ボストン・セルティックスが強い理由 〜オフェンス編〜

セルティックスの強さを分解してみるオフェンス編です。

ディフェンス編ではジェイレン・ブラウンがもたらした要素の大きさを知っていただけたと思います。オフェンス編は説明し難いスティーブンス・マジックを推論していく事になります。推論です。
今回出てくる数字は話題になった事もあり、知っている方も多いと思いますが、読む人様々なので「そんなの知ってるぜ」と言わずにお付き合い下さい。
1番有名なのは今季のアーヴィングのクラッチタイム。しかし、それだけはデータの拾い方次第になるので、ここでは具体的には示しません。ご存知ない方は検索してみてください。




ブレイザーズの謎

早速脱線します。ディフェンス編でも触れたブレイザーズ。大きくディフェンスに舵を切ったセルティックス同様にブレイザーズも同じ様に大胆な変革をします。

◯レーティング
オフェンス  107.8→103.5
ディフェンス 107.8→98.2

しかし最高勝率のセルティックスとは違い11勝8敗と高いレーティング差に反して5割を上回る程度です。キングスに負けたりと不安定な一面があります。

スペシャルなツーガードを誇るブレイザーズがディフェンスのチームになるのは理にかなっています。2人が好調でなければ勝てないチームから、失点を抑える事で勝機を広げ、クラッチ力で勝ち切れるからです。
それを戦力強化出来なかった中で実現したのだから素晴らしい成果だと思います。

では、何故セルティックスほどは勝てないのか?

理由はそのクラッチ力は安定して出せるとは限らないからです。今季のリラードはFG41%、3P34%とどちらもキャリア最低クラス。チームとしてオフェンスの強さを欠く点がセルティックスの様には勝てない要因です。

まぁリラードはどうせシーズン後半戦に上げてきます。その時に連勝してプレーオフに臨むのがパターンです。セルティックスとみせかけてブレイザーズも推しておきます。



アーヴィングの謎

リラードがイマイチなのに対してアーヴィングが素晴らしいから勝っているセルティックスなのか?

◯カイリー・アーヴィング
22.9点 FG47.6% 3P36.9%
5.1アシスト
1.9ターンオーバー
1.7スティール

相変わらずの数字です。以前に見たときはそこまでFG%が高くなかったのですが、思ったよりも活躍していました。

しかし、時に数字は嘘つきです。数字だけならキャブスにいた昨季の方が上でした。当時の管理人の評価は単なる1on1ファイター。超絶技巧が凄まじいだけの選手。

でも、今は超絶技巧を持ったPGに変わろうとしています。

クラッチタイムの効率性が話題になっていますが、1番のポイントはターンオーバーしなくなった事。しかしアーヴィングが上手くなったというならばともかく、スペースが与えられていたキャブスでターンオーバーして、狭いスペースでもプレーするセルティックスでしないなんて変な話です。

本当にアーヴィングだけで勝っているのでしょうか?



オフェンスレーティングの謎

102.9(20位)

例えアーヴィングが決めていようと低いオフェンス力です。明らかにディフェンスで勝ってきたセルティックス。

「だからアーヴィングが凄い!」

で終わったらこのブログは終了しなければいけません。データで測れないものは語れないもの。
オフェンス力がなさそうなセルティックスにみえて実はそれは世を偲ぶ仮の姿だったりします。

◯Q毎のオフェンスレーティング
1Q 94.9(25位)
2Q 93.8(28位)
3Q 109.8(5位)
4Q 113.5(2位)
OT 125.0

あまりにも酷いレーティングのバラつき。オフェンス力皆無なのは前半だけで、後半はトップクラスのチームに変貌します。
ではそんなに影響を与えるほどアーヴィングは凄いのか。

◯Q毎のアーヴィング
1Q 6.5点 FG50.0% 1.3A
2Q 5.0点 FG45.9% 1.1A
3Q 5.2点 FG41.8% 1.9A
4Q 7.3点 FG49.4% 1.1A

OT 10点 FG100% 1アシスト

プレータイムは1と3が9分少し、2と4が7分少しです。確かに4QとOTは圧倒的ですが、チームの好調さと違い3Qは苦戦しています。
アーヴィングの活躍でいくつかの勝利を挙げてきたのは事実ですが、そこまでの接戦というのは少ないのが今季です。逆転で勝っていますが、最後のクラッチ勝負まで持ち込まないで勝てるケースも多くあります。

また、1番の接戦はラプターズ戦。アーヴィング不在です。

アーヴィングは素晴らしい。
だけど、それだけでは説明つかないのが後半のセルティックスオフェンス。

それがセルティックス最大の謎で今回のテーマであるスティーブンス・マジックの謎です。



メインキャストのクラッチの謎

ではアーヴィング以外のメンバーはどうなのか。かなり面倒ですが前後半で分解します。まずは前回MVPのブラウンから。前半→後半

◯ブラウン
得点 8.3 → 7.6
FG 45.0% → 50.0%
3P 36.2% → 46.5%

得点は落ちますが確率はグッと上げます。どうやらレーティングを上げる要因を生み出している様です。特に高確率の3Pは終盤での強さに繋がります。
思い出されるのはウォーリアーズ戦。3Qに攻守両面で反撃を牽引したのはブラウンでした。22点を友人に捧げ、最後はアーヴィングに任せてデュラントを止めに行きました。

さすがのMVPです。



◯ホーフォード
得点 6.0 → 7.8
FG 53.2% → 53.3%
3P 32.0% → 50.0%

3Pを大きく上げるホーフォード。こちらはアテンプトも増やし、オフェンスで仕留めに行ってます。思い出されるのはサンダー戦。4Qにパーフェクトに決めて大逆転を演出しました。
ブラウンと違い得点を伸ばしており、リバウンドの強さがディフェンスを支えれば、このフィニッシュ力でオフェンスを牽引しているのは見逃せません。5年ぶりの大活躍はディフェンスだけではありません。

さすがのホーフォードです。



◯テイタム
得点 6.1 → 8.4
FG 42.1% → 59.3%
3P 40.6% → 59.1%

!!!

なんだそれは!!!

それがテイタムです。恐ろしい確率。
さらに4Qに絞れば65%を超えます。

アーヴィングも吹き飛ぶ大活躍。
それがテイタム!

しかしテイタムの大学時代のスタッツは少しイメージが違います。
33分 16.8点 2.1アシスト
FG45.2% 3P34.2%
http://college-hoops-japan.blogspot.jp/2017/05/nbadraft2017-tatum.html?m=1

大学生を紹介されているこの方によると高難度シュートを決めるスコアラータイプで、セレクションで勝負するタイプではなかったようなので、フロントが今の高確率を残すのは予想し難かったはずです。

読めないテイタム



◯スマート
得点 4.1 → 5.1
FG 25.0% → 29.2%
3P 17.9% → 33.3%

さすがの・・・ではないな。上がったけど、前半が酷すぎるだけで。上がった後半も十分に酷くて。もう酷いでも言葉が足りないくらい。3Pだけが普通になります。

それがスマート。プレーオフでキャブスを破る原動力になったメンタルの強さは有名です。



クラッチタイムの強さについては個人の強さと考えるのが一般的です。だから「アーヴィングは凄い」となるわけですが、こうみると「セルティックスはクラッチタイムが強い選手を集めている」という事になり、さすがにそれは現実的ではない気がします。

思い出されるのはアイザイア・トーマスです。4Qにチームを勝利に導く姿は偉大なものがありました。レーティング差が大きい今季と違い3.1しかない中で53勝をあげました。

個人が凄いという認識を少し変えるべきなのかもしれません。なんせセルティックスの特徴はそんなトーマスを抱えながらもアイソレーションではなく、パス交換で決めていた所です。

