ネッツの控えPGは契約延長しました。
しかし、今シーズンまでのディンウィディのサラリーは僅か1.6Mのミニマム契約であり、全く期待されていない若者が何とかNBAチームとの契約をはたしたものでした。そこでチャンスを掴み、結果を出し、25歳にして大きな飛躍を遂げたことになります。
ネッツブログでは頻繁に、そして「当然知っているでしょ」くらいの感覚で書く選手ですが、「一般的にはマイナーだよね」ってことで今回は年10M稼ぐPGについて触れてみましょう。
◉知られざるディンウィディ
今回の契約延長については否定的な見方もあるそうですが、その理由は『控えPGに対して支払いすぎだ』という指摘です。ディンウィディは素晴らしいPGですが、確かにリーグで20位にも入らないPGです。このレベルのPGは他にも手に入るということは否定できない。
17.2点
FG48%
3P36%
5.0アシスト
2.1ターンオーバー
一方で今シーズンの成績をみるとサラリー以上の価値があります。そして実は現在のディンウィディは、
リーグ最高のベンチスコアラー
なのです。JJレディック、ルー・ウイリアムス、ジュリアス・ランドルらの有名なベンチスコアラーを上回る得点力。しかもFG%が非常に高い特徴があります。加えてアシスト数はJJバレアに次ぐ2位(ロンドをベンチとみるか次第)
ベンチスタートながら得点とアシスト両面で高い数字を残しており、25歳という年齢を考慮しても適正なものです。リーグ最強の6thマンは間違いなくスペンサー・ディンウィディなのです。50点はとらないけど39点ならとるし。
同じ立場のデニス・シュルーダーを上回るし、FG%の低いルー・ウイリアムスやジャマール・マレーと比べても良い成績です。特にPGでありながらFG48%は高水準。
しかし、この事実はディンウィディの事を知っていても驚きだったりします。
アシストが多いのは知っているけど、得点が多く、しかもFG%が高いのか!?
というのが、今シーズンの新たなる衝撃。ファンからしても衝撃。「シュートが下手なPG」というのが昨シーズンまでの評価でFG38%だったのが、一気に10%近く向上しました。
ブレイクした昨シーズンはアシスト6.6にターンオーバーは僅か1.6というクリス・ポールもビックリの高いアシスト/ターンオーバー率を発揮しており、
堅実なゲームメイクをするPG
というのがディンウィディ評でした。ハーデンみたいなディアンジェロ・ラッセル、チームで1試合40本の3Pアテンプト、なんていう特徴も合わせてネッツを「選手の質が落ちるロケッツ」と評価していたくらいです。しかし、今シーズンのディンウィディはそこに得点力を大きく足してきました。今はクリス・ポールを上回るよ。
ちょっとネッツのチーム事情をいうと、スターターはPGラッセル+SGラベートのコンビになっていて、パサーとスコアラーの組み合わせでしたが、ディンウィディはベンチから登場し、両者の役割をこなすことになりました。
昨シーズンはラッセルと同時起用されてもPG役だったのが、どちらかというとスコアラーに回っています。これが進化を生み出したともいえますが、それ以上にディンウィディ本人が大きく伸ばしてきた点が挙げられます。
〇昨シーズンからの変化
試合数 80→30
ダンク 14本→12本
レイアップ 223本→120本
ダンク+レイアップが昨シーズンは1試合3.0本だったのが、4.4本まで増えています。確率的にも向上していますが、純粋にアテンプト増が大きく、シュートは今でもそんなに決まっていません。
〇エリア別FG
ノーチャージエリア 56.9%→70.4%
ペイント内 33.1%→41.2%
ミドル 31.6%→34.8%
3P 32.6%→36.4%
3Pの向上はありますが、そもそもが低かったこともあるので、今でもミドルやペイント内の確率は一般的なNBAレベルとしては良くないです。ただゴール下まで行くと高確率になりました。これらは「イージーシュートが増えた」ということになりますが、試合を観ている印象としてはシュートスキルが向上したのではなく
スピード・ジャンプ力・ボディバランスの向上
という印象を強く受けます。多彩なステップワークやシュートスキルではなく、ドライブからダンクに持って行ける能力が大きく向上しました。ガードとしてペネトレイトからダンクに行けるのは大きな魅力だし、昨シーズンまでは感じなかった能力です。
そもそもディンウィディは6-6のサイズがありPGとしてはかなり大きい方です。ロンゾやイグダラと同じくらいなので中にはSFになる選手もいるくらい。加えて体重は210あり、ロンゾの190と比べてもPGとしては、かなり重い方です。もっとも、ルーキー時の測定だからロンゾはもっと重くなっていると思うし、ディンウィディも適切な身体に変えてきたと予想します。
おそらく「急激に身体能力が伸びた」なんて事はなく、純粋に「自分の持つ能力をより上手く活用できるようになってきた」だけなのだと思います。今シーズンは3Pラインの大きく後ろから助走をつけるようにしてスピードで勝負して振り払うことが増え、縦への推進力を強化しています。クイックネスというよりはスピードであり、ヘルプに対して方向転換して、しっかりとシュートに結びつける身体操作ができるようになったという事だと思います。
ちなみにディンウィディがノーチャージエリア内で70%決めているのに対して、レイアップが下手と批判しているラッセルは51%しか決めていません。こちらはテクニックで振り切るのは上手いけど、スピードもジャンプ力もないので決め切れていないのでした。身体能力は大切。
またディンウィディくらいのアテンプト数があって70%近く決めてるガードはブレッドソー、ビール、デローザン、ベン・シモンズくらいです。シモンズはガードか?
