ホーネッツについて語る第1回
東のホーネッツに西のキングス。そういえばキングスは「フォックスの相棒がヒールドになったことでプレースタイルに変化が出てきた」と書いたのですが、よくよく考えると大学時代のフォックスは相棒になっていたのがホーネッツのマリック・モンク。オフボールで良く動くシューター系にして、自分でもドライブしていくタイプはヒールドと似た要素が多そう。ちなみにケンタッキーはNBA選手が同居しているのは普通。MKGもケンタッキー。
ルーキーイヤーから管理人がおもしろがっていたモンク。それはホーネッツでプレータイムを得られていない現状を嘆くことばかりでした。時に1人で勝利をもたらす活躍をしながら、次の試合では何事もなかったかのようにベンチに座り続ける状況は、大豊作だったルーキー達の中で存在感を無くしていくのでした。
何が面白くなかったかと言えば、ホーネッツ自体が面白くないバスケをしていたから。でも起用されないモンクというダブルパンチ。
しかし、どうだろうか。ジェームズ・ボレゴを新HCに迎え入れた今シーズン。モンクがベンチに座っていたって苦言を呈そうなんて思わないのです。ホーネッツについて書く事はいくつかあれど、まずはこのベンチに座るモンクの話から始めたいと思うのです。
そしてベンチに座っているからといって悪くない、というのは昨シーズン出場した74試合を全てスターターでプレーしたにも関わらず、今シーズンは10試合全てをベンチから出場しているマイケル・キッド・ギルクイストにも当てはまります。
というわけで今回の主役はホーネッツのベンチに座る2人の選手。本当はもう1人いるわけだけど、あれはもっと熟れそうで、売れそうだから次の機会にしますよ。
◉ベンチであっても主力
ベンチメンバーだからといって、その重要性がスターターを下回るわけではないのが、ボレゴがもたらした改革の第一歩。だから取り上げる2人の選手は、それぞれ20分以上のプレータイムを得ており、特にモンクはチームで4番目に長く出ています。しかし、今シーズンのモンクのポジションはSG固定であり、時にそこはケンバが務めるポジションなのも面白いところ。
首位を走るバックスと当たった開幕戦は、同じくHC交代で爆発的なオフェンス力を発揮する3Pチームにホーネッツは窮地に追い込まれました。そこでボレゴが選んだユニットはトニー・パーカー、ケンバ、モンクの3人を並べるスモールラインナップ。それはパーカーにゲームメイクさせ、ケンバがスコアラーとして躍動し、そして困ったらモンクに打たせる役割分担の採用でもありました。追いかける敷かない展開に置いて、出てくる必殺の3ガード!
そう、モンクに期待されている役割はオフェンス面での大活躍です。
一方のMKGに期待されているのは、モンクの逆にディフェンス面での大活躍。開幕戦ではスモールラインナップのセンター役を任され、マッチアップ相手はアンテトクンポ。それからサイズの差を問わず起用されていくMKGは、先日のサンダー戦ではウエストブルックのマークも担当しました。
SFながら3Pシュートがないという困った存在だった2012年のドラフト2位は、エースキラーという新たな役割を任されることになったわけです。加えて、その存在はラインナップの柔軟性をもたらしてくれました。ここまでゼラーやエルナンゴメスと変わらぬリバウンド数に、1.4ブロックは単にスモールラインナップだけでなく、インサイドディフェンスの強化にも繋がります。
MKGをエースキラーに指名しながら、MKGと誰を組ませるかでチームカラーを調整していく。ベンチから出場するからこそ、組み合わせの調整が利いているのです。
ちなみに以前に使い所のないMKGをセンターに改造しようと、こんな事を書いています。
個人的にはやるならセンターにします。良い例はミドルと合わせで勝負するフェイバーズや、まさかのセンターでスピードを活かしまくったグラント。その中間みたいなことが出来る気がします。フロアをスペーシングして合わせで飛びこむ。フォワードとしてはシュートレンジが狭いけど、センターとしてはむしろ十分なミドルを持っています。スモールラインナップで走れるし割とオフェンスリバウンドも頑張れます。
現代バスケではインサイドの方が適正がありそうなMKGですが、スパーズはそれを好まないし、何よりホーネッツはセンターを厚くしてしまいました。
前文はまさにそんな感じになっており、とにかく走り出しが通常のセンターよりも遙かに早いから速攻への移行が出来るようになっており、それでいてインサイドもスピードを使った合わせをしています。フィジカル負けしないからディフェンスでも十分な存在感がある。
予想と違ったのは最後のところ。スパーズ出身のボレゴですがスパーズではやりそうになり思い切ったラインナップを頻繁に使うし、補強したけどビヨンボは使わなかったり。マービンやブリッジスというインサイドで頑張れるタイプが他にもいたこともあって、ここまで予想外の使われ方で新たな価値を見出されています。
◉モンクがエースである意味
〇マリック・モンク
13.4点(チーム2位)
11.6アテンプト(チーム2位)
チーム1位はもちろんケンバ。モンクの役割はセカンドエースです。それはスターターのケンバと交代で出てきてセカンドユニットを引っ張る役割であり、勝負所ではケンバと並んで得点を奪うこと。ゲームレポートで時折書くとおり「もっと活躍しろ」というのは、プレータイムを考えたら多い得点であるものの、セカンドエースとしては物足りない数字だから。
モンクの良さは大きく2つ
・あらゆるパターンからシュートに持ち込むスキル
・オフボールでスクリーンを活用してのムービングシュート
シューター系の選手ではあるけど、そのシュートに持ち込む「パターン」が多彩なため、いろんなボールの貰い方が出来ます。リングに向かっていくシュート、ステップバック、サイドへのステップ、パサーから離れながらのシュート等々。ムービングしても決めるからこそシューターな訳ですが、その形も多彩なのは非常に重要です。
スピードとジャンプ力もあるのでドライブからのフィニッシュもあるし、パスを捌くことも出来るので引きつけてのエルナンゴメスパターンもお気に入り。パスはドSな感じのパスだけど。ある意味、昨シーズンはこれだけ出来ることが災いしてPGをやらされていました。言い換えれば「PGをするスキルのあるシューター」というのがモンクのスキルセット。それは普通のシューターのイメージとは少し違うわけです。
しかし、より興味深いのは後者の特徴。スクリーンを活用することが出来るのはチームオフェンスではとても重要で、モンクの得点は少なくともパサーとスクリナーを絡めた3人で生まれる得点であり、本人が30点とってもチームオフェンスの一部でしかないのです。
スクリーンを使う上手さは単にスクリナーでディフェンスを引っかけるだけではなく、スクリーンに関わる4人の動きの中から、最適な選択肢を選べるかどうかということです。モンクが動き回って他の選手がフリーになるケースがあることもとても大切。クレイ・トンプソンの匂いがするでしょ。
これらは言い換えれば「モンクの個人プレーではモンクの良さは発揮されない」ということです。ボレゴHCになって明確に違いが出てきたのが、この部分。チームとしてモンクを使っていく意識が高くなったために、モンクがボールに触れなくても意味のあるプレーが増えてきました。
〇ペイント内得点 43.7 → 48.7
〇3Pアテンプト 27.2 → 34.7
別にモンクが大きく関係しているわけではありませんが、チームとしてはその違いがしっかりと出てきています。3Pアテンプトを大きく増やしたのが特徴でありつつも、ペイント内も増やしています。平均得点が7点以上増えているので、まぁ全体的に良くなるものではありますが、アウトサイドシュートとインサイドプレーが効率よく混ざるようになってきたと言えます。
ハワードはいなくなったけど、ゼラーやエルナンゴメスがメインのセンターになってもゴール下でのFG%は62%をキープしており、オフェンス面の改革が上手く行っていることを感じさせてくれます。
モンクの役割は3P
プレーの印象だけだとそんなイメージを持たれてしまいがちですが、実はそれだけでは測れないのがオフボールでも仕事を出来ると言うこと。ボールを貰ったらシュートを決めることがモンクの役割ですが、そこに至るまでの変化こそがホーネッツのオフェンスが良くなった部分。
モンクに次ぐアテンプト数はジェレミー・ラムの10.5本で、その次にはバトゥームと並んで8.8本のトニー・パーカーが続きます。バトゥームよりも15分もプレータイムが短いのにアテンプト数で並んでいるわけです。
つまりホーネッツはケンバとラムというスターターの2人のガード、モンクとパーカーというベンチの2人のガード。同じポジションの選手達がシュートを打つシステムを採用しています。ポジション毎の得点バランスは昨シーズンの方が良く、ともすればハンドラー頼みになったのが今シーズン
〇アシスト 21.6 → 25.1
しかし、アシスト数は増え誰もが役割を果たすチームオフェンスになっているのです。ガード陣がどうやって得点するのか。そしてそのガード陣からどのようにオフェンスが展開していくのか。
アンバランスになって改善しているのがボレゴ流のオフェンスシステムなのです。
しかし、勝ちきれなかったサンダー戦のように勝率は5割をうろちょろ。明確に良くなったオフェンスといっても勝利を掴むためには、もう一歩の努力が必要。平均28点をあげているケンバが伸ばすべきなのか、平均13点のセカンドエースが伸ばすべきなのか。その答えは誰もが知っている。
ベンチから出場するモンク。しかし、その重要性はオフェンスシステムとしても、勝利に結びつける計算式としても非常に重要。ここまで5勝5敗ながら、勝ち試合はFG47%、負け試合は36%とモンクの課題はチームの課題。
伸びなければいけない存在になれたことは昨シーズンからは考えられないほどの序列の向上であり、ケンバに次いで勝利に責任を持つべき立場になったのでした。
◉安定させるMKG
爆発力でチームに勝利を呼び込むべきなのがモンクならば、運動量で安定感をもたらすべきなのがMKG。スターターではなくなり、キャリア最小の21.6分とプレータイムを減らしたにも関わらず、プレーに関与する機会を増やしています。
〇タッチ数 23.7 → 32.8
〇パス数 13.8 → 23.5
前述の通りディフェンス面での貢献が目立ちながら、オフェンスでも違う形での貢献が目立ってきたのです。思い起こせば昨シーズンは狭すぎるシュートエリアもあって、頻繁にハワードのジャマをしていたのが、むしろハワードがいなくなってボールに触る機会を増やしたのでした。お互いがジャマだったのはハワードとミルサップも同じだったような。
〇テイクチャージ
5回(74試合)→3回(10試合)
そして目立つのがオフェンスチャージをとるディフェンスをみせるようになったこと。シュートチェックの本数も大きく伸ばしており、プレータイム関係なくハッスルスタッツを残す形になっています。機動力系インサイドが流行している理由は、広い範囲を守れる事でもあり、現代的な能力を発揮してきているわけで、見方を変えれば任される役割が増えているのです。
ハワードとマービンとの同時起用が基本だった昨シーズンは役割が重なっていたわけです。今シーズンはプレータイムが短くなった代わりに、あれもこれも求められているような役割に変更され、MKGの持つ能力全てを発揮しろといわれている状態になっています。成長したのではなく、求められただけなのかもしれません。
〇シュートアテンプトの変化
ノーチャージエリア内 3.8 → 4.3
その他の2P 4.2 → 2.4
昨シーズンもノーチャージエリア内はFG66%と高確率だったMKGですが、当然それ以外の2Pシュートが多かったわけです。センター起用も増えた中でリングに近い位置でばかり打つようになり、変わらぬ平均得点を記録しています。ここでは苦手なプレーを減らすことに。
ちなみに決まるわけがないような3Pは6本打って2本決めています。これはこれで・・・。
◉ボレゴ改革
モンクに求められる得点面の貢献だけをみると、中心選手への負荷を増やしているように思えますが、MKGをみてみると各選手が自分の力をフルに発揮することを求められていることがわかってきます。ボレゴが好むスタイルは
各選手が能力を最大限に発揮すること
にあるといえそうです。優秀なシステムを構築して、そこに選手を当てはめているのではなく、選手の能力に応じた役割を与えていくタイプなのかもしれません。チカラを発揮する場を与えられていなかったモンクと、チカラをもてあましていたMKG。2人はベンチからの出場でありながら、充実したプレーぶりを感じるのです。
そういえばトニー・パーカーも若返った感じさえするのですが、その能力をフルに発揮すべき役割を与えられたことによるものなのかもしれません。
モンクとMKGはベンチからの出場ですが、試合終了時にコートにいることが多くなっています。勝負所で起用されるわけです。逆に言えばスターターのラム、マービン、ゼラーあたりはベンチに座っています。ジノビリがベンチから出てくる戦い方ではないですが、ボレゴもまた戦力を分散させ、試合を通してチーム力を発揮出来ることを好みます。
オフェンスの切り札であるモンクとディフェンスの切り札であるMKG
この2人をどのタイミングで有効活用するのかが、試合中の采配で大きな焦点になります。時に活躍している選手がいると少し長くプレータイムを与え、不調の選手は早めに下げていく。言葉で言えば簡単ですが、相手とのマッチアップの問題やローテーションの組み替えなど、考えるべき事は多くあります。
既に結果を残しているようなボレゴですが、新人HCであり、本人の中ではミスも多くあるはず。より的確で選手が活躍してしまう采配を頭の中で描いているかもしれません。
ボレゴは実績のあるビヨンボやカミンスキーをローテーション外にしています。他にも若いバーコンとグラハムはプレータイムを得られず。エルナンゴメスとブリッジスは結果を残していますが、まだ主力の扱いはされていません。競争原理が働いているのが今のホーネッツ。
1回観ただけでその変化に驚くのですが、何回か観ても細かい部分で何をしているのかを理解するのが難しいのがホーネッツ。ベンチから出てくるモンクとMKGに代表されるように、戦力を有効活用し、マッチアップの優位性や時に大胆な3ガードなど、いつどこで何をするのか。ボレゴの頭の中はフル回転しているはず。観ている方からは楽しむしかありません。
まだまだホーネッツファンくらいにしか注目されていないであろうモンクが、セカンドエース・6thマンとして一般層まで注目を集めるようになった時にホーネッツは勝率でも注目されるはず。その時は実はMKGの地味な活躍っぷりの重要性がファンの間で注目を集めていそうなのでした。
サマリでのプレーをみて新人PGのデボンテグラハムにも魅力を感じたんですが彼についてはどう思いますか?
モンクって老け顔ですよね…
グラハムは良い印象のプレシーズンでしたが、求められるのがパーカーの仕事なので、修行を積まないと!
チームがパーカーなしでは苦しそうなので、グラハムは個人の成長だけでなく、チームメイトが成長しないといけないのかな。
まさかのCHAで複数回宣言…。次はブリッジスくん回ですねわかります。今日もしっかりカーターおじさんのハイライト消してましたし
得失点差だけで言えば8.0と東で3位なのに6-5と内容より勝てていないCHA。
マッチアップもありますがクラッチタイムに弱いのは相変わらずで、だからこそモンクがミドルトンやマカラムみたいなクラッチ力を発揮する必要があります(贅沢
MKGはこのままいけば数年後、CHAの魂とか言われてそう。エースじゃないけど魂。フェイバースみたいな
MKGがフェイバーズなんて1年前は考えられなかったので。
オフェンスの良さはありますが、勝ちきるためにオフェンスを選択するけどクラッチに弱いという伝統がね。
ホークス戦は4Qのモンクで勝ちましたし、最後はケンバよりもモンク説もちょっとあったりして。
ドラモンドやリラードを押しのけて2位指名されたのに、変なシュートフォームしか話題にされなかったMKGがやっと本職のディフェンスで高く評価されつつあり、嬉しい限りです。
また、あまり大きな期待は出来ないですが、ビヨンボやベーコンがチームにアジャストしてきたり成長したりすると、シーズン終盤まで楽しめそうですね。
ビヨンボはどうかな。MKGも含めるとセンター多すぎるので。本人も1人だけつまらない顔を。
ベーコンは合えば活躍しそうですけどね。ここはブリッジスとの争いが。