17-18シーズンプレビュー グリズリーズ編

昨年の夏はサラリー高騰が進み、その中でリーグ最高年俸となったのはグリズリーズのコンリーでした。お前が最高かよ!とツッコミが入る契約でしたが、1年経てば違和感はなくなりました。

高額契約が増えた事もありますが、プレーオフではチームを強力にリードし、クレバーなプレーメイクと勝負強いスコアリングでスパーズを苦しめる姿は数字には現れないコンリーの価値を示しました。


そんなコンリーとリーグ最高のセンターと評価されたマーク・ガソルを中心としたチームは、毎年50勝を超えるエリートチームでしたが、1516シーズンに衰えを見せ始めました。

13年 56勝
14年 50勝
15年 55勝
16年 42勝

こうして変わる事を求められ、新人HCのフィツデイルの下で同じコアメンバーで1617シーズンを戦い43勝を挙げ、危なげなくプレーオフに進みました。



ベテランズの退団

この夏にピンス・カーター、ザック・ランドルフ、トニー・アレンが退団しました。彼らの退団により1516シーズンに400分以上出場した選手は9人居なくなり、残ったのはエース2人とジャマイカル・グリーンの3人だけです。(グリーンは未契約、チャルマーズは戻ってきたけど。)
何故、こんな事態が起こったかというとプレーオフこそベテランに依存した戦い方をしましたが、フィツデイルは前任が全く出来なかった若手の活躍とオフェンスの変革を促したからです。ある程度の成功を収めたシーズンを終え、新たなシーズンに向けエース2人はそのままに周囲の若返りを図りました。

まぁ若返りと言っても大して若くないですが。



主な新加入選手
タイリーク・エバンス
ベン・マクレモア

大して若手でもありませんが、ローカルチームでは長く在籍してくれる事も大切です。特にエバンスはメンフィス大出身なので、そんな期待もしているでしょう。
2人ともアウトサイド中心の選手なので、ランドルフに代表されるようなポストプレーからの脱却を図ることになります。その傾向は既にありました。



1516シーズンと1617シーズンの得点比較

◯ガソル弟
得点 16.6→19.5
ペイント内 7.1 → 7.2
3P 0→ 4.2

兄同様に多彩なガソルはペイント内得点はそのままに3Pで平均得点をグッと上げました。そもそもキャリアで12本しか決めていなかった3Pを104本決めました。年齢を重ねても多彩な能力を見せつける兄弟です。
このアウトサイドシュートの流れは、もちろん新HCがもたらしたものです。

◯チーム得点
99.1(24位)→ 100.5(29位)
◯ペイント内
44.0(11位)→ 40.5(24位)
◯3P
18.4(27位) → 28.1(15位)

グリズリーズも平均得点を上げましたがリーグ全体がオフェンスに傾く中では相対的に弱くなりました。ドライブから得点できる選手を欠いているため、3Pに活路を見出したといえます。

◯3PFG
33.1% (29位)→ 35.4%(17位)

確率は標準ではありますが、元々が酷かったので大きな改善です。ベースは出来てきたので、新加入の2人にはアウトサイドオフェンスを強化してくれる事が求められます。

ただ、2人ともベストな選択肢ではないので、どちらかがフィットしてくれて、もう一方が6THマンになれれば十分でしょう。



チャンドラー・パーソンズ

高額契約の価値を示したコンリーに対し、リーグ1の失敗契約とされるのがチャンドラー・パーソンズです。
そもそもダラスでも大活躍はしていたわけではありませんが、運動能力よりもシュートと状況判断で勝負するタイプで、50%近いFG%と40%を超える3Pは、フィツデイルのグリズリーズがみせたオフェンスにマッチする能力でした。

チームの新しいスタイルに見合う戦力として契約した事は間違いではなかったかもしれません。ただ実際には活躍しなかっただけです。

◯パーソンズのスタッツ変化
得点 13.7 → 6.2
FG 49.2% → 33.8%
3P 41.4% → 26.9%
リバウンド 4.7 → 2.5

チームはケガが完治すればパーソンズは活躍するはず、と信じているでしょう。層を厚くしたガード陣と違い、ジェイムス・エリスとパーソンズに大きな期待をかけているロスターになっています。

◯エリスのスタッツ
得点 6.7
FG 45.5%
3P 37.2%
リバウンド 4.0

確率は問題ないですが得点が少ないのが課題です。パーソンズのシュートタッチが戻るか、エリスが積極的に攻めるか。ランドルフのポストがなくなったので、両方を叶えて2人で25点くらい取りたいところです。



チームの強みをキープ出来るのか?

ベテランズは抜けましたが、オフェンスでは3Pを効果的に使う事を意図した選手を集める事に成功し、HCの色を体現しそうなので問題なさそうです。

問題ないというか、そもそもFG43.5%はリーグ最下位、得点100.9は下から2番目です。若手も経験を積めたわけですし、これ以上FG%が悪くなるとは思えません。

グリズリーズが勝ってきたのは伝統のディフェンス力とゲームコントロール能力です。

◯ディフェンスレーティング 104.5(7位)
◯ペース 94.7(28位)
◯失点 100.0(3位)

遅いペースと高いディフェンス力で失点を減らす事がチームの特徴です。コンリーがいるのでペースコントロールは保たれるでしょうから、勝負はこのメンバーでディフェンス力を維持出来るかです。



トニー・アレンとマーク・ガソル

オールディフェンスチームに選ばれたアレンの移籍は大きいです。相手エースをマークするディフェンダーは重要です。
しかし、そんな重要性とは裏腹にグリズリーズの強さはビッグマン達を有効に絡ませる事にありました。

被FG% 44.3%(3位)
被3P% 35.4%(11位)

相手のシュートを外させる事に長けていますが、3Pに対してまではプレッシャーをかける事が出来ていません。

被FGアテンプト 78.8(1位)
被3Pアテンプト 28.0(21位)
被FTアテンプト 26.9(29位)

そして相手のFG本数を少なくしていますが、それはイージーに決められるくらいならファールをする事を選んでいる事が伺えます。ファールの数もリーグ2番目に多いです。
対して3Pは多く打たれているので、外れる確率の高いシュートを打たせればOKという姿勢がみえてきます。

被ペイント内 37.8(1位)
被オフェンスリバウンド 9.3(6位)
被セカンドチャンス 11.5(4位)

ペイント内は強力に守り、セカンドチャンスも防ぎます。オールドスクール的なディフェンスシステムですが、徹底している面が功を奏しています。



インサイド側に力点を置く傾向は個人のスタッツにも出ています。

◯個人DIFF
ガソル △2.6
グリーン △3.6
ランドルフ 2.1
アレン △0.7

ランドルフは悪いですが、それ以外はベンチのビッグマンも良い数値を残しています。しかしブロックは4.2(22位)と少ないので、個人の高さではなくチームのシステムがそうさせています。

個人のディフェンス力もさる事ながら、ディレクションをし、複数で囲み、プレッシャーをかけ、シュートを落とさせるのが特徴のチームです。
個人で止め切るのではなく、チームで守る。新加入選手にこのディフェンスシステムを継続できるだけの戦術眼があれば成立します。



不安材料にディフェンシブオブザイヤーにも選ばれた事があるガソルの成績下降があります。それはガソル自身よりもシステム的な話です。

◯ガソルのディフェンスレーティング
101.9 → 102.9 → 105.1

チームのディフェンス力は落ちていないのに、ガソルの出場中は落ちています。ガソルのポジショニングは素晴らしく、常に複数の相手にプレッシャーをかけられるポジションをとり、相手のFG%を削っていきます。

しかし、そんなガソルを有効活用出来るような、チームとして意図した形に相手を追い込めなくなっているという事です。
HCも代わり、次第に伝統のディフェンスシステムが薄まってきているのではないか、という懸念です。



グリズリーズのディフェンス力が維持されるかは未知数です。それは選手が入れ替わった事以上に、システム的な側面です。
またロスターがビッグマン不足になりそうです。相手を追い込んでシュートを落とさせ、リバウンドを確保するのがチームの強みだけにファールトラブルで崩壊する可能性もあります。



まとめ

目標 43勝
メンバーは変えたけどチーム力を落とさない1年にする事。

◆ストロングポイント◆
コンリーのゲームコントロール
攻守に効くガソルの多様性
フィツデイルによる改革の進行

◆ポジティブポイント◆
戦術に見合ったタイプの選手獲得と若返り

◆ネガティヴポイント◆
急激に変わりすぎているロスター
ディフェンスシステム浸透の不安
ビッグマン不足
チャンドラー・パーソンズ

オフの評価 0点
ベテランズは失ったけど彼らを残すよりは良い選択だった。でも評価できる動きも特にないので。
不安要素もイロイロありますが、パーソンズが復活してくれれば勝率を上げるでしょう。

あとはガード陣が多すぎるので、どこかでビッグマンとのトレードもありそうです。



細かくなりすぎるので書きませんでしたが、前任HCが全く出来なかった若手の育成に成功仕掛けているのがフィツデイルHCです。ただし、中心選手にまで成長した選手はまだ居ません。そしてそんな選手に大金は積まなかった事は評価出来ます。

ロスターには若手が増えました。誰かしらがブレークすると皮算用していると思います。ブレークといってもトニー・アレン的な職人的な働きで良いので可能性はあるでしょう。

またルーキーのコビ・シモンズはコンリーの控えとしては良かったですし、少しずつ新しい流れが出来てきそうです。



ガソルの移籍もありえるという噂です。グリズリーズが最も良かった時期はもう過ぎ去ったという事です。コンリー&ガソルはそのままに周囲をブラッシュアップして即座に立て直すか、それとも解体するかの瀬戸際のシーズンになりそうです。
今ならまだコンリーもガソルも高値で売れます。どちらも勝利に直結できるタイプの選手。だからこそグリズリーズとしても立て直したい部分もあります。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA