ブレイザーズに負けて2敗目を喫したバックス。勢いなのか、実力なのか。
開幕からブーデンフォルツァー効果が発揮されまくり、連勝街道を突き進んだバックス。セルティックスの24本の3Pには沈んだものの、直ぐに持ち直して今度は自分達がチーム記録の3Pを決めてしまったのでした。
一気に流行系のチームスタイルになったバックスは昨シーズンのロケッツ並に打っています。
〇3Pアテンプト 41.1(2位)
好調を支えるのはいうまでもなく3P。昨シーズンは24.7本でリーグ25位だったのに明らかに違いを感じさせてくれています。ただしエースであるアンテトクンポはあまり打たず、周囲の選手が積極的に打つのは「アンテトクンポ」システムでもあるのです。
ロケッツはダブルPGの個人技をベースにして誰もが3Pを打つ形を好んだのならば、バックスはアンテトクンポの強さを活かして周囲に打たせていきました。ただし、それは3Pが大切なのか、アンテトクンポが大切なのか。
今回はバックスの好調について触れるのですが、題名は何故かブルック・ロペスになっています。途中で軌道修正することにしたんだ。というのも3P決めたからって本当に勝てるようになるのかって話です。そんな簡単なら誰も苦労しないわけです。
まずは勝っている要因を考えていきましょう。
〇レーティング
オフェンス 114.1(5位)
ディフェンス 102.1(3位)
実は忘れてはいけないのはディフェンス面の改善。オフェンスが目立つ反面で、ディフェンスに何が起きているのか。もしもこのレベルのディフェンス力をキープ出来るのであれば、バックスはイーストを制する力があります。なんせオフェンスはアンテトクンポを止められないチームばかり。
この記事に取りかかったタイミングでブレイザーズに負けましたが、その理由はアミヌが個人勝負してしまうディフェンダーだったためです。圧倒するアンテトクンポの話はそのうち書くとしても、普通は止められない選手であり、オフェンスはなんだかんだ各試合でそれなりにこなしてしまうそうです。
だからまずはディフェンスに触れることで、「勢いなのか、実力なのか」ということを考えていきたいのでした。
https://youtu.be/r2GL9qEFiM0
〇試合のペース 97.1→105.2
ブレイザーズに下げられたように10試合だと自分達だけでなく相手の影響を強く受ける数字ですが、ここまで上がっているのだから間違いなくペースを上げているわけです。その理由は言うまでもなく3P
〇3Pアテンプト
ショットクロック9秒以内 9.2本 → 17.5本
ショットクロック17秒以内 9.8本 → 18.1本
ショットクロック18秒以上 5.4本 → 5.0本
積極的にアウトサイドから狙うというのは、早いタイミングでも迷わないと言うこと。全シュートの内ショットクロック9秒以内に打ったのが43%あり、ごちゃごちゃするなら打ってしまえという雰囲気です。オフェンスを作り上げてしっかりとシュートチャンスを作る方法を採用していた昨シーズンに対して、トランジションの中で空いたら打つのが基本。それは結果的にショットクロックがなくなってからの悪いシュートセレクションを減らす目的でもあります。
ただし、これだけで勝てるようになるなら苦労しません。例えば弱いチームがこの戦術を採用し、「マグレで勝つ」ような機会を増やすことはありますが、強くなるためには不安定な戦略になりがちなのでリスクの方が上回ってしまいます。
そうではなく高い勝率をキープしていくバックス。マグレを回避したのは以前からあるバックスの特徴でした。
〇速攻での失点
10.1(3位) → 10.9(3位)
トランジションディフェンスの強さが売りというか、オフェンスリバウンドの人数が少ないのが特徴でしたが、引き続きしっかりと守っています。ロングリバウンドになりがちな3Pはカウンターのリスクが増すのですが、そこを抑えればオフェンス面のメリットが際立ちます。
「バックスは3Pでオフェンス力が向上した」ということは分かっていることであり、それが勝利に結びつくのはディフェンスを維持することが出来ているからです。良さを残せるHCは強い。
〇オフェンスリバウンド率 24.4%→26.1%
僅かに向上しているリバウンド率はアンテトクンポによるもの。それだけだとアンテトクンポが凄いみたいですが、実際には昨シーズンはセンターの役割だったのをアンテトクンポが担当している構図です。つまりはロペスとイリャソバ効果。ヘンソンまで3Pを打ちだすストレッチ5の採用で実質はセンターになっているアンテトクンポ。しかも普通のセンターではスピードに対応出来ないので、マークを担当するのはフォワードの選手です。ならば高さで勝てるから特別な存在。
ここを抑えるディフェンス力のある選手がいないチームだとかなり苦しんでしまうのでした。頑張ろうアーロン・ゴードン。目指せアンテトクンポの天敵。
トランジションディフェンスを維持しながら、オフェンスリバウンドの確率を上げたわけで、非常にわかりやすい計算式にして、アンテトクンポの超能力を使う道を探した感じです。アウトサイドから打たせるよりも、得意かつチームオフェンスもディフェンスも向上させる得意技を使いやすくしようぜってね。
〇ペイント内失点 47.3(23位)→39.4(2位)
速攻を食らわない事情がありながらペイント内で失点を重ねていたバックスですが、今シーズンは劇的に改善します。ここでも大きいのはアンテトクンポの存在感とロペス&イリャソバの加入。
ただし、この数字については出来すぎ疑惑も大きく、例えばセルティックスは22点しかとりませんでした。なんせ3P決めまくったので。間違いなくインサイドのディフェンスは向上し、ヘルプローテーションが早くなっていますが、だからといって40点を割るのはさすがにね。
ちなみにブレイザーズも30点しか奪っておらず、負けた試合でペイント内失点が少ない。またウルブズやラプターズはオフェンスリバウンドを奪いまくっており、要するにイージーショートを外しすぎていました。
〇被3Pアテンプト
27.1(7位) → 38.4(30位)
ペイント内を抑えた代わりに、わかりやすくアウトサイドから打たれまくっています。7位から30位にダウンって言うのは劇的な変化。それは被FG%で逆転現象が起きているからです。
〇被FG%
46.8%(20位)→41.6%(1位)
〇被EFG%
58.8% → 54.8%
なのでインサイドを固めて、3Pを打たせる戦略に移行したことというだけ。そしてそれは4%の改善という大きなメリットになったということ。
被FG%は素晴らしいのですが、それは3Pが決まらなかった相手チームの関連性もあり、まぁ総じて観ると良い方向に出ています。難しいのは被3P%が良い現状が偶然的な要素を含みそうなこと。バックスとの対戦でウルブズ、マジック、ラプターズと3チームが30%を下回っており、それはさすがにセレクションが悪いのかシュートが下手なのかって感じ。どうしたラプターズって試合だったし。
対戦相手の偶然もあるけどインサイドを固めて、しっかりとシュートチェックに向かうようなディフェンスの構築は出来てきています。
珍しいのは
・自分達は3Pを打ちたい
・相手には3Pを打たせたい
という相反する戦略を構築していること。それってむしろオフェンス面は
アンテトクンポがインサイドで圧倒的に強い
ということの方が大切なんじゃないかな。大切なのはあくまでもインサイドの攻防であり、それを有利にするための3Pでしかない。
〇リバウンド率
70.9%(30位) → 75.3%(6位)
もうひとつ劇的に改善したのがリバウンド。インサイドを固めるのだからとりやすくなったのが1つ。しかしリバウンドをとらないセンターのロペスになったのだから、そこはマイナスっぽいのだけど実際にはよく働いているロペス
〇ロペスのボックスアウト 9.7
25分のプレータイムながらリーグ8位のボックスアウト数を誇るロペス。相手のビッグマンをしっかりと押し出してくれているわけです。ちなみに7位はもっとプレータイムが短くリバウンドは強くないアデバヨ。かつては見えなかった貢献度。
〇ロペスのコンテステッドシュート 11.1
これは要するに相手がシュートを打つときに近くにいた回数なので、ブロックできなくてもプレッシャーをかけたかどうか。こちらもリーグ8位のロペス。
つまりバックスのディフェンスはペイント内失点が減り、リバウンドが強くなったわけですが、地味に貢献しているのがブルック・ロペスであり、派手に貢献するアンテトクンポを助けてくれているのでした。そして今回はバックスの回でありながら、いっそのことブルック・ロペスの回にしてしまうのでした。
2008年ドラフト10位のジブリ大好きブルック・ロペスはネッツのエースとして君臨していましたが、その中身は普通のセンターとしてポストプレーをしていました。ただツインズのロビンがインサイド担当として育ってきたからか、得点力はあるけどリバウンドが弱かった。スピードもないから現代的じゃなくなってしまったのでした。
そこにやってきたのがケニー・アトキンソン。魔改造されて突如として3Pを打つセンターに。そしてストレッチ5への進化によって他のチームでも活躍できるようになったのでした。ロペスの3Pは35%位の確率なので素晴らしいって訳じゃないのですが、そもそもFG%があまり高くなかったので、3Pを決める事でEFGが向上しています。現在は3P38%と好調なのでキャリアハイに。
〇リバウンド 3.0
割とふざけた数字だよね。弱いにも程がある。だけど、これがアンテトクンポと相性が良かった。昨シーズンはロンゾとの相性が良かった。
〇レーティング ロペス/チーム
オフェンス 119.3/114.1
ディフェンス 100.7/102.1
ご覧の通り、個人スタッツはたいしたことないのに素晴らしい貢献度を誇るロペス。まぁアンテトクンポと一緒に出ている時間が長いからだけど。ディフェンス面の貢献は前述の通りで、サイズのあるセンターとしてインサイドで働いています。
しかし、この数字からはオフェンス面の貢献度が素晴らしい。25分と試合の半分以上プレーしている選手が119という数字をたたき出すなんて、お前はどこのステフ・カリーだ?と言いたくなります。
※昨シーズンはチーム113でカリーが120
10試合なので偶然の要素も大きいのですが、少なくとも8勝2敗という数字にはロペスの貢献度が大きいのでした。バックスが変化した最大の要因はロペスの存在です。
アンテトクンポの強さを最大限に生かすため、オフェンスでインサイドを使わないタイプのセンターが欲しかったチーム事情にあったロペス。そのシュートの数字は非常に面白い。
〇シュートアテンプトの割合
キャッチ&シュート3P 69%
プルアップ3P 7%
ノーチャージエリア 14%
3Pが多いだけでなく、76%を占め、しかもほぼキャッチ&シュートなんて他にいるのだろうか。キックアウト3Pの徹底に置いて、シュート確率を無視したら、これほど役に立つ選手はいません。チームとしてボールムーブが上手く行ったときではなく、出し所がないときほどロペスに回ってくるイメージだし、困ったらロペスに出しておけば打ってくれるから、逃げ道が出来ているバックス
ちなみに昨シーズンはキャッチ&シュート3Pの割合は41%なので、ロペス自身もバックスの戦術へ対応しています。3年前は普通の典型的なプレーをするセンターだったのに、他に類を見ない所まで進化してきてしまった。
また結構珍しいのは、コートのどこからでも打っていること。割とセンターだと固定位置から動かないのですが、ロペスは右コーナーでも左コーナーでも登場してきます。平均23.8本のパスを受け取り、そのうち6.7本を3Pにしてしまうのは単にマークマンがルーズなだけではなく、パスをもらえるポジションに移動していると言うこと。あと的が大きいよね。
ペイント内得点が3.2点しかないロペスですが、ロペスがコートに居るとチームのペイント内得点が増えます。これを48分換算して、センターの控えヘンソンと比較すると
〇48分あたりのチームのペイント内得点
ロペス 56.7
ヘンソン 47.0
ヘンソンの時間はアンテトクンポがいないことが多いため、2人の差ってわけじゃないのですが。アンテトクンポの次に影響を与えるのがロペスの存在になっています。というかアンテトクンポとのコンビじゃないとあまり機能しないかもね。
そんなわけでロペスの獲得はとっても意味があったというデータでした。
〇ミドルシュート 17.3本 → 6.4本
わかりやすい変化をしているバックスは、ミドルシュートを極端に減らしてきました。ゴール下へドライブし、キックアウトして3Pをひたすら繰り返す形は、スマートとされる一方で対策も進んできています。その対策を採用させないのが、アンテトクンポ&ブルック・ロペスのコンビでもあります。
〇キャッチ&シュート3P
チーム 19.6 → 28.8
アンテトクンポ 1.2 → 0.7
チームとして大きく伸ばしたキャッチ&シュートですが、全体でスペーシングするのは昨シーズンと変更点はありません。前からやっていたよ。しかし、蚊帳の外になったアンテトクンポ。役割が違うんだ。そして加わったのが1人で5.9本も打つロペスでした。ちなみにヘンソンも2.1本打っており、2人のセンターで8本ということに。つまりそれって、チームの増加分の大半はセンターがもたらした変化と言うこと。
バックスの現在の好調さは勢いがもたらす部分も大きいでしょう。しかし、その中身を紐解いていくとブルック・ロペスを中心にした明確なる理由が存在しています。ポジションの役割変化がもたらす戦術変化なので、これがそう簡単に崩れるとも考えがたいのです。シュートの好不調などに勝敗が左右されても、バックスの今の戦い方はそう簡単にはぶれません。
簡単にはやらせてくれなかったブレイザーズ戦は、アミヌに苦労したアンテトクンポがいながら、その代わりにパスアウトしてのロペスが3P6/10と奮闘しました。それだけのアテンプト数になったのは、ロペスに預けておけば最後に打ちやすくなるから。便利な存在。
攻守にわたって良い数字を残しているバックス。キーとなるセンターのポジションに超強力なアンテトクンポという武器。それがどこまで通用するのか。そしてどのように進化していくのか。シーズン始まったばかりで既に形になってきただけに、次の一手にも注目しましょう。
ロペスファンとしては嬉しい記事です
ネッツを出されたときは怒りが込み上げたものですが、新天地で役割を得たのなら結果的に良かったです
年を取って「NBAはもういいかな」ってなったら日本に是非!
