかし、オーバータイムまで持ち込めたのはウエストブルックがハイパーだったこと。論理的なジャズオフェンスを上回る個人能力を発揮していたウエストブルックは、驚くほどにリバウンドの回収率が高いのも印象的でした。
ルーズボールみたいなリバウンドは殆どウエストブルックが回収してしまいます。Bリーグにも見習わせたい。

正直、ウエストブルックのシュートが決まらない理由の1つって、常にハードワークを欠かさないから筋的疲労が大きいってのもあると思います。もちろん、そもそも下手なのは間違いないけど。
ハードにプレーし、シュートも決め続けて40点オーバーだったウエストブルックでしたが、オーバータイムでは完全に足がついていかず、ディフェンスでは諦めて手を出してファールで止めるシーンが増えました。
そして最後はオフェンスチャージ。振り切るだけの足が残っていませんでした。

普通に観ていたら「試合を決められなかったドノバン・ミッチェルとウエストブルック」でしたが、そこまでの内容を考えると凄まじい負担を強いられており、それでもあれだけのプレーを見せていたことが脅威です。
サボるようなシステムは導入されないどころか、攻守にハードワークしている2人のエース。これでラストを決めていれば、って感じなのも確かでしたが、昨シーズンのプレーオフを思い出す内容でした。

心と体を削るようなハードなディフェンス

ってのは割と両チームに共通するチームとしての武器だったのですが、どちらもどんなに攻め立てても「心」を削ることは出来ませんでした。でも、間違いなく「体」は削られることに。
お互いが勝利を手に入れなかったわけですが、お互いに勝利を掴ませなかったとも言えるのでした。

そして勝負を決めたのは残り0.2秒でゴベアーの遥か上に投げたポール・ジョージのフローター。ダブルオーバータイムまで攻守に激しいプレーをし続け、相棒のウエストブルックに加えてファーガソンも退場した試合で、最後までエースとしてのプレーをし続け、こちらも40点オーバーに。

今シーズンのポール・ジョージが変わったのがこの部分です。ペイサーズ時代からのエースっぷりは一見すると同じですが、とにかく試合の最後まで打ち続けるメンタリティを手に入れ、そして決め続けるスタミナが目立ちます。
ディフェンスではエースキラーとして活躍しながら、しっかりと試合を決めることが出来るようになったポール・ジョージってのはペイサーズファンからすると羨ましいはずです。

3人のエースによってハイスコアゲームになったディフェンスの良い両チームの対戦
38点のドノバン・ミッチェルと43点のウエストブルックの凄さを存分に感じながらも、一歩上を行った45点のポール・ジョージ。まるで今シーズンのポール・ジョージのためにお膳立てさせられた2人でもありました。

そして相変わらず、この両チームの対戦は面白い。ゴベアー中心にハードなディフェンスを展開しながら「ウエストブルックにやらせる」ジャズのディフェンスと、それを計算外の内容で覆しに行くウエストブルック。
「ドノバン・ミッチェルを徹底マーク」しているのに、構わず自分で行きながら、空けられるルビオに打たせる冷静さも失わないドノバン・ミッチェル
サンダーが昨シーズンと違う結果をもたらすためには、ポール・ジョージで違いを生み出すべきなのかな。

しかし、ダブルオーバータイムまでもつれこむ試合をしながら翌日も試合があった両チーム。そこでも暴れまわり41点FG15/30のウエストブルック。やっぱり怪物だわ。しかしポール・ジョージのFG4/19が響きキングスに3点差で敗れてしまったのでした。1試合のスタミナとシーズンのスタミナは別なのさ。

移動したユタで飛車角落ちのマブスを迎え撃ち、FG8/14でスマートに勝利したドノバン・ミッチェルのジャズ。個の強さだけではシーズンは戦えないのさ。

ダブルオーバータイムと3人のエース” への3件のフィードバック

  1. キングス戦観ましたがここでもラスの3pが好調でしたね。エースの自覚が芽生えだしたヒールドと若さ溢れるバグリーの活躍が無ければ負けてました。ポールジョージは流石に疲れてましたね。
    キングスとしてはこの激戦の後のバックトゥバックは助かりました。

  2. はじめまして。こんにちは。ブログいつも楽しく拝見してます!
    バスケは素人ですが、ジャズファンで試合をよく見ています。

    今回は(も)ジャズのターンオーバーの多さが気になったのですが
    管理人さんはどう思われますか??

    とくにルビオが気になるのですが合わせが多い分仕方ないのでしょうか??

    あと、マローンが現代に復活したら、の記事も楽しみにしてますw
    余裕ができたらよろしくです!

  3. いやー、今年のPG13はスゴいですね!点を取りまくって、ディフェンスもガッチリこなして、クラッチも強くて、ド派手なウィンドミルもぶちかます…。OKCにとって待望の、最強のラスの相棒じゃないでしょうか。LAへの移籍を蹴って残留してこの活躍ですから、ファンにとってはたまんないです!エース二人が全盛期の今年勝ちに行かないと駄目なんじゃないかと思ってしまいます。

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