3Pが決まるサンダー

決まらないことで有名だったチームのオフェンスは急激に改善し、そして守れなくなりました。

エースを1枚減らしたサンダーは開幕からそこそこ勝っています。「そこそこ」をどう評価するのかは難しくて、順位的・今シーズン的にはよくやっているわけですが、勝率6割5分は2年前なんかを振り返るとそこまで良くはないよね。それでも明確なディフェンスチームはハードワークと個の強さを打ち出してビリー・ドノバンのチームらしいカラーを明確にしました。実は昨シーズンを大きく上回ったとはいえない。
そしてドノバンのチームらしくオフェンスは個人任せで強引で、チームとしての機能性を感じないものだったわけですが、どうしたことかサンダーに大きな変化がやってきました。

これまで「アダムスのポストアップ」こそが最も効果的なオフェンスパターンで、ラス君のペネトレイトからアダムスパターンももちろん効果的。つまりはインサイドを攻略できることがサンダー最大の強みでした。しかし、それだけインサイドを攻めてもアウトサイドから決まらないことがサンダー最大の悩みでした。変化が起きたのは大きく3つ。

勝負強く安定感のあるポール・ジョージ
ストレッチ4になったグラント
シューターになったファーガソン

要するに3人が3Pを決めてくれるわけです。このうちポール・ジョージについては、ほかの媒体ででも書きましょう。オールスターのスターターだし。グラントについてはオフにでも書きましょう。もっと成長しろってことです。そんなわけでファーガソンを中心に変化を触れていきます。

〇1月以降の3P
チーム 40.9%(2位)
ポール・ジョージ 43.4%
ファーガソン 44.9%
グラント 39.3%

御覧の通り、突然シュートの決まるチームになりました。ちなみにシュルーダーも44%という謎。でもウエストブルックは26%だから一向に改善していないよ。3人平均8.4本も決めています。

サンダーのオフェンスはあまりシステマティックではありません。しかし、だからといって魅力的でないかというと違う話で、ラス君が1人で構成してしまう魔力があります。突破力に視野の広さを併せ持ち、ガードながらインサイドで圧倒する存在はキックアウトパスからのアシストも量産してくれます。

問題なのはそれが個人技に過ぎず、ベンチメンバーになった途端に突破できないから構成が悪くなること。今はシュルーダーがいるのでマシになっていますが、フェルトンがエース的に振舞っていた時は個人技でしかないのでした。まぁシュルーダーもそんなにパス出てこないから同じか。

システムではなく個人で成立しているわけですが、個人で成立させてしまう選手がいるのだから現実としては悪いオフェンスではありません。しかし、これまではあまりにも決まらなかった3Pだったのが決まるようになったわけで、それは良かったねと。なお、成立しているのにはポール・ジョージの存在が大きく、もう1人のエースがいることは単調だったオフェンスに違いを生み出しています。

◉ファーガソンを考える

さて、考えるべきはファーガソン君からです。アブリーネスが個人的事情でチームを離れたことで、唯一のシューターになったわけですが、サマーリーグですら大して活躍できなかったのに、ここにきてしっかりと結果を残し始めました。
その3Pを分解してサンダーを考えてみましょう。

〇キャッチ&シュート 61/158

今シーズン167本の3Pを打ちましたが、ほぼほぼキャッチ&シュートです。平均で4本近く打っているのに、ほぼキャッチ&シュートって結構すごいです。
あまりにも多い本数ですが、38.6%はキャッチ&シュートの確率としてはそんなに高くはありません。役割として徹底されたことがわかるし、その中でそれなりの成績を残したということです。
サンダー的に大切なのは「役割が定義されている」ということかもしれません。ここまで徹底してシューターとしてのみ働く選手って珍しいチームです。

〇ディフェンスとの距離別
オープン(6フィート以内) 31.6%
ワイドオープン(6フィート以上) 46.0%

その内容もわかりやすく「フリーなら決めている」に過ぎません。当たり前の構図でしかないファーガソンです。ちなみにこれを1月以降にしても同じで、ワイドオープンで55%決めて確率を大きく上げただけです。さすがに55%は当たり前を超えていますが。
ちなみにサンダーは1月以降の3P確率が2位なわけですが、その理由の一つは苦しい3Pをあまり打たないからです。同じことは1位のスパーズにもいえるので
「3Pの確率が高い」ってのは「確率の高いシュートを打つ」だけだったりするのはリーグ全体の傾向になりました。この2年くらいの間にね・・・。

ファーガソンがキャッチ&シュートの3Pを打つパターンは、もちろんウエストブルックからのパスがメインです。これを12月までと1月以降で比べてみます。

〇ウエストブルックのパスから3P数
12月まで 0.7本 25%
1月以降 3.1本 45%

すごい差が出てきました。これが最も大きな違いであり、「ウエストブルックがパスするかどうか」みたいな世界になっています。そこでプレータイムと3P本数合計を見直してみましょう。

12月まで 503分 20本
1月以降 472分 56本

うーん、これでハッキリしたのがウエストブルックからファーガソンへのパスが増えて、それをファーガソンが決めることでサンダーのオフェンスは向上したということです。
明らかにファーガソンがもらって打つことを増やし、それが決まるからパスも出てくる繰り返し。ファーガソンがこれだけキーになっているなんて数字拾わなきゃわからない話でした。

