崩壊のジャズディフェンス

今シーズンの優勝候補の一角は現在ウエスト14位

昨シーズン後半に凄まじい強さをみせつけ、ウォーリアーズを追う2番手に成り上がったジャズ。プレーオフではケガに泣かされたものの、ルーキーのドノバン・ミッチェルをエースとして中堅所の選手達を組み合わせたチームは、エクサムやオニールといった成長が期待できる若手もいて厚い戦力と高度な戦術によって安定した高勝率をあげるものと思われました。

しかし、蓋を開けたら勝てないジャズ。シーズン当初はそれでもエースの不調やスローダウンしないルビオのゲームメイクの問題があったくらいで「勝てる試合を落としている」くらいの話だったのが、普通に勝てなくなってきています。ちょっと信じられない現在の状況は一体何がもたらしたものなのか。

〇レーティング

オフェンス 107.2 → 104.8

ディフェンス 102.9 → 108.3

攻守に崩壊しているのが現在のジャズ。特に11月になると酷くてオフェンス101.7でディフェンスは109.3とドアマットレベル。昨シーズンのメンバーが残っての成績だけにロケッツよりもよっぽど深刻な状況です。特にエースがいなくなると崩壊が進んでいるのでした。

攻守に触れるのがテーマですが、とりあえず今回はディフェンス面にしましょう。なんせ昨シーズンはリーグ1位のレーティング。それもオールスター明けからは97.9という今では考えられない高水準でした。安定したディフェンス力があるからこそ目立っていたドノバン・ミッチェルだけに、現在のディフェンスだと勝ちきれないオフェンス力なのです。

逆に言えばディフェンスさえ何とかなれば、今のオフェンス力でも5割以上は勝てるはず。先に解決すべきディフェンス問題は何が原因なのでしょうか。

 

◉止まらない失点

〇試合別のディフェンスレーティング

120以上 6試合

110以上 3試合

104以上 2試合

103以下 9試合

ここまで20試合中約半分の9試合がレーティング103以下に抑えています。もちろん昨シーズンの平均が103なのだから多いとは言えませんが、103を中心にして分布していると考えれば悪くはありません。昨シーズンは82試合中42試合が103以下なのであまり変わらない。

120を超える試合は今シーズン既に6試合。昨シーズンは7試合でそれもゴベアー離脱が多かったシーズン前半だけしかなかったのが、酷いことになっています。104~110は2試合しかなく、しっかり抑えるか、失点しまくるかの2パターンしかありません。ジャズのディフェンスで課題があるのは

失点が増え出すと止まらない

ということ。弱いというよりも安定しないディフェンス力こそが最大の課題になっています。

前述の通り、今シーズンのルビオのゲームメイクは気に入らない点が多く、スローダウンして立て直すことが出来ていない様子。いわゆる試合運びの拙さも目立つので、浮き足立っているような状態です。実際に6試合中3試合はドノバン・ミッチェル不在の試合になっており、ディフェンス面の貢献度よりもオフェンスで落ち着かないことも1つの要因です。

ただし、6試合の中では対戦相手がペイサーズ2試合、グリズリーズと相手もそこまでハイペースじゃないので、スローダウンだけを言い訳にも出来ません。苦しいね。

 

〇失点内容の変化

速攻 9.5 → 11.7

セカンドチャンス 10.8 → 11.6

ペイント内 41.8 → 49.4

どれも悪くなっていますが、リーグ全体のペースアップも関係するのでセカンドチャンスくらいは許容範囲です。問題はペイント内失点の多さ。そこには速攻の多さも少し関係しています。既に3試合をこなしたキングスに走られまくって1勝2敗と負け越しており、トランジションディフェンスと、その前のオフェンスの終わり方に課題があるジャズ。

3Pが決まらないとか、早打ちするとか、ちょっと整理がついていない一面も。そこはまたオフェンスの時に触れましょう。ディフェンスのデータをもっと並べてみると

 

〇被FG 44.9% → 48.2%(28位)

〇被3P 36.5% → 36.4%(25位)

