岐路に立つCJマカラム

管理人はCJマカラムのことを高く評価していた。しかし、その評価は難しいものになってきている。

 

◉MIPからリーグ最高へ

 

激戦のガード部門でオールNBAファーストチームに選ばれたダミアン・リラード。チームの大黒柱はエースとして重要な局面で得点を重ね、PGとしてオフェンスを牽引する。守れない評価もなんのその。チームディフェンスではしっかりと結果を残したのでした。

その一方でより期待していたのはCJマカラム。15-16シーズンにMIPを受賞し高い得点力を示したシューターは、16-17シーズンに更にその数字を向上させました。

 

〇マカラムのFG

15-16 2P46.3% 3P41.7%

16-17 2P50.6% 3P42.1%

 

単に3Pが上手いのではなく、2Pの確率を向上させているのが素晴らしく、リーグ最高クラスの確率マシーンに成長するかと期待していましたが、昨シーズンは成功率を落としてしまいました。

17-18 2P46.5% 3P39.7%

 

サイズがないマカラムは被ブロック数が多く、キレのあるドライブで切り裂くわけではありません。どうしてもペイント内で苦しむ傾向がありますが、ペイント内シュートと変わらないくらいの本数を打つミドルが48%近い高確率で決めるのが最大の特徴でした。だからこそリーグ最高のシューターに輝く気がしていたのです。

ところが昨シーズンはこのミドルが43%まで下落しました。それでも十分に高確率ではありますが、リーグ最高への道は遠くなってしまいました。

 

またシーズンを通じて安定していたことも16-17シーズンの特徴であり、尻上がりに調子を上げていくリラードを上回る部分でもありました。ところが昨シーズンは調子の波が激しくなってしまいました。特にオールスター以降は3P34%と低調で、ブレイザーズの終盤の失速に大きく関与しています。

より高次元のシューターになることが出来ず、安定感も不足していた昨シーズンでした。

◉より中心的な存在へ

 

マカラムがシュートの成功率を落とした理由にプルアップシュートの増加が挙げられます。特にリラード不在の時間になるとPG的な役割を果たしながら、自らプレーメイクする形が求められました。

〇3Pアテンプトの変化 16-17 →昨シーズン

キャッチ&シュート 3.5本 → 2.8本 

プルアップ 1.9本 → 3.0本

 

従来はプルアップでも40%を超えてくるのがマカラムの特徴でしたが、+1.1本はディフェンスに警戒されすぎました。それでも37%決めているので高確率であり、役割を果たしたことは事実です。全体の成功率は落ちましたが、それも致し方ないのでした。

しかし、その反面でアシスト数が3.6本→3.4本と減っており、プレーメイクしているというよりも自分で勝負してシュートに持ち込んでいるに過ぎないと捉えられます。2Pの確率低下も含めてマカラムで勝負することは想定よりも効率が悪くなっていたのです。

 

〇マカラムのレーティング オン/オフコート

オフェンス 106.3/105.7

ディフェンス 104.7/102.7

 

レーティング差はマカラムがコートにいると+1.6、いないと+3.0となりディフェンスの課題を補うほどのオフェンス力を発揮出来ませんでした。それでもチームの平均を上回っていますが、ブレイザーズの場合はガベージタイムの若手達がすこぶる数字が悪い事情もあって、マカラムのオフェンスは納得いく数字ではありません。

 

というのも、相棒のリラードが残した数字は圧倒的でした。だからこそオールNBAファーストチームに選ばれたのです。

〇リラードのレーティング オン/オフコート

オフェンス 108.3/101.4

ディフェンス 103.5/105.7

 

リラードのオンコートは+4.8、オフコートは△4.3とチームにとっては大きな違いがありました。プレータイムの長いリラードとマカラムは同時にコートに立つことが多いため、マカラムのみの時間はチームの数字が大きく落ちていたのです。

リラード&マカラムという特別なガードコンビでオフェンスを構成するブレイザーズですが、マカラムのシュート能力は高いものがありましたが、プレーメイクまで含めると厳しかったのです。

 

岐路に立つCJマカラム

高い能力と成長を示したからこそ、役割が増やされた昨シーズン。その結果は芳しいものではなく、「リラードあってのマカラム」という構図が出来ていました。オールスター選手として自分の存在価値を示すには1人でチームを引っ張れる存在である事を示さなければいけません。

 

ちなみに2人が同時にコートにいる時間はオフェンス108.8、ディフェンス103.9で+4.8でした。リラードのみと同じ数字だけど、スターター合わせの時間で優位に立てる力があることは示しています。

最強セカンドユニットがいれば強いチームなのです。

ブレイザーズは最強セカンドユニットを作れるのか

 

◉カギを握るウェイドⅣ

 

しかし、実際にマカラムのプレーをみると中心的な位置づけでプレーメイクさせたい気持ちはよくわかります。むしろリラードの影に隠れて目立たないだけで、その上手さはリーグのスーパースター達と比べても遜色ない。

クイックネスに優れているわけではないが、前後左右に細かくフェイクをかけ続け、そしてどのタイミングで終わるのかが読めないハンドリングをしており、そこに細かくシュートフェイクを混ぜてくる。ドライブの特徴としてリングにアタックする事を優先しない点があり、高いシュート技術への自信があるため「リングに近づく」ことよりも「ディフェンスとスペースを作る」事を目指しており、スペースが出来た瞬間にミドルを選択しているのです。守る方からすると読みにくい。

 

また多くのフェイクをかけておきながら、シュートモーションになると何事もなかったように同じ形でリリースしている。そしてフローターも距離を選ばずに決めてくるのだから、かなり守りにくい選手です。

一方でこれだけのハイライト集ながらアシストが少ない。ディフェンスにヘルプに来させない上手さがあるのだが、周囲としても合わせていくのが難しい動きをしているのがマカラムの特徴なのでした。

高いシュート力と巧みなフェイクから安定したリリースは、ディフェンスからすると厄介なことは間違いないのですが、オフェンスの起点として怖いかというとそうでもない。ピック&ロールからディフェンスを崩すわけでもなく、自分で決める能力は高いけど、連携力に劣るので確率の低いシュートを選択させれば良いのです。

 

この点については、ブレイザーズのベンチPGにも問題がありました。シーズン途中からネイピアーが台頭してきたものの、同じように自分で積極的にアタックすることでリズムを作るタイプだったので、マカラムのプレーを助けてくれたかというと、そうでもなかったのです。

そのネイピアーはネッツに移籍し、新たに加わったのがセス・カリー。こちらもまた助けてくれそうにありません。エバン・ターナーがPG役もしますが、ゲームメイク能力には欠ける。

 

そこで期待したくなるのは16年のドラフト17位ながら、NBA2年間で40試合しかプレーしていないウェイド・ボールドウィンⅣ世。サマーリーグでは25.4分で7.4アシストを記録したボールドウィンは常に周囲を見回すゲームメイカーで、高いシュート力をもったウイング達を使っていき、チームを優勝に導きました。

 

自分で積極的にアタックするよりも、しっかりとルックアップして周囲を使ってくれるPGはマカラムの良さを活かしてくれそうです。またフィジカルの面でも強みがあり、ディフェンス面でマカラムを助けてくれそうです。カリー弟とマカラムだとあまりにも弱すぎて・・・。

PG的な役割も果たしていた昨シーズンに比べると、このボールドウィンが存在感をしてしてくれれば、得点という自分の仕事に集中しやすくなりそうです。ちなみにドラフトしたのはグリズリーズなのですが1年で解雇しているのでした。1巡目指名をそこまでアッサリと解雇するのかね。若手の少ないグリズリーズ。

 

難しいシュートも簡単に決めてくるCJマカラム。非常に高いオフェンス能力を示しているものの、それがチームに勝利をもたらすレベルまで昇華させることが出来ず、そして安定感を欠いた昨シーズンでした。それはスプラッシュブラザーズレベルのシュート能力がありながら、ブレイザーズのチーム事情から確率を落としたともいえます。

慣れない仕事もこなしたことはマカラムの引き出しを増やしたはず。ブレイザーズの新シーズンの課題をセカンドユニットを充実させることとしましたが、それはマカラムの浮沈も握ります。周囲に活かされてこそポテンシャルを発揮するのがマカラムなのです。

ハイスコアリングマシーンになれるのか、一介のシューターに終わるのか。岐路に立つCJマカラム

 

岐路に立つCJマカラム” への5件のフィードバック

  1. いつも楽しく読ませていただいてます。

    シュート力に強みのあるアンダーサイズの2番ってタイプは、個人としていい成績を残せたとしても、チームの核として強豪になれるかという点では難しいタイプな感じがしますね。
    ちょっと古いですが、ベン・ゴードンを思い出しました。
    この手のタイプはシックスマンとしての運用がベストな気もしますが、これだけのオフェンス能力があると、控えから出すのも勿体ないですし、単純に控えの時間に一人で好き勝手やらせても強みが生きるタイプではないと思うので、コーチとしては頭を悩ませるところですね。
    だからこそ、リラード不在の時間帯にゲームメイクを任せられそうなウェイドⅣとのコンビが機能すれば、チームとしてもより上を目指せそうです。
    プルアップが多い選手は、効率が悪くなりがちで時代に逆行してるイメージがありますが、それを覆すシュート力は見てて楽しいですし、頑張ってほしいです。

    1. 優勝を考えるとエースとしてはちょっとね。ただそこまで小さいわけではなく、エースはリラードなのであまり関係ないと思います。
      シックスマンの方が輝くというのは、その通りだと思います。マカラムの場合はシックスマンとしては勿体ないレベルの選手というだけ。アイザイア・トーマスも本当はシックスマンだと思いますし。
      いずれにしても大きすぎる役割よりも、得点に集中させて上げたい選手です。

      プレシーズンをみるとプルアップの多さをチームで改善することを考えていそう。

  2. リラード⇆ウォール、アミヌ⇆ポーター的な感じで、選手の役割がWASと少し似ている気がしますね。ところで、エースガードの下でプレーするマッカラムとビールはwhynotさん的にどちらの方が優秀だと思いますか?

    1. 似たような感じですが、マカラムの方が安定感があって上でしょうね。オフェンス面に限っては。
      非常に良く動き回ってからでもシュートを決める点もマカラムの方が優れています。
      これがエースガードがいなくなると評価は逆転してくるかも。
      https://basket-count.com/article/detail/10648

  3. CJの件ですが、昨シーズンの後半の調子落ちは単なる組み合わせの問題だと思っています。リラードがベンチに下がると、ネイピア、コノートン、ターナーの内の2人と組むことが多かったのですが、ネイピアはサイズのないリラードでパスを捌くタイプでなく、コノートンはオフボールで何とかフリーことが一番の役割であり、ターナーはハンドラー兼インサイドでのショートジャンパーだけの人です。相手のディフェンスは必然としてCJに対して厳しくなり、時にはダブルチームも見られました。決して能力が落ちた訳でなく、チーム人員と構成の問題だと認識しています。つまり、CJに如何にして1対1をさせるか次第で、彼のFG%やレーティングが元に戻ると思っています。私もそのためにもボールドウィンを控えPGとして固定して使ってもらいたいのですが、そうはならないのではと心配しています。そのチームの問題は次のジャズ戦でコメントします。

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