ホイバーグについて考える第2回
◉ヌワバと大きなウイング
オフのブルズの動きで興味深かったのは、デビッド・ヌワバとの再契約をスルーしたことです。ヌワバはブルズにおいて唯一のディフェンダーであり、戦略的に考えれば重要性の高い選手でした。加えてウイングとしてシュート力には欠けるものの、高い機動力があり速攻を推進する能力もあります。
余計なシュートを打たないのでFG48%と高く、リバウンド能力もあるウイングは25歳と若く、将来的には優秀な3&Dへと進化する可能性を秘めており、サラリーで揉めたわけでもないのに放出してしまうのは理解に苦しむ部分があります。
だからこそ、このヌワバの放出こそがブルズが描く未来図を象徴している気がするのでした。
ヌワバがいなくなったブルズは3人の新戦力を加え、大きなウイングが並ぶことになりました。
ラウリ・マルカネン
ボビー・ポーティス
ジャバリ・パーカー
チャンドラー・ハッチソン
ヴェンデル・カーター
ここにハンドラー兼任のヴァレンタインが加わる布陣の特徴は「大きい」こと。全員がセンター役もこなすような選手達が集められており、それでいてアウトサイドシュートも期待させる選手達でもあります。
ヌワバは「シュート力」と「サイズ」が弱点
新たなラインナップは「シュート力」と「サイズ」が特徴
これが現在のブルズが下した決断のひとつであり、ホイバーグのガイドラインとなります。ちなみにブルズのドラフト指名選手はほどほどの選手ばかりで外れ続き。それがホイバーグになって方向性が明確に改められています。スカウト力があるかどうかではなく、チームの方針が何で、どんな選手が欲しいのか。それが一致すれば、個人の結果もついてきやすいことは多くのチームで証明され始めています。
◉ディフェンスの課題
ヌワバの特徴であったディフェンス面は、ブルズの大きな弱点でもありました。特に3Pに対する意識が低く、一方でリバウンドは確保するというインサイドばかりを守る非現代的なチームです。
〇ディフェンス
レーティング 109.1(28位)
リバウンド率 80.6%(2位)
被3Pアテンプト 32.0(30位)
被3P 37.0%(24位)
連勝中のディフェンスは「たまたま」としましたが、その理由は相手の3Pが外れていたことにもありました。とにかく3Pへのディフェンスは大きな課題であり、ペリメーターを守れるヌワバから、守れそうになりビッグマン達への移行はマイナスばかりに思えます。
一方でビッグマンがしっかりとアウトサイドへのチェックを行えるのであれば、簡単に3Pは打てなくなります。特に直接のマッチアップでは打ちやすいけど、ヘルプに来られると難しくなりがちです。カリー以外が2mを超えるウォーリアーズは「3Pを打たせるけど決めさせない」のが得意技でした。16-17シーズンは被アテンプト数が20位ながら、被成功率は1位を記録しています。
3Pはオープンの状況を作って打つ
これを基本としたときに「チームで守る」のであれば、スイッチしやすいユニット構成が効果的である事はトップチームが示しています。ブルズが揃えた同じようなビッグマン達は、ペリメーターディフェンスへの不安はあれど、
スイッチディフェンスでフリーを作らせない
という視点では優れてもいます。ブルズの課題は3Pを守ることであり、そのためのディフェンダーは補強しなかったけど、高さを備えたチーム力で守ろうとしているのです。
同時に揃えられたのは「機動力のあるビッグマン」であり、正しいポジショニングとヘルプでドライブをカバーしていく備えです。自分達の強みであるリバウンド力を欠くことなく、弱点である3Pを如何に為て守るのか。
想像はつくけど、実行に移せるのでしょうか?
◉オールラウンダーになり得るのか
サイズと機動力を併せ持った選手を集めたブルズ。それはオールラウンダーを揃えていく現代的な流れに沿ったものでありながら、インサイドプレイヤーを中心にした独自性も兼ね備えています。ただし、彼らの問題は
本当にオールラウンダーと呼べるのか
ということです。ビッグマンとしては間違いなくスキルもスピードもあるけれど、多くのチームがスモールラインナップを採用する理由は、「ビッグマンとしては」ではないスキルとスピードを求めるからです。
つまりブルズは極めてギリギリのラインを攻めているのです。彼らが「オールラウンダー」ならば非常に強いチームになり、「ビッグマンとしては」ならばプレーオフに勝ち進むのは難しくなるでしょう。
ディフェンス面ではビッグマンとしての「ポジショニングと高速ヘルプ」にも課題を残します。スピードのないロペスがセンターだったこともあり、3.5ブロックはリーグ最低でした。インサイドに強みがあると言いながら、リムプロテクト能力を欠いているのが現状です。
オールラウンダーとしても、リムプロテクターとしても未知数なのがブルズであり、そこには同時に可能性も存在しています。非常に読みにくい要素が多いのです。
オフェンス面でも同じことが言えます。
シュート能力については今後の成長も含めてさほど心配はないものの、ドライブとそこからのキックアウトなどは未知数の部分が多く、絶賛していたマルカネンもそれが出来るタイプではありません。タイミングの良い合わせをする選手もまだわからず、本当にオールラウンドに力を発揮出来るのかどうか。
システム的にホイバーグが求めるのは針の穴を通すようなパスでもなければ、創造性あふれるハンドリングでもありません。
シンプルな構成のプレーを連続して仕掛けていく正確性と連動性
これが重要になります。オフボールムーブから多くのスクリーンを掛け合い、ディフェンスの反応に合わせてリングへのダイブと3Pを繰り返し、次にフリーになる選手を見逃さず、堅実なパスを繋いでいくことです。
〇オフェンス平均移動速度 4.91(1位)
試合のペース自体はさほど早くないブルズですが、オフェンス時に非常に良く動きます。誰かが止まって打開するようなプレーメイクよりも、全体が常に動き続けて有利な選手を作っていくわけですが、ホイバーグの特徴としてはポジションの特性を活かすことよりも、しっかりとスペーシングすることを好みます。マッチアップが有利なポイントを作るのではなく、直接的にフリーの選手を作ってしまいます。
ちなみにウルブスは29位と殆ど動かないので、非常に対照的なオフェンスになっています。
昨シーズンのプレシーズンでの解説動画。現在はこのオフェンスによりマッチする選手を集めることが出来ています。ビッグマンにシューター役を求めるだけでなく、ポストアップからの3Pというパターンも多用しているのでした。
◉高い期待値と現実と
ホイバーグのブルズには高い期待値があります。
全てが上手く機能すれば、プレーオフでセカンドラウンドまで進めるでしょう。その一方でディフェンス面を機能させるのに、どこまで時間が必要かも読めないので、プレーオフ戦線まで浮上しない可能性すらあります。とりあえず、ディフェンスが明確なチームシステムにまで整ったシーンはまだみていません。その割には守れていたとも言う。
個人的に「パッシング&スクリーンコンフュージョン」と名付けたオフェンスは、ディフェンスに大きな混乱を招く反面、シュート力に依存しすぎる面があり、それもムービングからのシュートのため安定感を欠きます。各選手が慣れと共に確率を上げてこないと、画に描いた餅で終わってしまうのです。
その代わり機能すると破壊力抜群で、面白いようにフリーでシュートを打っていくことになります。
問題となるのは効果的なドライブを織り交ぜられるかどうか。
昨シーズンは(ミロティッチの影で)クリス・ダンの台頭により勝率が向上し、ケガと共に沈んでいきました。個人的には批判的なザック・ラヴィーンとの再契約も、そのスピードの必要性を強く感じているからこその決断だったと思われます。
〇ドライブからのFG% 40.9%(30位)
50%を超えるチームが3つもある中で、ダントツ最下位のブルズ。まともだったのはマルカネンとポーティスの2人くらいでした。補強により揃ってきたビッグマンに対して、ハンドラー達は安定感を欠くメンバーとなっており、より成長して貰わないといけないのです。
「3Pと高さ」が特徴のチームにおいて、課題になるのが「ペリメーターディフェンスとドライブ」というわかりやすい構成になっています。変化をつけられる人材が足りていないのも事実で、チームの連携面を重視するHCだからこそ、異分子を取り除いているのかもしれません。
◉ホイバーグは勝てるのか
ホイバーグのオフェンスは非常に面白く、そして個人に依存しないチーム力を求めています。プレータイムも配分され、ベンチメンバー達は全てが戦力になる必要があります。この点で非常にポジティブなチームになってきました。
加えて対戦相手に応じたマネジメントを上手くこなしていく一面もあり、相手が苦手なプレーに追い込んでいきます。戦力が充実していた時期に勝っていたのは偶然の要素もありつつ、対戦相手との関係性の中で作戦を実行に移しやすかったからだと思われます。
しかし、ブルズ自体は負けるためのチームでした。そしてその前はホイバーグと歩調の合わないバトラーとウェイドのチームでした。ホイバーグの真価が発揮出来るシーズンはまだ訪れていません。
まだまだコアメンバーが必要なロスター、チーム戦術が浸透していない状況、若い選手が多く個人の成長が求められること、毎年問題が発生しているロッカールームのマネジメント能力には大きな疑問が残ること。
ホイバーグが「勝てるHC」なのかどうかを判断するには時期尚早だといえます。
それでも1つのガイドラインとしてチーム力を全面に出そうとする手法が未来の優勝を見据えるブルズにとって正しいのかどうか、4年目となるホイバーグには結果も求められてきます。現在のNBAで最も注目すべき若いHCであるフレッド・ホイバーグがどうなるのか楽しみでもあり、怖さもあるのでした。
戦力差の見極めに優れ「勝てるマッチアップを有効利用」「個人のポテンシャルを最大限活用」することが得意技のブラッド・スティーブンスに比べ、組織としての強さを求めるフレッド・ホイバーグ。戦略と戦術時代をどう変えていくのでしょうか。
〇シカゴ・ブルズの期待値
攻撃力 ☆☆☆
守備力 ☆☆☆
チーム力・個人能力共に特にオフェンス面でのポテンシャルは高い。しかし、マルカネン以外のビッグマン達のシュートが決まるかどうかが結構怪しいので3つ☆止まり。一方のディフェンスは昨シーズンよりは改善するでしょう。2つよりの3つ☆。ヴェンデル・カーターに期待しよう。
勝利の美酒度 ☆☆☆
40勝が目標ラインかな。まぁイーストの状況考えたらあり得なくはない。ただタンクし始める可能性も否定できないよね。
先行投資度 ☆☆☆☆☆
若手の人数が揃い、やっている内容も独自性があるので勝ち負けに拘らないなら面白いチームですよ。
スター選手度 ☆
ところが「スター」と言われると困るチームなんだよね。1番良くてマルカネンとラヴィーンというのは再建チームの中では一歩劣る。
若手有望度 ☆☆☆
マルカネンもカーターもちょっと地味かもしれませんが、ベーシックかつマルチな能力が売りなので超有望株です。
戦術期待度 ☆☆☆☆☆
他のチームと路線が違うのが面白いよね。3Pと全員アタックというコンセプトは同じなんだけどね。
チーム成熟度 ☆
やりたいことを再現することが、あまり出来ていません。なんせ入れ替わり立ち替わり選手がケガしたり、タンクのために起用出来なかったりしました。そんなわけでホイバーグがイライラしているシーンもわりとあるのです。さらに新加入が増えちゃったよ。
スーパープレー度 ☆☆
ラヴィーンとダンくらいしかスーパープレーはしないよ。それも1試合で1回出るかどうか。
+アルファ度 ☆☆☆☆
ホイバーグのやり方は一見の価値あり。
ジミーバトラーがトレードを要求したことについて、どこのチームが合うかなども交えてお願い致します。m(_ _)m
次回は急いで書いたバトラー回に変更です。
ブルズは面白いチームになりそうですね やはりHCでチームは大きく変わりますよね
バトラーのトレード要求を機にミネソタもHCを変えてKATとウィギンスを中心に再出発してほしいです まだ間に合います
それにしてもバトラーはかなりの問題児ですね ブルズでも問題を起こしてましたし ミネソタでもKATやウィギンスと問題を抱えているようです
希望する移籍先を見るに かねてから噂されてるようにカイリーと合流したいのかなと思います
トレード要求自体は致し方ないと思いますが、この時期というのが。
若手達と上手く行かないけどカイリーだけは仲良しというのが面白いです。
しかしシステム面だけを考えた時に、カイリーとバトラーを合流させたいHCっているのかなぁ。
時期は悪いですが運よくクリッパーズ希望らしいので 管理人さんが仰っていたトバイアスを狙いにいくのはアリですね KATとウィギンスに合う選手を補強したいです
KATとウィギンスに魅力を感じていたファンの1人なのでこれを機に軌道修正して欲しいです まずはHC交代でしょうか ボーゲルなどが候補ですかね 少なくともあと1年はシボドーで勝負するのでしょうけど
何ならバトラーとシボドーとブルズの残党残しで KATとウィギンスをトレードしてあげて欲しいぐらいです
カイリーとバトラーはあまり上手くいく気がしないですよね どこで合流するにしろ 2人の個人力で打開していくようなバスケを展開しそうです
オフにはシボドーをクビにする話もあったそうなので、バトラーを残せないなら動くかもしれません。
ディフェンスが悪い選手のために、ディフェンスコーチを連れてきて失敗したので、後任に関してはフロントも迷うでしょうね。
ブーデンフォルツァーなんかが合う気がするのですが、遅きに失しました。
空いているコーチから選ぶとなると、選択肢が狭いですね。
ホイバーグさん、人心掌握力に欠けてるイメージは強いんですよね
選手側で彼を支持してくれるような支柱があればなあ、という印象があります
支持しているような雰囲気なのですが、選手が自由になっているようでもあり。
いずれにしても強権発動タイプって感じではないので、個性が強い選手を受け入れるとバランスが崩れそうです。
その点ではラヴィーンはどうなるのかなぁ。