17-18シーズンプレビュー ロケッツ編

クリス・ポールの加入により今季の目玉チームになったけど、カーメロを獲得する寸前までいってたので、プレビューしなかったロケッツ。今となれば早々にプレビューしても良かったわけです。

超豪華メンバーというわけではないけれど、リーグで3番目に勝利したチームは連携が売りなわけですが、選手の入替もかなりありました。

優勝レベルまで進化した事のないシステムなので、必要かもしれない変化を求めたとも言えます。そんな点にも触れていきたいですが、先ずはクリス・ポールに触れましょう。



CP3×ハーデン×ダントーニ

第1印象はCP3×ハーデンは最悪、CP3×ダントーニは最高です。どちらに針が振れるのか悩ましいですが、ハーデンの言葉を信じてポジティブに捉えています。要約するとこんな感じ。

・CP3は全てを自分でプレーメークしなければならなかった。
・2人でメイクすればお互いを補い合える。
・どちらがPGかは関係ない。

サンダー時代にはボール持ちたがり選手とプレーしていたハーデンがCP3を求めた事は驚きですが、それだけ個人的には問題ないという事です。



遅い2人

クリッパーズの問題点はウォーリアーズに次ぐ高いレーティングを残しながらペースコントロール不足で勝利には結びつけられなかった事です。その要因の1つはCP3がボールをプッシュする早さに欠けていた事です。

◯オフェンス平均移動速度
クリッパーズ 4.26(29位)
CP3 4.28
ハーデン 4.06

そしてハーデンもまた動きません。2人ともガードとしては下位レベルです。ちなみにカリーは5.13です。
走らないガードコンビなんて相手にとっては守りやすいでしょう。最悪たる理由です。

しかしダントーニといえば早い展開。

相性は悪そうに思えますが、早いけど速くないのも特徴です。走るのではなくベリーアーリーオフェンスです。

走力でフリーになるのではなくワイドに広いてディフェンスのギャップを作り適切なポイントにパスを出していく。早く正確な判断が重要なのでCP3はむしろ合いそうです。

◯オフェンス平均移動速度
ロケッツ 4.42(22位)

ハーデンが最後尾なのは事実だけど、2人がそれぞれもう少しずつ走れば解決する問題に過ぎません。ボールを運ばない方が早くワイドなポジションにつく事が必要です。
そこからフィニッシュに持ち込めれば、ベリーアーリーオフェンスはより怖くなります。

それすら走らない構図も容易に想像出来ますが。



ボール持ちすぎ問題

2人ともボールを持ってプレーするタイプです。これが最大の懸念とされています。ハーデンの言葉を信じれば、お互いのプレーメイクを尊重し、それぞれが時にフィニッシャーに回る事になります。

 

◯パス本数
ロケッツ 272.5(28位)
ハーデン 66.6(3位)
CP3 64.0(4位)

そもそもPGが長くキープしてからアシストするチームなのでボールムーブは不要です。2人とも必要なパスは出します。なので持ち過ぎ問題は気にしません。

懸念すべきなのは「ボールを持ちすぎる」事ではなく、「オフボールの動きの質」に不安がある事です。フィニッシャーとしての役割を果たせるかどうか?です。

ハーデンは多くの場合PGでパスの発射台でしたが、稀にウイングに回った際にはオフボールプレーを実行していました。PGとしてダントーニシステムを操っていたハーデンなので、オフボールでの動きも得意ではないけどこなせるはずです。

また、シュート力が高くエクストラパスからのキャッチ&シュートでも有効でした。単純に昨季のベバリーの役割と考えて比較します。

◯キャッチ&シュートの確率
ハーデン 38.9%
CP3 50.0%
ベバリー 39.9%

意外にもベバリーが高確率で決めていました。確率的には遜色ないものの、ポジションミスが増えるとチームの効率性は下がる可能性があります。
そしてオフェンスはコーナーで待つのがお仕事だったベバリー。2人が待つ仕事をこなせるかは疑問です。



◯キャッチ&シュート本数
ハーデン 2.4本
CP3 1.1本
ベバリー 3.1本

ハーデンはPGに移りながらもフリーで待って決めるシーンは多いです。ベバリー並みの本数までは増えるでしょう。
問題なのはむしろ1.1本のCP3です。クリッパーズではパスが来なかったといえばそれまでですが、FGの半分近くを3Pにするロケッツに対応するかが課題です。

◯CP3の全シュートに対する3Pの割合
3P全体 38.4%
キャッチ&シュート 8.7%
プルアップ 28.6%

焦点となるのはCP3がシューターとしてどれだけ思い切って3P連発に対応するかです。キャッチ&シュートを平均4本くらいは打って欲しいです。
50%なんて高確率よりも40%でいいから連発するのがロケッツです。もっと言えば36%でも良いのですが。

ポジショニング的には2人とも不安ですが、それ以上にCP3の思い切りがカギになりそうです。



ダントーニシステムでは、
・走るの遅くても判断が早ければOK
・PGはボール持ち過ぎてもOK

クリス・ポールの弱みを補ってくれます。ただし、ハーデンと2人体制なので別の課題は出てきます。
・オフボールのポジション大切
・もっと打て!

どちらも何とかなりそうな課題です。

しかし、何とかなるだけではチームの強化にはなりません。単に良いSGを連れてくるべきでした。バトラーやポール・ジョージが欲しかったです。
クリス・ポールを手に入れたメリットがどこに出てくるのかを考える必要があります。



2人のプレーメイカー

ロケッツはハーデンを中心に瞬間的に崩し、他の4人がそれぞれシュートを狙う体勢になります。どこで誰がフリーになるかわからないので、味方の位置とディフェンスの状況を瞬時に判断して、適切な選手にパスを通す必要があります。

崩し切れず困ったら最終的にはハーデンが単独突破します。

ウォーリアーズとの比較として、例えば3人で崩しを行う際に、
ヨーイドンで「3人同時に」動くロケッツ
に対し「1.2.3」と順番に動くウォーリアーズでした。

ダントーニシステムではPGの優秀性が必須です。ないと崩壊します。主にこんな理由です。
・一瞬で状況を判断し、アシストパスを出す
・全員がアクションするのでやり直し不可

これがCP3×ハーデンでどうなるのかを考察します。



・一瞬で状況を判断し、アシストパスを出す

これはまさにCP3に適した役割です。昨季のハーデンは素晴らしいパフォーマンスをみせましたが、華麗にパスを出しつつも困ったら自分でドライブすれば成立しました。

判断力に勝るCP3の方がより素晴らしいチームオフェンスを成立させると予想されます。何よりミスが減ります。

◯ターンオーバー
ロケッツ 15.1(25位)
ハーデン 5.7
ベバリー 1.5
CP3 2.4

◯アシスト/ターンオーバー率
ロケッツ 1.67(13位)
ハーデン 1.95
CP3 3.83

高い判断力を要求されるので、判断を間違えてターンオーバーというシーンは許容されていますが、少ないに越したことはありません。宇宙に向かってアリウープパスを送るハーデンよりも優しいロブパスをしてくれるはずです。ハーデン+ベバリーが7.2なので違いを生むためには2人で6つに抑えたいです。

PGとして最高のアシスト/ターンオーバー率を誇るCP3スタートのオフェンスは、ハーデンスタートよりもミスが少ないはずです。

リーグ最高はウォーリアーズの2.06です。CP3始動のオフェンスを増やす事で更に効率的なダントーニシステムになる事が期待されます。



・全員がアクションするのでやり直し不可

高いレベルで合わせるダントーニシステム故に発生する悩みですが、プレーメイカー2人になる事でセカンドアタックが可能になるかが注目です。
崩した後は誰かしらはリングにダイブしているので、外にスペースが出来ています。ここを有効利用する事です。

なお、ハーデンPGはやり直さなくてもシュートまで持ち込む強さがあったからこそチームは勝てました。

半分近くのオフェンスを10秒以内にシュートに持ち込んでいたロケッツ。CP3でやり直しがきくならばペースは下がります。
それに見合うだけのEFG%がなければ見た目にはわからない失敗です。

自分達のリズム(早い展開)と数字上の効率性(FG%)のどちらが勝利に必要か、という議論になる可能性もあります。



プレシーズンを観ているとCP3はコーナーにポジショニングするケースがあり、ハーデンよりもコートをワイドに使う意識を保っています。一方でシュートは入らないし、アシスト/ターンオーバー率もCP3にしては酷いです。

この個人スタッツの悪さはチームにフィットしていないというよりは、早いリズムで行われるゲームに慣れていない感じです。
評価するのはもう少し先になりそうです。

そんなわけでCP3×ハーデンは最悪なのですが、それがダントーニシステムに組み込まれると優位性を生む可能性があると考えています。でも、まだ見えてきていません。



プレーオフの反省

ディフェンス

数字を出すまでもなく、ディフェンスがロケッツの課題です。オフェンスで圧倒したチームはプレーオフを反省しディフェンス強化をオフの目標にしました。

元々ベバリーとアリーザというディフェンダーがいるチームなので問題なのはヘルプディフェンスなのですが、ハーデンの難しさとCP3への期待もあったのでしょう普通にディフェンダーを獲得しました。

PJタッカー
ルーク・バーア・ムーテ

分かりやすい対人ディフェンダーです。でもこの2人にはちょっとした共通点があります。

◯前年からの3P確率
PJタッカー 33.0% → 40.0%(ラプターズ)
バーアムーテ 32.5% → 39.1%

共に「ディフェンスは良いけど・・・」という選手だったのですが、ラウリーとCP3からのパスという分かりやすくフリーで打てる状況が増えた事で、迷いなく打ち、高い確率で決めました。30歳を超えて3Dタイプへの進化を果たしました。



アリーザはフットワークとハンドチェックで守るタイプなのに対し、PJタッカーはフィジカルで、バーアムーテはその間くらいでしょうか。違うタイプのディフェンダーを揃えました。

3人ともSGからPFまでのディフェンスを担当出来ます。スモールラインナップのロケッツにはこれが悩みのタネでもありました。

酷い時にはハーデン、ベバリー、ゴードン、アリーザ、カペラなんてスターターもあったので、ローテーションの自由が効くようになります。
オフェンスシステムを崩さずに、ディフェンス面の強化に成功しました。

リムプロテクター不足、ヘルプディフェンスには引き続き懸念は残りますが、自分達の特徴を残したままディフェンスを向上させるには良い選択をしたと言えます。

ディフェンスが劇的に良くなる事はなく、リーグ中位くらいでしょうが、バランスは取りやすくなります。



ライアン・アンダーソンはかなり特殊な能力の選手で貢献度は高いですが、そこまで重要だったわけでもありません。しかし、レーティングでは最も重要な選手になっていました。

◯アンダーソンのレーティング
オンコート
オフェンス 113.8
ディフェンス 105.8

オフコート
オフェンス 109.6
ディフェンス 107.1

その理由は単に代役不足です。ストレッチ4は珍しくないですが、アンダーソンほどロングレンジから打つ選手は少ないです。
サム・デッカーをクリッパーズに渡してしまったので、SFで穴埋めを図ったわけです。

ボールハンドラー
ハーデン、CP3、ゴードン

ウイング
アリーザ、アンダーソン、PJタッカー、バーアムーテ

ビッグマン
カペラ、ネネイ

基本はこの3つのポジションで回していきます。ポイントはベバリーとルー・ウイリアムスからウイングがサイズアップした事です。
ディフェンス力のある選手が加わり、しかもサイズアップしたのだから自然とディフェンス力は向上するでしょう。



ロースコアで勝てるのか。

55勝したロケッツが勝率を上げるには、ロースコアの試合に少しでも勝つ事です。ハーデンの存在があり、昨季もそれなりに勝っていますが、対人に強いディフェンダーを得た事で、試合終盤のクローザー合戦を制する確率が上がることが期待されます。
それはCP3によりハーデン以外の選択肢が増えることでも期待されます。シーズンの最後はハーデンがブロックされましたが、誰もが最後はハーデンだとわかっていました。

一方で懸念されるのはルー・ウイリアムスの代役不足です。シーズン途中に加入したルー・ウイリアムスですが、予期せぬ形で突然打ってしまう個人技はロケッツのアクセントとなり、サンダーを悩ませました。

ハーデンに次ぐ強引さは厳しい試合では重要な要素です。



まとめ

目標 優勝

◆ストロングポイント◆
◯ダントーニシステム
◯戦術への共通理解度
◯ハーデンの個人技

◆ポジティブポイント◆
◯CP3による効率性アップ
◯戦術に見合ったディフェンダーの獲得
◯ローテーション強化

◆ネガティヴポイント◆
◯ヘルプディフェンス
◯CP3のテンポへの対応

ダントーニシステム2年目ですが、進化するとは限りません。プレーオフで勝てないと言われるのは進化の余地がないからでもあります。その点ではシステムに合うクリス・ポールが何をもたらせてくれるのかは楽しみです。

ハーデンとカペラを除いて高齢化したロケッツは優勝のみを目指します。3年もすれば弱体化するでしょうから、勝負の1年になります。プレーオフで勝つためにシーズンでは試行錯誤してみるでしょう。なので55勝すれば十分です。出来れば3位以内にはなりたいけど。



ロケッツは使いたいデータもいろいろありますが、クリス・ポールがどうなるかが最重要事項なので、こんな内容になりました。以前にダントーニ論に触れておいて良かったな。

もう1度書くなら違う内容で書けそうです。

データとしてはベバリーもオフェンスで貢献していました。チームで戦えたからFG%が上がったのですが、新加入のエース級が同じ様にFG%を上げるかというと微妙です。ベバリーより貢献しないとか目も当てられません。

賢いCP3なのでシステムは理解してそうですが、だからと言って瞬間の判断で3Pを打てるかというと難しいのでしょう。
シーズンを通じて3Pアテンプトとアシスト/ターンオーバー率に注目すればチームにフィットしたかが分かりそうです。



MVPのシルバーコレクターになりそうなハーデン。

ウォーリアーズが70勝しない
スパーズは成績落とす
キャブスはレブロン以外が頑張る
ウエストブルックはトリプルダブル無理

こんな条件が揃いそうなのでチャンスではあります。個人スタッツは下がりそうなので、チームが勝ち星を増やせるかどうかです。
58勝とかだと厳しいのかな。



プレシーズンみてもベンチメンバーだって気持ち良いくらい迷わず打つよね。実は確率は大したことなかった昨季。熟練して確率上がるならば無敵なんだけどな。

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