なので12月までと1月以降のファーガソンのショットマップを観てみましょう。

これのちょっと面白いのは、左コーナーと右45°が増えている事。使うサイドが変更されてきているわけです。なかなか変な変化。まだ「コーナーが増えた」だとわかりやすくウエストブルックがパスを出したことになるのですが、45°まで増えているってことはパターンを変更したわけです。
右45°で多いのはアダムスのパスアウトなんてこともあります。そして左45°から仕掛けることが多いウエストブルックのドライブを考えると左コーナーに右45°はホットスポットでもあります。
ウエストブルックとファーガソンの連携強化がひとつのキーポイントになっており、それを決めるファーガソンという構図です。

◉決まらなすぎのウエストブルック

では、そんなにパスを出すようになったウエストブルックがプレーを変えたのかって話になります。

〇パス数 57.4→59.7

あれ、全然増えていないじゃないか。でもこのパスから3Pの数は変化しました。

〇ウエストブルックのパスから3P
12月まで 10.3本 30.9%
1月以降 13.1本 44.8%

うーん、不思議なもんです。この変化はなんなのでしょうか。そしてウエストブルックは1月以降

驚異的にシュートが決まらない

選手になっています。もとから決まらないって?いや、さらにひどいんだ。

〇ウエストブルックの1月以降
ゴール下 61%
ペイント内 29%
ミドル 27%

しょうもないくらい決まらないわけですが、一方でシュート数に大きな変化はありません。決まらないエースがパスを出すことでチームの得点が増えたようでいて、これまで通りシュートは打ちながら、パスを出して周囲が決めてくれているのでした。

これまで「ウエストブルックは良いパスを出しても決まらない」のがサンダーだったけど、今では「周囲は決めてくれるのに、ウエストブルックが決まらない」状態になっています。

これらの変化が生じた理由はスターターユニットの固定です。ファーガソンを含めたメンバーを長く使う形にし、またセカンドユニットにも回すポール・ジョージ以外の4人で長くプレーしています。
それがサンダーのオフェンスに向上をもたらしました。ファーガソンが打つことでチームのリズムがもたらされているのか、固定されたメンバーがファーガソンにリズムを生み出しているのか。

今シーズンはケガ人が交代で出ており、ローテーションがあまり固定できなかった中で苦しんだ12月までと、固定されたことでリズムが良くなった1月ってことがよくわかるのでした。

◉守れないサンダー

しかし、オフェンスがよくなったサンダーは強烈にディフェンスが悪くなりました。これがもう驚くくらいに悪くなりました。

〇ディフェンスレーティング 101.7→110.7

さて、これをどう捉えれば良いのか。非常に難しい問題です。スターターの5人はこんなに悪くないのですが、ローテーションを固定したことで逆にベンチメンバーで苦労する形です。
なお、ポール・ジョージだけは段違いのレベルでディフェンス力を引き上げています。またノエルがいれば守れるのですが、いないと悲劇です。

今回はオフェンスが良くなったらディフェンスが悪くなり理由を考えたかったのですが、その最も大きな理由がローテーションの固定になってしまって面白くなかったのでした。
そしてベンチメンバーが苦労するのはディフェンスリバウンド。確保率がことごとく70%を下回り、とられまくっています。

それはそれで書くこともあるのですが、ファーガソン中心のオフェンス変革にはあまり関係ありません。というわけで書きようがないんだ。
サンダーはローテーションを固定気味にし、スターターユニットのオフェンスが非常にバランスよくなりました。そしてベンチメンバーを中心にベンチメンバーのディフェンス力が落ちたのでした。

キーになっているウエストブルックがインサイド中心にしている件は、あまり効率が上がっておらず、ここが改善ポイントになります。また改善する要素があることは良いことであり、さすがに決まり過ぎの3Pが確率落ちても頑張りようがあるのでした。
しかし、守れなければチームの力も出てこないはず。選手が人数としても足りていない中でどうするのか。どこからかディフェンスの良い選手をベンチに補強しないと苦しみそうです。

まぁサンダーが好調な理由なんて、ほぼポール・ジョージなんだけど。

3Pが決まるサンダー” への6件のフィードバック

  1. アブリーネスがいなくなって、ルワウもブルスに行ったしロスターがかなり減ったと思います。バイアウトでWayne Ellington, Wes Matthews取れなかったし、ロスターはどうなると思いますか?サンダーの記事ありがとうございます。

    1. 1人はバートンでしょうが、あとは誰ですかね。ブリュワーかなぁ。
      センターの控えはキープすべきかと思います。

    1. ロバーソンはそこまでフルではプレーできないと思うので、ポール・ジョージの繋ぎじゃないですか。

  2. PGとシュルーダーがそこそこ安定して得点するのでラス君的に何か心理的に変わったりしてるんじゃないかと勝手に妄想してます。

    パターソンはタイプ的にサンダーにはまりそうで、全然はまってこないのが残念です。

    1. パターソンは本当にそれ。会心の補強と思いきやっていうたまにあるパターン!

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA