バディ・ヒールドの憂鬱

昨シーズン前のMIP候補の1人だったキングスのバディ・ヒールド

憂鬱な1年間を過ごしてしまったのでした。

2016年ドラフトで6位指名のバディ・ヒールドは、大学4年生のシーズンに平均25得点5.7アシストを記録し、オスカー・ロバートソン賞やジョン・ウッデン賞、ジェリー・ウェスト賞を受賞したらしい。どんな賞なのかはよく知らない。

ワン&ダンだらけの中で完成度の高い選手であったことは想像でき、それはルーキーイヤーの途中でペリカンズからキングスに移籍し、エースであるカズンズがいなくなったことで大きな期待と役割を与えられた頃から発揮されていた。

 

〇16-17シーズン

@ペリカンズ→@キングス

プレータイム 20.4→29.1

得点 8.6→15.1

FG 39.3%→48.0%

3P 36.9%→42.8%

 

ペリカンズでは一定のプレータイムを与えられながら、チーム自体の不調もありかなり苦しんだものの、キングスではエース級の扱いになり、極めて優秀なスタッツを残したヒールド。それは2年目の飛躍を大きく期待させ、MIP候補として、それも既に結果を残し始めていることから、割と堅いMIP候補として挙げられていた。

しかし、迎えた昨シーズンは多くのルーキーが加入したキングスでプレータイムを減らすこととなったのだ。

 

〇17-18シーズン

プレータイム 25.3

得点 13.5

FG 44.6%

3P 43.1%

 

この結果はなんとも表現しがたいもので、単に数字が下がったのであれば諦めもつく。しかし、3P43%という高確率のシュート能力はカイル・コーバークラスの結果を残しており、その得点力はジェイソン・テイタムにも引けを取らない。あくまでもスタッツ的には。

かといってヒールドは純シュータータイプではない。16-17シーズンはキングスで6.0回のドライブからFG58%を記録している。優れたシュート能力に効果的なドライブを組み合わせる現代的なタイプといえる。いや、いえたのだ。

 

昨シーズンはそのドライブの確率が悪くなる。FG40%を割ってしまった。しかし、これはヒールドというよりもチームの問題であった。チーム全体がドライブFG44.8%→41.8%とリーグ29位まで落ちてしまったのは、カズンズやコリソンが移籍しただけでなく、2人のビッグマンがあまり動かずにインサイドにポジショニングするチームシステムが関係している。

シュート&ドライブを軸に組み立てるヒールドにとっては苦しいシステムになった。

 

しかし、もちろん悪いことばかりではない。それだけディフェンスがインサイドに集まるのだから、効果的に外から射抜ける選手は重宝されるはずだ。

〇ヒールドの3Pキャッチ&シュート 50.2% 

その確率は凄まじかった。リーグの並み居る有名シューター達を上回る50%オーバーである。平均2.9本もアテンプトがありながら、試合数の少ない10月を除いて40%を下回ることはなかった。特に11月は66.7%、12月は73%である。驚異的なシュート能力を発揮しているのだ。

2年目にしてエリートシューターであることを証明しているヒールド。確実すぎるそのシュート力を武器に80試合に出場しながら、408本のアテンプトに留まった。それは60試合のカイリー・アーヴィングより1本多いだけで、58試合のティム・ハーダウェイjrよりも2本少なかった。

28位の1967本の3Pアテンプトしかなかったキングスは、40%を超えているのはヒールドと43試合しか出場していないジョージ・ヒルの2人しかいないのに、3Pの確率はリーグ3位だった。ヒールドがいなければ目も当てられないチームだったのだ。

 

ヒールドは決して恵まれた環境にいたわけではない。スポットシューターとして待っていればボールが来るわけでもなければ、自分のためのスクリナーが多く用意されているわけでもない。それでもスペースを見つけて動き、難しくても高精度のシュートを安定して決め続けてきた。

 

バディ・ヒールドの憂鬱。それは2年間で残した結果に見合う評価を得ることが出来ていない事。

リーグトップクラスのシューター

そこにヒールドの名前を挙げてくれる人がどれだけいるのだろうか?

もしもヒールドがウォーリアーズにいたら大きな騒ぎになっていただろう。ひょっとしたらトレード相手だったカズンズよりも活躍するかもしれない。カズンズvsヒールド&コーリーステインならウォーリアーズはトレードに応じそう。

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酷かったキングスディフェンスの中で、ヒールドは唯一3Pに対するDIFFでマイナスを記録した選手だった。ペリメーターを守れないチームの中で、唯一ディフェンスをしていた

しかし、そんなヒールドもインサイドにはいると196センチのサイズでは全く止められなかった。リングから6フィート以内は70%の高確率で決められている。しかし、まぁこれも変な話でリムプロテクターを複数用意しているはずのチームなのに、連携できていないのである。

 

サイズの割に体重が重いこともあり、ポストで戦うことが出来るのがヒールドの良さ。しかしスピードには弱い。どっちも守れないともいえるし、どちらでもある程度対応出来るともいえるヒールド。オフボールのポジショニングとかはかなり批判されている。

結論的に言えばディフェンス面でも利点を重用されるようなシステムは採用されていない。よく言えばオールラウンドに守れ、悪く言えば何処も守れないヒールドは、5ポジションの概念が強く、そして動けないビッグマンに囲まれてしまっている。その割にはSF起用も多く、3Pまで守っているのにインサイドでは助けてもらえていない。

 

バディ・ヒールドの憂鬱

それは攻守にわたってシステム的に自分の特徴があまり意味をなしていないこと。それでも結果は残している。

ケガなく過ごしチーム最大の80試合に出場し、EFG50.2%のチームにおいて個人では54.0%を記録し、チームのオフェンス力を大きく引き上げた。それでもプレータイムは25.3分しかなく、スターターで出たのは13試合だけだ。かといって出番を失ったわけでもないからまた厄介だ。

 

ディフェンスレーティング109.0のチームは、ヒールドのいる25分は106.5だ。48分で得失点差△7.0のチームは、ヒールドがコートにいれば△1.9でしかない。

それも9.3分プレーする4Qならほぼイーブンだし、3試合15分プレーしたオーバータイムは+16点だった。

 

キングスは優秀な若手達を多く抱えている。その中で既に結果を残しているのがバディ・ヒールド。

高いシュート精度を誇るがプレーメイクは怪しいSGは、NBAレベルでも屈指のスピードを誇るフォックスとの相性は非常に良いはずだし、自分のハンドリングからのプレーメイクを好むボグダノビッチとも良い関係を作れるはず。しかし、この2人の同時起用がメインで、特定のコンビを使わせてもらえていないのが現状。

 

バディ・ヒールドの憂鬱

このままキングスにいても良いことが起こりそうにない事。それが試合中にも雰囲気として出てしまっていること。活躍することが明日のプレータイムに繋がらない。競争原理の働いていないチーム状況の象徴のような選手。

 

本来ならば中心選手として扱われるか、トレードで必要な選手に交換されるべき活躍度

シーズン中にトレードの話が出てきそうなヒールドだが、優勝を目指すチームからするとディフェンス面が未知数過ぎる。何よりGMがかなり良い交換相手でなければ首を縦に振らないであろう。

 

リーグ屈指のシューターとしてスタッツを残しているヒールド。それは3年後を見据えるチームに必要とは言い切れない存在であり、放出するには勿体ない才能。

バディ・ヒールドの憂鬱” への14件のフィードバック

  1. ヒールド好きなので涙ちょちょぎれました。
    キングスのように、育成の下手そうなチームに有望な若手が集められるのも、NBAファンとしては憂鬱です。

    1. ヒールドの場合はちゃんと成長して、結果を残したというのがミソなんですよね。

      結果を残しているのに「来年こそはブレークする」なんて言われちゃうのはちょっと意味がわからない。

      将来的に軸にしないならドラフト指名権と引き換えに放出した方がチームにもメリットあるのですが。

  2. スタッツ上は確かにそうなんでしょうけど、試合を通して見てるとそこまで持ち上げるほどではないという印象を僕は持ってました。
    確かにイエーガーはフォックスとボグダノビッチを重用したので、シーズン中盤までは使われ方が定まらなかったですが、その中でも力を付け、終盤にはパッシングも向上しオールラウンドな選手に近付いてきたと思います。
    元々弱体したチーム状況が長く続いているので、浮上するにはそう簡単にはいかない中、1つずつ積み重ねてきた現在。
    憂鬱というより、遂に開花する瞬間がすぐそこまできていると自分は思います。

    1. ヒールドのようなシューターはシステムやコンビネーションの影響をモロに受けますが、そんな条件が揃わない中でもヒールドはシーズン前半から結果を残しています。
      特に3P成功率はこれ以上を望む方がおかしいレベルです。

      憂鬱というのは個人として結果を残しているけど、それがチームの中で活かされていないという事だし、高く評価されていないという事。
      新シーズンで花開くのであれば、キングスのエースとしてスターターで重用されるという事なので、有り難い事です。個人としての完成度は現時点で高いものがあります。

  3. まさに憂鬱ですね…
    昨シーズンのペリカンズはロンドのゲームメイクからモア、ホリデーが活躍できていたので
    ヒールドが残っていたらと思うと…

    1. 自分で読み直して思ったのは、カズンズのトレードが有益だったのかを、しっかりと考え直す必要が出てきた気がします。

      ペリカンズはADとホリデーがメインで、動き回るスペースが足りず、ヒールド残っていても活躍できなかったかもしれないですし。
      今なら間違いなく欲しい選手ですが、当時だとそうでもなかったのだから難しい。

  4. 昨シーズンはフォックス、ヒールド、ボグダノビッチの1,2,3番のスタートになるのかと思ったんですけど、サイズなり何かしら問題があるんでしょうか・・・
    ジャスティンジャクソンもサマーリーグ並みに活躍してくれれば期待が持てるんですが

    1. さすがにちょっと小さいですね。ポジションバランスが悪いかも。でも3人をローテで使うのは有効だと思いました。
      バグリーが加わったので、どう変わるのか楽しみでもあります。

  5. いつも楽しく拝読させていただいております。
    キングスファンとしてはずばりな部分で・・・結局HCが悪いのかディバッツが悪いのか・・・
    もしHCを変えられるとしたら今のキングスに合うHCって誰だと思いますか?

    1. 長い目線でみればネッツのアトキンソンにしておけば、必要なスキルを仕込んでくれるでしょう。展開の早さと全員を起用する競争原理とアトキンソン向きのチームだと思います。
      ただ3Pに対する考え方が極端なので、フロントにはあまり好まれないでしょうね。

  6. トレード後の成績が好調だったので、シーズン前半はスターター起用だったものの結果が出ず、結局大半の試合をベンチスタートで過ごした昨シーズン
    他のプレイヤーとの連携なのかメンタルの問題なのかは分かりませんが、スタートとベンチでの3P成功率が36.2%と44.5%で非常によくない

    今オフで改善出来なければファンは不満をもらしそうですが、このレベルの原石すらまともに加工できないところがキングスらしい

    ドライブ成功率の低さは、見てる感じでは無駄なドリブルを多用してしまう判断力の悪さと、フィニッシュのスキル不足な印象でしたが、他二人のガードも成功率が低いのできっとチーム作りが上手く行けば解決してくれる、はず

    ラビシエリ、WCSと共にトレード対象になりそうな気もしてますが
    ディバッツは信用ならないので、、、まともな選手を連れてこなさそう

    残ってもらって才能開花してくれることに賭けたいです

    1. 36%って悲観する数字ではないのですが、そもそもハンドリングやプレーメイクが上手いタイプではないので、HCの好きなプレーをしないのでしょうね。ジョージ・ヒルが厄介者みたいにされたのも、よくわからないし。

      自ら「カズンズの売り時間違えた」なんて言ってしまったくらいなので、早めの一手が欲しいです。

  7. なんかヒールドってキングスオーナーや大学時代も友人やらにステフカリーのようだと言われてたようですねw

    1. ちょっとシュートタイミングが独特ですし、そのくせ決まるからやりにくいでしょうね。

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