変化するブセヴィッチ

イーストのプレイヤー・オブ・ザ・ウィークは第4週がパスカル・シアカムで第5週がニコラ・ブセヴィッチ。ちょっとネームバリューが落ちるぞ。

◉フックシュート

シーズンで10勝くらいと予想していたマジックが既に9勝もあげてしまい、恥じるしかない順位予想になっていますが、そんなマジックから選ばれたのはブセヴィッチ。

27.6点

12.3リバウンド

4.0アシスト

FG58.1%

3P47.0%

これが第5週の成績な訳ですが、ブセヴィッチのイメージは「シューター系センター」でした。ゴードンやアイザックを育てたいはずのマジックが、まさか今シーズンもチームの中心として活躍させるとは思わなかった事が予想と違う5割の成績に繋がっていますが、それだけでなくブセヴィッチのプレーが予想以上に良くなっていることも大きく関係しています。

特に注目したいのはFG%の高さ。昨シーズンと違いセンターらしいセンターをしているのが印象的なのです。

 

〇エリア別FG%の変化

ノーチャージ内 73%→73%

ペイント内 43%→45%

ミドル 43%→51%

3P 31%→43%

シュートとしてはアウトサイドの改善が目立ちますが、まぁまだシーズンも序盤で好調だった程度の話もあります。また3Pは昨シーズンになって多く打つようになったという事情もあり、同じようにシーズン序盤は好調で、ケガによってパフォーマンスが落ちました。そういう意味では昨シーズンが悪かったという部分も。

ブセヴィッチの場合は、マッチアップ相手によってアウトサイドへの広がり方が違って、マークがついてこない位置まで広がって打つのが基本です。なので、打っているシュートはオープンのキャッチ&シュートばかり。今の確率は出来すぎですが、40%近く決めてもおかしくない選手です。

 

FG%が改善したのは、このアウトサイドシュートの確率以上に、ゴール下でのプレーが増えた事にあります。もともと73%と高確率だったインサイドプレーはあくまでもアウトサイドに行くことでディフェンスを引き出してうまれるもの。そんな認識だったのが、今シーズンはパワープレー気味に押し込んで行くのが目立っているのでした。

〇ノーチャージエリア内のアテンプト/全アテンプト

昨シーズン 203/840

今シーズン 90/271

アテンプト割合では10%近くゴール下が増えており、好成績に繋がっています。同時にフリースローも1.6本から2.8本とエースセンターとしては少ないながらも増やしており、テクニカルな部分以上にフィジカルな部分が目立つように。もともと身体の幅があるのですが、使い方が上手くなってフック系のシュートを良く決めるようになりました。

〇フックシュート

昨シーズン 68/151

今シーズン 37/68

既に昨シーズンの半分近くのアテンプトになっており、ディフェンスとボールの間に自分の身体をいれて打つシュートがブセヴィッチの変化を支えています。これらの変化は3Pアテンプトを減らすことにも繋がっていて、ゴール下の逆で3Pアテンプトの割合は10%近く下がっています。

・3Pを減らし、ゴール下のフックを増やした

これがブセヴィッチが好調な理由です。昨シーズンはフランク・ヴォーゲルの下で全員がオフボールムーブを繰り返し、3Pを活用していくオフェンスが魅力的だったマジックは、その匂いは残しながらもビッグマンのパワープレーを好むスティーブ・クリフォードにHCが交代したことがブセヴィッチには良い方向に出ています。

単に好調というよりもインサイドプレーが増えた事で、個人スタッツは安定度が高まりました。ここまで最低でも12点と得点を稼げることがマジックの好成績を支えていると言えます。PFがゴードンというケースが多いマジックなので、2人ともアウトサイドに広がることは嫌がっているのでしょう。

◉マッチアップ

一方でこの変化はマッチアップ相手によっては面白い変化も起こっています。アウトサイドシュートが上手いブセヴィッチなのでお得意様はゴール下しか守れない古いタイプのセンターです。イーストで代表的なのはドラモンドとホワイトサイド。昨シーズンの対戦成績は

