ボストン・セルティックスが強い理由 〜ディフェンス編〜

そろそろセルティックスについて考えてみましょう。この記事を8割くらい書いた段階で3敗目を喫してしまいましたが、それでも素晴らしい勝率であると共に、強さを感じさせるチームです。特にウォーリアーズ戦の勝利は印象深いものがありました。
アーヴィングやホーフォードが欠場しても勝ち続けたセルティックス。現時点でどれくらいのレベルにいるのか、近年のチームと比較してみます。


1年前の11月終了時点の成績上位は

ウォーリアーズ 16ー2
スパーズ 15ー4
クリッパーズ 14ー5
キャブス 13ー3

各チームのレーティング差は

ウォーリアーズ 13.0
スパーズ 6.1
クリッパーズ 9.6
キャブス 6.8

 

◯今季のセルティックス
16勝3敗(11/22時点)
レーティング差 6.5

シーズン序盤とはいえ、これだけ勝っているチームは浮き沈みがあっても50勝には到達しそうです。昨季のキャブスやスパーズくらい、そう言われると良いのか悪いのかよく分かりませんが。



時計の針を巻き戻す新しさ

◯ディフェンスレーティング 96.4(1位)

その特徴はディフェンス。リーグ2位のブレイザーズで98.1なので圧倒的なディフェンス力がわかります。
近年のディフェンスレーティング1位を並べてみます。

16ー17 スパーズ 100.9
15ー16 スパーズ 96.6
14ー15 ウォーリアーズ 98.2
13ー14 ペイサーズ 96.7
12ー13 ペイサーズ 96.6

オフェンス傾倒が進む中で時計の針を巻き戻した勝ち方をしています。ペイサーズやグリズリーズが55勝以上した頃の勝ち方です。ちなみに当時ペイサーズにいたACもいるみたいです。個人の守り方がヴォーゲルのマジックと似ている気がしていますが、気のせいかも。

ディフェンス重視は時代にそぐわない古いスタイルではありますが、「走る」「3P」「スモールラインナップ」なども当初は極端なスタイルだったりするので、リーグの流れの中から極端なスタイルをとっていくことは、1つの勝機を見出す形でもあります。
昨季のジャズはリーグ全体が高速化に進む中で圧倒的な遅さで51勝を挙げました。遅さで言えばキャブスやグリズリーズ、ラプターズなども極端に遅い戦術だったり、ドライブに偏ったりして勝っています。

セルティックスがどこまで狙ったかは不明ですが、『極端にディフェンスに傾倒した』事が勝率を上げているでしょう。



ディフェンスを頑張るなんて当たり前の事なので、中身に触れずに結果だけに触れても意味がないと言われればそれまでですが、同じくディフェンスレーティングの良いブレイザーズやサンダーは、そこまで勝てていないので、リーグトップの勝率を上げる要素として

『リーグの平均から大きく乖離した長所がある』

という事は重要です。
ロケッツやキャブスはウォーリアーズのオフェンスを止められないと諦め、オフェンスで上回る戦略を立てたわけで、最後まで自分達のオフェンスを信じて逆転する試合を生み出します。

セルティックスは自分達のディフェンスを信じて逆転しました。常に自分を信じる。戦略を信じる。そのために強者であり、極論者の論理は重要です。



セルティックス自身の変化

◯オフェンスレーティング 102.9(20位)

何よりもリーグで真ん中よりも下にいるオフェンスですので、守り勝つ方針が見て取れます。ブラウンやテイタムをいれてディフェンスが成り立つのが不思議な反面、オフェンスは多少のミスを憂う必要がないとも言えます。勝負所で躊躇わずにテイタムが打てるのはそんな要因ではないかと推測しています。

不思議なのは昨季はオフェンスで勝っていたことです。アイザイア・トーマス→アーヴィングはどちらもディフェンスが怪しいのですが、クラウダーとブラッドリーを放出したらディフェンスが良くなった点です。

◯昨季のレーティング
オフェンス 108.6(8位)
ディフェンス 105.5(12位)

さすがにここからレーティングで10減らすというのは、単にディフェンスを良くするという範疇を超えているので、リーグ全体のオフェンス傾倒を逆手にとってディフェンス面を強調して極端なスタイルにする事を狙って行っていると推測しています。

オフェンスを5落とす事を許容することで、
ディフェンスを10落とす事を目指した

と考えるわけです。

なお、同じ事をしているのはブレイザーズ。
オフェンス107.8→103.5
ディフェンス107.8→98.2
HC批判なんてナンセンスだよ。内容みれば勝機は広がっています。



堅実なディフェンス

そんなディフェンスの特徴を探してみます。
◯被FG% 43.2%(3位)
◯被3P% 32.3%(2位)
◯DIFF △2.6(2位)
(相手の平均FG%と被FG%の差異)

セルティックスはシュートを落とさせている事に長けている事がわかります。

◯ディフェンスリバウンド率 82.0%(1位)

そして落ちたシュートのリバウンドをしっかりと確保します。非常に基本に忠実なセルティックスのディフェンス。
当たり前のようですが、前にプレッシャーをかければリングサイドは空きやすいのでリバウンドは取りにくくなります。両立させるのは簡単なことではありません。

 

◯ブロック 4.1(21位)
◯スティール 8.5(7位)
◯被ターンオーバー 15.2(20位)

開幕前の懸念としてスモール化が進みすぎていてオフェンスへの指向性が高まっている点を挙げましたが、実際には大きくディフェンスに針を振ってきたセルティックス。
それでもブロックは少ないので、やはり高さの利で守れているとは言えません。セルティックスに勝ちたければオフェンスリバウンドをとる事ですが、それがまた取らせないわけで難しいわけです。

スティールは多いものの、ターンオーバーを引き出せないというのは奇妙な話です。それもハイプレッシャーをかけていながらなので、奪い切る場面と打たせてしまう場面を使い分けている可能性があります。

ラプターズ戦のデローザンのラストプレーでもしっかりと追い込みますが、逆転の可能性があるシュートそのものは打たせていました。



流行のオフェンスに対応

※データ収集先が違うので微妙に数字が異なります。
◯被FGアテンプトの割合
3Pエリア 31.5%(8位)
6フィート以内 32.7%(14位)

3Pは打たせないようにしていながらも、リングに近い位置も減らそうとしています。
「3Pとゴール下はダメ」という時代を象徴する守り方です。流行の攻め方があるなら対抗するのは当然の流れです。
ちなみにヒート戦前は11位だった6フィート以内が3ランクダウンしました。そこを攻められた事になります。

 

◯被FG%
3Pエリア 31.6%(1位)
6フィート以内 62.3%(19位)

そして3Pはしっかり抑えていますが、リングに近づくと抑えられません。高さが足りないチームである事を示しています。
ミドルレンジを選択させる事、そして3Pの確率を抑える事がセルティックスの方針になっています。

 

◯ワイドオープンでの被3P
アテンプト 13.2(6位)
確率 35.1%(5位)

当然ですがフリーでは打たせない方針です。なお、この数字の不思議なのはフリーで多く打たせてもセルティックスより低い確率しか決められないチームがある事です。代表格はレイカーズ。試合をみているとかなり謎です。

最も打たせずに確率を抑えているのがセルティックスです。



◯ホークス戦
3P44%
左コーナー 5/8
右コーナー 0/1

何故かセルティックスに善戦するホークス。3Pを左コーナーから高確率で決めています。

 

◯ヒート戦
3P 35.7%
左コーナー 2/4
右コーナー 2/4

3敗目を喫したヒート戦。3Pの確率自体は抑えていますが、こちらもコーナーを利用されています。
コーナー3Pとインサイド。ヒートは天敵なのかもしれません。



セルティックス自身の変化

時代に反して大きくディフェンスに偏ったのは、時代の流れがあるからこそディフェンス戦略を構築した結果のような気がしてきます。
しかし、実はこの方針や6フィート以内の被FG%は昨季からあまり変わっていません。良くなったのは3P%に対するディフェンスが2%程度上がった事です。

ブラッドリー&トーマス →  ブラウン&アーヴィング

数値の悪かったガード2人からサイズアップした事が影響しています。ロジアーも改善しているのでそれだけではないでしょうが。
ただし、3Pが2%改善はレーティングへは1くらいしか影響しないので、それがレーティングを10も減らしたセルティックスの変化とは言い切れません。



他チームとの比較でみれば流行のオフェンスを防いでいますが、セルティックス自身でみれば昨季から進歩したのはどこなのか?
FG%以外の要素を探していきます。

◯ファール数
20.6(20位) → 20.2(11位)
◯被フリースロー数
24.9(25位) → 20.2(6位)

まぁなんとも奇妙な数字です。あまり減っていないファールに大きく減らした相手のフリースロー。シュートファールの厳格化はありますが、なんとも言えない感じ。セルティックスを勝たせたい力、と言われても信じてしまいます。

