渡邊雄太の17分 2019/01/20 vsラプターズ

なんとなく、ここまでをまとめたいと思っていたところで、今シーズン最長のプレータイムを得ました。

八村塁のドラフト指名が話題になる前に、2WAY契約ながら遂に誕生した日本人NBAプレイヤーは、グリズリーズが選手層が薄くケガ人も多かったことから、プレータイムを得ることが出来ると思われましたが、なかなか出場機会を得られず、田臥の記録ひとつ1つを塗り替えるのに時間がかかっています。まぁ多分、八村がごぼう抜きするのだけど。

管理人はハッスルでのプレーを殆ど見たことがないので、何とも言えませんが、何とも言えない程度に活躍している様子。下部リーグの中心選手が必ずしもNBAで通用するわけじゃないけど、NBAで通用したければ、もう少し頑張らないといけません。

17分のプレーで5点とったとか何だとかはいろんなところに書いてあるでしょ。今回は個人的に感じたことを連ねていきます。
なお、多くのプレータイムを得ることが出来た理由は55-48で終わった前半とうってかわって、3Q45-14とラプターズが圧倒したことにあります。そこにあったのはダニー・グリーンの大爆発。
ラプターズファン(スパーズファン)なら、渡邊よりもグリーンを誉めてほしいところでしょうが、その理由についても後述していきましょう。

◉パワーフォワードとして

前回も書きましたが、とにかくグリズリーズでは完全にパワーフォワード扱いになっています。大学時代はガード登録だったし、相手エースならポイントガード相手でも止めまくってカンファレンスのディフェンシブプレイヤーになったにも関わらず、徹底してビッグマン扱いされています。
例えばこれがウォーリアーズやロケッツに代表されるオールラウンドディフェンダーを揃えるタイプのチームならば話は違います。インサイドでもアウトサイドでも守れる渡邊の存在意義は、何もビッグマンとしてではありません。
しかし、グリズリーズはガソルを中心としたディフェンスチームであり、リムプロテクターとペリメーターディフェンダーでは明確に役割が異なります。

一方で最近のグリズリーズは選手が足りなくなってきたことでパワーフォワード3人起用になっており、いろいろと穴が発生しやすいようになってきました。
役割分担のバランスが崩れたわけであり、特にカイル・アンダーソンの離脱によってアウトサイドのプレッシャーディフェンスをしながらも、インサイドヘルプで有効なディフェンダーが欠けています。やっぱりスパーズファンの回かな。
渡邊雄太の特徴を考えれば、ホリデーの控えでよいからSFディフェンスを担当させたいところですが、残念ながらその発想はないのか、単純にオフェンス面での実力不足と判断されています。

◉グリズリーズの長所

ここのところ1勝11敗のグリズリーズ。その理由はオフェンス力が全くないから。だけど、それでも勝ってきたのはディフェンス力があるから。前述のとおり、それは崩壊気味なわけですが、それだけじゃなくて3Pをガンガン打たれるようになってきています。
この12試合の被アテンプトは33.7本で23位ですが、ワーストのチームは試合のペースが早いから打たれる機会が多いチームばかりで、遅いのに打たれているグリズリーズという構図です。

ダニー・グリーンが3Qだけで7本の3Pを決めたのが試合を決定づけましたが、そのうち5本がコーナー3Pでした。当然ながら全てキャッチ&シュートでありグリズリーズが追い切れずに打たれてしまっています。
この3Pに関しては前段階があって、タイムアウト明けのオフェンスでラウリーがドライブから逆サイドのコーナーでマークされていたヴァンフリートに横断パスを出し、あやうくターンオーバーになりかけました。
それはラウリーの意味不明な判断ミスでしたが、この後でグリーンがコーナーから決めまくったのをみるとラプターズがハーフタイムを挟んで「コーナーがフリーになる」と狙ってきた部分でした。

「グリズリーズのコーナーは狙いどころ」

これがバレてきたのが最近の傾向といえるし、そこを補うほどのディフェンス力を発揮していた個人力が届かなくなったともいえます。
これを渡邊雄太目線でみてみましょう。前述のとおり、ビッグマン扱いなので初めはシアカムのマークでした。すっかりスピンムーバーになったシアカムのアタックを止める渡邊でしたが、シアカムはあっさりとコーナーにパスを出して3Pを打たせました。ここに渡邊の責任はないけど、「シアカムを止める」というミッションを達成できたかは微妙。
スティールしてしまうカイル・アンダーソンみたいにプレッシャーで困らせることは、そこまで得意ではありません。退陣で守ってのブロックは得意だけどね。

