試合前から日本の方が格上感が漂う圧倒的なメンフィス・グリズリーズという存在
気がついたらウインドウ4が始まっていました。プレビューするのを忘れていたよ。何故か、このタイミングで渡邊雄太が合流しました。NBAのオフシーズンはチーム施設を使って個人トレーニングしているようなスケジュールが難しい面があります。
多分、W杯予選に出ても問題ないのでしょうが、それをすると個人の1シーズンが非常に長くなってしまいます。渡邊雄太も大学のシーズンが終わってから、各チームでのワークアウト、サマーリーグとオフがない状態でここまできており、懸念されるのはケガのリスクとNBAシーズンになってからの疲労になるでしょう。
そんな渡邊と八村が揃い踏みという、この先長く観れるようで観れないかもしれない充実したメンバーで望むアウェーのカザフスタン戦です。前半の気になった部分から触れていきます。
◉シュート決まったらゾーン
日本のディフェンスはシュートが決まったらゾーン、決まらなかったらマンツーでした。その心がよくわからないので、おそらくディフェンスに変化をつけたかったのでしょう。中学生みたいなやりかたですが、それは良くも悪くも効果を発揮しました。
マンツーマンでは簡単なピック&ロールに崩されていきました。イリーガルスクリーンにもみえるハードさがあったカザフスタンですが、常時ノーコールなのでOKなのでしょう。この先、アダムスなんかを相手にするのであれば、渡邊雄太はNBAレベルでは課題を残してしまいました。
それ以上に問題があったのは、ショーディフェンスが出来ていないので1つのスクリーンのみでチームとして、あまりにも簡単に崩されていたことです。八村も竹内も。途中から出てきたアイラが長く起用されたのは、他の選手よりもショーディフェンス出来ていたからかと。本来はスイッチしてしまっても問題ないのですが、それはBリーグ式じゃないからなぁ。
これがゾーンだとマシになるので効果を発揮していました。じゃあずっとゾーンやれという話にもなりますが、それはそれで違う問題が発生しそうです。実際3Pを良く決められていたし。なので、ディフェンスが変化していくのはカザフスタンにとってはめんどくさかったでしょう。効果的でした。
あとカザフスタンの13番が抜群に上手かったのですが、ベンチに下がると一気に停滞していました。この13番クラスの判断力があるハンドラーがもう1人いたら、かなり苦しかったと思いますが、全体的に凡ミスの多かったカザフスタンにも助けられました。
◉ズルい日本
そんな日本の立ち上がりのオフェンスは壊滅的でした。
そもそもの話をするとラマスの悩みは「3Pが打ててドライブを決められるウイングがいない」ことでした。それを解決してくれる渡邊雄太の登場なわけですが合流したのは3日前だし、そもそもウイングを活かすゲームメイクをしてこなかったので突然出来るわけありません。
PGは富樫。自分で崩していくタイプは、どうにも合いませんでした。この問題はウインドウ3でも出ていました。アルバルクトリオ(田中・馬場・竹内)が揃うと連動したパッシングで崩していましたが、富樫・比江島は基本的に自分で崩すタイプなのでメンバーを使い分ける必要があったのでした。
序盤のオフェンスはほぼ八村狙いなのですが、カザフスタンのプレッシャーに負けてパスを通すことが出来ず、裏をかくようなゲームメイクも出来ず、完全な圧力負けをしてしまいました。
が、NBAプレイヤーが1人でなんとかしてしまいました。
「いや、そんなタイプの選手じゃなかっただろう」とツッコミたくなるくらい個人技で圧倒していく渡邊雄太の8連続得点により、カザフスタンの流れになっている展開なのに得点差が生まれないのでした。
バスケット・カウントのオンパレードでカザフスタンのディフェンスメンタルが崩壊していくのでした。このレベルだと圧倒的というわけで、いつになく積極的な個人技アタックで盛り返すのでした。
そこからカザフスタンは渡邊にフェイスガードしていきます。もうベタつきで追いかけ回すと、そもそもパスを通せていなかった富樫は渡邊にボールを渡せなくなります。でも、そもそも自分で崩したいわけだから、ウイングを警戒しまくっている状態は日本のオフェンスを立ち直らせてくれました。
オフボールで渡邊が動くだけでカザフスタンのディフェンスが反応していくので、ギャップを使うことが出来るようになります。当初はインサイドで圧力負けしていた八村もヘルプが減ったので次々に決めていくことに。
2Q終盤に連続3Pを決めた富樫ですが、そこの背景にあったのはウイングが何とかしてくれたから、自分のゲームを作り易くなった状態にありました。
ついでに言うと、篠山と田中のコンビだとウインドウ3同様にパッシングで見事に構成出来ていましたよ。それは渡邊雄太にも合う形だと思うのだけど、ラマスは渡邊と八村を長く起用したい衝動に駆られていたから、あまり意味をなしていなかったかも。
