クリッパーズ理論

リバースには否定的だけど、その戦い方は興味深い

◉銀のニワトリ達

クリッパーズには金の卵はルーキー達くらいしかいないけど、銀のニワトリだらけだと書いたのが7月だったかな。当時は銀のニワトリにソーンウェル、エバンス、CJウイリアムスを加えず、コメント欄で指摘されたけど、「ソーンウェルに少しプレータイムがあるくらい」という心の中の予想も当たっており、その内容を訂正する要素は何もないのだけど、ちょっと予想と違う事もあるのです。

それはクリッパーズの戦い方。悪い言い方をすると

「層の厚さを活かしていない」

間違いなくリーグトップクラスの分厚い戦力なのだけど、頼られるのはルー・ウイリアムス、ガリナリ、トバイアス・ハリス、モンテロズ・ハレルにSGAかベバリーを加えた5人。エイブリー・ブラッドリーがケガが多いこともあって、基本的には主力の5人で戦い、間を他の選手で埋めています。相手の特徴に合わせているような雰囲気は余り感じない。

テオドシッチはほぼ戦力外で、ジェローム・ロビンソンも出番が少なく、ソーンウェルとバーアムーテはケガなのかローテーションに入っているのか、クリッパーズの追っかけでない身としては毎試合困ってしまうし、お気に入りのスコットはトバイアスの繋ぎ役でしかなく、ゴータットとマルヤノビッチはまぁいいか。それなりに出ているからね。

これらの現象は、特にベンチから出てくるルーとハレルで問題が起きやすく、試合が接戦になってしまうと3Q中盤に登場してから試合終了までプレーし続けることに。そのために失速してしまうシーンを見かけています。

ネガティブにみるとこんな感じのクリッパーズの戦い方は、ポジティブに変換するとちょっと面白い。選手層と連携力の銀のニワトリを集めて勝負していくのは『ペイサーズ理論』だけど、同じかと思っていたら特徴がとっても違うのが『クリッパーズ理論』

 

◉スターターは強い

仮にスター選手がいないクリッパーズという見方にしておくとしたら、スターが並ぶウォーリアーズやウルブズに比べるとどうしても劣ってしまう。しかもスタートで出てくるセンターはゴータットで、かなり問題があるんだ。スターター同士で比較したら勝てないのがクリッパーズだし、そこにハレルを持ってきたって、どこまで変わるか分からないのも確か。

しかし、相手の方が強いとしてもバスケはリズムのスポーツで、毎回必ず得点差が生まれるわけではありません。短い時間で区切ってみると1本のシュートが決まったかどうかでしかなく、それはスターが多くても少なくても、簡単に違いは出てこない。

クリッパーズのスターターには必ずベバリーがいて、ブラッドリーも出場した9試合は全てスターター。つまり悪夢のディフェンスコンビでリズムが生まれないようなプレッシャーディフェンスをしてきます。あるいはスティールからの速攻が出ればクリッパーズペースに持ち込むことも。

 

〇1Q/試合の勝敗

1Qリードした試合 7勝1敗

1Qビハインドの試合 1勝4敗

1Qにリードすれば勝てるという事よりも興味深いのはリードした試合の方が多いこと。そこが弱いはずなのにリードしているからこその好成績です。

 

〇Q別得点/失点

1Q 28.9/27.4

2Q 31.4/30.3

3Q 25.8/25.1

4Q 28.7/28.0

失点数がリーグ20位のクリッパーズは、実はスターター同士が顔を合わせる1Qと3Qに失点が少ない。少ないと言えるレベルかは微妙だけど、まぁ少ない。同時にリーグ5位の得点だけども1Qと3Qは少ない。4Qも少ないか。

というわけでクリッパーズ理論のスタートはスターター同士の時に「ディフェンスを優先している」ということでした。先行逃げ切り型のチームスタイルは意外にもディフェンスから始めるということに。なんでそうしているかというと、偶然そうしているだけの気もしていますが。

いずれにしてもクリッパーズから感じているのはスターターについては「負けない事を優先している」空気です。単にディフェンスの良い選手を並べているだけでなく、トバイアス、ガリナリ、ゴータットというビッグラインナップでインサイドも気にしているような。

 

◉ベンチは弱い

より大切なのはこちら。ルーとハレルが登場するとクリッパーズは一気にオフェンスに舵を切ります。まぁルーだからそこは当然なのですが、ハレルもまたリバウンドが少ないタイプのセンターであり、その一方で速攻に走りに走るし、それだけでなく自分でドリブル突破もしてしまう機動力にスキルも兼ね備えたタイプです。

その時に相手がセカンドユニットならば、当然オフェンスで上回るというのがクリッパーズ理論の根底にある気がするのです。銀のニワトリを集めまくった理由がここにある。ラプターズで猛威を揮った最強セカンドユニットの様に、各チームが工夫を凝らし始めた中でベンチポイントがリーグ最高を誇るクリッパーズ

〇ベンチポイント

チーム 55.2

ルー 19.4(1位)

ハレル 14.5(13位)

リーグ最高のベンチスコアラーであるルーに加えて、リバウンドも13位のハレルはブロック1.9は認定1位。2人で30点以上をコンスタントに稼ぐわけだから、多少優秀な6thマンがいるくらいでは太刀打ちできません。

相手がベンチメンバーだとルーのディフェンス面を狙われにくいのも良い部分。そこまで強力なオフェンスマシーンを用意しているチームが少なければ、わざわざルーを狙う組織力があるチームも珍しい。特にシーズン序盤だと連携も煮詰まっていないので、より難しいのです。

クリッパーズは最強セカンドユニットではないけど、最高のコンビがいます。ここでオフェンスに針を振り切って得点ラッシュを生み出しに行くから、これまた厄介なチームに。ここまで前半終わって負けている試合は僅かに4試合のみ。守ってから強烈に攻める事で先行するクリッパーズでした。

 

◉ベストメンバー

3Qのクリッパーズは更に強く、負けた試合は3試合のみ。なお2試合がサンダーで△37点と平均を大きく落とされています。酷いオフェンスをしておいてから逆転するのが好きなサンダー。実に11試合でリードを奪うQなのですが、2桁リードをとれたのは1試合のみと爆発することもないのでした。

4Qは逆に8試合で負けており、リードを奪ったのは5試合のみで全て勝利。しかし2桁リードが3試合もあります。つまりは爆発させてしまうのが4Q。といっても逆転したのは1試合のみで、残りはほぼ逃げ切っただけのガベージタイム多し。

つまり4Qの勝負においてクリッパーズは負けているということ。冒頭の悪い部分が出ているというか勝負を賭けて各チームが工夫してくる中では勝てていないと言えます。1Qや3Qの序盤と違い、試合の決着がつくので、そのためにリスクを負ってでも仕掛けてくる相手に対しては、そこまで有効策を見いだせていない現状は

ベストメンバー同士では苦しい

という事情も垣間見えます。その一方でオーバータイムの2試合は共に勝利しており、この時に効力を発揮するのがルーとハレルのプレータイムが短いこと。オーバータイムと言うことで相手のスターターが長くなるのに対して、途中出場に過ぎないルーとハレルは35分を上回るケースは稀です。

 

要するにクリッパーズの戦い方は相手とまともにやり合ったら力負けするため

ベストメンバーの5人を分散して起用する

という形です。正しくはブラッドリー含めると6人ね。純粋に強いという一面もあるのだけど、そこに加えて相手と正面衝突しないことを求め、ディフェンスとオフェンスの強弱をつけて戦えているのでした。それがクリッパーズ理論。

 

◉ロブシティ

うーん、試合を観ると面白い要素はあるのだけど、書いていくのはやっぱり難しいね。あまり対戦相手との合わせを意識している様子はなく、自分達の事情が重要視されている気がするから微妙なのですが、ここまで見事に結果を残しているし、強弱がついてくるのが非常に厄介なチームです。