チームオフェンスでクラッチの強さを導き出す。

そう考えると4Qで見た時のアーヴィングの確率はセルティックス的にはむしろ低い部類かもしれません。本当の勝負所以外はアイソレーションしていない事からも、警戒すべきはテイタムやホーフォードなのかもしれません。
そして彼らを警戒すればアーヴィングを止める事を難しくします。やっぱりアーヴィングを止めなければどうしようもありません。

結果が生み出す好循環。偶然の要素が大きいであろうけども、それすら導いていると思わせるのもスティーブンスの魔法です。
セルティックスを勝たせているのはアーヴィングではなく、アーヴィングを含めた全員の後半のオフェンス力です。



前半の謎

セルティックスは後半に高いオフェンス力を発揮するが、個人ではなく全員が高確率になる。
では、前後半のスタッツを比べてみます。

◯前半 → 後半
得失点差 △1.3 → 8.2
得点 47.9 → 53.9
2P 12.8 → 12.5
3P 4.9 → 5.9
FT 7.6 → 11.3
OR 5.3 → 4.7
TO 7.9 → 6.6
アシスト 10.3 → 11.2

ここでも各要素が少しずつ伸びていることがわかります。(2P・3PFTは成功本数です。)

FG%が高まっている事を考えれば、前後半で大きく構成を変えているわけではありません。ファールで止められている形なので2Pが減った分、フリースローが増えています。理論上は2P打たせておいた方がベターです。



疑問なのは前半は何しているのか?という事です。前半をスローペースでこなし、後半にギアを上げるにしても、効率の悪いオフェンスをする意味はありません。これがリーグ中位レベルなら理解できますが。

この記事を書いている途中で行われたマジック戦ではフリーでアウトサイドから放ち高確率で決めました。当然ですが、わざと外す意味なんてないという事です。なお、そのせいで前後半のレーティング差はかなり縮まりました。

◯前半→後半
速攻 5.3 → 4.3
ペイント内 19.3 → 18.7

得点効率を上げるために走ってフリーを作る流れからは逸脱して、どちらかというとハーフコートゲームをしています。ペイント内は少ないですが、速攻が減った分と考えられます。

逆に言えば前半の方が積極性があったりします。一体どんなプレーをしたらこうなるのでしょうか。正直よくわかりません。
わかるのは前後半でプレーそのものには大きな差がないということです。ただし、後半は確率を上げています。



プレー選択の謎

では、一体どんなプレーをしているのでしょうか。本当は前後半で分けたいのですが、データ検索でそれが出来ないのは残念です。
昨季からの変化でオフェンスの特徴を調べます。

◯カット 7.5% → 5.4%
◯オフボールスクリーン 6.6% → 4.8%
◯ハンドオフ 6.5% → 5.3%
◯ピック&ロールロールマン 6.8% → 5.9%

様々なプレーを混ぜるセルティックスですが、いわゆるチームプレーとして扱われるタイプのプレーが減っています。満遍なく減っているのは面白い所です。

◯シュートの割合
キャッチ&シュート 34.1% → 34.2%
プルアップ 23.0% → 25.4%
10フィート以内 41.7% → 39.3%

しかし、キャッチ&シュートの割合は変わらずインサイドが弱くなった分だけプルアップが増えただけです。なお、ロジアーがいっぱい打つようになったのが大きな変化なのでシステムとして変更したわけではないと思います。
昨季リーグ2番目に多かったキャッチ&シュートは今季も健在なのでチームプレーをしている事に変わりはないと考えます。

なお、同じ確率ですが今季はリーグ8位なので他のチームがキャッチ&シュートを増やそうとしていることがわかり、リーグ全体の戦術傾向の変化が感じられます。



同じデータを前後半で比較します。

◯シュートの割合
キャッチ&シュート 33.2% → 35.5%
プルアップ 25.3% → 25.4%
10フィート以内 40.1% → 38.3%

キャッチ&シュートが増えているのですが、プルアップも変わらないので大きな変化とは言い難いです。まぁ良いシュートチャンスを得る意識は高まっています。

キャッチ&シュートを重要視する傾向は変化していないと思われますが、カットやハンドオフ、オフボールスクリーンは減っているので、

「動いてボールをもらいシュートよりも、止まってボールをもらってシュート」

これが目指すパターンになっていると考えられます。変わらずに続けられているチームオフェンスですが、フィニッシュの部分でちょっとした変化があります。



アイソレーションの謎

それではチームオフェンスの選択肢の中で減ったプレーの代わりに増えたのはどんなプレーなのか。
それは意外にも個人プレーの代名詞であるアイソレーションです。1試合平均5.9回(28位)から9.9回(7位)へ。

なんだ個人の強さ推しになっただけなのか?

◯アイソレーション
アーヴィング 3.7
ブラウン 1.5
モリス 1.4
ロジアー 1.2
テイタム 1.1
スマート 1.1

圧倒的に増えたアイソレーション。昨季はトーマスの2.3回が最高で他の選手は1回を切っていました。アーヴィングで増えたのは1.4回だけで他の選手も増えた事に。

プレータイムが増えただけのブラウンはともかく興味深い変化です。オフェンスレーティングが下がった理由は若手に経験を積ませている可能性もあります。

どこまでをアイソレーションと判断しているのか知りませんが、逆に気になるのは増えていると言いつつ所詮は1試合に1人1回なので、それが多いと言えるのか?
個人技に優れた選手を使って得点させるのがアイソレーションの目的ですが、6人もいて、しかもスマートもいます。確率論とは少し離れるので「個人技に任せたオフェンス」とは言い難いです。

調べてみると1回以上が6人もいるのはセルティックスだけ。5人がグリズリーズ。チームオフェンスで有名なチームです。

アイソレーションが増えたと捉えるべきなのか、バリエーションが増えていると捉えるべきなのか。グリズリーズはチームプレーと見せかけたベンチも含めた個人技総攻撃で多彩なパターンを作っています。実はそれに近い事をしていると考える方が自然です。

アーヴィング以外もアイソレーションを増やしたセルティックスですが、個人技ではなく、攻撃のバリエーションの増やしたと捉えるべきです。



減らしたパスの謎

◯パス数   325 → 288
◯タッチ数  445 → 403
◯タッチ時間 2.56 → 3.10

明確にパスが回らなくなったセルティックス。アイソレーションが増えたというよりは、ボールムーブしなくなったと捉えた方が良さそうです。局面としてアイソレーションとカウントされる状況が増えたのでしょう。
そこには単なる連携不足とは言えない戦術的な変化がありそうです。トーマスとアーヴィングを比較してみましょう。

トーマス → アーヴィング
◯パス数 55.3 → 51.9
◯被パス 76.8 → 65.5
◯パスからのシュート数 17.9 → 17.6

目立つのはアーヴィングがパスをしないよりも、もらっていない事。しかし、シュート数は減っていません。つまり周囲がアーヴィングのシュートチャンスを作り出してパスしています。

さらにパスをもらう相手を分解してみます。

トーマス → アーヴィング
◯被パス数上位
ホーフォード 16.9 → 21.4
クラウダー 12.2 → 8.9 テイタム
ジョンソン 10.7 → 8.1 ブラウン

被パス自体が11本減ったのにホーフォードだけで4.5本も増えています。つまりそれだけ2人の関係で崩しを完了出来ていることになります。
トーマスは何度もパス交換する中でチャンスを生み出していたのに対し、今季はチームとしてより少ない動きでチャンスを生み出せています。



セルティックスのオフェンスを超簡単に言えば、ハンドラーとピックが中央でディフェンスを崩し、収縮したらウイングへボールを振ります。
トーマスのパス相手をみるとブラッドリーよりもアミール・ジョンソンが多い事が気になります。今季のセルティックスではモリスやベインズが使われていますが、このポジションの選手はあまりピック役に入ってきません。

トーマスに複数のピックやパス交換相手が必要だった昨季から、アーヴィング&ホーフォードの2人だけに集約された今季の構図が浮かび上がります。
それはブラウン&テイタムのウイングだけでなく、もう1人もフィニッシュに役割を移しています。ハンドラー、ピック、ウイングにもう1つポジションがあるわけです。

◯FG数
チーム 85.1 → 84.5
I・トーマス 19.4 → 17.6 アーヴィング
ブラッドリー 14.1 → 12.3 ブラウン
ホーフォード 11.8 → 10.2 スマート
クラウダー 10.0 → 10.1 モリス

こうみるとトーマス&ブラッドリー2人に集まっていたシュートが満遍なく散っている構図が見えてきます。ここに出てこない選手達が増えています。
ボールムーブが減り、アイソレーションが増えたセルティックスオフェンス。しかし、その実態は1つの役割を少人数でこなせるようになり、よりバランスアタック出来るようになった実態が見えてきます。

加えて前述の通り、シューターはより動かずにボールをもらう傾向があります。チャンスメイクとフィニッシュのシューター。それぞれの役割がシンプルな構成になっています。

キャブスでは単なる1on1ファイターにされていたアーヴィング。アシストは増えていなくても確実にPGとしての役割を担っています。PGやりたくて移籍希望した予想は間違ってなかったと思います。



オフェンス力低下の謎

ここで1つの疑問に当たります。
「バランスアタックが実現した」にも関わらずオフェンスレーティングが5も下がったのは何故か?と言う事です。

答えは簡単。トーマスの決定力が高すぎたからです。アーヴィングとの比較以上に満遍なくボールが回った先の選手がトーマスより高い確率で決められるかというと、まぁムリです。

ちなみにメインの5人以外のシュート数は前半が約15本、後半が約13本と減っています。



スマートの謎

上記の通りアテンプトが多いのに「酷い」なんてレベルではないFG%のスマート。

「ロンゾ・ボールはシュートが下手だって?贅沢言うな!うちのスマートのFGはロンゾの3Pより決まらないんだぞ!」
セルティックスファンからレイカーズファンに送られそうなお言葉です。でもスマートがいるから勝てるセルティックス。

「ロンゾ・ボールが勝てるガードだって?バカいうな!うちのスマートの方が勝てるガードだぞ!」
セルティックスファンから親父に向けられそうなお言葉です。

もっと楽に打てそうな場面でも身体の強さを活かしてディフェンスの中に飛び込んでタフショットするスマート。フリを効かせておいて重要な場面になるとイージーシュートを選択します。

 

◯スマートのパスからの3P
2.5/5.5 45.2%

スマートのパスを受けた選手は高確率で決めています。これも好循環を生んでいます。

スマートの最大の謎はもっとドフリーにされて良いはずという所です。ポジショニングやイージーシュートに辿り着こうとするプレー選択がドフリーにさせないのでしょうが、ラスト3分切ったクラッチシーンでは3P50%決めています。

セルティックスが逆転勝ちを狙っているとしか思えない展開を選ぶのは「スマートをドフリーで打たせる賭け」を相手が心理的に選ばないようにワザとやっているかもしれません。
・・・さすがにそれはないかな。



後半に強い理由を推論

ここからは想像のお話です。セルティックスが後半に強い理由。

1つはたまたま。いくら何でもFG%が高過ぎる個人達。連勝がもたらしたウィナーズメンタリティ。

そんな測れないメンタリティは置いといて、重要なのはバランスアタックしていたという事実です。一般的にバランスアタックする目的は何かというと
①全員にボールが回る事でリズムが良くなる。
②攻めてくるポイントを絞れないのでディフェンスが後手に回る。
③相手の弱い部分を狙って攻められる。

