「不安定なディフェンス」のスパーズ

スパーズのディフェンスは崩壊中

◉不安定なディフェンス力

開幕当初は良かったのにスパーズが5割近辺をウロチョロしている理由は守れないこと。昨シーズンとのレーティングの違いを観てみると

〇レーティング
オフェンス 107.0→110.8
ディフェンス 104.1→111.4

ご覧の通り、デローザンの獲得など戦力的にはアップしたことでオフェンス面は大きく改善し、その一方で全く守れなくなりました。5割は納得の数字であるとともに、大切なのはオフェンス力はあるので、ディフェンスを改善出来れば浮上してくる可能性が高いわけです。

「守ることさえ出来れば」といってもそれは簡単なことではありませんが、そこは信頼と実績のポポビッチ&スパーズ。そもそもレナードのいなかった昨シーズンの104でさえ、スパーズ的には凄まじく悪い数字であり、この水準くらいまでは戻せなければチームビルディングは大失敗と言えます。
シーズントータルで104に戻せるかは別として、2月以降とかで比べれば割と改善していそうというのが、楽観的な見方です。その時はオフェンスが問題になっているかもね。

「ディフェンスレーティングが悪い」といっても理由は様々ですが、ちょっとマブスが好調な理由を思い出してみると、レーティング的には素晴らしいディフェンス力ですが、ある特定の試合で大幅に下げただけでした。ただし、大量失点する試合がなく「安定した」ディフェンス力というのが売りです。

その一方でスパーズの場合は良い試合と悪い試合がハッキリしています。要するに「不安定なディフェンス力」という構図なのです。今シーズンの試合をレーティング別にしてみると

〇レーティング別試合数
130以上 3試合
120以上 6試合
110以上 6試合
100以上 5試合
100未満 8試合

レーティングでリーグ25位と悪い反面で試合を区切ってみると100未満が8試合もあるのはかなり多く、同じくらいのペリカンズは3試合しかありません。その代わり130以上は1試合もない。
それだけスパーズのディフェンスは不安定と言うことです。110以上が15試合で110未満が13試合と半々くらいなわけですが、少なくとも110を超える試合を減らすことが出来れば大幅にレーティングが改善するわけです。

ちなみに昨シーズンは130以上は0試合、120以上4試合、110以上25試合でした。ディフェンスが崩壊しているといいつつも「崩壊している試合が多くなった」という方が適切な形です。相手の好不調もあるので一概には言えませんが、しっかりと機能する試合があるのも忘れてはいけないのです。

スパーズの課題は「不安定なディフェンス」にあります。

ディフェンスは安定している強さとかいう通説はウソってことさ。安定するディフェンス力も不安定なディフェンス力も存在するんだ。

◉守れないコービー&フィッシャー

昨シーズンのスパーズについては「負けない戦術」としましたが、大して強くないけど、とにかくリスク回避に努めて勝機が訪れるのを待っていたわけです。それに比べると今シーズンは「勝ちに行くための戦術」が増えてきたので、ある程度は不安定さを許容しているシーズン序盤だったとも考えられます。

その代表格はデローザン&フォーブス。PGにケガ人続出で困ってしまったデローザンの相棒役にはフォーブスが選ばれ、そのプレーぶりも非常に良かったために定着しています。フォーブスについては主役記事を書こうとして途中まで考えたけど、内容が少なすぎて停滞しています。

フォーブスの良さは高いシュート力とシンプルにボールを回してくれることで生み出されるリズム。それでいて時に強気に打っていけるメンタリティです。デローザンがボールを持つタイプだけに、相棒役としてはマレーやホワイトよりもフィットしています。例えるなら

コービー・ブライアントにおけるデリック・フィッシャー

しかし、フィッシャーの良さはディフェンス面にあったわけで、フォーブスには足りていない要素なのは事実で、そもそもデローザンとコービーだとディフェンス力に大いなる差があるわけだから「守れないコービー&フィッシャー」になってしまい、魅力がなくなってしまうね。
関係ないけどコービーのディフェンス動画みて凄いなーと思ったから、それを書くのも面白いかも。

〇DFG%
【昨シーズン】
グリーン 45.6%
マレー 48.2%

【今シーズン】
フォーブス 52.6%
デローザン 49.1%

こうやって比較してみると、その差は一目瞭然でグリーンのディフェンス力が足りていないことになります。意外とマレーはそこまででもないのですが、フォーブス&デローザン問題といえるのは、不安定なディフェンスが改善されるのかどうかにも疑念が出てきたりね。

守れないコービー&フィッシャー問題が大きなスパーズです。それは特にインサイドでハッキリとしてしまいます。

〇6ft以内のDFG

【昨シーズン】
グリーン 64.8%
マレー 64.2%
【今シーズン】
フォーブス 78.5%
デローザン 73.8%

うーん、悪すぎる。ただ、ここまで悪いと逆に改善の余地がある気もしてきます。75%決められるって異常な数字なので、何とでもなるのではないか。ちなみにフォーブスの昨シーズンは83.4%。うっぷす。デローザンは66.2%。

2人合わせて1試合に6本程度の話なので、そこまで大きな失点差にはならないのですが、守れないことがわかっているのでターゲットにされやすいわけです。いろいろと考えるべき事が多いデータになっています。

◉チェイス

しかし、この2人のディフェンス力が低いという理由だけでは整理できないことがあります。それは3Pに対するディフェンス力問題。今シーズンのスパーズは3Pへの課題が大きくなっています。

〇被3P
アテンプト 26.3→31.4
成功率 34.8%→36.3%

3Pはリーグ全体の傾向ですがリーグ平均のアテンプト増は2.1本ですが、スパーズは5.1本多く打たれており、しかも確率も悪化している訳なので3Pを守れない問題が大きく降りかかっています。それもフォーブス&デローザンっぽいですが、少し違います。

〇被3P
ミルズ 4.7本 38.0%
ホワイト 4.2本 31.3%
ゲイ 3.9本 34.0%
フォーブス 3.7本 39.6%
カニンガム 3.6本 44.6%
デローザン 3.5本 37.3%
ベリネリ 3.0本 32.9%

昨シーズンは一番多くてグリーンの3.6本、次がオルドリッジ3.3本だったのが、大きく増えたわけですが、目立つのはベンチメンバーが打たれていること。デローザンの3.5本はプレータイムを考えれば大きな問題ではないのですが、他の選手はかなり多めに打たれている構図で、かつ決められていることになります。ホワイトは確率を抑えてはいるね。

つまりスパーズは単にフォーブス&デローザンで守れなくなった以上に「3Pへのチェイスが甘くなった」のが大問題。スパーズと言えば、実はシステム的な要素以上に純粋に追いかけます運動量があるディフェンスだったのですが、その面が弱まってきました。

〇ディフェンス平均移動速度
昨シーズン 4.08
今シーズン 3.97

大した差じゃないのですが、4.28のグリーンと4.46のマレーが共にいないのが大きく、献身的にチェイスする選手の不在がチームディフェンスを低下させていると言えます。本来はミルズは追いかけるタイプなのですが、フォーブスと共に落ちています。

要するに全体として大きく落ちてはいないけど、チェイス役が足りていません。頑張っているのはカニンガムとパートルの2人。パートルはその走りこそが最大の特徴なので、上手く活用して上げて欲しいし、走っている選手がいることはユニットの組み方に改善の余地があることに。

実際にこの2人を混ぜたスターターとベンチユニットの組み方次第では良いレーティングを出せています。

〇4人ユニットのディフェンス
フォーブス・デローザン・カニンガム・ゲイ 103.9
ミルズ・ベリネリ・バータンズ・パートル 97.4

問題は「不安定なディフェンス力」なので、たまたま大量失点したときに起用されなかったという考え方も出来ますが、ユニットの組み方次第ではある程度は上手く行きそうなのは良い傾向。これをどう捉えているのかが、少しずつポポビッチが明かしていくでしょう。

例えばベリネリなんかは正直、ディフェンダーとしては酷いモノ。だけどチェイス能力はあるよね。悪いのは抜かれることで、抜かれたときに対応出来るバータンズやパートルを用意していると考える事も出来ます。
フォーブスとデローザンのコンビが苦しくても、ゲイとカニンガムのビッグラインナップにすることでカバーしているとも考えられます。だからといって、それに縛られたら柔軟性のないユニットになって苦しむわけだし、ポポビッチさん頑張って下さい。

◉改善点の多いチーム状況

カイル・アンダーソン、ダニー・グリーンが移籍し、ガソル、マレーもケガで出ていないのでディフェンスが悪くなるのは予想通りではありました。といっても、リーグの底辺になるとは思いもしなかったよね。

幸いなのはオフェンス力があることなので、5割の現状はチームのアイデンティティを失いながらも戦力で勝てているともいえます。オフェンスにはオフェンスの問題はあれど、フォーブスの活躍は大きいし、なんだかんだでデローザンが救ってくれる試合も多いよね。

負け試合の被FGは50%オーバーといくらなんでも苦しいスパーズ。「不安定なディフェンス」なのであって、脆弱かどうかはもう少し見極めていく必要があります。しかし、問題は他にもあるのです。

〇速攻
【昨シーズン】
得点 10.3
失点 12.5
【今シーズン】
得点 9.2
失点 14.0

大量失点が多い理由はトランジションゲームに対する対応力の低さ。もともと速攻で上回るチームではなかったものの、攻守の差が開いてしまったので時代について行けてません。しかもガードはフォーブスとデローザンになって、フィニッシュ能力が向上しているにも関わらずという結果。

この点についてはチームとして修正しなければならず、特にオフェンスの終わり方と相手PGのボールプッシュの止め方は稚拙さが目立ちます。グリズリーズをみているとカイル・アンダーソンが1試合に1回くらいバックコートでスティールするので個人能力の問題もありますが、やっぱり的確に止めないと。

その点ではファールの少なさもあって、イージーシュートの止め方が徹底されていません。弱いチームみたいなトランジション対応をしているスパーズ。

ちなみに負けた試合の方が速攻を食らっていないという謎なデータもあるのですが。おそらくトランジション3Pへの対応なんかも関係しているのだろうね。

そんなわけで「守れていない」の中に改善事項が多いのが現状の特徴になります。やっぱり1人はキラーディフェンダーがいないと苦しいというのも良く分かるし、その役割だったマレーの離脱も苦しかった。

オフェンスはターンオーバーが少なく、アシストが増えており、ミスから速攻を食らうケースは多くないだけに昨シーズンよりも悪くなる理由が分かりにくい要素もあります。

グリズリーズがディフェンスで勝率を伸ばしていますが、あちらは「得点取られるくらいならファールで止める」文化があって、スパーズは「フリースロー打たせるのは非効率」文化なのでファールしないのが特徴です。
ここまでは前者が上回っているわけですが、どこまで自分達の文化で改善できるかは結構な注目要素です。戦力の特徴が違うから失点数が違うけどね。

スパーズが5割になっているのはディフェンスの悪さ。そこには改善できそうな要素も多く混じっているのでした。1人目が止められないからヘルプが機能していないなんて問題もちょっとあるのですが、そんな事を検討するレベルじゃない改善事項なので、年内くらいには解決するかなと思っています。

でも根本的にはデローザンとフォーブスという守れないコービー&フィッシャーなんだから、オフェンスで打ち勝つっていう采配をとるんじゃないかな。まずは安定だけはさせようぜ。

次戦はvsブルズ。うん、気合いで守れるね。

「不安定なディフェンス」のスパーズ” への8件のフィードバック

  1. コービーのディフェンス特集ぜひお願いしたいです!
    高校時代、今のNBAで言うマーカス・スマートみたいなプレイヤーだったのですが、身長高いチームメイトがいないのでセンターを守るPGをやっていました。笑
    当時、ミスマッチになったときのコービーのポストマンに対するディフェンスを参考にして試行錯誤やってたなぁ。

    1. まぁ動画の感想書くってだけですが。
      いろいろ持っていて面白いなと思いました。

  2. 今シーズンのスパーズはメンバーの入れ替わりも多く、負け越していたのですが、ポポさんは毎試合色々なユニットを試していました。その成果が上がってきたのかホームゲームが続いている為なのかは分かりませんが、ここ数試合の内容は上向きで嬉しいです。

    1. 基本はそういう事ですよね。新たなメンバーにケガ人と試す事や身につけさせること、変更すべきシステムとやるべき事が多かった。それが不安定なのかなと。

  3. 「守れないコービー&フィッシャー」というのが的を射た例えすぎてウケました。今シーズンが始まる時点でロースター構成から昨シーズンまでのようなディフェンスベースの粘り強い戦い方はできないだろうと思っていましたがまさかここまでディフェンスで悩まされるとは予想外です。

    数シーズン前ならスパーズの3Pに対するディフェンスはリーグトップだった記憶があります。それがここまで下がったのは個々のチェイス能力の勿論のこと、インサイドをオルド一人には任せきれないという事情があるように思います。ダンカンなら任せておいてよかったわけなので。

    速攻における攻守については、仰るように悪くなった理由がわかりづらくて判然としません。以前から得意ではないけど弱点にはなっていないから良しと思っていましたが、今は大きな弱点になってしまったので改善すべき課題です。やはりグリーンのように速攻に対する意識や能力が高かった選手が抜けてしまったことが大きな要因だと感じます。
    管理人さんもディフェンスを評価してくださっているカニンガム。なぜかここ3試合はスターターを外れているんですよね。3&D&Rにハッスルしてある程度活躍していたと思うのですが。でもカニンガムのDFG%を調べてみると56.2%とお世辞にも良いとは言えない。なぜなのか。

    1. まぁ今のバスケでダンカンにインサイドを任せることが出来るかってのもわからないですからね。ディフェンスの良いチームはセルティックス以外PFがキーポイントで中でも外でも守れる選手が多いですから、1人で守り切ると言いつつも、ってところもあります。

      カニンガムはレーティングの良さに反して色々数字は悪いです。言い換えれば、それこそが見えない部分の貢献度だし、選手の組み合わせが生み出す違いですね。

      デローザンをスターターに残しても、ベンチに混ぜても、どちらでも機能しそうな組み合わせが見つかってきた感じなので、ローテが楽になってきたのではないでしょうか。

  4. スパーズの記事ありがとうございます。
    最近になってやっとデロ山とオルドリッジのピックが上手く機能してきたかな、という感じです。あとはベリネリのタフショットがやたら多いのがなんでかなーと不思議に思ったり。
    来シーズンになると思いますけど、マレーが復帰したらどういうユニット組んでくるのか….。

    1. ベリネリはあんな人なのでタフショットに含んでないのだと思います。本人的には。

      マレーとデローザンそのままの予定だったでしょうが、SFがシューターにしやすくなるかもしれませんね。ゾーンやったら面白そう。

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