〇被フリースロー 20.5 → 23.0

〇ディフェンスリバウンド率 75.6%→75.4%

被3Pのディフェンスが悪いのですが、数字的には昨シーズンと同じくらい。リバウンドもしっかりと拾えています。にもかかわらずFG%の悪さはそれだけインサイドを攻略されているということ。それはフリースローの多さにも繋がります。特に3試合こなしたマブス戦は平均で29.7本とフリースローを多く与えています。シクサーズやペリカンズも多く、ビッグマンのいるチームに弱い。

ペイント内失点が多いこと、2PFGが悪いこと。本来は強みだった部分が崩壊しているのが今のジャズ。ディフェンス崩壊の理由はインサイドで負けていることです。

 

 

◉ゴベアー問題

共通しているのはペイント内失点が多いこと。つまりゴベアーを中心としたディフェンスが攻略されています。代表的なのがデリック・ローズが50点奪った試合です。この試合のローズはアウトサイドシュートも決まりすぎなのでそれは置いといて、ゴベアーのプレッシャーに負けていないシーンが目立ちます。同時にフェイバーズも止める事が出来ていません。

この2人がシューターの近くに立っているときの、相手のFGがどうなっているのか。インサイド(リングから6フィート以内)のFG%を観てみます。

〇6ft以内のDFG

ゴベアー 51.9% → 59.0%

フェイバーズ 52.0% → 50.0%

〇6ft以内のDIFF

ゴベアー △9.9 → △2.7

フェイバーズ △10.4 → △12.2

こうみるとジャズのディフェンスが崩壊している最大の理由がゴベアーの存在である事がわかります。ゴール下での存在感の高さから最もディフェンス能力が高いとされるビッグマンは、昨シーズンに相手のFGを9.9%も落とすことが出来ていたのに、今シーズンは僅か2.7%に留まります。

ゴベアーは「新ルールによる相手の対策がジャズのディフェンスを困らせるようになった」と発言していますが、ところがフェイバーズは昨シーズンを上回る数字を残しており、どちらかというとゴベアー個人の問題の大きさを感じてしまうのでした。

 

〇vsジャズ戦の得点

タウンズ 28

エンビート 23

コーリー・ステイン 23

センター陣との直接的な対決ではタウンズを除けば、23点が最高と負けていないゴベアーなので、大きな課題になっているのはドライブに対するディフェンスです。もともと個人ではスピード負けするし、アウトサイドが全く守れないわけですが、それをチームディフェンスの中でインサイドに誘い込むのがジャズ式。ところが誘い込んでも止められないゴベアーで崩壊している感じです。

ローズを除くとインサイドで得点しまくっていたのはデュラントくらいなので、個人で突破を繰り返された感じではなく、チーム全体で崩されているのが頭の痛いところ。昨シーズンのハイライトでもヘルプとしてのブロックが目立っており、現在のゴベアーがこれだけの瞬発力を発揮出来るかは怪しい。

今シーズンのゴベアーのブロック数は1.9と物足りないのですが、10月は2.7あったのが11月は1.4と急降下しています。開幕当初は勝てない試合があっても弱くはなかったのが、最近は普通に負けていると評しているのは、このゴベアー関連の不調が響いています。

〇月別ゴベアー

10月 18.3点 13.4リバウンド

11月 13.3点 11.9リバウンド

オフェンスリバウンドで奮闘しているので、その点は良いのですが、全体的に数字が落ちてきているゴベアー。もっとも昨シーズントータルも11月くらいの成績だから10月が出来すぎていたかも。ただし、ブロックの面は平均2本を下回ったのはケガをした12月だけだったので、やっぱりディフェンス面に大きな課題があります。

接触プレーで簡単にケガをしていたように、かなり怪しいゴベアーのプレー安定度。ここまで元気だからこそパフォーマンスの低下が目立っています。そしてインサイド陣が薄いジャズのロスター構成は、いろいろな不安要素をかき立ててくれるのでした。ハッスル系の選手をもう1人加えるべきだと思うのです。

 

◉ルビオとオニール

しかし、ゴベアーの責任だけにしてはいけません。そもそもゴベアーに追い込むディフェンスなのだから、追い込めているのかどうか。そしてベンチ陣が守れていない事実もあります。気になるのはルビオとオニールの2人。

〇ルビオ

DFG 54.2%

DIFF 8.9

〇オニール

DFG 50.0%

DIFF 5.0

ガードを守る機会の多い2人は3Pを打たれるケースも多いので、FG50%決められているのは苦しい所。特にルビオは3Pすら50%以上決められています。ベンチもディフェンダーとして名を挙げたはずのオニールがこれではディフェンスシステムとしては崩壊してしまいます。

ルビオがやられたのはローズ、デニス・スミス、シェルビン・マックなどのスモールガード達。スピードで負けてしまう前提で、3Pを決められています。要するにちょっと逃げ腰。追い込んでいきたいはずがインサイドで止められていないからか抜かれるのを怖がっているケースが目立ちます。

オニールがやられたのはドンチッチとボグダノビッチ。ともにユーロ系にして、ドイツとスペインでプレーしていたオニールからすると、それはどうなのかという感じ。フィジカル系のディフェンダーだけに読みで負けると苦しいのか、2人がオニールに慣れていたのか。いずれにしても止めるべきポイントで止められていない状況になっています。

 

〇DFGアテンプト

ルビオ 9.4 → 10.8

ミッチェル 9.7 → 7.3

もう1つ目立つのは、ミッチェルがディフェンスしている時に打たれるシュート数が大きく減って、その代わりにルビオが増えた事。

イングルスは変わっていないので、相手がルビオを狙うパターンを選択しがちということがわかります。負けた試合に限るとミッチェルはさらに6.4まで下がります。ミッチェル不在で失点が増えたのは偶然ではないのかも。

ルビオを狙うというか、ミッチェルを避けるようになっている傾向が強くでており、ディフェンス面で成長したミッチェルによって失点が増える方向に傾いているという皮肉なデータ。ルビオが守れないとジャズはこのまま立て直せないというか、プレーオフへの不安要素が大きくなります。まぁ現状ではプレーオフが怪しいのだけど。

 

◉立て直せるのか

ディフェンスレーティング108.3のジャズですが、スターター陣にクラウダー、オニール、エクサム、そしてバークスもこの数字を下回っています。バークスはギリギリだけどね。一方でグレイソン・アレンやニヤングなどが113を超えています。プレータイムが10分に満たない選手が出ている時間なので、ジャズディフェンスの崩壊の責任には出来ない反面、起用法含めてベンチの端に座る選手達で苦労している一面も。

ディフェンス面は全体的に数字が落ちており、一概には言えませんが、インサイドの要が機能せず、弱点が明確になり、そこを活用されると失点が止まらなくなっています。

1番の問題はやはり「失点が止まらないこと」

悪い試合でもリスクマネジメントして110以内に抑えていれば勝機も出てくるでしょうが、全く止められず120を超えてくるのだから困ってしまいます。試合毎にスナイダーが采配で工夫を出来るのか。その先は細かな戦術面以上にゴベアーとルビオ、そしてオニールがなんとかしてくれないといけません。

 

昨シーズン後半に魅せた強さをそのまま維持できると思われたジャズは、そうはいかない個人の事情が垣間見えてきました。スター選手はドノバン・ミッチェルしかいないけど仕事をする選手で構成されているだけにチームパフォーマンスの安定感への信頼が高かったのが、まさかの仕事をしていないという現状。イングルスだけが高い水準でこなしています。

クイン・スナイダーが立て直すにも、そうなるとディフェンスシステムをいじることになり、使い勝手の良くないゴベアーがもう一度問題になってしまいます。この唯一無二のリムプロテクターをしっかりと利用するのが強みなだけに、変更するなら補強した方が話も早い。でも、システムが難しいから誰もが活躍できるわけではないジレンマ

立て直せるかどうか、微妙だけどゴベアーがブロック連発すれば、それで解決してしまうのも事実なので、コンディションの向上に期待するしかないのかな。待っている間にプレーオフは遠ざかっていくよ。

 

 

 

 