実際に試合をみているとシュートファールを避ける傾向は見て取れます。特にサイスは非常に上手いイメージです。ファールをするならばシュートが落ちるのを信じてリバウンドをとる意識がありそうです。

それはリバウンドを信じている証でもあります。

◯ディフェンスリバウンド率
75.3%(27位)→ 82.0%(1位)
◯被セカンドチャンス
13.9(27位) → 9.4(1位)

明確に改善したリバウンド。それもリーグ最低クラスから最高クラスにジャンプアップです。
3Pを落とさせる事に優れていたチームはアウトサイドのサイズアップで更にディフェンス力を上げ、シュートファールを避け、リバウンドをしっかりとキープするようになりました。

やはりこのリバウンドの改善が最大のポイントみたいです。



リバウンドの変化

リーグで最も堅実にリバウンドをとるセルティックスですが、ビッグマンはいません。

新加入のベインズやサイスは割ととっていますが、プレータイムは短く、アミール・ジョンソンやオリニクより少し上回るくらいです。
出場時間の長いメインキャストのディフェンスリバウンド率を比べると

トーマス 7.0 → 9.2 アーヴィング
ブラッドリー 16.1 → 17.3 ブラウン
クラウダー 17.1 → 17.1 テイタム
スマート 10.7 → 11.1 スマート
ホーフォード 18.3 → 23.1 ホーフォード

ブラッドリーはリバウンドが強かった事もありガードのアーヴィング分だけです。
やはり1番大きいのはホーフォードの変化。

ホーフォード
◯ディフェンスリバウンド本数
5.4 → 7.6
◯競合いのディフェンスリバウンド
1.4 → 2.3

単に増えたのではなく、競合いに強くなったホーフォード。チームとしても7.2→10.1と競合いに強くなった点が大きく寄与しています。
ホーフォードがディフェンスリバウンドを取れなかった試合には苦戦しています。昨季のダブルダブルは僅か8回でしたが、今季は既に6回あります。

ホーフォードのピークは12ー13シーズン。
ディフェンスリバウンド 7.6
ダブルダブル 43
5年ぶりの大活躍。シーズン通じて今の活躍が出来ればチームは好調を維持しそうです。



個人のディフェンス力向上

実際に試合を観ていると単にリバウンドが強くなったという以上にディフェンス力が上がっている印象を受けます。

マークマンにハイプレッシャーをかけて厳しいシュートを打たせると共に、ペイントエリアでブロックしてリバウンドに飛び込ませない意識が高まっていると感じます。

その筆頭はジェイレン・ブラウン。デュラントを抑えた個人ディフェンスは印象的でした。そんなブラウンを中心にDIFFで比較します。
(相手がシュートを打つときに近くにいた際に、平均FG%から何%落とさせたかの指標。0だと普通でマイナスになるほどディフェンス力が高い。なお、あまり参考にならない時もあります)

◯DIFF 昨季からの変化
ブラウン △4.0 → △9.6
スマート △1.9 → △6.8
ホーフォード 0.1 → △4.8

あり得ないレベルの高水準です。昨季から高いレベルのディフェンスを見せていたのですが、それが大きく改善されています。
エース格を守る事が多いながら、平均46%決める選手を36%に抑え込むのがブラウンです。ルーキー時代から高水準でありながら、今季のディフェンス力はオールディフェンス1stチームに即入るべきレベルです。
なお、DPOYはエンビート。

昨季オールディフェンスチームに選ばれたのはブラッドリー。信じがたい事にブラッドリーからブラウンになり、個人比較で大きく上回る事になりました。

まぁ本当はポジション違うのですが。



試合展開とディフェンスレーティング

どのポジションでも守れて、誰でも苦しめるスマートはディフェンスの要でした。しかし、試合を観ていると必ずしも相手のエースを守るわけではなく、尚且つ前後半でマッチアップを変えている傾向があります。
開幕からブラウンへの信頼は大きく、試合を通してウイングはブラウンにエースを担当させるのに対して、スマートのマッチアップで変化をつける方法は興味深いです。

選手毎のディフェンスレーティングを比較します。

◯ディフェンスレーティング
チーム  96.4
ブラウン 94.7
スマート 94.5
ベインズ 90.1
ホーフォード 96.3
テイタム 96.3
アーヴィング 98.0

プレータイムは同じくらいなのにアーヴィングのディフェンス力が劣る事が分かります。それでもチームのレーティングと比較して乖離は大きくないので穴が小さい構成です。
昨季はトーマス&ブラッドリーが大きく乖離していました。

次にQ毎を比較します。

◯ディフェンスレーティング
1Q 97.5
2Q 100.3
3Q 91.1
4Q 97.7

よく分かりませんがバラつく数値。ローテーションの関係で2Qに落ちるようです。それでは2Qを個人単位で比較します。

◯2Qのディフェンスレーティング
ブラウン 89.0
スマート 101.8
ホーフォード 94.0
ベインズ 106.7
アーヴィング 103.5
テイタム 105.4

ここで予想外の差がつきます。全体では数値の良かったベインズも悪くなります。
こう見るとブラウンが重要な役割をこなしている事がわかります。全体が100を上回る中で89というのはユニットの問題より個人の優秀さがありそうです。

ブラウンのローテーションは概ね10分ー6分ー10分ー7分。つまりブラウンのプレータイムとチームのディフェンスレーティングには関連性があります。

◯オフコート時のディフェンスレーティング
ブラウン 100.0
スマート 99.1
ホーフォード 96.6

スマート中心のディフェンスだと思っていましたが、それ以上にブラウン不在がもたらす影響が大きいデータが並びました。
ホーフォード不在は意外と問題ありません。



そんなわけで予想だにしていませんでしたが、セルティックスのディフェンスで最も重要なのはブラウン。ヘイワードを失ったのは大きな痛手ですが、ひょっとすると火中の栗を拾うようなブラウンの大活躍かもしれません。

常にエースを抑え、その活躍はディフェンスに大きく傾倒し、リーグで最高勝率を誇るチームに大きな影響を与えています。



MVP!MIP!

リーグ最高勝率を誇るセルティックスからMVPが選ぶべきならば、誰がふさわしいのか?

◯アル・ホーフォード
13.8点 FG53.3% 3P41.8%
8.8リバウンド 4.6アシスト

◯ジェイレン・ブラウン
16.1点 FG47.2% 3P41.1%
6.5リバウンド 1.2スティール

MVPに選ばれたらブーイングされそうな2人ですが、ディフェンスのセルティックスで重要なピースを担っていながら、オフェンス面でも活躍するツーウェイプレーヤー。
このままセルティックスが勝ち進んだならば、そろそろツーウェイプレーヤーに最高の評価を与えませんか?

どちらを選ぶべきなのか?

やはりエース同士の個人の戦いを制し、それによりチームへ多大な影響を与えているブラウンを選びたいです。

17ー18シーズンMVP
(11/22までに選ぶなら)
ジェイレン・ブラウン

絶対選ばれないだろうな。
でも、圧倒的な力を示していますよ。少なくともオールNBAチームには選ばないとダメ!



そしてMIP候補は数いれど、MVPなのだからMIPも当然ブラウンです。

なお、昨季のブラウンは
6.6点 FG45.4% 3P34.1%
2.8リバウンド

まぁ普通に選ばれて然るべき成績でもあります。

MVP! MIP!



セルティックスがこのまま勝ち続けるか、ですが怪しいのははやりホーフォードです。
ホーフォードがいなくても守れそうなセルティックスですが、それではオフェンスで困ります。

しかし、12ー13シーズン以来の活躍度が本当にこのまま続くのでしょうか?
年齢的な問題や近年のスタッツを見る限り、もう少し数字を落としてしまう気がします。その時にセルティックスがディフェンス力を維持できるのか?

少なくとも今以上にホーフォードが良くなる事は考え難いです。



本当は攻守両面でセルティックスを考える予定でしたが、思ったよりもディフェンスだけで充実したのでディフェンスチームらしくここまでにします。オフェンス編も考えてみます。

まさかのジェイレン・ブラウンをMVPに選んだわけですが、それくらいの活躍をしていると思って試合をみていただきたいという事もあります。

よくある記事だとアーヴィングの事ばかり書かれていますが、そんな事はないぞ!知らないだけだろ!観てればわかるだろ!という思いです。
では、そこまでブラウンが最高でアーヴィングの貢献度は高くないかというと、やっぱりそんなわけないわけで。オフェンスに触れてみれば違いも出てくるでしょう。

なお、本当にMVPに選びたいのはブラウンでもアーヴィングでもホーフォードでもなく、ブラッド・スティーブンスHCです。
作り上げられたチーム力だけでなく、試合中の采配でも違いを生み出してしまうスティーブンスHC。

 

セルティックスが強い理由?

HCが優秀だからです。

 

違った。

 

HCが超優秀だからです。

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