ペリカンズの2ポジション3プレイヤー

ペリカンズの評価が高い。ロンドとカズンズを失ったにも関わらずだ。オフの補強はリーグの流れを新しい形で表現しようとしている。

 

1人のスーパースターがいる。ならばチームはその選手を中心にチームを構築していく。他のポジションに優秀なロールプレーヤーを揃え、時には別のスター選手を連れてくる。チーム作りに置いては当たり前の流れだ。

 

しかし、現在のNBAでは失敗することが多い。

その理由は以前に触れたような「エースのEFGでは勝てない」というオフェンス傾倒の理由がひとつ。もう1つは「スーパースターがベンチに下がると効率を失う」からである。この後者の流れは非常に面白い。選手に合わせたシステムは必要だが、選手に依存したシステムは危険。そして1試合で12分も効率が落ちると勝てなくなるのが現代NBA。

ロケッツのダブルPGはその点で非常に優秀であり、共存させることも出来るが基本的には別々に使うからこそ1試合を通してクオリティが落ちなかった。ゴードンも加えて2つのガードポジションに3人の優秀な選手を用意するのは現代的なロスターと言えた。

 

16-17シーズンにプレーオフを逃したペリカンズは、アンソニー・デイビスという稀代のスーパースターを抱え、ジュルー・ホリデーをPGに置いたチーム作りをしていたわけだが、そこに突然デマーカス・カズンズを加えた。さらにPGにはラジャン・ロンドを加え同じポジションに2人の選手を揃えながら、同時起用もするユニットを作り上げた。

結局、カズンズとアンソニー・デイビスの2人が同居する試合は数少なかったため、真価を測ることは出来なかったが、万能なカズンズの存在は同時起用が可能になるだけでなく、片方がベンチで休んでいてもクオリティが落ちにくい利点があった。

 

カズンズを失ったペリカンズはトレードでニコラ・ミロティッチを獲得した。その後のチームの快進撃から大活躍したようでいて、実はそこそこの活躍しかしなかった。3P33.5%はちょっと苦しい。とはいえ、新シーズンはもっとフィットすることを信じているはず。

なお、その後でエメカ・オカフォーを加えセンターとして起用したのもちょっと面白い。アンソニー・デイビスがいるからこそオカフォーで良かったという難しすぎるバランスだった。

 

そしてこのオフにはジュリアス・ランドルを加えることになったペリカンズ。

アンソニー・デイビス、ミロティッチ、ランドルの3人でインサイドの2つのポジションを埋めることになるだろう。それは非常に興味深い取り組みであり、現代的に勝つためのロスターを組んできている。そう5つのポジションのバランスで考えてはいけないのだ。ゲームトータルで3人の優秀なインサイドプレイヤーが使われることこそが重要なのである。

ペリカンズの新たなトータルゲーム

◉AD+ミロティッチ

 

この形については何も解説する必要がないだろう。最強のビッグマンであるアンソニー・デイビスの良さを活かすためには、アウトサイドから射貫くミロティッチは最適な相棒な気がしてくる。欠点はドライブ能力くらい。

ついでにいうと万能なアンソニー・デイビスだが3Pは打たない方が良い。30%そこそこの確率で効果的ではないだけでなく、今のペリカンズではあまり意味がないからだ。特にミロティッチと組む場合は自分がリングにアタックする形を続けることがミロティッチを楽にする。

カペラはパスが来なくても走るが、アンソニー・デイビスはパスが来てから走る。難しいパスでもフィニッシュしてしまう能力はさすがだが、出来れば最強の囮にもなって欲しい。それをミロティッチが活かせるかどうかも微妙ではあるが。

 

 

◉ランドル+ミロティッチ

 

ミロティッチとのコンビの形としてはアンソニー・デイビス以上に機能しそうなのが、ポストアップからのドライブで力を発揮するランドルだ。ペリカンズお得意のブラインドサイドカットはポストアップとの相性がすこぶる良く、尚更にミロティッチも打ちやすくなる。

昨シーズン後半のランドルの個人アタックは驚異的だった。それだけでいえばオールスタークラス。もちろん、それだけではやっていけないから放出されたわけだ。

だからこそペリカンズのシステムの中で輝くかどうかは注目している。ランドルはパスを出せるビッグマンだが、プレーのイマジネーションに乏しく、2つ先を考えるようなプレーは出来ない。それをチームのシステムが補ってくれるのがクリス・フィンチ流のオフェンスでもある。要するにヨキッチやカズンズがやっていたプレーを、縮小版で良いので実行して欲しいわけだ。

 

ポストアタックでのみ輝くランドルは、ポストアタックが効果的なチームに移籍し、アウトサイド専任のようなミロティッチとコンビを組む。なかなか面白そうな組み合わせである。

 

 

◉AD+ランドル

 

全く読めないのがこのコンビである。

そもそもアンソニー・デイビスは1on1が強くない。最強たる所以は強力すぎる合わせのプレーにあるが、もしもランドルがスペースを消してしまうのであれば、その脅威が揺らいでしまう。

ランドルにしても自分のアタックスペースを消されてしまう可能性があるが、こちらはその分パスの選択肢が増えるので、あまり心配する必要はないだろう。

 

一方でペリカンズの真骨頂は「走ること」である。

ハーフコートオフェンスの相性云々よりも、走れるビッグマンが2人揃っていることはディフェンスからすると脅威でしかない。しかもランドルも堅実なゴール下シュートを持っているのだから、速攻でなくてもアーリーオフェンスでディフェンスの形が崩れていれば、次々にイージーシュートに持って行くことが出来るだろう。

起点にはなれるが動きの遅かったカズンズに比べるとランドルの方が「アンソニー・デイビスの代役」としては相応しく、ランニングゲームを継続しやすくなる。2人のショータイムはニューオリンズの新たな名物になるかもしれない。

 

2ポジション3プレイヤー

それは新たなトレンドになってきているが、ペリカンズはホリデーをSGにしたように他のポジションでも似たような取り組みをしている。ポジションの概念を減らしていっているのだ。

その中でタイプの違うビッグマン3人の組み合わせは強みになり得るロスターだ。なんせ、ビッグマンを2人同時に起用する事すら躊躇うようになっている中で、終盤になってアンソニー・デイビスの相棒をインサイド寄りのランドルとアウトサイド寄りのミロティッチで選べるというのはHCの腕の見せ所である。

 

インサイドのゴリ押しをするのか

バランス良く外からも射貫くのか

ランニングゲームで対抗するのか

ディフェンス面の不安はあるが、そもそもオフェンスで打ち勝つのがペリカンズ。守ることなんか考えても仕方ないとばかりにマッチアップの優位性を活かすことが出来るトリオは、新しい武器でありトレンドに乗っかるものでもある。

ペリカンズが行うオフェンス改革はロンドとカズンズという2人の有名選手がいなくなったことで真価を問われることになる。だからこそ論理性が表現されそうで興味深い。

 

 

 

ペリカンズの2ポジション3プレイヤー” への7件のフィードバック

  1. 獲得したペイトンの起用法は、どうなるんでしょうかね。
    ロンドにプレーメイク力では劣りますが、似ている点もあるので代用として考えているのか、あるいは単なる控えのPGでしょうか?

    1. 上手く行けば代役、ダメでも控えくらいの感覚かと。とりあえず髪を切ろう。
      ガードの補強していないのでペイトンに期待しているのでしょう。

      1. ペイトンはとうとう髪を切りましたよ。フォーニエがその写真をツイートしてました。これで身軽になりましたね!

  2. 僕は信じてます。
    ジャリル・オカファーも頑張ってくれる事を。大活躍とまでは行かなくてもAD効果の支援で攻守両面でステップアップしてくれる事を。
    博打だと思うんですけど、ニック・ヤングみたいな選手いたら面白くないですかねー?
    どうなるかわからないけど当たるとヤバいシューターをもう1人的な感じで。

    1. ペリカンズがいまいちわからないのは、ディフェンスを強化したいのかどうかです。
      ダリウス・ミラーとクラークがいるのでニック・ヤングよりもディフェンダーの方が欲しいのでは。
      渡邊雄太を指名すべき、と書いた現地記者がいるらしいですが、そんなタイプが必要かなー。

  3. ペリカンズのディフェンス問題で気になっているのはソロモン・ヒルですね。
    オフェンシブに特化した昨シーズンはケガでほぼお休みでプレーオフではほんの少し出たけれどほとんどフィットせず、シュート力に問題あり、大きめの契約とネガティブ要素だらけですが、ディフェンダーとして期待されていた選手なのでどう扱っていくのかでチームが目指す方向が見えてきそうです。
    あと、噂程度の話だとは思うのですが、ミロティッチSF化はやめた方がいいと思うなぁ…

    1. ソロモン・ヒルの存在は面白そうですけどね。オフェンスで起点役になっていてイグダラみたいな役割をこなせそうです。

      カットプレーに慣れればアウトサイドでフリーにされた時の対処法が増えるので、システムへのフィットが出来れば良いベンチになるかもしれません。

      ミロティッチをSFにするメリットがあまりないです。インサイド渋滞するだけのような。オプションの1つでしかないかと。

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