センターを知ればチーム戦術が判る 〜前編〜

「現代センターはアウトサイドからも攻められないとダメだぜ!」

そんな固定観念に縛られていませんか?

それは多分、2年前の話。だから昨季のトレンドはストレッチ5でした。代表格はブルック・ロペスとマルク・ガソル。3Pなんて全く打たなかった2人は昨季から連打するようになりました。戦術の変化に合わせて必要な武器を新たに取り入れたわけです。

ポイントは《戦術に合わせて》です。



チャイニング・フライはこんな時代になる前から3Pを打っていました。それは個人能力として武器だからです。サム・パーキンスなんて遥か昔からやっていた選手もいるし、サボニス父に代表される欧州系には常識だったし。

彼らは選手としてその特徴を活かしますが、戦術かと言われると微妙です。インサイドプレーが超強いなら3Pなんて必要ない時代だったはずです。だからダントーニサンズは小さなセンターでうまくいっていたのにシャックを獲得したわけです。

 

ガソル弟によるとヒートがクリス・ボッシュをセンターに据えた頃から早さを重要視し始めたという事ですが、早さよりもミドルレンジショットを使う事、つまりインサイドプレーを重要視しない風潮が強まったと考えます。ボッシュはウェイド&レブロンを活かせる《戦術に合わせて》コンバートされたはずです。

そして登場したのはスモールラインナップ。そもそもセンター要らない説が登場します。

現地でどのような使い分けをされているか分かりませんが、スモールラインナップにも2種類あります。センター不要と機動力PFをセンターにするタイプです。

何れにしても高さ&パワーの旧来型センター受難の時代がやってきました。アウトサイドを決められないと生き残れないという雰囲気になったのは事実です。



取り残されたセンター達は努力します。この夏の流行はダイエット。主にディフェンスのためではありますが、高速化する試合の中で存在感を発揮するためには重い身体ではついていけません。

一方でHC達は考えます。高速化する時代でどうすれば勝てるのか?

「やっぱりスモールラインナップ対抗しかない」

そんな簡単な答えに辿り着くとロスターを変えていきます。代表格はキャブス。ファイナルまで進んだモズコフをクビにし、トリスタン・トンプソンをセンターにコンバートしたら、今季はラブに変えていきます。

でも、誰もがそんな回答を求める訳ではないのも面白い所。時代に沿った戦術を構築して行くHC達が存在します。

そして不要論も出ているセンターに何をやらせているかで、各チームの特色が出ていたりします。実はセンターと言いつつPFと合わせての考えだったりもしますが。



というわけで、今回のテーマはセンターの活用方法にチームの特色が出ていること。

「センターを知ればチーム戦術が判る」

かなりのチャレンジ企画です。要は見切り発車です。開幕からひと月経った時点で行われている内容をセンター視点でまとめるものでもあります。
オールスター明けには既に時代遅れになっている可能性もあります。同時に開幕後は良くてもその頃には相手に読まれて機能しなくなっているかもしれません。

前編は新しく感じた内容よりも近年の特徴になるため、さすがに大丈夫だと思います。
なお、この記事は11/13〜15にかけて作成していますので、数字はその頃の数字です。



①ウエストブルック、ハーデン、ウォール

PG時代において、その突破力を中核に置く戦術があります。優秀なスコアラータイプのPGは多くいますが、起点としてチームを動かし、フィニッシュもアシストも全てを担うのはこの3人。

ウエストブルック 19.6点 10.2アシスト
ハーデン 29.9点 10.0アシスト
ウォール 21.0点 10.2アシスト

その特徴は得点以上にアシスト数にあります。自身が積極的にドライブをしながら周囲にアシストしていくタイプです。
相棒はアダムス、カペラ、ゴータット。全員3Pは打ちません。その役割は

・トップでピック役となりペネトレイトを促す
・ゴール下を空けてガードにフィニッシュさせる
・ガードと合わせてリングにダイブし、パスへの合わせやオフェンスリバウンドでフィニッシュする

カペラはアジリティとキャッチ&ダンクで、ゴータットはタイミングとシュートスキルで、
アダムスはその中間のイメージと能力は三者三様ですが、共通するのは

◯ガードがドライブするコース構築する
◯3Pは打たない
◯ガードについていく機動力

得点&アシスト能力が高いガードを中心にしたチームには、いわゆる「センター」としての役割を担いますが、必要とされているのは合わせる能力やスクリーン能力です。そして能力の高いガードについていくだけの機動性も求められます。

アダムスとゴータットはオフボールでのクリアスクリーンも良くやります。自分をマークしているセンターに自分でスクリーンをかけてヘルプさせないやり方です。



このタイプのセンターを利用するチームに共通するのは「ストレッチ4」です。つまり3人は3P担当のため、インサイドはほぼ1人で対応する能力が求められます。

「PGの突破力を活かすため広くスペーシングする。空いたインサイドをPGとセンターのコンビが利用する」

PGには突破力だけでなく広い視野が求められます。個の力を最大限に活かすタイプの戦術であり、そのために必要なセンターがこのタイプという事です。



「センターを知れば戦術が判る」というのは、センターが何のために、どんなスペースを構築して、どんな能力が求められているのか、という事です。
本来はPFだったカペラがセンターに回ったのは戦術に適した能力を持っていたからです。

まずは分かりやすい3チームから触れてみました。PG3人の特徴は異なりますが、センターに求める能力は似ています。トレードされても問題なく機能するはずです。

つまりこうやってセンターの特徴とチームの特徴を比べていく今回はそんな企画です。



シモンズ、レブロン、シュルーダー

①に近いのがこの3人です。

シモンズは「シューター3人+ホルムス」で同じ形が出てきます。エンビートがいる時の戦術は迷走しています。発展途上とも言います。

レブロンも「シューター3人+トンプソン」で同じ形になりますが、今季は構成が大きく変わり、さらにレブロンもPGではなくなってきています。

シュルーダーは今季からエースとなり近づき始めています。相棒はルーキーのコリンズ。まだ何も煮詰まっていません。というかシュルーダーは自分の力を過信しすぎていて、ピックを使わないからダメ。パスも下手だし。このタイプになるにはレベル不足。



②3Pシュータータイプ

①がインサイドのスペースをPGとのコンビで利用していたのに対し、センター自身がアウトサイドに広がってスペースを確保するのが3Pシュータータイプです。

◯全シュートにおける3Pの割合
ブセビッチ 31.3%
スペイツ 75.5%
ラブ 41.7%
パウエル 41.7%
ノビツキー 32.6%
ホーフォード 32.7%
メイカー 54.3%
グリーン 47.7%

チームはマジック、キャブス、マブス、セルティックス、バックス、ウォーリアーズです。
ただし、ソン・メイカーとドレモンド・グリーンはメインのセンターではありませんので、チーム戦術の一部になります。

アンテトクンポ
レブロン
デュラント
(ポール・ジョージ)
(ウィギンズ)
アーロン・ゴードン
バーンズ

得点ランク上位に並ぶSFの選手達です。

ウイングから仕掛けてフィニッシュさせるためには、センターがインサイドにいない方が良いという事です。
3Pが多いシューターのジョージとタウンズが外からも打つウィギンズがこの中に入りません。またグリーン以外がセンターになる事が多いデュラントも3Pの割合が高いです。

本当はここにヘイワードが加わるはずだったセルティックス。ブラウンとテイタムが頑張っています。



「ウイングに得点させたければセンターには3Pシューターを使え」

これが鉄則です。
センター達はマークが甘いから3Pを打つわけではありません。ウイングがフィニッシュし易いようにアウトサイドまでリムプロテクターを引き出すわけです。

マジックの2人はシュートは得意だったかもしれませんが、3Pを多用するようになったのは《戦術に合わせて》です。
のガードはドライブでフィニッシュするだけでなくアシストも担当するのに対して、ウイングがフィニッシュする前提で構成されているのがです。ドライブした時にリムプロテクターがいなければ高さで勝負してしまえるメリットがあります。

ヘルプがくれば3Pラインの外でセンターが待っています。



センターを知れば戦術が判るという意味ではの選手は試合を観ていればボールの近辺に頻繁に顔を出すので良く分かりますが、の場合は全く目立たないケースがあります。

例えばホーフォードは主としてスクリーンからポップしますが、時にはコーナー付近で立っているだけの時もあります。相手センターがホーフォードをしっかりとマークすればインサイドを味方が使い、ヘルプ優先ならばホーフォードが3Pを打つ事になります。
つまり、自分の得点が伸びるかはディフェンス次第です。時には全く目立たない事もあるわけです。

試合中にオフボールで何をしているかに注目してみましょう。



③ミドルレンジシューター

アンソニー・デイビス
マイルズ・ターナー
ポウ・ガソル
エンビート
ホワイトサイド
コーリー・ステイン
ラビジエリ

定義するのが難しいタイプです。ペリカンズとペイサーズはセンターをエースとして考えています。必要なのはスペースです。そのために自分でミドルを打ちます。シクサーズはエンビートが休みまくるので戦術には達していません。

ガソル兄はエースではありませんが、中外問わずにプレーします。優勝したレイカーズ時代はコービーのためにインサイドメインでしたが、《戦術に合わせて》プレーを変える多様性のある選手です。



このタイプは全体が流動的にポジションを変えて行くチームに多くなります。

ペリカンズはデイビスに打たせるために周囲がデイビスに合わせて動き、パスをします。

ターナーは周囲も積極的に仕掛ける中で自分のシュートチャンスを探します。ガソル兄も同じです。

難しいのはホワイトサイド。本当はミドルシュートが多いわけではありませんが、必要なら打ちます。周囲が動き回るヒートで1人だけ軸のように真ん中にいます。そこでボールを持ちパスするのが基本ですがフリーなら躊躇いなく打っています。積極的には打たないけどミドルシュートが役割に含まれています。

もっと難しいのはコーリーステインとラビジエリ。単にキングスが個人を伸ばす方針だから、ミドルシュートも仕事に入っているだけです。クーファスのようにガードのシュートに合わせて動いています。



つまりチーム戦術としては、

「チーム全員が流動的に動く」

そんなタイプに当てはまるセンター達です。
ただし、センターまで広く動いてしまうとバランスが取れなくなるので、ミドルレンジくらいまでに制限されています。エンビートとガソル兄は制限ありません。

◯パス数上位
シクサーズ 354
キングス 332
(ホークス)329
(ブルズ )326
(ジャズ)322
(ニックス)322
ペリカンズ 319
ペイサーズ 314
ウォーリアーズ 312
スパーズ 311

パス数の多いチームのセンターがここに当てはまります。出てこなかったチームで言うと

ジャズはフェイバーズがセンターならばミドルレンジを打ちます。
ホークスはよくわかりません。
ブルズのロペスもミドルレンジ打ちます。戦術に合わせてムリに頑張っている雰囲気もあります。

ここで難しいのは、戦術が更に極端に振れるとノーインサイドになります。ウォーリアーズやロケッツとサンダーの控えメンバーで採用される戦術です。ニックスもポルジンギスでやっていました。

ヒートは例外でパスは回しません。代わりにドライブで動かしまくります。



全員が流動的に動き、ボールを回す戦術ではミドルレンジを打つセンターがいる

戦術とセンターの定義はこんな形ですが、ある意味センターに特殊性が求められていないとも言えます。個人で頑張れるかどうかだけ。
自分で仕掛ける事は少ないですが、ボールを回しミドルレンジまでプレーエリアを広げてキャッチ&シュートを狙います。でもフリーになれるかは個人の資質なので大きく差が出ます。

ペイサーズでターナーはサボニスに負けかけています。その理由はサボニスの方がインサイドでフリーになるポジショニングが上手く、ターナーはミドルレンジに出て来すぎるからです。

ボールに寄って行くほどシュートチャンスが減るのでオフボールの動きが問われます。



④ハイポストアップ

バランチューナス
ヌルキッチ
昔のセンターの定義に当てはまりそうな2人です。実際にはハイポストは少ないですが、ポストアップして自分で仕掛けるのが得意です。2人ともミドルも打てますが、メインはショートレンジです。

ラウリー&デローザンのラプターズ
リラード&マカラムのブレイザーズ

ガード2人がエースという構成も似ています。と違いガードはアシストよりも自らシュートを決める事が仕事です。ゴール下へのドライブだけでなくジャンプシュートを武器にしている点も似ています。

1人のガードと連動することよりも、センター自身にマークを引き寄せておく事が求められます。身体でディフェンスをブロックしてピン留めしておく事も大切です。

「ツーガードのエースを活かすには、センターにポストアップさせろ」

これが鉄則。オールドタイプと思いきや共に欧州系というのも興味深いところで、シューターを活かせないとダメなのでしょう。



新スタイルに取り組んでいるラプターズにバランチューナスは合うのか合わないのか微妙です。元々、微妙でしたが戦術と動きが合っていなかったりします。それはバランチューナスよりも戦術がブレているから。

そして昨季にプラムリーとヌルキッチのトレードで成功したブレイザーズ。プラムリーはに近かったのでガードチームとしては有効でしたが、ツーガードならばです。

そしてサンプルが少ないので、本当にポストアップとツーガードが有効かは難しいラインです。ポストアップだけではダメなのは間違いありません。
またヒートのホワイトサイドはこちらの方が適切かもしれません。ツーガードではないけど、全員がガード的なアタックをするヒート。



ちなみにゴータットも選手としてはこのタイプです。ウィザーズもツーガードを活かしたいオフェンスをしていて、ゴータットはポストアップから攻めていました。

それをブルックスHCによりウォールを起点にするオフェンスに切り替えたのが昨季です。
結果的にゴータットは個人スタッツを落とし、チームはオフェンス力を大きく上げました。《戦術に合わせて》自分のプレーを変えたのがゴータットであり、「センターを知れば戦術がわかる」というわけです。



前編おしまい

チームによっては多少強引な部分はありますが、センターと戦術の組み合わせは似通ってくる傾向があります。
今季はセンターを変えたチームが少ないのですが、そこにHCも昨季から変わっていない事が影響していると思われます。

「試合中に何を見たら良いのか?」

そんな質問を頂く事がありますが、1つの回答として「センターが何をしているのか?」を見て下さい。

ゴール下に陣取るセンターはフィニッシュに役立つし、リバウンドとってくれるのですが、時に邪魔なので、その役割をどうするかに色が出やすくなります。
オフボールでスクリーンをかけまくるセンターもいれば3Pで構えていたり、逆サイドに隠れていたり。そこにチームの狙いが詰まっています。

 

主要なセンターで今回出てないのは

カズンズ、ガソル弟、ブルック・ロペス、ヨキッチ、ジョーダン、ゴベール、カンター、ハワード、ドラモンド。

彼らに触れてみるのが後編です。



ウォーリアーズファンに捧ぐ

「いろいろ言ってるけど、勝っているのはウォーリアーズなんだからスモールラインナップ最強でしょ!」

そんな指摘も受けそうですが、ウォーリアーズファンなら違う感想を抱くかもしれません。

「あれ!ウォーリアーズってどのタイプなの?」

実はウォーリアーズは特殊です。そこに強さの一端があります。
主に4人のセンターがいます。パチュリア、マギー、ウエスト、グリーン。彼らを今回のカテゴライズに合わせると

マギー
グリーン
ウエスト
パチュリア

つまり全タイプのセンターがいます。最後はグリーンでイグダラを加えて全員流動アタックorデュラントなわけですが、それ以外の3人とスプラッシュブラザーズの組み合わせには特徴があります。

◯パチュリア 平均13.9分出場
カリー+トンプソン+パチュリア 13.1分
・基本はツーガード+ポスト

◯ウエスト 平均11.6分出場
トンプソン+ウエスト 9.8
・全員が流動的に動くミドルシューター

◯マギー 平均8.6分出場
カリー+マギー 7.3/8.6
・PG+機動センター

デュラントが便利でどの役割も出来るので違う組み合わせの時間もありますが、トンプソン+マギーは2.0分だし、カリー+ウエストの組み合わせなんて2試合しかありません。

ツーガードならばパチュリアのポストアップ
動いてパッシングならミドルのウエスト
カリー主導なら機動&ダイブのマギー

得点を取るメインキャストだけみていると分かりにくいですが、ローテーションのセンターの違いでウォーリアーズが戦術に多様性をもたらせている事がわかります。

特に目立つのは3Q終盤から始まるウエストの時間。積極的にミドルを打つのは他のセンターにはない特徴で、トンプソンを活用する狙いと共にボールの循環も良くなります。全員が動いてアタックする流れを思い出してコア5の時間へと繋がります。



実はウエスタンには控えに違うタイプを用意するケースが結構あります。選手交代でセンターと違うポジションの選手が交代するパターンも多くなります。ウォーリアーズほどのパターンを持つチームはありませんが。

ディフェンス面での対応力も含めて、強豪ひしめく中で戦術的な選択肢が複数ないと勝ち残れません。

センターを知ればチーム戦術が判る 〜前編〜” への1件のフィードバック

  1. いやめっちゃ面白い分析でした!
    ありがとうございます!!
    高校のコーチをしていてセンターを指導していたときや今社会人サークルでセンターをやっていて、ポストアップとピックにいくとき以外にどう動くのかというのは本当に悩ましい問題でした。
    戦略、戦術がとくにないようなチームにおけるセンターのオフボールの動きはバスケセンスとかバスケIQによるものなんだろうなーとか考えていました。
    本記事でチーム戦術におけるセンターの役割にここまで意図があったのかと驚きました。
    (そりゃ世界最高峰の舞台では当たり前ですよね…汗)
    私がNBAを見始めたころはオラジュワン、ユーイング、ロビンソン、シャックやケンプ、マローン、ダンカンなどのインサイドのフロントラインにどうフィニッシュさせるかという戦術がメインだったように思います。サボニス父なんかは3P打てることに対して憧れ半分、お前はそこじゃねーだろというセンターならゴール下で身体張ってなんぼみたいな批判半分で見てました。当時はサボニス父みたいなタイプはセンターの見本にはならないという風潮だったと思います。
    この20年くらいで本当にバスケが変わったのを感じます。
    歴代の得点王もフォワード・センターが取ることが多かった時代からジョーダン以降ガードの選手が当たり前のように得点王になってきましたが、歴代得点ランキングの上位10人のポジションなど調べてみたくなりました。

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