17-18シーズンプレビュー ペリカンズ編

ナゲッツ、クリッパーズ、ブレイザーズと続いてのペリカンズです。このシリーズはウエストのプレイオフ進出ライン上のチームをプレビューして順位を考えていきます。


最強インサイドコンビ

プレーヤーのパワーランキングは常に議論の的になるわけですが、最強インサイドコンビのカテゴリーを作ったら満場一致でアンソニー・デイビス&デマーカス・カズンズになるのではないでしょうか。

それくらい強力なコンビですが、それ以上にインサイドコンビを中核に置くチーム作りは珍しくなりました。
2010年代後半の現代バスケにおいて、最強インサイドコンビは勝利をもたらせるのか?

その答えは今の所NOです。

しかし、ペリカンズが成功すればリーグの流れを変えてしまう可能性があります。やっぱりビッグマンコンビは有効だと。
そんなコンビに高い機能性をもたらす新しい発想のシステムが産まれるかに注目していますが、それをプレビューするのは難しく、また正直、ペリカンズのスタッフから新しい発想が産まれる予感はありません。



ディフェンス勝負出来るのか

コンビは珍しいですが、ビッグマンを中核に置くのは珍しくありません。そんなチームはディフェンス力を売りにしています。例外はクリッパーズくらいですが、それはベンチが弱いというロスター構成の問題なので違う話です。
強力なビッグマンを抱えるペリカンズですが、カズンズ獲得後はむしろディフェンス力を落としました。

◯ディフェンスレーティング
オールスター前 104.6(8位)
オールスター後 105.6(13位)

付け足しておくとディフェンスは悪くなっていますが、オフェンスの改善が大きくトータルではプラスに働いています。
トレードでプレイオフ滑り込みを狙ったけど、カズンズ獲得後も負け越したのは、ディフェンスが改善しなかった事に原因がありました。



ビッグマンディフェンスに強く関わる数字を見て行きます。 プレビュー目的ですから全てカズンズ後の数字です。

◯ディフェンスリバウンド 34.6(5位)
◯ブロック 4.6(18位)
◯ペイント内失点 43.8(12位)

インサイドが強いチームとしてある程度の成果はあるものの、最強インサイドコンビというには、どれも物足りない数字です。
そして実はブロック数はリーグ5位から12位相当へ減りました。カズンズは細かい部分でサボりがちなのも関係はしますが、それだけが理由ではなさそうです。



インサイドを攻めさせる

カズンズ獲得後にブロック数は減ったものの、ペイント内失点は減り、被FGアテンプト数も減りました。一方で被FG%は悪化しました。どれも誤差の範囲内ではありますが、総じてみてとれるのが

カズンズ&デイビスを相手が気にして、無理にインサイドを攻めてこない

そんな構図が浮かんできます。至極当たり前の対策ですが、ペリカンズはそんな対策に負けたと言えます。



前回のブレイザーズ編では「ヌルキッチ獲得によりアウトサイドディフェンスが向上した」という点に触れました。そしてインサイドを任されたヌルキッチはブロックが大幅に増えました。

ペリカンズは「インサイドが強いから失点が減るはず」くらいに捉えたかもしれませんが、しっかりと戦術を絡めないと対策に負けるという事です。
「インサイドのディフェンスが強いから、相手は恐れて避けてくる」のでは最強インサイドコンビを活かしきず、トータルでは失点が増える訳です。

現代的な流れではむしろ
「インサイドのディフェンスが強いから、そこを攻めさせるようなディフェンスシステムを組む」
その結果、イージーシュートをやられまくったり、デイビス&カズンズのファールが嵩む可能性がありますが、それくらいの覚悟が必要です。



今はピック&ロールでインサイドを引き出すオフェンスが主流なので、2人のビッグマンがコートにいることは強みにも弱みにもなり得ます。
強みに変換するためには、スイッチを厭わずアウトサイドシュートを防ぎ、ドライブに対してはインサイドコンビの個人能力に依存するべきです。2人とも動けるビッグマンなのでディレクションとローテーションの徹底が出来れば、新しいディフェンスシステムが産まれるかもしれません。

まぁ普通のコーチはそんな選択しないのですが。

アルビン・ジェントリーHCは普通の良いコーチだと思うので異彩を放つシステムに着手出来るでしょうか?



次にオフェンス面を見て行きます。ビッグマン2人いるならインサイド渋滞が起きそうです。渋滞させないためには適切なパスが求められます。

アシスト
ビッグマンはリングの近くからオフェンスを始める、もしくはフィニッシュするのが役割です。
前者はビッグマン自身のアシストが、後者はガード陣のアシストがポイントです。やるべき事は基本通り、ディフェンスを収縮させて外にパスを振り、ディフェンスを広げてインサイドにパスを通す。この連続です。



アシスト数が少なくて強いチームは割とありますが、ガードのドライブを特徴にしたチームばかりです。
インサイドコンビを活かすならアシスト力は欠かせません。

◯アシスト数
カズンズ 3.9
デイビス 1.8

◯被アシスト数/FG成功数(アシスト率)
カズンズ 3.9/8.4(46.4%)
デイビス 7.4/10.3(71.8%)

何となく抱くイメージとは逆で多彩なのはカズンズの方です。ガードがプレーメイクしていたチームに途中加入して4アシストはビッグマンとしては優秀です。

一方のデイビスはアシスト率が示すように、味方に活かされる選手です。
2人のコンビはオフェンス面では非常にわかりやすい構図になります。カズンズはよりプレーメイクに参加し、デイビスはフィニッシャーに徹することになります。



エースのビッグマンにアシストする土壌が出来上がっているペリカンズ。オフの間も積極的にチームメイトが集まって練習しているらしく、開幕前から連携を高められているのでカズンズへのアシストが増える事は間違いないと思います。

プレーメイカーとして、フィニッシャーとして、両面で活躍の機会が与えられそうなカズンズ。キングスの時と似たようなプレーが許され、それでいて精度を高める事を求められる環境になるので、これまでにないやり甲斐を感じていそうです。

カズンズのアシスト数と被アシスト数それぞれが6回を超えてくれば、コンビとしては機能してくると予想しています。
ちなみにキングスでは4.8アシスト&4.7被アシストでした。単独だとそれくらいの能力はあります。



新戦力

チームはホリデーとの契約を5年126ミリオンドルという超大型で更新しました。リーグトップクラスのPGとは言えませんが、アシストもできてシュート力もあるタイプはインサイドコンビの特徴に合致します。他のPGの獲得に尽力するよりは確実性が高く、計算できる選手と踏んだわけです。

そしてFA市場からはアシストとディフェンス要員であるロンドを獲得しました。
もしも上記のようなディフェンスシステムを組んでいくと、読みに優れスティールの上手いロンドはピッタリの存在かもしれません。



アシスト面でもロンドの貢献は期待できます。しかし一方でティム・フレイジャーをウィザーズに放出しています。

◯36分あたりのアシスト数
ロンド 9.0
フレイジャー 7.9

ロンドのアシスト能力に疑いはないのですが、チームとして上積みかと言われると微妙という事です。
前述の通りカズンズへのアシストを増やす事は重要なので、キングスで実績のあるロンド&カズンズは期待は出来ます。

しかし、ホリデーのアシスト数は減るでしょうから、チーム力を上げるほどのアシストとなると平均10本までは伸ばして欲しくなります。



どんなペースで戦うのか?

ディフェンス&アシストが重要という視点ではロンドはピッタリな補強にみえます。しかし、インサイド中心のチームはディフェンス力を活かして遅いペースで戦うのが一般的です。ロケッツにハワードが合わなかったように、早い展開はビッグマンを求めません。

◯ペース
ペリカンズ 100.1(9位)
ヒート 97.6(21位)
ピストンズ 97.1(24位)
グリズリーズ 94.7(28位)
ジャズ 93.6(30位)

ペリカンズは早い展開を好んでましたが、それはデイビスだけで始まったシーズンだったからです。カズンズもいて開幕するのでどんな選択するかは注目です。

ちなみにカズンズの平均移動速度は3.53でリーグ1走らない選手です。



またロンドはベテランスターに囲まれたセルティックス時代こそハーフコートゲームをしていましたが、その後は弱いチームで長く過ごしてきました。
弱い事をロンドの責任には出来ませんが、中心選手としては早い展開でしか活躍出来なくなっていました。

オフェンスではシュート力がないため、リングへアタックしやすい状況でないとFG%が悪すぎました。
ペースが100を超えた16年キングスではFG45.4%を記録しましたが、ブルズでFG40.8%だったようにペースが落ちて行くと単に非効率な選手になってしまいます。

ディフェンスでも早い展開の中で読みの鋭さを活かせるとスティール能力が発揮されますが、対人で堅く守るのが得意なわけではありません。



つまりロンドが悪いというのではなく、チームの方向性がロンドのペースに合うのか、という疑問です。単にカズンズとの関係性で獲得していたならば、スタッツは良いけど勝てないチームになりかねません。

フロントは戦術面の検討をした上で獲得しているはずですが、早い展開に合うウイングがいないチームなので、ロンドの獲得は賭けの要素が強いです。
とはいえ、勝利が戦術を産む面もあるのでシーズン序盤からチームの方向性が明確に示されれば成功する可能性もあります。

開幕ダッシュがキーポイントです。



アウトサイドシュート

◯3PFG
チーム 35%(19位)
ホリデー 35.6%
カズンズ 37.5%
デイビス 29.9%

アウトサイドの確率は課題です。ヒールドがキングス移籍後に高確率で決めたようにシュート能力があっても活かされないチームでもありました。
インサイドコンビへのアシストが増え、戦術が明確になれば自然と3Pの確率も上がるでしょうが、それでもシューター不足の面は否めません。

クラーク 37.4%

一応、ウォーリアーズからシューター評価のクラークを補強しました。FG49%を記録しながらニック・ヤングに弾き出されたように、ウォーリアーズシステムに助けられて高確率だっただけで、そこまでペリカンズを助けるとは思えません。

誰かしら40%オーバーの選手が出てきて欲しい所です。ちなみにロンドはここ2シーズンは36%超えていて弱点とは言い難くなってきました。



高過ぎるサポートキャスト

そんな感じで中核をみていくと、それなりにやれそうなチームなのですが、サポートキャストに高いサラリーを払い過ぎていて、しかも契約年数が残っているので身動きがとれません。
カズンズが残留して初めて成功となるトレードだったので、キャップスペースも不安なら補強も不安です。
使えないわけではないけど、活躍もしていない選手達から誰かしら抜け出さないといけません。



まとめ

目標 5割でプレーオフ

◆ストロングポイント◆
◯最強インサイドコンビ
◯ビッグマンを活かす土壌

◆ポジティブポイント◆
◯カズンズを中心とした夏のワークアウト
◯連携アップ&ロンドで増えるアシスト

◆ネガティヴポイント◆
◯ペースコントロール
◯微妙なサポートキャスト
◯シューター不足

カズンズを中心としたオフェンスでデイビスにフィニッシュさせる形は割と機能すると思います。ただ、それ以外の選手の役割が明確化されているかは微妙です。

こういうチームを率いるのにアルビン・ジェントリーHCは不向きだと思います。ダントーニみたいに振り切ったシステムを用いないと普通の戦い方では能力が最大限に活かされることはなさそう。



デイビスはパワーランクでも常に上位に位置します。フィニッシャーとしては申し分ないもののプレーメイカーとしてはどうなの?と感じています。
対するカズンズは運動量不足でゴール下に顔を出す回数が少なくてフィニッシャーとしては疑問符ですが、プレーメイカーとしては優秀です。そんな2人の関係は悪くないと感じました。

デイビスは得点王候補だと思っています。カズンズの恩恵を受けていてマークも緩くなるし、カズンズからのアシストも受けられます。
開幕ダッシュと合わせてポジティブな話題を増やし、チームが良い雰囲気で過ごせることが大切です。

10月中にウォーリアーズ、キャブスとの対戦はありますがレイカーズ、キングス、マジックなんかもあるので頑張れば良いスタートをきれそうです。

なお、昨年は開幕ダッシュしたけど負け越したチームはありますが、開幕に躓いて盛り返したのはウィザーズしかありませんでした。
オールスターまでに大きく負け越したら、カズンズの再トレードもあり得るのだろうか?

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