元々の特徴であった高いアシスト力に少ないターンオーバー。そこに加わった新たな武器は
「ゴール下へ飛びこむ推進力がもたらす得点力」
昨シーズンよりもターンオーバーが増えているのはパスミスよりも、自分で得点を狙うことが増えた故の増加です。
4.09と異常な数字だったアシスト/ターンオーバー率は2.33となりましたが、それでもまだ十分な数字です。リーグ最強のベンチスコアラーにしてパサーであるディンウィディ。25歳の進化は大きな契約を手にするのに相応しい成績がもたらしたのでした。
◉ネッツの未来とPG
ネッツは4年契約を提示したらしく、これから数年は軸となるPGとして考えています。それは単なるパサーではなく、得点面で貢献できることを示したからでしょう。ただ、本質的にはSFにエースがいると最も輝くタイプだと思います。
パサーとしての特徴はミスが少ないことですが、その理由は細かいパスやトリッキーなパスを好まないこと。驚くようなパスは殆どありません。だからこそ隣にエースがいることで的確なゲームメイクをするのが適していると思います。
ただパスにも特徴があって、純粋にパススピードが速いタイプで、それがスティールされにくいことに繋がっています。同時にパススピードがあるというのは、逆サイドへのパスが通りやすくなっており、ディンウィディがボールを持つとディフェンスを大きく広げることが出来ます。
コーナーへのパス、逆サイドへのパス、そしてゴール下へのパス。いずれもパスの距離の長さが1つの特徴になっていて、イマジネーション溢れるのではなく、ベーシックなのだけど普通のPGよりも広くコートを使えます。広くコートを使うのが突破にも活きているので、得点を増やしているのです。
これらの特徴はワンパスを受けてドライブしてくれると最大限に活きるもの。それはネッツのオフェンスでは特徴的なプレーに繋がるので、ディンウィディの能力がフィットしたチームです。
ネッツはラベートが離脱していますが、実はジョー・ハリスのドライブの確実性も1つの武器で、そこにはディンウィディのパス能力も関係しています。創造性あるラッセルとのパスの違いも面白い。でも、どっちにしてもSFエースが欲しい。FAでデュラントか、新たな才能を見つけるのか、クルックスとムサが覚醒するのか。ちなみにドラフトで八村という可能性もあるよ。
ネッツは長年、ドラフト上位の指名権がなく、エース級の選手がいません。そこに唯一手に入れたディアンジェロ・ラッセルを中核に据えていますが、内容的にはディンウィディの方が上。
この2人は昨シーズンから延々と競争を繰り返させられています。そして共にチームの主役として位置づけられているのです。ベンチスタートながら一歩先に出たディンウィディ。とはいっても年間10M程度のPGなので、ビッグスターに合わせるためのPGに過ぎません。
果たしてラッセルはビッグスターになれるのか。それとも他のチームから連れてくるのか。どちらのシナリオでも描きやすいディンウィディの契約延長になっています。
なお、契約延長から6ヶ月はトレードが出来ません。12月13日に延長したディンウィディは6月13日までトレード禁止。6月20日にはドラフトがあり、7月にはFA解禁です。つまりその時にはトレード可能になっているわけです。
ついついトレードのことを考えてしまうのがショーン・マークス症候群。今回の契約延長はネッツの未来を任せるPGとしても、次のスターを手に入れるためのトレード要員としても良い契約だったと思います。
◉MY HOME
そんなことを邪推してしまうファン心理とは違い、本人はブルックリンを自分のホームだと喜んでいます。LAで生まれ育ったディンウィディですが、プロとしての険しい道のりがありました。
高校時代にカルフォルニアで活躍したディンウィディは2011年のランキングではPGとして25位、全体で146位という評価を受けコロラド大に進みます。でも、146位ってことはドラフトの範囲外ですね。
大学では1年目から活躍します。ここも全米でランキングされるレベルではなく、カンファレンスの1年生としてはというくらい。ただチームをNCAAトーナメントにまで導くことが出来、さらに2年生時もトーナメントに進みます。コロラドとしては快挙でした。この年のオフにユニバーシアード代表としてチームUSAにも袖を通しています。
3年生になると初めの16試合のうち14試合に勝利し、コロラドは注目チームになりました。しかし、1月にディンウィディはキャリアの危機となる全十字靱帯の大ケガを負ってしまいます。14勝2敗だったチームはそこから9勝10敗となってしまったのでした。
この年にNBAドラフトにアーリーエントリーします。1月以降アウトだったのに大胆な選択でもありますが、4年目のパフォーマンスをみてから判断されるよりも有利だと考えた可能性もあります。
2014年ドラフト38位でピストンズに指名されたディンウィディは34試合に出場しますが13分のプレータイムでFG30%で5点未満、でもアシストは3なので、まぁギリギリ及第点。翌シーズンは12試合に出ますが、そこでカットされます。
Gリーグでは13点もFG40%を切っており、6アシストに届かないくらいの成績なので、ほどほどですが、残したいほどの成績ではなかったのも確か。ドラフトされたし、そこそこチャンスも貰えたけど、NBAに定着するような成績は残せませんでした。年齢的にもピストンズの判断を責めることは出来ません。
ブルズとピストンズでCameron Bairstowとトレードされました。両者はその後出番を得ることはなく、ディンウィディはブルズに即ウェイブされ、再契約し、開幕前に再ウェイブされるのでした。契約の関係かな。
というわけで、NBA選手にはなったけど定着する要素がゼロでした。16年の10月にブルズからカットされ、12月にネッツに拾われます。ミニマムサラリーで。これでヨギ・ファレルはいなくなったとか。
結構凄いのは、12月に契約したのに16-17シーズンに既に59試合に出場し、22.6分のプレータイムを得ていたこと。この年のネッツは弱いわけですが、ケニー・アトキンソンとショーン・マークスコンビになったシーズンであり、お気に入りになったみたいですね。まぁRHJやジョー・ハリスなど、当時は無名ながら、現在の主力となる多くの選手が試されていたシーズンです。
しかし、オフにラッセルとジェレミー・リンを獲得したネッツ。ディンウィディは第3PGとして17-18シーズンを迎えます。が、開幕戦でリンはシーズンアウトとなる大ケガをします。第2PGに昇格。
そして1ヶ月経たない内に、オールスターになるかというくらいの大活躍をしていたラッセルも3ヶ月近い離脱のケガをしていしまいスターターPGに昇格したのでした。成り上がりには運も必要です。
そしてこのシーズンでネッツの主役に躍り出れば、オールスターのスキルチャレンジで優勝し、MIPの候補にオラディポ、カペラと共に選ばれたのでした。順風満帆ではなかったNBA生活で一気に訪れたディンウィディの時間であり、更にそこから大きく伸ばしてきた今シーズンです。
要するに苦労人のディンウィディ。ただ、高校時代からハイアベレージではないけどチームを勝たせるタイプのPGだった様子です。NBAレベルではその能力がなかなか通用していませんでした。また高校、大学ともにエースは他の選手でした。これもまたディンウィディの特徴になっているのでしょう。
前述の通り、素晴らしいPGとして昨シーズンを過ごし、今シーズンになるとスコアラーとしても開花しています。ケニー・アトキンソンが見出した才能だけでなく、更に付加されて得点の取れるコントロール型PGになったのでした。
特徴の1つに勝負強さというか、重要な局面でも強気にプレーする点が挙げられます。昨シーズンもゲームウィナーを決めており、試合終盤にパスではなくしっかりとシュートを選択していました。それを決めていくからスタッツ以上の高い評価を得ていたのも事実です。ある意味、今シーズンは勝負所以外でも自分でスコアするシーンを増やしたにすぎなかったり。
ちなみに個人的には、最近のディンウィディはスコアラー過ぎてちょっと嫌い。もっとパサーとしての高い能力を誇るのが好きでした。ただ、これはリーグ全体のディフェンスが変化していることも少なからず関係しているし、ネッツのシューター陣はオフボールでも厳しいマークをされていて、逆にスペースがあるから得点すべき状況にもなっています。
シーズンが進むにつれて平均得点は落ちるかもしれませんが、それは個人ではなくチーム全体のオフェンス構成の中で必要な変化になっているかも。その時、ターンオーバーが減っていれば、ディンウィディは自分のプレーをしているに過ぎないと判断して良いと思います。
契約更新直前の試合は39点の大爆発でシクサーズを下しました。それも3QにマークしていたTJマッコネルが3Pを決めて「もっと寄ってこいよ」みたいなジェスチャーをしてから1分半で13点を荒稼ぎという反骨心。ステップバック3Pが決まるのは、強気になって正確性が増すクラッチタイム向きの性格です。
契約更新後には27点でウィザーズを粉砕しました。ノリに乗っているのがスペンサー・ディンウィディ。ネッツの主役にして、本当はエースがいた方が良いプレーをしそうな強気なPG。
NBAに定着するのに苦労してきた25歳のPGは、リーグ最高の6thマンに成り上がって手に入れた契約延長なのでした。
結構腕が長くみえるのでそれもノーチャージエリアの得点に繋がってるのかなぁと
そうだと思います。ウイングスパンも含めてサイズの優位性がありますね。
ローズとの比較はどうですか?
ローズは完全にスコアラータイプですからね。パス能力ではディンウィディの方が遥かに上を行きます。
ただスコアラーとしてはローズのフィニッシュ力は素晴らしいので、ネッツにくれば20点取れると思います。
日本人心なのかこういう苦しいキャリアを送ってきた選手が花を開かせるのは特別感動してしまいます。。
ディンウィディのキャリアに幸あれ!
RHJとかも、ブログ読者以外はわからない人多いだろうなと思いながら読んでます。ディンウィディは実力が評価されて、他人事ながら嬉しい。NBA2k17で友達と遊んでいて、ロクに知らないネッツでベンチから出して、「そのチョビヒゲがダメなんだ!剃れ!」とか言ってすみませんでした。
デュラントと名前が並んでいるとクルックスとムサはまさに「覚醒」ですね。デュラントか八村来たら即リーグパス買うことにします。
こないだ、ロバーソンが来たら良いと仰っていましたが、MKGでもいけそうなものですか(契約状況は置いといて)?二人ともハッスルするディフェンダーと認識してるのですが、互いに異なるものでしょうか?
RHJも変ですね。小さいのにPFだし、PFなのにPGとマッチアップするし。だからMKGは不要です。
ロバーソンの方がMKGよりもエースキラーですね。マッチアップ相手を確実に消してくれる選手がネッツにはいません。MKGはもう少しルーズボールやリバウンドでも交換してくれるタイプ。
得点取れる、アシストもできる、でもエースは別にいたほうがいい。それでいてチームを勝たせる能力ってマイク・コンリーみたいって何となく思いました。
コンリーはやろうと思えばエースの役割もできる能力はあるでしょうが。今はネッツは結果が伴ってませんけど、もしデュラントを本当に取れたら一気にステップアップする可能性はありそうですね。
コンリーはグレッグ・オデン🍢とともに育ってきましたから、ドラフト1位になるスーパーエースとプレーする形でNBAまで到達した稀有な存在ですね。
その時のドラフト2位のデュラントとコンリーのコンビも面白そうです。
デュラント獲得すればすべてのチームが一気にステップアップしますよ。笑
デュラント来てくれればおもしろいですよね!
たぶん三連覇しょうがしまいが出ていくと思われますから期待したいです(実際はネッツは見向きもされないんでしょうけど)
八村が来てくれても良いですね
ネッツは育ててくれそうですし
来年のドラフト指名権はあるんですよね?(笑)
出しすぎて覚えてないです
ネッツの魅力はブルックリンという街なので大都市に住みたくて、マックス契約欲しければ!
優勝したスターの方が来てくれやすそうだなと。ただ中途半端なスターにマックスは払わない気がします。
指名権あるから負けても良いシーズンですが、プレーオフを目指せるチームであることも証明してほしいジレンマ。FAでスターの方がここまで育てたメンバーを活かせますし。
是非ネッツのシューティングコーチたちに八村をストレッチ4に育ててほしいです
セルティックスでホーフォードの後釜も捨てがたい。
whynotさんがツイッターでリブログされていたので。。
ディンウィディに1番合うと当時言っていたデュラントを運営は見事連れてきましたね。堅実な選択をするということでしたが、デュラントもドライブ、ミドルシュートなどの多彩な攻撃パターンからの堅実な得点力をウォリアーズでさらに磨き上げたと思います。
ただ、ここにカイリーがここに入ってきたときに爆発的な得点力の相乗効果が生まれるとは考えにくいのですが、3人同時起用するのはアリですかね?
なしですね。
だったらもうPGいらないじゃん。って感じです。