次にビッグマンとしてヘルプにでてブロックに飛ぶシーンがありましたが、その時に自分のマークマンを捨てます。グリズリーズのディフェンスは逆サイドからヘルプにくることが徹底されており、そこにはローテーションがしっかりとあるのですが、

渡邊がヘルプに出る→エンドライン際で空いたシアカムには味方がローテーション→コーナーが空く

こんな形が繰り返されました。なお、実際にはシアカムはベンチに下がっているけどさ。交代してきた選手が若手で知らないから。何はともあれ、意図的に崩されていたグリズリーズのディフェンスですが、その次の対抗策が出てきていないことが問題です。
渡邊に関して言えば、ヘルプに出てもノーマン・パウエルくらいが相手になると、かわされてイージーレイアップになることもあり、絶対的な高さがある選手ではないので、リムプロテクターっていわれると苦しいよね。

つまり、実力不足なのかもしれないけど、渡邊雄太の特徴が出ているとは言い難いのが、17分のプレータイムを与えられて、よりハッキリしました。
また、別の問題としては渡邊相手にラプターズが仕掛けてくると、しっかりとチームとして収縮します。でも収縮しすぎるからパスアウトも簡単にされるのでした。
ディフェンダーとして地位を築きたければ、ヘルプで止めるのではなく「1on1を1人で止めきるディフェンダー」でありたいわけです。抜かれることはなかったけど、目立つ機会すら手にすることが出来ませんでした。苦しいぜ。

・リムプロテクターとしては不十分
・1on1ディフェンダーとしての機会不足
・誰でも守れる能力を発揮する機会もない

大体、こんな感じです。プレシーズンではクリス・ポール相手にファールしちゃったりとか、見せ場っぽいものもありましたが、あれはロケッツ都合で生み出されたものであり、グリズリーズの都合としては厳しいものがあるのでした。
うーん、本当にカイル・アンダーソン的に使ってあげて欲しい。でも実力が足りないのだろうか。

◉グリズリーズの短所

そういう意味ではオフェンスでは何もアピールできなかったに等しい渡邊。いや、本当にいてもいなくてもどっちでも良いレベル。
しかし、ここもチーム事情があるよね。だって、何したいのか全く分からないオフェンスしているからさ。プレシーズンでひどかった内容そのままで、コンリーいないと迷走しまくり。そこをたまにジェイレン・ジャクソンが助けてくれるし、テンプルなんかも強気で打つけどね。ベンチメンバーは・・・。

渡邊が出てくる時間ってことは、ガベージタイムなわけで若手を中心に普段はプレータイムの短い選手達ですが、だったら戦術を練りこませるか、個人を伸ばすかってことですが、どっちにも針が触れていない感じです。
ジャボン・カーターのプレー判断は全く理解できないし、それ以上に渡邊が何をしたいのか、どんなプレーコールで動いているのかわからないのでした。

基本はコーナーに陣取るわけですが、そこから先って本当にわからない。スクリナーになるわけでもないし、オフボールでの合わせ役ってこともない。

サマーリーグのネッツは、サマーリーグだけど、もっともっとスクリーンをかけたりポップしたり、コーナーでのストレッチ役になれば、自分がスクリーンを使ってオフボールムーブからの3Pなんてシーンもありました。
サマーリーグですら、いろいろな戦術パターンをやらせているネッツに比べるとグリズリーズのオフェンスって謎すぎて。
主役になるほどの個人技オフェンスがない渡邊からするとグリズリーズでのプレーは苦しい。ネッツじゃなくてもロケッツとか、サンダーとかさ。他にも適したチームはありそうなんだけど。

ただし、同じような状況でもホリデーは自分で得点するし、イバン・ラブはゴール下で奮闘しようとしています。それが出来ていないのであれば実力不足と言われても仕方がないのでした。
一回、コーナーにいたホリデーに対して合わせてきたけど、ミドルを思い切りよく打てなかったシーンなんかは、1on1に近いとはいえシュートまで持ち込むパターンをもっていないと厳しいのでした。
何しているのか不明なジャボン・カーターだって、得意のディフェンスでは明確に結果を残そうとしているわけだし、それが出来ないと厳しいぜ。
またラウリーやライトとのミスマッチになっても、渡邊のポストなんかは利用してもらえませんでした。チームオフェンスとして成立しているように見えないのに、個人勝負で有利なマッチアップになっても使われないんじゃ厳しいぜ。

もうひとつ、この試合で苦しかったのは、それでも渡邊はかなりフリーランニングしていたこと。しているけど、チームにはその気がないし、その気があってもパスを出す能力が高くないんだ。
ディフェンスと違いオフェンスでは1on1勝負が苦手な一方でフリーランニングはするし、攻守の切り替えが早いのだから、それを利用していくれるチームで働きたいところです。

総じていえば、長所を活用してもらえていないのが17分のプレータイムで見えてきたことです。一方でそれはプレシーズンからわかっていたことであり、

グリズリーズのシステムの中で、自分がサバイバルを勝ち抜くために何をするべきか

という視点で弱いよね、というのも見えてきてしまった。シーズンも折り返しを過ぎてきており、八村も含めた来年のドラフトが気になりだし始めます。
今シーズンにそこそこ活躍しても来シーズンの保証はゼロなのがNBAの世界。先輩のタイラー・カバナーも苦しんでいるよ。

17分のプレータイムは、苦々しかったのでした。

渡邊雄太の17分 2019/01/20 vsラプターズ” への13件のフィードバック

  1. 渡邊サンダーに欲しいですわぁーなんか最近サンダーのディフェンスが機能してないので渡邊の動きまくるディフェンス欲しくなります。

  2. ダニーグリーンの3pt攻勢に興奮してたら渡邊が出てきて思わず声が出ました。
    初3pt決めてくれたのはよかったですが、ボールがほとんど回ってこなかった。他の選手もアピールに必死と言うのもあるでしょうが、戦力的な意味でチームからの信頼を得られていないという印象も受けました。結構走ってる姿を見ましたがそれを活かしてもらえるかといえばそうでもなく…チーム全体が悪すぎるから渡邊を上手く使ってもらえそうな希望が見えないのが厳しいですね。
    やっぱりまずはGリーグで成績残すのが近道なのかなと思います。

    1. Gリーグでのプレーが連動しているのか、ちょっと微妙ですけどね。
      アピールするのが基本の中で失敗したのは、実力でもあるけど、渡邊みたいなタイプには苦しいチームシステムでもあるかな。

  3. 私の感想ですが、ガベージタイムは戦術の落とし込みというよりは、個人の成長を重視しているようにみえました。というか前者が全く見えないから仕方なくという感じです。
    そのような状況で渡辺がどのような気持ちで試合に臨んでいるのか分かりませんでした。試合に出たときの渡辺の目的が見えてきません。とりあえず試合に出てます的な。代表の時みたいな強気があれば変化も見えてくるような気がしますが、今のままでは2wayが終わったときに契約してもらえるかどうか疑問です。
    正直NBAで生き残れるかどうかの時間はそんなに多くないと思います。もちろん、期待も応援もしていますが。

    1. 試合に出ている割には迷いがありますね。
      相手のエースを止めるような役割をもらえれば、成功しても失敗しても納得なんですが、何もしないで終わっています。

  4. 渡邊と身長も体重もほぼ変わらないクルッツがネッツで活躍してるのを見ると渡邊にもチャンスがあるのではと思うのと同時に、対比としてチームが個人を上手く活用できてる感がないですよね、、
    もちろん、実力の部分もありますが。
    渡邊自身は3&Dを武器であり課題と掲げてますが、具体的にはどう伸ばしてくべきなのでしょうか。
    クルッツとの対比も含めて伺いたいです。

    1. その通りでクルッツがやっている事こそ、渡邊にやって欲しかったことですね。サイズを活かしたディフェンス力にキャッチ&シュートにシンプルなドライブを組み合わせたシステム的なオフェンスです。
      クルッツはドライブからのフィニッシュで予想外に適応しています。それが出来ていない渡邊です。

  5. ワタナビ選手、チーム同様に厳しい状況ですね。むしろガベージタイムよりも、通常戦力として場面場面で使った方が彼のモチベUP&力が発揮できそうな気もするんですが。ハーデンあたりを抑えたりして、なんて頑張れナビ―。

  6. 今日見る限りでは、守備がうまいと言われているけれど普通以下レベルと思います。積極性とシュート精度を上げないと生き残るのは厳しいという感想です。

    1. ビッグマンとしてはディフェンス力がないというか、迫力不足です。アジアでもパワーで押されることもあったし。
      本質はガード相手のディフェンスなのですが

  7. 全く同じことを思ってました。
    クルッツはルバート離脱を機にブレイクしましたね。
    プレシーズン通りにネッツに行ってれば、と思う反面、やはりクルッツには敵わないから契約出来なかったのか、とも思います。
    ともあれ、グリズリーズはオフェンスが個人頼みで渡邊には厳しいですね。まだ信用されていない気もします。

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