圧倒的な強さをみせたウォーリアーズ。多くのファンを魅了するスタイルで世界中から注目されるようになりました。
戦術解析をしていくと、目新しい要素やNBAならではの要素がよく出て来るので楽しいのですが、今回はプレビューなので目的が違います。
,
,
,
そんなウォーリアーズは、アシストが群を抜いて多く、FG%が高くて、よく走って、オフェンスの素晴らしさを体現している。でも実はディフェンスのチームで・・・とデータを挙げたらきりがなく、尚且つ誰もが知っているので面白くもありません。
順位予想?
1位に決まっています。
どんなバスケをするか?
変える理由がありません。
史上最強とまで言われるチームです。
しかし、そんなチームでも昨季の序盤はデュラントが入ってむしろ弱くなったと言われ、“たった”67勝しか出来なかったとヤジられました。
前年が73勝というバケモノ記録だった故の揶揄ではありますが、補強したというならば今期は67勝を超えたいところです。
,
,
,
プレビューのテーマ
そんなわけで今回のテーマは「ウォーリアーズは再び70勝するのか?」にします。
なお、73勝はしません。しないというか新記録目指してシーズン終盤に頑張りはしないという事です。73勝くらいの勢いがあれば70勝する、それくらいの捉え方です。
休養問題が議題になりますが、シーズン最終戦の休養については昔からあったはず。
,
,
,
strength in numbers
そもそも昨季の序盤はデュラントが入ってリズムが乱れたと指摘されましたが、それよりもサラリー問題から自慢の選手増が薄くなった事が問題でした。
◯主な放出
バーンズ、ボーガット、バルボーサ、スペイツ、エジーリ、ラッシュ
後半4人のベンチ陣で24.7点、3.5アシスト、13.1リバウンドです。
これを埋めるのに獲得されたのは
バルボーサ → なし
スペイツ → ウエスト
エジーリ → マギー
ラッシュ → なし(クラーク)
ウエスト以外は穴埋めにもなっていません。
しかし、シーズンが終わってみれば、お笑い要員と思われたマギーはアンストッパブルなフィニッシャーに、ベンチの隅っこだったクラークはFG49%を記録し、ルーキーのマコーはイグダラの後継者とまで言われるようになりました。
脆弱だったベンチはシーズンの終わりにはstrength in numbersとして機能しました。
,
,
,
夏の勝者
アーヴィングの乱とサンダーの反抗がなければ、夏の勝者はウォーリアーズでした。圧倒的な強さを誇りましたがFAが9人もいて強さをキープするのは容易ではないと予想されたものの、結果的には残したい上位7人と契約出来ました。
◯戦力、戦術的に重要な3人
カリー
デュラント
イグダラ
◯システムやローテーション上貴重な2人
リビングストン
ウエスト
◯コストメリットのある2人
パチュリア
マギー
再契約しなかったのはクラークとバーンズの2人。カリー&トンプソンのシュート能力が最大の売りなんだけど、ベンチにシューターが不足していたため、実は重要だったクラークのポジション。
◯新加入
ニック・ヤング
13.2点 FG43.0% 3P40.4%
オマル・カスピ
5.2点 FG47.0% 3P34.9%
ベンチシューターのグレードアップと人数増に成功したわけです。ウォーリアーズ補正で4%くらいFG成功率は上がるでしょう。マギーは8%、デュラントでも3%くらい上がりました。
バーンズについてはマコーの成長があったので問題ありません。ポジション的にはカスピもこちらです。
ちなみにスモールラインナップが流行ってますがウォーリアーズはビッグマンがいないだけで全体がデカいのが特徴でした。今季のロスターではカリーの次に小さいのがイグダラです。特にディフェンス面で効力を発揮します。
,
,
,
あれだけの強力な戦力を維持しただけでなく、強化にまで成功したのです。デュラントFA獲得からちょっと反則感のある巨大戦力問題は、デュラントのディスカウントにより増大しました。ローズやウェイドとミニマム契約するチーム以外は問題視しても良いと思います。
なお、地味にですがドラフト2巡目ジョーダン・ベルを金銭トレードで獲得しました。ドレモンド・グリーンの代役候補です。このポジションまで代役立てられたらニッチもサッチも。まぁこれはドラフト戦略なので誰も文句は言えません。
70勝への道
戦力増強に成功
,
,
,
シーズンは長い
戦力強大だからベンチ増やしても仕方なくないか?
と言われそうですが、昨季の振り返りでも触れましたが、結構関係してきます。
◯試合が連戦または中1日の成績
15ー16シーズン 56勝7敗 勝率888
16ー17シーズン 51勝13敗 勝率797
主力の休養問題もありますが、長いシーズンで連戦が続くところで負けてしまうのはベンチの弱さがありました。
未成熟&層が薄かった昨季に比べ、1シーズン経て成熟度が高まり、層も厚くなりました。
,
,
,
◯得失点
シーズン通算 11.6
連戦 5.7
◯オフェンスレーティング
シーズン通算 113.2
連戦 112.2
◯ディフェンスレーティング
シーズン通算 101.1
連戦 105.9
得失点差をみると連戦だった17試合では厳しいものがありました。しかしレーティングに目を移すと悪かったのはディフェンスだった事がわかります。
実はウォーリアーズはスターターとベンチメンバーだとオフェンス力には大きな差がありますが、ディフェンスはあまり変わりません。響くのはグリーン不在くらいです。
ベンチのオフェンス力への不安がスターターの出場時間を長くし、疲労からディフェンスが悪くなっていたと考えられます。
,
,
,
点差が離れない → スターターが長くなる → ディフェンスが悪くなる → 点差が離れない
みたいな流れでもあります。
特に期待されるのはヤングです。ベンチスコアが改善すれば、それだけスターターは休めます。
基本的にはベンチの成熟がプレータイム問題を解決してくれるはずですが、そもそも日程緩和で17試合あった連戦が12試合に減りました。
70勝への道
連戦の減少とベンチスコアの改善
,
,
,
67勝したチャンピオンチームが戦力の底上げに成功し、さらに日程面も有利に働きます。プレーオフですら1敗しかしなかったのだから、連戦への不安がなくなれば+3勝は確実な様にも思えます。
しかし、70勝を阻む要素も確実に存在します。まずはウォーリアーズ自身の問題です。
デビット・リーとバルボーサ
73勝したシーズンはファイナルでキャブスに逆転負けを喫しました。その要因の1つはグリーンの代役PFの不在です。この問題の解決にはデュラントという特殊人材を当てました。線は細いけどセンター並みのウイングスパンがあるので、パチュリア、マギー、ウエストの誰かと組めば問題ありません。
オフェンスはポストアップしたり、インサイドで合わせたり、グリーンより上です。
SFとPF代役をこなすデュラントが抜けた時に連敗したのはそんなローテーション問題でした。
◯デュラント不在時の勝敗
16勝4敗
いる時よりは負けてますが大した問題ではありません。選手層的には問題ないけど、ローテーションに迷いがありました。瞬間的に弱くなる事はあり得るわけです。
,
,
,
またカリーがいないと急激にオフェンス力を落とします。
◯カリーのオフェンスレーティング
オンコート 118.1
オフコート 102.4
でもカリーは特殊すぎて代役なんていません。強いて言うなら弟くらいです。
◯カリーのペース
オンコート 105.1
オフコート 96.6
カリーの早打ちがなくなるので遅くなるのは致し方ありませんが、リーグ最高速クラスから最低速クラスに落ちてしまうのはマズイです。
15ー16シーズンもカリーの不在は大きかったのですが、ダントーニシステムを知るバルボーサがいました。
リビングストンはPGですがロングレンジは打たないのとボールをプッシュ出来ない面があります。バルボーサが両面を補っていました。
,
,
,
グリーンとカリーの代役問題があるわけです。
前者はルーニーやマカドゥーがしっくりこず、おそらくジョーダン・ベルが試されます。余裕があるウォーリアーズは試してしまいます。試す時間が長いと70勝には障害です。
後者は結局PG補強を進めませんでした。カリーのケガはもちろん単純にPG不足です。
70勝への課題
カリー&グリーンのベンチが不確定
,
,
,
ライバルの強化
昨季ウォーリアーズが2敗したのはスパーズとグリズリーズだけです。スパーズは開幕戦の大敗と問題となった休養日だったりしますが、グリズリーズは苦手な様です。
まぁでも殆どのチームに勝っているわけで、ライバルが強くなれば負ける可能性も高くなります。
ロケッツ、サンダー、ウルブズで10勝2敗だったのがどうなるのか。なんせ70勝には12回しか負けられません。
ペリカンズとブレイザーズに4連勝。これもどうなるのか。
,
,
,
そんなウォーリアーズが負けた15試合を解体してみます。
◯オフェンスレーティング 104未満の試合
5勝10敗
どんなチームにもシュートが不調の試合はあるものです。平均で104に届かないのが9チームもあるのに、15試合しかないというだけでも脅威です。
5勝の内訳はシクサーズ、サンズ、ホークス、ニックス、レイカーズ。
ニックス(104.7)以外は平均が104未満のチーム。つまりそもそも調子悪い自分達よりも弱い相手にしか勝てませんでした。
15ー16シーズンは104未満でも11勝8敗で、キャブスやセルティックスにも勝っています。これが本来ディフェンスのチームという理由です。
不調の試合は減ったけど、守り勝つ可能性は減りました。お互いに不調の試合が減ったとも言えます。
,
,
,
オフェンス不調ではないけど負けたのは5試合。全てオフェンスレーティング106以上の試合です。
ウィザーズ
ウルブズ
ジャズ
ナゲッツ
グリズリーズ
これらのチームの共通点としてオフェンス面の向上が図られたという点があります。
ウィザーズ、ウルブズ、ナゲッツは早い展開でのオフェンス合戦を望み、ジャズとグリズリーズはディフェンスのチームだけどオフェンスに力を入れ始めました。
しかし、まぁサンプルが少ないのでたまたまかもしれません。
なお、15ー16シーズンでは1敗しかしていません。ディフェンスが良いからオフェンスが水準を越えれば負けませんでした。
,
,
,
・オフェンス不調の試合は減ったけど、そんな時でも勝てた相手は弱いチームだけ
・オフェンス不調以外の試合でも負けるパターンが増えた。
この2つが示す事としてウォーリアーズ云々ではなく、他のチームがオフェンス力にかなり力を入れてきたという点が挙げられます。
実際にリーグの平均は大きく動きました。
※リーグ平均はnba.comから探す方法がわからなかったためbasketball-reference.comを参照。集計方法が違うのか平均値とは思えない数字がありますが、同じ集計をすれば増加する傾向にあると捉えて下さい。
◯リーグ平均得点
15ー16シーズン 102.7
16ー17シーズン 105.6
◯リーグ平均レーティング
15ー16シーズン 106.4
16ー17シーズン 108.8
試合のペースが上がり平均得点が上がってきたのはこの5年くらいの流れですが、レーティングが2.4も上がったのは昨季の特徴です。
各チームが早い展開に慣れてきて、早い中でも正確なプレーをするようになりました。そこに3Pが大きく関わります。
◯リーグ平均3Pアテンプト
15ー16シーズン 24.1
16ー17シーズン 27.0
3Pもこの5年の流れですが、ロケッツがダントーニになった事もあり前年+2.9は加速していっています。
11ー12シーズンは18.4でした。
,
,
,
ウォーリアーズ優勝前から始まった流れではありますが、ウォーリアーズの特徴的な戦術はトレンドとして広まっていったため、ウォーリアーズに対抗出来るチームが増えてきたことになります。
早さには縁がないジャズやグリズリーズでも、ディフェンスで抑えるだけでなくオフェンスで勝ち切ったわけです。
そしてそれ以上にウィザーズ、ウルブズ、ナゲッツとディフェンスの怪しいチームに競り負けたのは特徴的です。
プレシーズン観ていても早い展開を好むチームが増えそうなので、それはリーグの流れとしてウォーリアーズへの対抗策が進むことになります。
70勝への課題
他チームの強化とウォーリアーズ化で対抗策が進んだ。
,
,
,
まとめ
70勝出来るのか?
検討した内容を文章にすると
リーグの日程緩和もあり苦戦していた連戦は減ったし、戦力補強に成功しベンチスコアも改善した。ただ、新戦力を試すのとカリーの代役には悩みそう。
リーグ全体がオフェンスに力を入れ、ウォーリアーズ流に近づくチームが増えたので、勝ちパターンがハマらないケースが出てきている。
,
,
,
「70勝するだろうな」という想定の元にスタートしたのですが、今の気持ちとしては、
70勝には届かない
という予想です。やはり最後の点で他のチームもウォーリアーズ化していると、「自分達のバスケ」で勝てる確率が落ちてくるわけです。まぁそれでも圧倒的に勝つ確率が高いわけですが、70勝には12敗しかしてはいけません。
・不調の試合が15試合→10試合に減って3勝7敗だとして
・相手にオフェンスで上回られる試合が5試合→6試合と1試合増える。
これだけで69勝13敗です。流石に厳しい気がします。
,
,
,
テーマとは関係なくプレビューです。
目標 優勝して当たり前に思われています。
◆ストロングポイント◆
高さを活かしたディフェンス力
流麗なボール回しでのオフェンス
攻守が紐付いた熟練されたシステム
豪華な選手
◆ポジティブポイント◆
厚くなった選手層
◆ネガティヴポイント◆
カリーの代役不足
まぁ特に触れる事もありません。
どんなプレビューも10分のハイライト映像に勝てないようなチームです。
,
,
,
期待されるのはウォーリアーズに勝つチームが現れるか、というよりもウォーリアーズスタイルが流行して中で、それをどう打ち破るかです。
「早い展開でオフェンス重視」がバブルに突入しましたが、それがスタンダードになるのか、対抗策が生まれるのか。
プレシーズンの印象だと今のところ、早さの追求が多くなっています。単に早いだけでなく戦術的アイデアが詰まっているチームがダントーニロケッツ以外に現れるのかは不明です。
ジャズの行なっていた事は極めて興味深いトライアルですし、ペイサーズも新たな事を始めようとしています。勝ちそうなチームではセルティックスがスティーブンス流を深めます。
そんなウォーリアーズ的なノリとは違うチームの戦術的反抗にも期待しています。
strength in numberです…