①セルティックスはボールは回らなくなったのでは関係なさそうです。後半に良くなる理由でもない。

②はディフェンスが緩くなって後半にFG%が上がることと、前半からサブキャストも打つとフリが効いているので攻めたいポイントを使える利点があります。

例えばホーフォードは後半だけならば2番目にアテンプトが多くなります。
僅かな差ではありますが、ピック役のホーフォードが打ちやすくなるのはディフェンスがピックに意識を向けない時に初めて出来ることです。部分的にみればアーヴィングに引きつけられているようで、試合を通してみれば全体にマークを散らして終盤の強力なホーフォード、という形です。

③はハンドラーに引きつけた時に何処が空くのか、前半で見極めて後半に狙うことが出来ます。それがデザインされた特別なオフェンスを組むのではなく、通常のシステムの中で可能になります。

バランスアタックは誰もがフィニッシュを狙う意識があるから、自分が空くなら迷わず打つ積極性にも繋がります。



スティーブンス・マジックを解く

これらの予想はスティーブンスマジックから逆説的に導かれました。頻繁に発生する理解不能な采配を少しでも論理的に解決しようと推測した結果です。

マジックの2つの特徴を考えます。

『タイムアウト開けから誰もがシュートを決めてしまう高確率オフェンス』

デザインされたオフェンスが成功するのは不思議ではなくても、それまで決まっていなかった選手が突如連続で決めたりします。

『後半から突如相手のディフェンスを切り刻む完璧なシステム』

前半のイメージは自分達の計画しているオフェンスをして、後半になると相手の弱点を狙って崩すようなパターンが増え始めます。
あまりにも完璧なタイミングと選手を選ばないシステムはハーフタイムにロッカールームの指示で変えたというには納得出来ないレベルだったりします。

そこにはこれらを可能にするオフェンスシステムがあるはずです。



ここまでのデータや推論を総合して、オフェンスシステムがどんな目的で組み立てられているかを考えました。

前半からのバランスアタックでディフェンスを振り回しておくと共にディフェンスの弱点を洗い出す。
後半は弱点を突くことを優先するため、全員が多様なフィニッシュのイメージを日常的に共有できるようなバランスアタックを取り込む。
言葉で伝えるのが難しい事を、選手が容易に理解出来るようにシステム的にはシンプルな構成になっている。

そんな論理を感じるセルティックスのオフェンスとそれを裏付けるような昨季からのデータの変化でした。

頻繁なパス交換からトーマスの高い決定力を活かしていた昨季では、システム的に弱点をつきにくいだけでなく、どうやってトーマスを活かすかに意識を向ける必要があったためシンプルさには欠けていました。また1つの崩しに多くの人数が必要でした。
それが今季は少ないパス数や動かずに打てるシューターと少人数の崩しなど、かなりシンプルなシステムになっています。試合の中で個人の動きを調整しても周囲への影響は少なくなります。

『自分たちのオフェンス』が重要だった昨季から『ディフェンスに対応したオフェンス』になっています。



今季のオフェンスに必要な要素

オフェンスレーティングを大きく落とした事と、その反面、後半には異様な高確率を誇るようになった事は無関係ではないと推測しています。
よりチームオフェンスの形をとっていた昨季の方が効率面では勝りますが、対応力ではシンプルな今季が勝ります。

それは同じような事をしているようで、システム構成に多様性があったといえるスティーブンスの多彩な引き出し。
無敵にも聞こえる今季のシステムですが、実際には効率で昨季に劣るわけですから、勝つためには相手を抑えるディフェンス力が必要だったわけです。

強固なディフェンスで勝機を広げ、後半からの対応力とクラッチの強さで勝利を掴むわけです。これが冒頭に繋がります。対応力こそブレイザーズに足りないもの。



大前提としてオフェンスシステムを浸透させておく事は当然ですが、この戦略は試合中もHCの高い分析能力と対応力が必要となります。
前半の内容からディフェンスの弱点を的確に分析し、理解しやすい言葉で伝え、適切なオフェンスを選択しなければいけません。

16連勝したという事は選手達の頑張りはもちろんですが、HCも正しい采配を選択できてきたという事です。

 

つまり、

 

やっぱり、

 

MVPはブラッド・スティーブンスHCでお願いします。

 



セルティックスの伸び代

攻守に大活躍のブラウンはレベルをジャンプアップさせ、ホーフォードは賢くプレーしながらスタッツを5年ぶりの水準に伸ばし、テイタムの高確率を導き出し、アーヴィングは圧倒的なクラッチ力を周囲が更に活かす。シュートが入らないのにスマートは活躍する。

何でもかんでもスティーブンスに結びつけるのは、今が旬だからです。チームが異様に好調だから全てが良い方向に回っています。
そして良い方向に回り過ぎて隠れている弱点がこの先に出てくると思います。

一方で伸び代として残っているのはモリスの活用です。出場停止もあり出遅れたモリスですがPFよりの万能型なので、SFよりのテイタムとの使い分けやホーフォードの調子が落ちた時に有用です。特に好調が続くかは怪しい2人でもあります。

選手個人の活躍度をコントロールするタイプか、個人の変化をチームの対応力でマネジメントするタイプなのか、ここまでの内容と違って前者の雰囲気がするスティーブンスでもあります。モリス、ホーフォード、テイタムの起用法には注目しています。



必然と偶然が紬会う魔法

セルティックスが強いのは開幕前から予想されていました。しかし、ヘイワードを失ってもここまで勝てているのは、スティーブンスHCだけでなく、予想を超えるブラウン&テイタムの活躍とアーヴィング&ホーフォードのクラッチ力です。

初優勝した時のウォーリアーズもスプラッシュブラザーズを活かし切ったスティーブ・カーHCのシステムが素晴らしいだけでなく、グリーンやバーンズ、ボーガット、そしてイグダラにデビット・リーと前政権から受け継がれたディフェンスや選手層といった要素が紬合わされた偶然も重なって完成されたチームでした。

セルティックスも望んだ事、望まなかった事、予想外の事、様々な要素が重なって生まれたチームです。

アーヴィングが移籍希望しなかったら、ネッツが勝っていたら、トーマスがケガをしなかったら、そしてヘイワードがプレー出来ていたのなら。
何れにしても現状はリーグ最高のディフェンス力に、采配から導かれる後半のオフェンス力を武器に最も勢いのあるチームになっています。

強いと予想していたけど、戦略も戦術もシステムも昨季から変化させ、偶然にも支えられながら予想以上に強くなっているのが今のセルティックスです。

ボストン・セルティックスが強い理由 〜オフェンス編〜” への1件のフィードバック

  1. 素晴らしい分析ですね。数値をきちんと把握し、それがどのように結果として出ているか。感心します。
    西のブレーザースも推しているのですよね?是非同じ視点で分析してみてください。
    21試合を終了して13勝8敗。上位チームとの対戦がないので、この成績が特別良いとは思えませんが、GMの酷い選手集めを何とか皆で埋めようとしています。Lillardのクラッチタイム、CJのシュート力=昨季からNBAのNO.1シューターはカリーからCJになったと思ってます。NurkicのチームへのFitで5割、PO出場は可能と思いますが、その上はあるのでしょうか?
    ディフェンスレーティングが昨期より10も良くなっていますが、大差勝ち、接戦負けが多くセルティックスとは全く逆の結果となっています。それでなのか76Ersに大敗してから、3ガードに変更し、Nurkicのインサイドでのプレースペイスを空け、オフェンス重視に切り替えてきているようにも思えます。リバウンドだけのVonlehや怪我のAminuでは頼りなく、PFに人材が不足していると思われます。ここを補えれば上が見えてくると思うのですが、如何でしょうか?トレードしようにも玉はなく、不良債権ばかりで補強手段が限られます。将来のドラフト指名権を放出してでも獲れそうで、チームにFITしそうなPFは誰か居るのでしょうか?

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