17-18シーズンプレビュー ティンバーウルブズ編

シーズン終了後にFAとなっていたカスピは「このチームは来季50勝する価値のあるチームだ」と発言しました。若きスターも揃い再建段階から抜け出す時期だという事です。
しかし、それから3ヶ月すると「50勝するのは当然」のチームになりました。スターを残した上でまさかの超大型補強に成功し、リーグで最も将来性のあるチームの地位はそのままに、今季の優勝候補の一角に躍り出ました。経験不足で実際に優勝するとは思われていませんが、それくらいの価値があるチームになったという事です。




新加入の選手が多過ぎる上に、彼らが中核を担うので昨季のデータはあまり価値がありません。まずは簡単に昨季の反省を確認し補強の流れに沿っていきます。

わかりやすかった弱点

◯オフェンス
レーティング 108.1(10位)
FG 46.7%(8位)
3P 34.9%(20位)
アシスト 23.7(9位)
リバウンド 11.4(6位)
ターンオーバー 14.0(19位)

レーティングは順位こそ10位ですが、108あるので高いオフェンス力を誇りました。それでいて3Pの確率が悪く、ターンオーバーも多いので若いチームならではの改善ポイントがあるといえます。

つまりチームの戦術的熟成とシューターの獲得があれば、まだまだレーティングが上がる要素があるわけです。
特に3Pはアテンプト21本はリーグ最低で成功数7.3も最低です。ザック・ラビーンの負傷離脱も響きました。



◯ディフェンス
レーティング 109.1(26位)
被FG 47.5%(28位)
被3P 36.6%(23位)
リバウンド 31.0(29位)
ブロック 4.5(19位)
スティール 8.0(12位)

ディフェンスは酷い有様です。スティール以外はどれもこれも全く守れていません。

シボドーHCはディフェンス指導が売りだったはずですが、前年よりも悪化させてしまいました。

特に酷いのはリバウンド。オフェンスリバウンドはとれるのにディフェンスリバウンドはとれません。タウンズは8.9と強く、PFのジェンも及第点なのですが、次にとっているのがルビオ3.2となります。SFウィギンズやベンチ陣がとれないのが問題でした。



そんなわけでシーズン終了後まで時間軸を戻せば、補強すべきポイントも明確でした。
・3DタイプのSGとSF
・リバウンドのとれるバックアップ

前者は言うほど簡単ではないので、分業で2人のイメージですが、概ねサポートキャストを加えれば良いくらいでした。
ウィギンズ&タウンズというオフェンスの中心がハッキリしているので、そこに誰を付け加えるかだけが課題でした。



ジミー・バトラーの獲得

獲得したのはまさかのオールスター選手でリーグ最高レベルのディフェンス力を誇る2wayプレーヤーでした。
23.9点
FG45.5% 3P36.7%
6.2リバウンド
5.5アシスト

3Pはもう少し高いと理想的でしたが、注目すべきはリバウンドとアシスト。エースキラーとしてだけでなくリバウンド面でも力になるため、考えられる中ではポール・ジョージと並び最高の補強をしました。

ウルブズはこの時点で既にトップチームに加わるメンバーが揃い、50勝は現実味を帯びてきました。

この時点で懸念事項となったのは次の3点です。
・ルビオ、バトラー、ウィギンズとボールハンドラーが多過ぎる。
・シューター不足
・ベンチのリバウンダー不足



続くFA補強

リーグ屈指の注目チームとなったウルブズ。それまで何年も見向きもされなかったチームはFA市場で人気が急騰しました。

◯ジェフ・ティーグの獲得
15.3点
FG44.2% 3P35.7%
4.0リバウンド
7.8アシスト

PGにも元オールスターのティーグを連れてきてルビオをジャズに放出します。ルビオは素晴らしいパサーですが、シュート確率が低かった事は懸念でした。
ティーグは2年前は3P40%を記録し、シュート力があります。またルビオが自分が動いてアシストするタイプなのに対し、ティーグはより味方の動きに合わせるタイプです。
ルビオよりもボールを持つ時間が短いためバトラー、ウィギンズと組むにはベターです。



◯タージ・ギブソンの獲得
10.8点
6.2リバウンド

そしてベンチのリバウンド力も獲得しました。及第点だったジェンの方がベンチに回ることになったわけです。
またジェンとギブソンのどちらかが常にコートにいるため、ディフェンス面での信頼性も高まります。ジェンはスターターでは最もディフェンスレーティングが良かった選手でした。



こうしてウルブズはシーズン終了後の反省点をとんでもない形で補強しました。シューターはとれなかったものの標準以上に決める選手を揃えることで対策しました。誰でも打てるという選択肢は魅力です。

50勝の可能性があったチームは、60勝の可能性があるチームにステップアップしたのです。

もちろん経験不足で実績もないので、そこまでは勝てないだろうというのは共通した意見だと思います。
他のチームが強くなった事もあり60勝はしないでしょうが、それはまたシーズンが始まってから経過観察するとして、チーム構成や戦略的な視点から

ウルブズに死角はないのか?