崩壊のジャズディフェンス” への10件のフィードバック

  1. ロケッツもやはり似たような理由で不調なのでしょうか?ここんとこクリポ欠場ですし。ここんとこって言っても2試合か

    1. ロケッツは手に入れた戦力を有効活用しようとトライして戦術理解度不足で負けが込み、戦力を絞ったことで勝てるようになり、絞りすぎて選手層不足で負けている。って感じです。ジャズはそこの所はぶれていないので、ちょっと理由は違いますね。
      ロケッツは調べてないけど、ルーズボール系が落ちていそうです。トランジションが激しくなったので、選手層は大切。

    1. ロッカールームに難のある選手は厳しいスナイダーの下ではフィットしないでしょうね。要素としてはハードワーカーなので合いそうですが、出番は少ないので性格的に難しいかと。

  2. ウェスト14位は管理人さんも驚いているでしょう。ミッチェル本人、関連のディフェンスは向上してるようですが、どんな感じですか。

    TwitterとかSNSやってなくてダイレクトメールとか出来ないんですが、個人で管理人さんに仕事の依頼となるとお金はどのぐらい納めるのでしょうか。

    1. ミッチェルはまぁ普通です。普通に良い選手。でも普通じゃないから感動的だったルーキーイヤーなので物足りない。
      ディフェンスは集中力高いですね。

      仕事は内容次第(作業手間時間)ですが、個人で何かをするのに数万円とかはとらないですよ。
      コメント欄は表示しないことが出来るので、その旨や連絡先(メアドでよければそのまま)書いて頂ければ。

  3. ミッチェルは正しいプレー選択をしようとし過ぎて爆発力がなくなってしまいました。「正しいプレー選択をする」=「無理な事はしない、ダメそうなら行かない」ということなのですが、「無理だけど突破する。ダメそうなところを行く」からミッチェルは脅威的だったので。ボブサップ格闘技覚えて弱くなった、みたいな。

    そしてジャズ全体も、緻密な約束事が強みなのでそこを個人個人が破ってまで変化をつけられないというか、例えばルビオのゲームメイクも変則的なことをやるかやらずかが中途半端になってるからだと思ってます(昨シーズンは割とオーソドックスに徹していましたが、今シーズンはそれがダメそうなので変化を与えたい気持ちがあるのでは?と)

    とはいえ、今シーズンも何か1つ上向くキッカケがあれば(クラウダーみたいな性格の選手が入ってくるとかでも)噛み合うと信じているのですが、それまでにゴベがエスプリ効き過ぎたこと言ったりして空気悪くなったりしないようにしてほしいですね…。やってることは間違ってはないと思いますの
    で。
    …それで結果出てないからもの凄いツライんですけど!

    1. ルビオの段階で変化をつけてしまうとその先が回らないってのはありますしね。まあ単純にルビオが決める事が出来ていない問題かな。毎シーズンの話ですが。
      ゴベアーはエスプリよりも余計なプレーをし始めると一気に問題発生しますからね。昨シーズンよりはよいかな。

      守れるようになるのが第1です。そもそもミッチェルもそんなに高確率な選手ではないので、守れないと意味がない。守れさえすれば強気なプレーで勝てますし。

  4. 最近のジャズは観ていて苦しいですね、以前から管理人さんの仰っていたミッチェル以外攻め急ぎ問題だけではなく、ゴベアにも問題があったのですね。
    なんとなく観ているだけだと、相手にディフェンスをコントロールされてしまっている印象を受けていましたが数字で見るとかなり衝撃的です。

    個人的にはエクサムがドタバタしすぎというか、ドライブからあまり繋がらない印象なのですが、どうなのでしょう。
    エクサム、ルイス、バークス、ミッチェルが並んだ時ならまさにスモールラインナップという感じで目まぐるしくて面白いのですが、中々上手くはいってないですね。

    ただキッチリ修正はしてくると思うので、今後に期待を持って楽しみにしています。

    1. エクサムはあんな感じかなと思うのですが、ドタバタはパスアウト先のポジショニング問題の気がします。やっぱりちょっとずつズレているような。
      それがディフェンス面だと更に目立っているのかな。もう少し追い込まないとゴベアはブロック出来ないのも事実ですし。ただ数字的にフェイバーズが守れているから尚更きついですね。

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