クリス・ポールとグリフィンがいなくなってもプレーオフ争いに参加したクリッパーズ
試合の中でジョーダンがいない時間を評価していたが、その中身はどうなのか検証です。
クリッパーズのゲームレポートを書くと、よくジョーダンのことを否定的に書きます。ただ、そこにあるのは「ジョーダンが悪い」のではなくて、「ジョーダンで効率性が上がるのか不明」という事だったりします。
これはよくあることで否定的に語られる選手は2パターンあります。
・余計なことをする、戦術を理解していない
・戦術に合わない、個人が活かされていない
前者は本当に「個人を否定している」パターンで、代表的なのはブレッドソー。後者は「基本的にHCが悪いけど、指摘されるのが個人」パターンで代表的なのはカーメロ。
ジョーダンに関しては後者になりますが、その理由は「グリフィンに突破をさせたいのにゴール下のスペースを潰している」という懸念になります。要するにスペーシングの概念がないし、ゴール下のフィニッシュ専門度が高過ぎ、どうにも役割が少なすぎたのです。
クリス・ポールこそいなくなったけど、ガリナリも加えて戦力としては整えていたけど、前回のグリフィンで触れたように、個人が活かされないチームでした。
しかし、クリッパーズはスターターがケガをしていくことで、逆に勝てるようになっていきました。モンテロス・ハレルを代表格にソーンウェルやCJウイリアムスといったロールプレイヤーが、ちゃんとポジショニングできることで勝率をあげたのです。
個人として目立つ選手ではなく、正しく周囲と連動できる選手が増えたという、当然と言えば当然の結果ではありますが、リバースにはなかった概念で上手く行くのだから誰の力だったのか。
今回は「クリッパーズについて書きたいな」というスタート地点から始まり、しかしその勝ち方に一貫性がなく説明するのも難しいし、個人にスポットを当てたくても、これまた何ともいえないデータばかりだったので、逆説的にジョーダンから振り返ってみたいというものです。
大切なのは「ジョーダンがどうこう」ではなく、ロブシティのメンバーの中で最後に残ったジョーダンがコートにいる時間、いない時間からクリッパーズの違いを示したいのです。あくまでも目線はチームにあります。
「ロブシティ時代の名残であるジョーダン」と「現在のクリッパー達」
その比較から新シーズンを想像しましょう。
◉ジョーダンの成績
まずは個人の成績を観てみます。つまり「個人として結果を残している」という部分を確認したいわけです。トレードデッドラインで未だに各チームから人気があった理由は、その個人成績にあります。
31.5分 12.0点
FG64.5% FT58%
15.2リバウンド 0.9ブロック
センターとして素晴らしい個人成績を残しています。ただし、ブロック数が下がり、FGも5%ほど低下しました。FG70%超えていたって恐ろしい存在です。身長だけでなく身体能力も併せ持つスピード&クイックネスのセンターなので、当然リバウンドも強く、リバウンド率26.4%はリーグ最高です。
リーグ最強のゴール下プレイヤー
ということは間違いがなく、212本のダンクをぶち込み、112本のアリウープでファンを楽しませました。ゴール下でボールを持たせたら抵抗するのは難しい。
ダンクだけで9分のハイライトとかおかしい。
「バスケって3mの選手がいたら止められないでしょ」みたいなくだらない質問への回答になりそうな選手でもあります。高いだけでなく身体能力も兼ね備えたビッグマンはゴール下で圧倒的な強さを発揮するのでした。
これで終われば話は簡単ですが、ここからが本題です。ジョーダンのオン/オフレーティングを観ていきます。つまり、
・高いFG%
・圧倒的なリバウンド
この2つを持ったセンターがコートにいるとき/いないときのクリッパーズの「チームとしての」成績
〇オン/オフレーティング
オフェンス 106.2/110.0
ディフェンス 109.0/105.6
ペース 100.0/102.8
わかりやすく攻守にジョーダン不在時の方が優れています。これだけの能力を持つジョーダンですが