ネッツのバスケだと合わないセンターですし、あのままでは引取先もなかったでしょうから、アトキンソンの改造はロペスのキャリアを長引かせたと思います。それに答えてここまでプレースタイルを変化させたロペスも偉いな。
ロビンの方も変なチーム状態だけど、ゴール下を支え続けてますし、良いツインズです。
全く関係ないですけどマレーの記事拝見させてもらいました。
マレーのあの愛嬌?ある性格とそれに反したプレーのクレバーさは個人的には大好きです。
セルティックスはカイリーはかなり良くなりつつあるだけにヘイワードかテイタムが第2スコアラーとして安定して欲しい…ブラウンにそこを求めると負担が大きすぎるので。
ロペスのスタッツは本当に面白いですよね。スタッツだけ見るとリバウンドアシストも少ないし完全にピュアシューターにしか思えない。
オラディポに続いて、負けているのがセルティックスだという・・・。
ブラウンはディフェンス優先ですし、あのままで。
テイタムは自分で打ってばかりなので、やっぱりヘイワードしかないでしょうね。
おそらくそれ以上に問題なのはロジアー。ロジアーが移籍すれば、ハンドラーをスマートにして解決する気もします。
アーヴィングの契約延長が決まらなかったことで、ちょっと悩ましいエインジなのかも。
サイズがあるロペスが3P付近で待つ安心感ったらないですよね。ゴール下で詰まったら、高めのパスを放れば取ってくれるし。ノープランでヤニスやブレッドソー辺りはドライブするんで特にいい受け皿になってると思います。
割とブレッドソーにもブーデンホルツァー効果出てると思いますが、どうですか?
ブレッドソーは特にロペス効果を感じますね。ジャンプしてからキックアウト先を探すときありますし。
ブレッドソーにHC効果は出ていますが、ブーデンホルツァーからするとどうなんでしょうね。シュルーダーよりは良いのか、それともブログトンを頼っているのか。
ロペスがしっかりボックスアウトを行ってくれるおかげでセンターアデトクンボが活かされているんですよね。
イリヤソバもしっかり体を張ってくれますし、新加入選手のハードワークこそがバックスを支えてくれていると感じています。
余談ですが、
ロペスは1年契約、若手の成長は不可欠なのでメイカー・ウィルソン・ウッドには頑張ってほしいんですが…
誰かさんにいたっては国際試合で飛び蹴りしちゃう始末…無事育成成功するんですかね?
前に書きましたがメイカーは売り時だったと思います。これ以上バックスに残っても現状路線でしかないような。移籍して違う環境に行ったほうが未来がありそうな。
DJウィルソンは元気なんですか?今の戦術だとディフェンスを頑張ればチャンスはありそう。ウッドも同じく。
ロペスのような選手は他に見つけることが出来るのですが、ロペスほどの経験がある選手を見つけるのは難しいでしょうね。
3Pの確率が40%行かなくてもインサイドで身体を張れる方が重要なんだと思います。それを教え込むことが出来るのかどうか、という点でバックスは不安。
今期のバックスは見ていて楽しいし、オフェンス面では本当にうまくいっていると思います。ロペスの存在感は感じていましたが、数字で示されるとさらに納得です。
このままイースト制覇をねらっていると思いますが、ディフェンス面での不安がまだまだあります。敗れた2試合とも終盤のディフェンスが厳しかった印象で、特にブレイザーズ戦ではCJを止められなかった。
ライバルになるであろうセルティックス、ラプターズは、ブラウン、レナードを筆頭にエースディフェンダーがいて、そこの差が大きいかなと。
ディフェンス面での改善点など、ご意見があればご教示下さい。
ブレイザーズはCJが誰相手でも決めていましたが、もっと単純な話としてロペスを狙ってくるチームに大してどうするのかなと。
ここまではセンター同士の対決が多いですが、ミスマッチ作るの大好きチーム相手だと苦しそう。
ブレイザーズ戦で少し出していましたが、ゾーンの有効活用はあると思います。
少しずつ試してくるのではないでしょうか。ここでもアンテトクンポは非常に便利ですから。
アトキンソンのところにうちのビヨンボとカミンスキーを送り込みたい
そしてそのまま帰ってこないで欲しい
1巡目2つとブリッジスは付けてくださいね。