という点に触れていきたいと思います。



ウルブズの死角

何故、ジャマール・クロフォードなのか。

FA補強でベンチにクロフォードを加入させました。36歳ながらクリッパーズのアイソレーションを支えた選手です。
確かにベンチは得点力不足でした。当時未契約だったモハメドを除けば誰も得点出来ません。何よりFG%が非常に低い選手ばかりでした。
しかしバトラー、ウィギンズ、タウンズと20点オーバーの選手が3人いて、しかも堅実に得点できるティーグ、ギブソン、ジェンがいるならば、ローテーションの組み方でベンチポイントは十分に埋められます。

クロフォードは基本的にボールを持って仕事する選手で、何よりFG%が非常に低い選手でもあります。

◯クロフォードのFG
FG 41.3%
3P 36.0%
キャッチ&シュートの割合 21.1%
FG 51.1%
3P 34.8%

40%を何とか超える程度のFG%しかないだけでなく、キャッチ&シュートの選択が少なく、しかも3Pはプルアップの方が入る困ったタイプの選手です。

補足しておくと別にクロフォードが悪いわけではありません。こういうタイプの選手というだけです。実際にプレシーズンでは2.7点3.3アシストと得点はとりませんが、プレーメーカーとして機能しています。

しかしプレーメーカーは十分にいるウルブズなのでクロフォードにお金を使うのであれば、突破力がなくても、より堅実なFG%を誇る選手を連れてくるべきでした。クラークのようなシューター系やPJタッカーのようなディフェンスと堅実なシュートセレクトタイプです。

ルビオを放出したのにプレーメーカーを連れてきては意味がありません。個人で取りに行くタイプが多過ぎます。



シボドーの手腕

シボドーがブルズのHCになった時は未知の存在でブルズだけが信じて雇いました。そしてブルズを辞めた時はブルズだけがシボドーを評価していない、とまで書かれていました。高い評価をされているHCです。

ローズを中心に置いたブルズは、ローズによるローズのための構成のようなチームで勝利を積み重ねました。ディフェンス力を売りにし、ローズの突破についていく選手で構成されていました。

なお、管理人はその頃はNBAを殆ど見ていないのでシボドーの評価は出来ません。しかし、昨季でいうならば前述の通りディフェンスの改善をチームに徹底出来なかったHCであり、主力のケガなどもありましたが、2年連続新人王を出すような若いスターチームに勝利をもたらす事が出来なかったHCです。

ブルズ時代とはかなり違います。
しかし、今も昔も変わらず問題な点があります。主力のプレータイムが長すぎる事です。ディフェンスが向上しなかった理由の1つは単なる疲労だったりします。

昨季プレータイム37分を超えたのはリーグで6人ですが、半分の3人がウルブズです。ちなみにブルズのバトラーも入っています。
前年からのプレータイム増加は

ウィギンズ +2.1
タウンズ +5.0
ラビーン +9.2

これだけ主力をプレーさせながら、勝利数は+1のみ。その起用法は勝利には繋がらなかったわけです。

そしてラビーンは大ケガをしました。デリック・ローズ同様にスプリント系の選手が長時間プレーするリスクをどう捉えていたのでしょうか。

今のNBAはワン&ダンが増えたこともあって、特に若い選手のプレータイムには気を使います。ポルジンギスが34.8分でアキレス腱の痛みにより欠場した際にはホーナセックHCが負担の大きいビッグマンを酷使し過ぎと批判されました。
シボドーは21歳と22歳の若者を酷使しています。シーズン中に22歳に大ケガをさせ、過去にはMVPプレーヤーを引退の危機に追い込んだ経験があるにも関わらずです。



今期に限らず将来的な爆弾を2人のスターに背負わせていくシボドー。またベンチも含めたチーム力向上への妨げにもなります。

ウルブズの目標は近い将来の優勝です。多くのハプニングが起こり得るプレーオフで勝ち進むために総合力が必要な事はわかりきっているので、シボドーの選手起用方法には大きな疑問があります。

ちなみにバトラーは13ー14シーズンに38.7分という長時間出場していますが、13.1点しか取れていません。普通なら失格レベルのオフェンスなのですが、使われ続けました。
そうやって成長したのだからシボドーに感謝しているはずです。



まさかの早い展開

シボドーHCの起用法には大いに不満がありますが、加入したからにはクロフォードも含めて活躍を期待しています。そんな注目のウルブズはプレシーズン3試合で早い展開を示しました。

◯昨季のペース 97.1(23位)
◯主力の多かった前半のペース
レイカーズ戦 112.9
ウォーリアーズ戦 105.8
ウォーリアーズ戦 116.5

相手がレイカーズとウォーリアーズなので、自然と早くもなるわけですが、それにしても自分達も早いオフェンスでどんどんシュートを打っていきます。
早い展開自体を否定する事はないのですが、それをこのチームでやる意味が何処にあるのかを知りたいところです。



ルビオとティーグを交換したわけですが、早い展開をするなら中心となってプッシュ出来るルビオの方が適任です。PGとしてクリス・ポールに次ぐアシスト/ターンオーバー率を誇るルビオなので、ミスが増える早い展開でも広い視野で堅実なプレーとアシストをしてくれます。

更にシューター不足のチームなので、早く展開してもワイドからのフィニッシュ力を欠きます。実際には誰もが打てるウルブズなので打っていますが、それが効果的かは微妙です。ちなみにこれはウォーリアーズだとカリー、トンプソン、デュラントに偏っている役割です。

◯プレシーズンのシュートアテンプトと確率
タウンズ 11.3本 44.1%
ウィギンズ 12.0本 47.2%
バトラー 6.0本 55.6%
ティーグ 10.0本 33.3%
モハメド 10.3本 45.2%

3試合の結果で判断するのは早計ですが、印象として悪かったのが満遍なくチャンスが訪れ過ぎるシュート機会です。
バトラーとウィギンズが存在する利点を活かせていないようなアテンプト数です。2人以外はFG%も問題です。

インサイドを空けて誰もが飛び込むスタイルはウルブズのメンバーにあっていますが、それは早くなくても出来るので、ハーフコートでプレーし、多彩なタウンズを中心にしながら、最後は無理の効くバトラーとウィギンズの突破を使う方が効率的に感じます。

早い展開でバトラーとウィギンズが活きるならば良いのですが、これまではティーグ仕様な雰囲気ばかりです。



主力の消耗

何よりも問題はこれです。早い展開は運動量も多くなるので厚い選手層が必要になりますが、ウルブズには不足しています。
ただでさえシボドーHCが主力を酷使し過ぎなのに、更に消耗の激しい戦術を選ぶ意味がわかりません。バテるのは鍛え方が足りないからとでも考えているのでしょうか。

まぁプレシーズンだから試しているのかもしれません。ウルブズが今の段階でエネルギーを費やすべきなのはディフェンスです。オフェンスは昨季までの実績と補強で何とかなるはずです。バトラーを中心に置いたディフェンス組織作りはシボドーHCの得意とする部分のはずなのに、ディフェンスに回すエネルギーは残らなそうです。

早い展開とオフェンスにエネルギーを費やして消耗してしまっては、ウルブズのポテンシャルを最大限に発揮するのは難しいでしょう。



まとめ

目標 60勝
主力を消耗させてまで達成する程の目標ではないけど。

◆ストロングポイント◆
◯スター揃いの強力な布陣
◯ウィギンズ&タウンズの将来性
◯3Pがなくても強力だったオフェンス

◆ポジティブポイント◆
◯豪華なだけでなく弱点を補えた新加入選手

◆ネガティヴポイント◆
◯プレーメイカーばかりを求めた補強
◯リスキーなシボドー流選手起用
◯主力を活かしきれるか不明なシステム

早い展開について否定的に述べましたが、それでも十分に勝てると思います。
「勝利が戦術を深める」事は多いですが、ウルブズの場合は「勝利が問題を隠す」可能性があります。

ウィギンズ&タウンズが38分プレーし続けて勝利を重ねたとしても、それはリスクを増やし続ける事になります。今季のウルブズを観るには単に結果だけでなく、その内容やプレータイムにも注目すべきです。

仮に60勝近くまで勝ち星を重ねたとしても、その内容が選手のポテンシャルを活かしてなければ、プレーオフでは簡単に負けてしまうでしょう。



プレシーズンの内容ならば50勝も厳しいです。まぁプレシーズンなので参考程度です。
よくわからないのはレイカーズとウォーリアーズという極端な、そして同タイプの2チームとしか試合をしないでシーズンに臨むことです。まるでシーズン通して調整するエリートチームみたいに。



ウィギンズ&タウンズは本当に素晴らしいです。近年のドラフトで初年度から結果を残し、更に毎年成長している選手がどれだけいたことか。
まだ22歳と21歳ですから単純に2人の成長待ちでも成績を伸ばす事は可能だったでしょう。
GMアンケートで、自由に選手を獲得できるならば誰を中心にチームを作りたいか? という質問ではタウンズが1位となりました。

◯カール・アンソニー・タウンズ
25.1点(12位)
12.3リバウンド(6位)
2.7アシスト
62ダブルダブル (2位)

何でこの選手がオールNBAチームに選ばれていないのか疑問です。チーム成績が悪いから? アンソニー・デイビスだって31勝しかしていません。
もしも今季同様のスタッツを残し55勝以上したならばMVP候補にも上がってくるでしょう。



東のシクサーズ、西のウルブズと期待の両チームですが、ガラスのエンビートとシボドーリスクがあります。

ファイナルへ進んだ後のサンダーは実力は落とさないものの、ウエストブルック&デュラントが交互にケガをしました。その間に健康だったウォーリアーズに一気に抜かれました。ケガが少ない事は優勝を目指すには超重要事項です。
若くして優勝候補として戦い、多くの経験を積むチャンスをケガで棒に振るわけにはいきません。

ケガしてからでは遅いのでコンディションの徹底管理こそがウルブズが最も力をいれるべき事項でしょう。

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