◉ファールコール
・カザフスタンのオフェンスは機能するが13番がいないとダメ
・日本は渡邊と八村が個人技で決めてしまう
前半はほぼこの2つで終わったようなものでしたが、カザフスタンがディフェンスの圧力がある反面、スピードやジャンプ力といった機動力に優れていたわけではなかったので、ドライブしてしまえばファールをもらえたのも大きかったです。田中がフィンガーロールを決め、馬場が連続でファールをもらえたので得点が途切れることがありませんでした。
結局の所、どれだけドライブ出来るのかの重要性が大きく出てきており、しかもファールコールしてもらえるので積極的に飛びこみやすくなりました。
チームファールが増えてフリースローが多くなり、それをしっかり決めていたこともリードを得ることに。いつぞやは全くフリースローが決まらなかった気がするけど。
それもこれもファールしてもバスケットカウント決め続ける渡邊と八村によりカザフスタンが守りにくくなったのだと思われます。あんなに決めてきたら反則。ズルい日本。でもアメリカってそういう国なんだよね。手を出さないと簡単に決められてしまうのでした。
馬場のドライブに横からコースにはいってきた選手がいてもノーコールだったように、あくまでも手を出すことについて厳しいコールをするルールなので、もがき苦しんだカザフスタンという雰囲気なのでした。
◉アイラと竹内
後半の日本は竹内ではなく、アイラをスターターにします。理由は前述のマンツーマン問題とわかりやすいのですが、点差が離れていてもラマスが気を抜けない緊張感に包まれているのがわかります。
今回良かったのは、ファジーカスがいなくてアイラ・ブラウンが起用されたことでした。前回はオフェンス面でなんとかしてくれたファジーカスでしたが、八村とのコンビではあまり良い面がなく、別々に起用されている時間に目立ちました。
渡邊・八村・アイラと並ぶとスイッチを厭わないディフェンスとなり、ピックに対しても恐れる必要がなく、チームとしての機動力が全面に出てきました。スティールからの速攻が多く出たのは大きな3人がアウトサイドまで追いかけられることは見逃せません。
加えてアイラは非常に細かくスクリーンをかけてくれます。オフボールの見えないところでコースを作ってくれるので渡邊と八村のドライブを導いてくれました。ボール運びでプレッシャーをかけられるのをみるとスローインなのに篠山にスクリーンをかけて上げる徹底ぶり。
ファジーカスに比べると目立たないアイラでしたが、八村と渡邊という主役が揃ったこの試合では、脇役としての優秀性をみせつけたといえます。何よりよく走るから、トランジションオフェンスが効果的でした。
そんな脇役としてウインドウ3まで存在感を発揮していた竹内は、気の利いたポジショニングで助けてくれていたのですが、後半になると身体を張ってリバウンドをもぎ取り、ゴール下をねじ込むという全盛期さながらの強さを発揮しました。アイラの活躍で奮起したのか、単純に竹内が空くシーンが増えたのか。まぁ後者でしょうが、有利になったポイントでしっかりと結果を残したのでした。
23点まで開いた得点差はアイラのディフェンスとスクリーンがもたらし、その点差を追い上げるべくラッシュしてきたカザフスタンに対し、ゴール下で粘ることで追撃を許さなかった竹内という感じでした。
◉スピードで勝つ
機動力が高さを駆逐する時代
なわけですが、まさかそれを日本代表から感じ取る試合がこんなに早くやってくるとは予想外でした。この試合の日本の得点で重要だったのは速攻ですが、速攻を生み出したのはディフェンス力であり、そのディフェンス力の源になったのはインサイドのヘルプの速さです。八村にしろ渡邊にしろアイラにしろ、広い範囲を守っているのでアウトサイドまでプレッシャーをかけやすくなりました。
実際にインサイドは薄いので、かなり得点されていましたが、それを効果的なプレッシャーディフェンスで補えました。高いことよりも早く広い範囲を守る機動力の時代です。なお、跳んだら高いのは前提条件なので機動力があればよいわけではない。
苦しい時間帯を渡邊の個人技で切り抜け、自分達の時間にラッシュをかけることが出来、それにより余裕のあるシューティングも可能になった試合でした。逆にカザフスタンは全く余裕がなくなっていた。あまりにも出来すぎたストーリーとなった試合は、ウインドウ3から続きすぎていて、ちょっと怖いくらい。
カザフスタンからするとアンラッキーとしか言いようのないグリズリーズとゴンザガの揃い踏みでした。日本からすると「ウインドウ5はどうするの?」状態なのは致し方ない。
気になるのは相変わらずハーフコートになるとプレーメイクがインサイド頼みになること。篠山+アルバルクになるとボールムーブして、外から打てるのにね。まぁオフシーズンだったので解決しているはずもなく、むしろオフシーズン明けだと思うと、全体的に良くやっていたよね。
先日のアーリーカップはYouTubeでいくつかみましたが、全体的に面白くなかったので、このタイミングとしては致し方なかったのだと思います。その細かい部分を個人技でなんとか出来てしまう代表ってちょっと凄いね。
◉渡邊の課題
最後にNBAレベルでの話にしておきましょう。そういうブログだし。
明らかに気合いを入れていた1Qを除けば、シュートが決まらなかった渡邊。サマーリーグもそうでしたが、リズムを掴むとポンポン決めて、失うと全く決まらなくなります。NBAで自分の立場を考えると、オフェンスで頻繁にボールが回ってくるわけではないので、ちょっと苦しい部分があります。
また、やっぱりガード/フォワードの選手であり、インサイドの攻防になるとこのレベルでも止められないケースが結構ありました。スイッチを厭わないディフェンスが出来るのにフィジカルでポジションを奪われてしまうのは苦しく、またそれ以上にリバウンドに苦労しました。
ペリメーターディフェンスでもスクリーンに対する対処は大きな課題です。余り簡単にスイッチしてしまうと存在価値を失いかねません。ブロックに関しては信頼できるので、スクリーナーへの有効な対処なのか、ハンドラーへのハイプレッシャーなのかを選択しなければいけません。
リーグ全体ではスイッチディフェンスが主流になっていますが、グリズリーズはガソルがいる以上は対処を悩むはず。対人は守れるだけに、カザフスタンの13番の上手さにいなされた感は否めません。
NBAだともっとフリーでもらっての3Pが増えるでしょうが、ドライブしてからのパターン不足もちょっと目立ちました。さすがにブロックされすぎだよ。まぁとりあえずはディフェンス優先だろうなー。
ゾーンとマンツーマンの切り替えは、変化をつけたいのもあったでしょうが、シュートを外した後にゾーンだとピックアップやゾーンの形になるのが遅れて、アウトナンバーを作られやすいので、それを嫌がったのでしょう。
これも中学レベルの常識ですね。
アイラが入って機動力あるディフェンスが見れたのが、良かったです。
次のイラン戦でどこまでできるでしょうか。
ファジーカスがいないのとカザフスタンが早くないので、トランジションで上回って、どちらにせよゾーンが出来そうでもありました。
ゾーンの方が守れてしまう現状をラマスがどうするのかも気になります。
トランジション自体は日本が上回っていましたが、少しのギャップでシュートを決められていたので、その辺りのケアをラマスは考えたのでしょう。
リーグ方式とはいえ、実質一発勝負の今大会ではなるべくリスクを減らす策は当然だと思われます。
実際マンツーの時にイリーガル気味のピックから結構決められていたので、その辺りの対処を今後どうするのかが注目です。
リバウンドやターンオーバーから八村や馬場が自分でボール運べるのでファジーカスがいないのとあわさってかなりのトランジションの場面もありましたね
運べるだけではなく、切り替えも早くて、全体がプッシュされましたね。むしろ篠山が遅く感じるくらい。
アーリーカップもアルバルク東京が切り替えの早さだけで圧倒した試合もありましたし。
フルメンバーの日本代表は夢がありますね。シェーファーやファジーカスなどもこれに加わるわけですから。まあ、常に実現が難しいと言う意味でもですが。
しかしウィンドウ5以降は本当にどうするのでしょう。
渡辺は今年度はもう難しくなるでしょうし…
帰化枠も、構成的には、八村が出れるならアイラ・ブラウン
出れないならファジーカスを連れて来るということになるんでしょうか
八村の方が招集出来る可能性が低いので、ファジーカス頼みになっていくのでは。
アウトサイドの崩しを中心にする形の方が未来へと繋がりそうなのですが。アルバルクトリオの形か、ファジーカスのピックを冨樫と比江島で使うか、という選択肢かなぁ。
アイラとニックを比較としたら、オーストラリア戦はニックじゃないと絶対に負けてたと思います。
でも成熟していって、連携が取れたときはアイラの方が強くなりそうな気はします。
ニックがいるときは完全に個人技頼みになるので、単純にニックと八村対策されるとそれで終わる
けれど代表って基本ぶっつけ本番に近いですから、そうそう連携って取れない…
ってことはニックと八村の個人技頼みがやっぱり一番なのかもですね…
ファジーカスの良さはシュートが上手いこと。そこに助けられる場面が多かったわけですが、そもそもBリーグの各チームはセンター(外国人)頼みのバスケをしているケースが多いので、代表で集まった時に活きるのはファジーカスですね。
たまたま渡邊と八村がいたから、センターに頼らない方が上手くいっただけでした。