ドゥエイン・ケーシーinトロント

昨シーズンのコーチオブザイヤーは素晴らしいシーズンを送りながら、またもプレーオフで惨敗を喫し、ラプターズのHC職を失うことに。しかし、新たなHCを探していたピストンズへ。そのケーシーがトロントに戻ってきた試合

今シーズンもラプターズのプレーぶりは素晴らしくHC交代の意図を強く感じます。ケーシーの時代から培われている誰もがハードワークし、アンセルフィッシュなプレーを繰り返すカルチャーはそのままに、新たにもたらされたのは試合毎にスターターは交代する柔軟さ、パッシングゲームとエースを中心にした形の使い分けで、昨シーズン以上にベンチメンバー全員が躍動することでリーグ首位を走っています。

一方のピストンズは開幕直後はグリフィンの役割を整理したことで大活躍を促し、それでもギリギリの勝利を手にしていました。その内容はドラモンドとグリフィンには強い負荷をかけながらも、全員が絡むことを求め、勝負所ではイシュ・スミスのゲームコントロールからウイングを使っていくことに。グリフィンの大活躍があっての勝利ではあるものの、エースに求める仕事量は多くてもエースに頼るわけではない形を探してきました。

 

◉チームワークと献身性

この試合でもスタートから素晴らしいチームワークを見せるラプターズ。ディフェンスで誰かがボールに触ってコースを変えると、直ぐに次の選手がルーズボールに飛びこみ、スティールすれば後ろから3人目4人目が確実に走ってくる。ディフェンスが2人寄ってくれば必ず誰かがカッティングしてきてイージーシュートへ。そしてインサイドの人数が増えるとコーナーで待つ選手へキックアウト3P。

アンセルフィッシュやチームワークの良さというだけでなく、ベースにあるのは戦術理解度の高さとハードに動き続ける献身性。それを新加入のモンローまでしっかりとこなすことで成立する強いチームは、ラウリーとレナード、そしてベンチからはアヌノビーによる個人のスーパープレーも混じるからより脅威に。

 

しかしピストンズにだって圧倒的なリバウンド王のドラモンドにエースのグリフィンとタレント力があり、そしてケーシーはそこにチームワークと献身性をもたらすことに尽力しています。ピストンズのスターターにはグレン・ロビンソンが。ペイサーズからやってきたガードは決してスーパープレーを連発するわけではないが、広い範囲をカバーするスピードと運動量でルーズボールを手にしていきます。

そしてチーム全体が非常によく走るように。フィジカルな仕事が多く消耗も激しいグリフィンとドラモンドを支えるように周囲の選手達が走って行き、トランジションでディフェンスを引きつけると最後にフロントコートに入ってきたグリフィンがフリーで3Pというシーンも出てきます。スタッツではグリフィンが決めているだけではあるけど、ベースにあるのは周囲の運動量。それだけでフリーにしてしまうのがチームワークと献身性。

まだまだラプターズには遠く及ばないけど、開幕当初に比べるとハッキリしてきたケーシーによる全体の変化。ゲームハイの8本の3Pを放ったグリフィン。開幕当初は単なる個人の好調さで決めていた3Pは次第に周囲の献身性から生み出されるように。

 

◉エースがすべき仕事

今シーズンのピストンズの特徴はペイント内失点が多いこと。昨シーズンリーグ10位の失点数は26位まで落ちています。その代わりに求めるのは3Pへの厳しいチェック。被3P%はリーグ2位にジャンプアップし、27位だった被アテンプト数も7位まで上げるなど明確にアウトサイドを止めに行きます。それだけ追いかけまわす運動量を求めているケーシー。

この試合もペイント内は70失点と大きな問題に。インサイドで求めるのはドラモンドとグリフィンが個人能力で止める事。しかし、どうしても止めきれないというか、次々にカッティングしてくるラプターズにたじたじになれば、前に出すぎたグリフィンの裏のスペースをシアカムがアリウープ

それでもグリフィンとドラモンドは12リバウンドずつ抑え、2人でチームの62%のリバウンド。昨シーズン43.8本だったリバウンド数は48.4本まで伸びており、2人で26.5本と圧倒的なリバウンド数を誇ります。抑え切れていないペイント内とそれでもリバウンドで奮闘する2人のエース。

 

前半65点だったラプターズのオフェンスは、後半になると39点と失速します。そこにあったのは前半9本奪われたオフェンスリバウンドを3本へと減少させたこと。前半に悩まされていたのはドラモンドがアウトサイドへ引き出されてしまうとリバウンドが弱くなること。もしくはドラモンドがリバウンドに参加することでアウトサイドが空いてしまいフリーが生まれること。つまり本来はもっとグリフィンがとるべきだったシーンが多発していました。

後半になるとグリフィンが9つのディフェンスリバウンドでこの問題を解消します。誰もがリバウンドに飛びこむラプターズに対して、その多くをグリフィンとドラモンドに頼っているピストンズでしたが、相手のオフェンスへの対応が悪かったのが欠点。この試合も前半にシアカムにやられたい放題だったグリフィンが自分がこなすべきベーシックな仕事を見つめ直すかのような修正をハーフタイムにしてきたケーシー

「競り合いでのリバウンド」数で今シーズンもリーグ首位を誇るドラモンドは、この試合も12本の内10本が競り合いで奪い取ったもの。しかし、ラプターズもバランチューナスとモンローでフィジカルな戦いで一歩も引きません。一方でグリフィンは競り合いでは2本のみ。後半の改善はグリフィンの改善。しかし、常にフィジカルファイトしていたのがドラモンド。

インサイドを2人で守り切れるかどうかは、ピストンズの明暗を握ります。

 

◉ケーシーの采配

しかしベーシックな改善は、あくまでもベーシックに過ぎず、ラプターズは前半に得た二桁リードを守っていきます。少しピストンズに流れがいくとすかさずラウリーとレナード、そしてアヌノビーの個人技で反撃し、流れを一向に渡してくれないまま3Qが終わります。

様相が変わったのは3Qにユニフォーム姿で出番を待ちながら、結局4Qまで声がかからなかったスタンリー・ジョンソンが登場してから。コーナーでプレッシャーを受けながら3Pを連続して決め、残り5分半で1点差まで縮めます。

当然、この前後でラプターズが頼るのはカワイ・レナード。両ウイングでアイソレーションを仕掛けるオフェンスセットを組まれて個人で仕掛けていきますが、これをスタンリーが止めていきます。背中越しの間合いを詰めるとレナードが肘を使ってオフェンスファール。正面で向き合ってドライブのためのハンドリングに手を出し2つのスティール、ペイントまで進入しても簡単に打たせずトラベリングを誘発します。

この試合レナードとのマッチアップ回数は17回だったスタンリーは、なんと5つのターンオーバーを全て4Qに促したのでした。3回に1回はターンオーバーになるレナード。そこまでピストンズが連続得点するとエースの力で止めていたラプターズが、そのエースをしっかりと止めきられてしまいます。

 

それでもラプターズは、残り2分でピストンズに4点のリードを許しながらも、ラウリーとレナードが決めきって残り38秒で同点に戻します。

ピストンズが託すのはグリフィン。これをアヌノビーが最後までプレッシャーをかけてシュートを落とさせます。この場面までアヌノビーとレナードが交代でマークを担当しており、グリフィンもディフェンスの良い2人のどちらかを選ばざる得ませんでした。

ラプターズはタイムアウトでニック・ナースの指示をラウリーが修正しながらオフェンスを決めていきます。ボールをレナードに持たせてフロントコートに運ばせると、ラウリーが動き回って空けたスペースに、そのままドライブしていくレナード。しかしスタンリーの前に信じられないようなドリブルミスで残り2秒でピストンズボールに。

 

タイムアウトのピストンズは3人を交代させ、ガード4人とグリフィンにします。それをみたラプターズは直ぐにバランチューナスをヴァンフリートに交代。HC同士の細かいやりとりはシアカムを残したニック・ナースに軍配が。意表を突いてカルデロンからグレン・ロビンソンへのアリウープを選択しますが、これを残っていたシアカムが追いついてブロック

まだ残り1.2秒あるものの、タイムアウトがなく選手に任せるしかないケーシーは再びドラモンドを戻し、ナースもバランチューナスを戻します。選手が入り乱れて動いた中でリングに向かっていくドラモンドにマークが寄った瞬間に、その逆をとったブルロックへスローインが渡り、試合を決めるシュートが決まったのでした。

4Qにチームを救ったスタンリーのプレータイムは11分58秒。つまり最後の2秒だけ交代したのです。そこで出てきたブルロックが決めきった流れは、グリフィンとドラモンドを主役にしながらも、違う選手で勝負を決めたこととなり、開幕直後の好調さとはひと味違う勝利になったのです。

 

ケーシーがラプターズのHCをクビになった理由は勝負所での采配に疑問符がついていたから。

時にデローザンを全く起用しないなどの大胆な方針は成功していたものの、プレーオフでは細かい采配が次々に裏目に出ていました。この試合はスタンリーに任せつつ、最後の場面では第3PGのカルデロンを起用するなど、細かい部分が勝利に繋がっています。

とはいえ、最後の場面ではニック・ナースはタイムアウトを挟んだプレーを読んで止めきっています。その一方でエースに託す形を見事に止めきられ、逆にケーシーが選んだブルロックに決めきられたのです。

どちらのHCが優れていたかを示すのは非常に難しかった采配の妙でした。

 

 

ドゥエイン・ケーシーinトロント” への4件のフィードバック

  1. レジーブロックは昨シーズン、3Pシュートの確率が45%近くあったと思いますが今シーズンはアテンプトが増えてるけど32%あたりに落ちこんでるのって不調だったりするんですかね?

    1. 昨シーズンが良すぎただけの部分と、チームとしてももっとパッシングが早くて打ちやすかったのだと。難しいシュートが増えたし、難しくても決めるようにステップアップを求められているのかな。

  2. 昨シーズン一緒に仕事をしていたのですし、メンバーは変われど手の内はお互いによく知っているのでしょうかね

    両チームの采配と思惑がぶつかり合う試合は見ていてワクワクします

    1. 細かいプレーを読めなくても、この場面で何を選択しそうか、ってのはバレているでしょうね。
      でも最後のプレーはエースを囮にしていますし、スローインもカルデロンとちょっと毛並みが違ったような。それがブルロックを空けてしまったのかな。

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