で、面白いのはこれがクリッパーズだってこと。なんせ2シーズン前までのロブシティは、ウォーリアーズと遜色ない結果を残すスターターを抱え、高いレーティングを誇りながら、レーティングの割には勝てないチームでした。9勝5敗のスタートはロブシティ時代くらいの勝率なのですが、戦い方が全く違うという事実。

試合内容も足が止まってのプレーが多かったのが全員が連動していくし、速攻に走るしで全く違うのだけど、戦略も違ってベストメンバーを分散させています。一方で先行逃げ切り型とかは割と似ているような。

 

もう一歩進化できそうなクリッパーズ理論ですが、ペイサーズも同じように層の厚さで押し切るようでいて、オラディポを中心とした普通のローテーションで勝っていたし、まぁ何というか変なことをし過ぎるのも良くないのかもね。ある意味、普通なリバース。

銀のニワトリが多くて触れるのが難しいクリッパーズ。触れてみると面白いけど、やっぱり書きにくいクリッパーズでした。

 

クリッパーズ理論” への12件のフィードバック

  1. 今年のオフはFA氷河期でしたけど、ルーとハレルを合わせて単年14ミリで、かつ複数年契約で確保したフロントは優秀ですね。
    もしかしたらレイカーズより未来が明るいかも。

    1. ムダにお金を使わない大切さが各チームに徹底されるようになってきたので、やりくり上手は大切です。しばらくはレイカーズ優位ですが、クズマ達がルーキー契約終わると様相は変わるのかも。

  2. リバースの監督しての評価は知りませんが、クリスポールやレディックなど主力がいなくなったチームを低迷させずに再建できる手腕はすごいと思います。GMとかの方が向いてるんですかね。
    ただ、優勝できるチームではなく、強いチームをつくるのが上手いという感じ。なんとなくわかりますかね?

    1. 逆でリバースがフロント職を失って他の人たちが担当するようになって成功しました。リバースが好きそうではない選手を集めて成功してますね。

  3. ここ数試合マリアノビッチとテオドシッチの出場がありませんがこの傾向は続くと思いますか?
    テオドシッチは仕方ないとしても、マリアノビッチはピンポイントでも出してくれないかな~と思っています。

    1. ピンポイントをどこと捉えているか次第ですね。ゴータットが働き悪くなってから出番の気がします。
      センターの使い分けはイマイチよくわからない。

  4. 記事と関係ない話題で恐縮ですが、ホーネッツ接戦に弱すぎて気の毒になってきます。
    ケンバの心が折れないといいんですが・・・

  5. 今年のLACってスターはいないけど例えば自分の贔屓チームの弱い所にこういう選手がいたら良いのにって選手が集まってる感じがします
    コーチによって戦略とかスタメンとかかなり変わりそうで面白そう

    1. そういう面白さを期待していたのですが、チームが軌道に乗らないと、同じ形で行くしかないようですね。
      トレード対象としてサラリーも手頃な選手が多く、補強したいチームからは狙い目だと思います。

  6. リバースって不思議ですね。ロブシティ時代を見る限り、優秀なHCとは思えないのに、まだ職に就いているし。LACのHCに就任する時も、指名権とトレードというあまり聞かないケースだから余程優秀なHCなのかなと当時は思いましたが。BOS時代に優勝して名将扱いになってる気がしますが、たぶん戦術系ではなく、人情系のコーチなのかなと。KGにも「ドックはBOSの心臓だ」と太鼓判を押されてましたがあくまで「心臓」であって「頭脳」ではないということかな?って思ってます。

    1. 球団全般の役割を与えられていると機能しなかったわけで、心臓なんでしょうね。戦術的な良さは感じないけど、選手が自由にやるから不満も少ない感じです。まぁベンチメンバーは常に不満を抱えているチームでしたが、今はプレータイム配分されているので、ある程度は納得しているでしょうし。
      人情系のコーチに息子を与えたのが全ての失敗だったような・・・。

whynot へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA