カズンズとジェレブコ

5人目のオールスターが加わったウォーリアーズってどうなのさ?

 

◉変化をつけるセンター

 

ウォーリアーズの戦術的な特徴の1つはセンターの使い分けによる戦術流動性でした。目立ちはしないけど万能タイプのルーニーとベルはディフェンス面の穴が少ないのが特徴であり、そこにスモールラインナップでのグリーンを含めた3人はスクリーンやスピード面での貢献が中心であり、似たような役割が求められていました。それに比べるとチームに残らなかった3人はチーム戦術的には特徴のある選手達でした。

パチュリア、マギー、ウエスト

スピードはないけどポストアップとスクリーンを使うパチュリア、高さを全面に使ってくるマギー、そしてミドルシュートの堅実性でディフェンスを引き出すウエストと、相手によって使い分けていました。万能な3人はどんな対戦相手でも出場しますが、この3人は相手によっては出てきません。

ウォリアーズの強さを支えるセンター陣、『脇役』の個性を生かす起用法を考察する

 

3人失ったウォーリアーズはデリック・ジョーンズjrは残してマギー役になるかもしれませんが、ロスター枠を空けておきたい誘惑にも駆られ、センターとしてはカズンズを加えただけになっています。

「だけ」というにはあまりに豪華な選手ですが、短期決戦のプレーオフとは違い、長いシーズンはケガや疲労にも対応していく必要があり、ましてやカズンズの復帰は1月以降ともいわれています。実質的に13人のロスターでシーズンの半分を過ごすであろうウォーリアーズには、ちょっとした不安があるのです。

 

◉カズンズは1人3役

 

ただし、万能なカズンズは1人3役です。つまりポストアップやスクリーンを中心としたパチュリアの役割が出来れば、ミドルシュートでディフェンスをアウトサイドに引き出すウエストの役割、そしてアウトサイドでのパス回しを促すグリーンの役割もしてくれます。

3役こなせることをメリットと捉えるか、1人になるから使い分けが難しくなることをデメリットと捉えるか。普通は前者なのですが、ウォーリアーズに関しては豪華な周囲を考えるとデメリットになり得ます。特にカズンズは動かないことだけが弱点であり、ウォーリアーズのセンター達は走るのが特徴です。

〇オフェンス平均移動速度

カズンズ 3.77

パチュリア 4.58

ウエスト 4.02

マギー 4.57

 

その実力に疑いようはありませんが、長いシーズンを考えた時に人数を減らし、走らないカズンズに複数の役割を担わせることは、あまり効果的ではありません。とはいえ、プレーオフまでに融合できれば、それで十分くらいの考え方でしょうから、チームとしては何一つ急いではいないでしょう。

シーズンでの強さは少し落ちるでしょうが、「だから何だ?」という連覇しているチームの余裕

 

◉ベンチシューターの変更

 

昨シーズンのウォーリアーズの泣き所だったのがベンチシューターでした。イアン・クラークからニック・ヤングにバージョンアップしたことで強みを増したと思われましたが、3Pの部分ではヤングも結果を残した反面、運動量とカットプレーで勝るクラークの方がチームオフェンスの中で機能していました。

そしてヤングとは再契約せず、ヨナス・ジェレブコを加えることになったのです。

 

〇ジェレブコ 17-18シーズン

プレータイム 15.3分

リバウンド 3.3

3P 41.4%

 

6-10のサイズがあるジェレブコはヤングとはポジションが違いインサイドプレイヤーです。前述の通り、ビッグマンが減ったこともあり、ジェレブコにはヤングとウエストという2人の後任役を求めることになりました。スポットシューターではありますが、高確率の3Pは新しい武器になりそうです。

〇ジェレブコの3P

右コーナー 51%

左コーナー 55%

またコーナーからの3Pがメインウエポンというのは、ウォーリアーズにはない形です。コーナーを空けておき、カリーやトンプソンが移動して利用しているのですが、片方のサイドにスポットシューターを配置することになるわけです。スターターでの起用はされないであろうジェレブコなので、大きくスペーシングし、時には裏のスペースにカッティングするプレーは、システムの微調整が必要ではありますが、おそらく何の問題もなくフィットし、新しいパターンを生み出すと思われます。

ちなみにディフェンスの視野から消えて、カッティングしてくるのはリビングストンの特権。ミドルシュートの上手さも含めて、そんな役割も少しだけ担ってきそうです。

 

同時にベンチメンバーの時間はチームシステムも少し変更される匂いがします。アウトサイドに開くビッグマンが加わったことで、リビングストンやマッカウのプレーメイクを楽にしてくれるでしょう。またインサイドにスペースが生まれるので、おそらくカリーと同時起用がメインになります。

2年続けて同じ形を採用してきたウォーリアーズは少し停滞気味になりそうだったので、ジェレブコによるシステム変更はポジティブに捉えて良いはずです。またジェレブコは不足していた「グリーン&デュラントの代役」にもなり得ます。ここは単にポジション的に手薄と言うだけですが、単にPFなのではなくパスとシュートの基本スキルがあり、アウトサイドでボールを循環できるビッグマンを手厚く出来ました。

いずれにしても人数が減った代わりに、これまでの役割分担で言えば2役、3役をこなせる選手を獲得しました。それは必ずしも良いことばかりではないですが、チームとしてのマイナーチェンジを図ったのでした。カズンズの獲得はラッキーでしかありませんが、必要だった変化です。

そしてこれらのマイナーチェンジの成否によって、空けてあるロスター1枠の使い方を考えるはずです。現段階では「トレバー・ブッカーでも補強すれば良いのに」という雰囲気ですが、インサイドが上手く回るならアウトサイドの補強を検討するでしょう。王者の余裕を感じるのでした。

 

◉3Pの確率は下がるのか?

 

ウォーリアーズの3Pは強力な武器という認識がありますが、では3Pを武器として持つ選手を集めているかというとそうではありません。これまではカリー、トンプソン、デュラント、ヤングの4人しかいませんでした。昨シーズンは2369本のアテンプトがありましたが、4人で74%にあたる1740本を打っています。アンチバランスシステムこそがウォーリアーズの強みです。

前述の通り、コーナーから50%オーバーのジェレブコはヤングにかわる3P役として高確率が期待できますが、その一方で35%だったカズンズは微妙なラインです。シュートの上手さを持ち合わせますが、それを4人と比べると・・・。

昨シーズンのチーム確率はダントツの39.1%でした。「3Pが打てるカズンズが加わって、益々破壊力を増す」と思われがちですが、スプラッシュブラザーズのアテンプトを奪っては元も子もないのです。

 

シーズン前半の復帰が難しいことも含めて、とりあえずチームとしてカズンズは後回しで考える案件のはず。ウォーリアーズの当面の課題は、クック、マッカウ、ベルあたりを成長させることなので、人数を減らしていることはプレータイムを振り分ける目的もあると予想されます。

ビッグマンに関しては、相手が強くなるとディフェンスが万能で、ミスが少なく、献身的にゴール下でリバウンドに参加するルーニーと、ペリメーターディフェンスと運動量で勝負するベルの出番が増えました。チームのバランスを取る上では、この2人を中心に考えるはずです。

 

昨シーズン前半にドレイモンド・グリーンがあまりにもオフェンスリバウンドに参加せず、そしてシューティングスポットを埋めてしまう問題が多発しました。プレーオフになったら「プレーに参加しない」ことが増えて対処されたのですが、ウォーリアーズとしては

アウトサイドにスペースを作ること

ボールの回収役

この2つの役割はかなり重要です。本来はSFだけどイグダラは両方が上手い選手なので、オフェンス面で機能させることが出来ています。終盤の勝負所と違い1試合トータルで考えるとインサイドでハッスルする役割は欠かせません。カズンズもジェレブコも多彩な能力を持ちますが、この2つが上手いかというと難しい。

まずはビッグマンの人数が減った状態で、1試合をどんなバランスで戦うのがやりやすいのかを試すことになるでしょう。それは新戦力の融合以上に、若手達の成長がカギを握りそうなのでした。

 

カズンズとジェレブコ。これまで分業制が確立していたウォーリアーズの中で2役、3役をこなす特徴をもった選手が加わりました。ちょうど良いくらいのマイナーチェンジはチームの刺激となり、適切なバランスを求めて戦うシーズン前半になります。王者の余裕と、多くの試合で圧勝することが生み出す停滞感を刺激に求めた雰囲気です。

 

 

カズンズとジェレブコ” への8件のフィードバック

  1. ジェレブコには本当に期待してます。あまりにもGSWにピッタリの選手だったので、何でユタは簡単に放出したんだ?首をかしげたくなりますね。意外にも流行りのシューター系ストレッチ4がいなかった(KDは規格外)GSWにわかりやすいジェレブコが来たので楽しみです。HOUも何で取らなかったのか…

    1. ジャズは残して良かったと思いますが、インサイドが薄くなったのどうするんだろ?

      ジェレブコはジャズからリリースされる前にウォーリアーズとの契約が決まっていたのと、ロケッツがかっ攫うにはサラリーの問題もあったし、カーメロも決まっていなかったので手を出すほどではなかったですね。バトラーの件もありますが、タイミングも重要です。

  2. ウォリアーズはひょっとしたらレギュラーシーズンでは西3位ぐらいになるかもですね
    シーズン中は試行錯誤に終始しそうです
    かといってロケッツが1位間違いなし! とも言えない気もしますね
    大きな変更の無い、案外ジャズかサンダーあたりが1位争いするかも…

    1. マイナーチェンジに過ぎないので、ケガ人が出なければウォーリアーズが行くと思います。トップチームは勝ちまくるので最終的にはケガが大きく響くことになり、順位はよくわかんないですね。

  3. 私の記憶が正しければカズンズはキングスの頃から無双してたけど、
    NBA全体の高速化についていけなくなってポイントセンターになったかと。

    クアドルプル・ダブル達成できそうな数少ない選手ですけどね。
    一度でいいからクアドルプル・ダブルの瞬間をみたい。

    1. センターというスキルベースじゃないのを、キングス時代に上手く引き出されたとも言えるかと。
      中心になってプレーした方が面白そうな選手なので、来シーズンは他のチームに移籍して欲しい。
      デュラントも1人でやって欲しい。

  4. カリー、クレイ、デュラント、ドレイと一緒にやるならスティーブンアダムスが一番フィットするセンターだと思ってるのですがいかがですか?

    1. アダムスは大抵のチームでフィットするでしょうね。スクリーンの強さとゴール下の献身性はどんなチームでも欲しいでしょうし。
      ウォーリアーズならばルーニーの上位互換ですから、間違いないし、自分が得点しなくても文句を言わない良さがあります。

      ただカリーの陽気な感じや、ドレイモンドの空気を読めない感じを嫌うかも。

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