「チームとしてはいない方が良い」
わけです。いくつか理由がありますが、あまり余計なプレーをしない選手なので、前述の通り個人が悪いのではなく、チームとしてシステム的に活用できていないわけです。
主たる理由はいうまでもなくリーグの高速化であり、走れない選手は淘汰されていきます。ジョーダンは走れる方なので否定するのもどうかと思いますが、残念ながらクリス・ポールの遅い展開に慣れすぎました。攻守の切り替えの遅さが目立ちます。
100ポゼッションあたりのチームの速攻
〇得点
オンコート 11.4
オフコート 15.9
〇失点
オンコート 15.9
オフコート 14.2
意外とオフェンス面の方が走れないことが響いています。
しかし、FG65%も決めてしまうし、ゴール下での最強度合いは従来通りなので、オフェンスレーティングで大きな差となるのは、ちょっと納得いかない部分もあります。リバウンドも確保してくれているジョーダンの存在は堅実なオフェンスを後押しするはずです。
FG 45.6/49.7
EFG 51.7/54.3
リバウンド率 51.1/48.6
ここでかなり謎の数字が出てきます。なんとジョーダンがいないとFG50%近いスーパーオフェンスチームになります。3Pをバンバン決めてEFGを上げているわけでもなく、普通にFGが向上しているのは面白い変化です。
その理由は2つあり、ひとつは単純にジョーダンが連携が下手で、ゴール下のスペースを作れないことです。頻繁にあったのはトップへスクリーンに行き、リングへダイブするのですがタイミングが良くないし、パスが来ないと動きを止めてしまいます。これが他の選手になるとパスが来なくてもエンドライン側で隠れる動きをし、ハンドラーのドライブを楽にします。
本人は高確率でも「スペースを潰してしまう」ので、他の選手はイージーシュートに繋げにくいのでした。
もうひとつの理由はベンチにいるビッグマン達は、単純にジョーダンよりも連携が上手く、それ故に得点力があったのでした。
〇100ポゼッションあたりの得点とFG
ハレル 30.5点 63.5%
マルヤノビッチ 33.0点 55.0%
リード 21.5点 66.7%
ジョーダン 18.3点 64.5%
ジョーダンに劣らないFG%を記録したハレルとリード、そして55%のマルヤノビッチは、100ポゼッションあたりの得点でジョーダンを上回りました。特にハレルとマルヤノビッチは30点オーバーと、単純にジョーダンよりもシュートに結びつけることが上手かったのでした。
個人での突破もあるハレルだけならともかく、マルヤノビッチとリードが上回っているのは連携する能力に差があることを示しています。ハレル超優秀。
【ジョン・コリンズの魔力】と書いたけど、クリッパーズのベンチ陣もまた連携力のあるビッグマンだったため、ジョーダンよりもパスを引き出してイージーシュートにしていったのでした。
同じくダンクのみのハイライトでジョーダンとの違いとして目立つのは、速攻に多く参加していることとエンドライン際からの合わせがある事。リバウンドが少ないハレルだけど、それを補ったのは走ることと連携することでした。
なお、16-17シーズンに遡るとジョーダンのオンコート時はFG49.4%あります。ジョーダンというかスターター全員が高かったのがロブシティ時代。ハレルがいたらもっと高くなっていたかは不明ですが、少なくともチームとしてジョーダンを含めたシステムバランスがとれていたのです。
ここは前回のグリフィンにも通じる部分です。戦術グリフィンはバランスを欠いていましたし、ジョーダンは連携を生み出す個人能力が低かった。
わかりやすい長所と短所を持つ選手だけに、正しい活かし方と身につけさせるべき連携力をクリッパーズがチームとしてどう捉えていたのか気になります。まぁクリス・ポール任せであり、レディックありきの匂いしかしませんが。
ディフェンス面も同じく100ポゼッションあたりにすると、ジョーダンのオン/オフでの違いがハッキリとわかる面があります。
被FG 46.4/45.0
被3P 36.2/34.5
被アシスト 25.3/22.8
被ターンオーバー 12.8/15.6
3Pを守れないというのは予想できる内容ですが、それ以上にアシストが増え、ターンオーバーを促せないことがわかります。インサイドで存在感があるけれど、パスを繋がれるのに弱く、プレッシャーをかけられないということです。
この傾向は非常に強く、ジョーダンのところで相手はボールをキープしやすいし、またショーディフェンスからの戻りが遅くローテーションできないような欠点がありました。ディフェンス面でもどうも連携が怪しくなります。
ところがこれも16-17シーズンでは殆ど問題がありませんでした。何が問題を解決させていたのか?クリス・ポールの存在だけでは説明がつかないようなチームシステム的な問題がありそうです。
◉選手に合った戦術ということ
リバースに優しい記者さんは「選手をシステムに当てはめるのではなく、自主性を大切にする名将」なんて表現をしますが、まぁ選手任せのHCなので、個人としては良い成績を残しながら、周囲の選手が大きく変化したことでチームの中では活きなかったジョーダンでした。
なお、ジョーダンの真価はビッグマンを使うのが上手いカーライルの下で試されることになります。HCが悪いのか、連携するための判断力が致命的に欠けているのか。
そしてクリッパーズについて、選手個人を抜き出しいて書くのも、チームとしての良さを書くのも簡単ではないのは、こうやって
連携して得点を稼ぐ選手の相性
という、これまた個別にコンビで書いていかないといけない厄介な案件を用意してくれるからです。クリッパーズ番ではない管理人には、大まかな部分しか語ることが出来ません。
シーズン前半はとにかくウィリー・リードを絶賛し、後半はハレルを絶賛しました。2人に共通するのはとにかくよく動くこと、そして合わせるのが上手いことです。インサイドならばハレルが上ですが、パスアウトする能力だとリードが上回ります。まぁでも微妙な立場の選手が問題起こしちゃダメ。人間力が大切なことはルーキーのドノバン・ミッチェルが語ってくれているよ。
クリッパーズの新たなフロントが重要視しているのは、まさにそんな「連携力」っぽくって、ボールを持っていなくても仕事をする選手を選んでいる気がします。だからこれまでいた選手達は軒並み放出されていきました。もう出戻りのバーアムーテしかいない。
その効果は大きく、5人が止まって動きのなかったオフェンスはディフェンスの視界から消える動きやカットプレーを繰り返すようになり、まさかのリバース息子までやり始めました。
大量の銀のニワトリをロスターに並べ、連携力を使っているクリッパーズは、注目しているけど説明しにくいのでした。
個人スタッツはいいけど連携できずチーム力につながらないってハワードの顔が思い浮かぶのですが…笑
スタメン確約のノビツキーと2人で出て守れるんでしょうか
ノビツキーと同時起用する時間がどの程度あるのか。
でもゴール下の高さはキープ出来るので、そこはもうカーライルの腕次第
これまでの否定的に語られる選手
前者:バトラー、
後者:アーヴィング、ゴベア
こんなイメージですかね、多分他にもいるはずだけど。
違ったらすみません。
バトラーは前者でもありつつ、HCもそれを推しているから後者でもあるかな。
ゴベアはプレーオフではかなり良かったから、個人の問題だったのかもしれません。意外と難しかったです。
マブズには走れないノビツキーがいる分DJが走らないといけないわけです。
走れないわけじゃないから、なおさら走らないといけません。
マブスのビッグマン達はよく走るし!
この銀のニワトリをまとめ上げる金の卵は誰がいいんだろう?実現しないだろうけど、ベン・シモンズとか?
SGAがいるじゃないか!
あの突破力から生み出されるクリッパーズのオフェンスは要注目です。
監禁されて残留してなきゃ今頃ダラスで別の評価されていたのかもしれませんね。
あれがロブシティの特別な関係性を作り、そして特別になりすぎたのかもしれません。
ダラスはもっと大きな役割を担わせたいと言っていた気がしますが、そうなると違う選手になっていたのかも。