〇平均マッチアップ数/得点

ドラモンド 59.0回/18.5点 

ホワイトサイド 58.0回/17.0点

試合の中で直接マッチアップした時でも、この点数はかなり多くなります。ドラモンド相手だとアシストも5本を記録しており、かなり相性の良い相手でした。どちらも3Pを3本以上打ってインサイドから引き出して得点を重ねています。なお、ホワイトサイドに対しては3Pは打つけど決まっていないのに17点でした。これが今シーズンになると

 

〇平均マッチアップ数/得点

ドラモンド 50.0回/8.0点 

ホワイトサイド 47.0回/10.0点

3Pの数が減り得点が伸びなくなっています。ここまで試合数が少ないのでサンプルとしては弱い反面、ブセヴィッチの個人成績は昨シーズンよりも3.5点も多いのに、お得意様だったはずの相手から得点がとれなくなっているのです。同じようにコーリーステイン相手でも抑えられました。

一方でエンビート相手のシクサーズ戦は3Pアテンプトが多くなっており、武器として使えるときはしっかりと使うわけです。昨シーズン3Pを打たなかったのは実質1試合のみ。それが今シーズンは既に3試合あってインサイドプレーを増やしたブセヴィッチですが、この使い分けがより上手くなると、更に厄介な選手になる可能性があります。

・マッチアップ相手によってプレーの使い分けが出来る

ただし、まだちょっと甘い部分もあるよ。ちょっとした伸び代も感じさせてくれています。

◉オフェンスリバウンダー

ゴール下のプレーを増やしたことでブセヴィッチはオフェンスリバウンドを増やしました。しかし、実はもともと強かったのが、昨シーズンは3Pを打つようになったことで減らしただけの話。高さの利がないブセヴィッチがリバウンドを取っていくのは興味深いものがあります。

〇オフェンスリバウンド数

18-19 2.8

17-18 1.8

16-17 2.3

15-16 2.7

14-15 3.2

 

2.8本のオフェンスリバウンドのブセヴィッチですが、3P打つタイプの上にエースということでゴール下で待っているだけの形は少なく、オフェンスリバウンドの機会が非常に少ない反面、高確率でゲットしています。

〇オフェンスリバウンド

獲得数 2.8本

チャンス 5.1回

獲得率 54.9%

競り合い率 70%

例えば獲得数5.0本で2位のスティーブン・アダムスはチャンスが11.3回もあり、獲得率は44%程度です。1位のドラモンドはチャンスも獲得率も異常なのですが、ブセヴィッチの場合は55%を拾ってくれる上に、それらはフィジカルの戦いの中で競りあって奪っています。ドラモンドも高さはないですが、身体の強さを利用して近くに落ちてきた時にはポジショニングで勝っています。ブセヴィッチもまた、高さよりもフィジカル勝負なのです。

これらの特徴はディフェンスリバウンドでも発揮されるので、平均11.2本はリーグ13位と好調。ただディフェンスリバウンドになるとチャンスが減ることもあり、そこまで優秀なスタッツではありません。

・オフェンスリバウンドを効率的に奪う

単に強いのではなく、少ない機会でも取っていくのが面白い部分。アウトサイドまで引き出すシュート力とインサイドのポジショニングの良さの両方を武器にしているブセヴィッチ。個人で仕掛けまくるわけではないけど、セカンドチャンスの得点が3.7点でリーグ11位と、個人で得点を生み出してもいるわけです。

◉ニコラ

3Pを打ち、インサイドでフィジカルの強さとシュートテクニックを活かし、ポストで起点となってアシストもするブセヴィッチの特徴はヨキッチに似ています。いわゆるユーロ系のセンターで、国籍はモンテネグロとセルビアなので近い存在ですが、ブセヴィッチは高校時代にアメリカに来ており育成環境はあまり似ていなかったかもしれません。

そしてNBA入りしてからのブセヴィッチのスタッツは普通のセンター。それがヴォーゲルが就任した2シーズン前からポイントセンター的な役割を担うようになりました。新たな能力が開花してきたわけですが、ヴォーゲルがいなくなってインサイドの役割が増えた事で更に良くなるという形。1回大きくハンドルを切って練習してから、少し戻して良い位置になったというのは、右から左にHCの選定がズレているマジックらしさが生み出した偶然なのか、必然なのか。

 

マジックはモー・バンバをドラフトで指名しており、ブセヴィッチを売れるなら放出も厭いません。サラリーは13Mと微妙な上に、契約が今シーズン限りなのでこれまた微妙。しかし28歳という年齢を考えると充実しているときであり、インサイドのプレーメイカーを求めるチームには良い選手です。

おそらくマジックがそれなりの対価を要求するので、トレードは成立しないと思いますが、来オフにはFAで登場するのでそこそこの金額で求めてくるチームはありそう。スピード不足で守れそうにないのでウエストのチームは敬遠するでしょうが、イーストだとかなり活躍してくれそうです。ミルサップを放出するならナゲッツというのが1番面白そうですが。あとはシクサーズかな。ストレッチ5としてはエンビートより上なのでベンチに最適。

 

予想を上回るマジックの勝率は、予想外に今シーズンもチームの中心だったブセヴィッチが、予想以上に活躍していることから生まれています。アメリカに渡ってセンターとしての強さを身につけてNBA入りしながら、ユーロ系らしいスキルフルなプレーが花開いてきているのが今のブセヴィッチ。

アーロン・ゴードンは力強く「プレーオフを目指して戦う」と明言していますが、そのためには第5週のプレイヤー・オブ・ザ・ウィークに輝いたエースであるブセヴィッチの大活躍は欠かせません。そしてプレーオフに導くとなるとサラリーも上がりそうですし、チーム事情から来シーズン残留するかもわからないので、インサイドのプレーメイカーを求めるチームのファンはそんな視点でマジックをみても面白いかもしれません。

 

変化するブセヴィッチ” への6件のフィードバック

  1. チーム一の古顔で、見合う活躍をしながら、若いビッグマンばかり入ってきてトレードの噂が耐えない…考えてみると可哀想…
    しかし、ブセビッチ在籍の間にPO進出が無いのも事実なので、この活躍を「トレードの駒として」来季に繋げて欲しいです(笑)
    インサイドはゴードン、アイザック、バンバで固めてほしいので、もしウォールとのトレードが有るなら、ブセビッチ&フォーニエでなんとかお願いしたい!
    今期の好調も喜ばしいものの、やはりまだ将来への期待に目が向いてしまうチームです…

    1. フォーニエはサラリーが高いだけでなく契約年数が長いので、よほどフォーニエを欲しがるチームじゃ無い限りはトレード成立しないでしょうね。
      ブセヴィッチならFAに向けてサラリー削減したいチームに向いていますが、そうなると本人は大変。出戻りマジックなんてことも可能ですが。
      フロントが将来なのか、今なのか、どっちを重視しているのか明言していないですよね。

  2. スティーブクリフォードって言うほどインサイドゴリゴリじゃないじゃん〜とかブセビッチのジャンパー調子良いな〜くらいにしか思っていませんでしたが、データを並べられるとこれほどまで変化あったとは、驚きです。特にオフェンスリバウンドの効率の良さなんて考えたこともなかったです。観戦眼を持ちてぇです。笑
    勝つのは嬉しいけれどブセビッチにフォーニエにオーガスティンにテレンスロスと一向に若手の名前が出てこないのがなんとも。なお育てられるかは別の話

    1. HCは極端にブレましたが、それがちょうど良いくらいの着地点にはなっていますね。ホーネッツも別に3Pが少ないわけではなく、インサイド渋滞を起こしていた問題なので、そもそもヴォーゲルにスペーシングを教え込まれたチームには良い感じに。

      しかし、もう1つのベテラン重用問題は解決する雰囲気は・・・

  3. キングスやマジックは今勝負したい現場と未来に賭けたいフロントってイメージです。
    イェーガー解任論とか以前出てたし(好調なとき)

    1. マジックは昨シーズンがHCは未来も含めてチーム設計しているけど、フロントは若手を集めてこない感じでしたよ。
      キングスは若手を集めたけどディバッツが30勝みたいな数字を出したり、ベテランを補強したりと、なんかよくわかんないです。
      結論はどっちもよくわかんない。

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