スローで巻き返すヒート

ヒートが来たぞ!

今シーズンのウエストは14チームがプレーオフを争う大熱戦!

なんて言ってたら、イーストも混戦気味になってきました。ラプターズが失速し、シクサーズとペイサーズ、セルティックスも上がってきて上位陣が混戦になれば、ホーネッツ、ピストンズは抜け出せず、中位陣も混戦に。
その状況下で上がってきたのがマイアミ・ヒート。気がつけば5割でプレーオフ圏内へ。巻き返したヒート。

10月 3勝4敗
11月 5勝9敗
12月 8勝3敗

苦しかった序盤戦を経て12月になると順調に勝ち星を伸ばしてきました。その最大の理由はケガ人が減ったこと。ドラギッチは2月までアウトになってしまいましたが、ここまで全試合出場がアデバヨしかいないくらいなので、非常に苦しんだといえます。

ただ、このチームは明確なエースがいないチーム。層の厚さで補っているにも関わらず、一度に大量発生したわけではないケガ人でそんなに困るのかっていう疑問もあります。
もう少し内容を考えてみましょう。

 

◉運動量で上回るために

〇失点

10月 110.7
11月 109.7
12月 99.1

実際にヒートの何が良くなったかというとディフェンスの改善。急激に失点が減りました。このディフェンス力を武器に直近2試合なんてFG40%未満で勝っています。じゃあなんでディフェンスが良くなったのか、

・フィジカルコンディション向上
・スローダウン

試合を観ていると大きな変化はなく、なんとなく偶然な気がしてくるというか、やっていることは同じでも身体が動いているので止めてしまうシーンが増えた気がします。システム的な面ではなくフィジカルコンディションの向上が最大の要因と思えてくるのですが、おそらくシーズン開幕に照準があいすぎると途中で失速するので30試合が経過してきたこの時期になって、やっと自分達のやりたいディフェンスに身体がついてきたようなイメージです。

マジック戦ではアーロン・ゴードンのマークをしたウィンスローが、ゴードンが出したパスを追いかけて奪ってしまうとか、ゴール下でドフリーダンクにいったモー・バンバに対して後から飛んで追いついてしまうデリック・ジョーンズとか身体能力そのものであり、反転する速度が向上しています。
そもそもオフボールでも全員が追いかけ回すのがヒート流なので、逆にフリーの選手も生まれやすく、それを更に追いかけ回す機動力で補ってしまいます。この部分でコンディション向上が貢献していそう。
そもそもこのチームはSGだらけ。相手よりも動かなければ止めきれないという計算。激しいチェイスをいなされても、もう一度ゴール下で捕まえることが出来るようになってきています。

ただまぁ「チェイス出来るようになった」というのは1試合に10回生まれていたフリーのシュートが8回に減る程度の話なので、捉えるのは難しいけどね。

〇総移動距離 18.49→17.85

しかし、ハッキリしているのはこっち。試合中に動かなくなりました。「激しく追いかけているのに動かなくなった」って変な話のようですが、それだけ攻守の切り替え回数が減ったわけで、スローダウンしています。ディフェンスで止めるから相手がオフェンスに時間がかかるってのもあります。

〇ペース

10月 102.7
11月 102.2
12月 96.4

対戦相手の理由もありつつペースダウンしているわけですが、そもそもヒートは何で早いペースで戦っていたのか疑問だったりします。SGだらけのチームがランニングゲームを挑むのは理にかなっているようで、ディフェンスのチームがトランジションの連続にしてイージーシュートを許すのは苦しい。

その意味では、やっと攻守のバランスがとれる位置までもっていけたということに。一方でヒートが早いペースだった理由がオフェンス面にあるとすると、納得のいく数字もあります。

 

〇得点/得失点差

10月 111.7/1.0
11月 106.9/△2.9
12月 102.6/3.5

10月は7試合しかないので偶然の要素は強いですが、それでも得失点差がプラスに働いており、足りないオフェンス力をトランジションで補って勝機を見出していたのは間違いとは言い切れません。

それが11月になって明確なマイナスで出てきたので12月はスローダウンしたと考えられます。前述の通り入れ替わりケガ人がいたのでジェームス・ジョンソンの有無なんかも関係しているし。ビッグマン不足。

 

いずれにしてもヒートはトランジション勝負を減らしました。ペースが遅いから追いかけ回すことが出来るってのもありそうな。元々ヒートはプレータイムシェアのチーム。1人ずつの戦力を比較すると負けるけど、プレータイムを絞って運動量を増やして上回るのが特徴です。


「トランジションゲームで運動量勝負」

はあまり上手く行かず、

「スローダウンで運動量勝負」

が上手く行っています。なんだか理論的に破綻しているようですが、現実にはハーフコートで追いかけ回し、逆を取られても追いつくことが出来るようになったのです。

◉落ちたオフェンス力

ディフェンスが良くなって8勝3敗

と聞くと「オフェンスはそのままでディフェンスが良くなった」っぽいですが、ヒートの場合はちゃんとオフェンスも悪くなりました。トランジション勝負は必ずしも間違いとは言えなかった。

〇オフェンスレーティング

10月 108.9
11月 103.8
12月 106.4

〇ディフェンスレーティング

10月 107.6
11月 106.5
12月 102.9

順調に下げたディフェンスレーティングと少し下げたオフェンスレーティングと。イメージで言えば106くらいがヒートのオフェンス力で、トランジションを頑張れば+2することも△2となることもある感じ。だったら走らない方がメリットがあるみたいです。

FG%も12月が1番悪くなっており、トランジションが減った影響は如実に出ています。

〇速攻での得点/失点

10月 10.7/12.9
11月 11.2/13.0
12月 8.7/10.5

非常にわかりやすいですね。速攻に関しては得点も失点も減りました。こうなってくると完全にヒートは狙ってスローダウンしていることがわかります。しかし、ここで興味深いのは得失点差にすると△1.8で11月も12月も変わらないこと。速攻そのものはプラスもマイナスもないわけだ。

その意味では速攻そのものには成績が良くなった理由を求めることは出来ません。これってリーグ全体の傾向を否定するようでいて、そうでもなかったりしてね。

〇ターンオーバー

10月 15.9
11月 16.0
12月 13.7

〇相手のターンオーバー

10月 12.4
11月 15.5
12月 14.4

ヒートの面白いのはここですね。ペースを落として自分達のターンオーバーは減りました。しかし、相手のターンオーバーはあまり減りませんでした。

トランジションチームがターンオーバーが多くなる理由は、単純にオフェンス機会が多いことと、イレギュラーな状況を使って攻めるのでミスが増えることです。ヒートもミスが増えてしまった。
その一方で自慢の激しいディフェンスは相手のミス待ちではない上に、ペースが落ちたことでインテンシティを保てたということかな。

いずれにしてもスローダウンで得をしています。1試合に6回くらいオフェンスが減ったことで2.3回のターンオーバーが減ったわけで、ヒートにとってはスローダウンは重要でした。それだけオフェンス力が足りないともいえますが、補えるだけのディフェンス力がありました。

試合を観ていて1回のオフェンスでの大きな変化は感じないけど、試合トータルでは大きな差を生み出しているスローダウン。その重要性とバランスをとれるポイントを見つける難しさ。しっかりとオフェンス力も落ちたけど勝率を大きく上げたのでした。

◉ジャスティス・ウィンスロー

そんな中でも注目したいのはウィンスロー。12月の成績だけを切り取ると素晴らしい。

13.7点
FG48%
3P44%
5.3リバウンド
3.8アシスト
1.3スティール

高いFG%ですが10月と11月は35%だったのでその差は歴然。スローダウンがもっとも良い方向に向いている選手です。そしてハードなディフェンスが可能になっているのも、ほぼウィンスローの印象。
インサイドでの頑張りが目立つようになり、ディフレクションやルーズボールの数字も向上しています。ヒートのフィジカルコンディションが向上したと書いたけど、4割くらいはウィンスローの印象度。

チームとしてSGばかりの中で、比較的サイズとフィジカルのある存在はインサイドを助けるキーマンになっています。

アデバヨやデリック・ジョーンズなど、ちょっと書いてみたいけど、書くほどにはネタがないという意味ではウィンスローも同じ。もう少し、データを探してみたいのですが、外出の時間になってしまったのでこれまで。

5割に復帰してきたヒート
その秘密はスローダウンとフィジカルコンディションの向上にあるのですが、大切なのは「バランスの取れた戦い方」が出来るようになったこと。ウィンスローの好調さはあれど、チームとしてどうすれば勝てるのかという方向性が定まってきたのは、簡単には崩れないはずです。

12月はウエストのチームを相手にすることが多く、それでもスローダウンに成功しているのは注目したいところ。自分達の形をみつけ、試合の中で表現できているのは他のチームの脅威になりそうです。

といっても、ペイサーズ、シクサーズまで上位争いに顔を出しており、そこまで追いつくのはまだ少し先の話。ネッツも追い上げる中でプレーオフ当落線上から抜け出して上位陣に絡めるのかどうか。イーストもまた混沌としてきました。

スローで巻き返すヒート” への4件のフィードバック

  1. ヒートの復調により、
    イーストもますますカオスになってまいりましたね、、

    さて話は変わりますが、ここ最近のラプターズがシアカムのみをビックにして前からプレスかけたりゾーンかけたりと機動力ディフェンスに、挑戦しているのですが管理人さん的見解はいかがですか?

    1. アヌノビー、グリーン、レナードがいるから、むしろシアカム1人を積極的に試すべきかと。でもヴァンフリートつかってのスモールはデメリットが大き過ぎると思います。

  2. いつも楽しく拝見させてもらってます。

    外のケアが手薄になるから使える場面は限られるけど2-3ゾーンもかなり効果的な印象です。ホワイトサイドの機動力の無さもなんとか誤魔化してるイメージ

    ドラギッチ不在の間はウィンズロウにPGさせるようなのでハンドリングの上達を望みたいです。

    ウェイターズも復帰が近いそうなので今後のヒートはとても楽しみです。

    1. ホワイトサイドでゾーンのイメージがあまりないんですが、ウェイドを隠す事も出来て追いかけ過ぎないディフェンスになるのが好印象です。ただ、ギャンブル的要素はあるので、オフェンスで取り返せないのだから、辞める判断の速さも大切でした。

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